言い訳だとか過ちだとかを、いまさら何を言っても関係ないですね。
映ってしまったものは仕方がない。
3月20日、朝10時15分、三沢漁港へ。
じつは新幹線を寝過ごして遠回りしたという失態。
青森県初入県にして、このしでかし。
そして乗り込んだタクシー。漁港内を大仰に一周した運ちゃんに若干の敵意を滲ませた。
入口でいいって言ったのに!
さて、海なし県埼玉のしがないサラリーマンがたった1日の休みを使って青森まで足を運んだ最大の理由は、オレゴン州立大のJohn Chapman博士に会うため。Light manualの端脚目の部分(Chapman 2007)を担当されるなど、カリフォルニア界隈のヨコエビといえばこの方、というイメージがあります。また、日本からアメリカへのニッポンドロソコエビGranddierella japonicaの移入を論じた論文(Chapman 1975)はそのテーマもさることながら形態の記載も詳細で、卒論で読んだ500本余りの論文の中でも最も好きなものの一つです。
今回の調査の具体的な内容としては、浮桟橋に付着している生物をコドラート(方形枠)で採取して持ち帰り、単位面積あたりの生物種数と量を調べるという、いわば王道的な手法です。
先の震災で発生した津波によって、三沢漁港の4つの浮桟橋が太平洋へと流され、うち2つがアメリカ本土に漂着したとのことです。その、漂着した桟橋に付着していた生物と、現在三沢漁港でみられる生物とがどのくらい重複しているかを分析するようです。例えば、アメリカで新たに付着したと思われる生物はいないか、または流されてくる間にどのくらい死滅するのか、など。
現在、漂着瓦礫(Tsunami debris)は国際問題となっていて、 漂着先に与える影響の一つとして付着生物の移入というのは無視できないもののようです。生態系の汚染は、人間に直接の危害はなくとも、長い目で見るとその土地の生物の有り様を大きく変えてしまうものです。
調査結果の詳細はJohnの論文として発表されることになりますが、ヨコエビの出現科としてはお台場,神奈川方面の護岸でみられるような感じに近いらしいです。
体長20mm近いヨコエビも得られましたが、細部の観察をしないと種までは落ちません。
目からウロコだったのは、日本の普通種で、北アメリカでよく記載されるようないわばコスモポリタン種が、実はアジア起源なのではというJohnの説。海流の関係からすると、たしかし!と肯ける。もちろん、日本でのヨコエビをはじめとする様々な生物の記載が遅れているのは調査が行われていなかっただけで、タイプ標本が得られた場所(Type locality)が必ずしも原産地ではないことは承知していましたが、まさかまさか。あの種もあの種も、元は日本なのかな?そう思うとワクワクしてきます。
Johnは私の作ったガイドブックやTシャツの話もしてくれて、未記載種(新種)が含まれてるはずだから記載しないか、と言ってくれました。そのためには月のお給料に匹敵する出費をして描画装置付きの顕微鏡を買わなくてはならない!無理!
だからせめて、今手元にある資料の整理と、必要なものの洗い出しを行って、あとは実行するだけという状態を作らなければと思いました。
じゃあ、いつやるか。今でしょう。
P.S.
TBSのNews23Xでとりあげられて偉そうに喋りました。
教授の受け売りです。
大学関係者でも何でもないのに、失礼致しました。
関係方面から「お前何してるん?」と問い合わせがありました。
ぺろっ。
Thank you for your present for me, John.
Now displaying it on my desk =)
See you next time!
<参考文献>
-Chapman, J.W. and Dorman, J.A. (1975) Diagnosis, systematics, and notes on Grandidierella japonica (Amphipoda : Gammaridea) and its introduction to The Pacific Coast of The United States. Bulletin of the Southern California Academy of Sciences, 74(3): 104-108.
- Chapman, J.W. (2007) Gammaridea. In; Carlton, J.T.(ed.) 『The Light and Smith manual intertidal invertebrates from central California to Oregon, fourth edition』 Completely Revised and Expanded. University California Press, pp. 545-618.
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