2017年6月30日金曜日

ROAD TO DESCRIPTION II (6月度活動報告)


 パンピーふぜいがどこまで学問に貢献できるか。

 小型甲殻類・ヨコエビの分類を巡る闘いの記録です。


※過去の経緯→(第一弾


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 私は研究者ではありません。

 何をもって研究者とするかは人によるかもしれませんが、普通に考えて「飯のタネとしているかどうか」だと思いますので、私は研究者ではありません。飯のタネとしていない故に、専門家でもありません。



 一昨年のことですが、これまで大いに研究をサボっていた私も、そろそろ顕微鏡を買うくらいの金も貯まったし仕事の融通も利かせられるんじゃね?ということで、やり逃げした仕事(新種記載)を片づけようとしたわけです。



- とりあえず進捗報告 -


1.標本
2.引用文献

 ⇒OK

3.記載文
 ⇒鋭意製作中

4.図
 ⇒難題です。

 記載に必要な図は基本的には描画装置を使用したスケッチですが、顕微鏡も描画装置も持ってないためこれを入手するところから始めます。


5.投稿先ジャーナル
  ⇒ほぼ決まり。

 国内誌でフリーアクセスの雑誌がありました。


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 ここまで、標本,文献,道具の探索・手配を進めてきましたが、初記載論文の投稿にあたって足りないものはまだあります。

 例えば指導者です。



 大学などの研究機関に所属せず専門分野でもなかったという環境の中で、働きながらヨコエビの記載を手掛け、現在も次々に日本のヨコエビを記載されているA博士の場合も、最初の記載論文はやはりヨコエビ界の権威に見てもらったとのことです。


 1種の記載論文はいわば事務書類のようなもので、種を特徴付ける形質のコンビネーションを常識的に判断・記述していくだけと言えるでしょう。

 過去の近似種の論文をいくつか読んでいれば、世に問うに値するだけの判断基準やフォーマットというものが分かってくるもので、それを追いかければよいのです。

 6月初めの分類学会ではT博士にも、オリジナリティを出すのはもっと先でよいとのお言葉を頂き、平身低頭ありがたく頂戴したわけですが、しかしながら、ということで、私の中にある別の懸念というのが若干ではありますが上位分類階級の見直しを含むということで、ここはロジックを研究せねばなりません。

 ということで、文章を作るにあたって少しばかりややこしい問題をはらんでいるのが現状です。

 先例を参考にスマートに決めたいところですが、記憶にある上位分類の見直し(統合)の事例、Paragrandidierella属をGrandidierella属に含めようとした某論文は根拠も薄弱で何の参考にもならず、OdiidaeOchlesidaeに含めた論文もかなりあっさりしていて、しかもどちらも現在は否定され、分けるべきということになっています。

 これまで上位分類を分けた事例は数知れず、統合した事例というのは笑ってしまうほどありません。真っ向勝負をする場合、丸写しできるネタがないのです。

 私が取り組んでいる分類群では、過去に、私がやろうとしているのと全く同じ操作(統合)を試みた研究はあるものの、言い方がマイルドすぎたのか、その後の知見にはあまり反映されていません。今回はその論文を利用してさらりと流す方法を模索することにします。


 
 そんな中、私のような下級戦士にも光明が差してきました。ハード面とソフト面の問題を解決する機会が巡ってきたのです。





 
 つくばに移転した国立科学博物館の研究施設です。

 特別なお取り計らいにより、こちらの設備の一部を使わせて頂けることになりました。


 これまでヨコエビの研究に関して、断片的な情報のアドバイスや文献の無心はしたことがあるものの、本格的に誰かに師事したことがなかったのですが、今回は細かな指導までつけて頂けることになりました。

 いやはや・・・

 かたじけない・・・




 ハードの見通しがついたというところで、記載にあたって必要なものは、あとは本人の力量というところまできました。


 文章については、投稿する前にnativeのチェックを受けることが必須という注意を受けました。 重要なのはやはり人脈ということのようです。上位分類見直しのロジックについてはやはり参考にできる事例はあまり聞いたことがないものの、さらっとできる方法があればそれでよいということになりました。


 については、他の研究者のスケッチをよく見て表現を学ぶことが重要ということで、これまでと違った目線で論文を読み直したいと思います。

 必然的に、富川・森野2009に則った方法でのスケッチとなるわけですが、描画装置を用いてケント紙に下絵を描き、それに墨を入れるという流れです。

 スケッチをせずに記載をすることは不可能ではありませんが、代わりとなる写真の撮り方を研究しているうちに何種分ものスケッチができそうです。
 ヨコエビの絵はたくさん書いてきましたが、だいたい自分用の模式図ばかりを作ってきたため、その標本の図であるという本気のスケッチというものは初めてです。

 描画装置というものを初めて使ってみて、目視で見当をつけて絵を描くのとは全く違う作業であることに気が付きました。線をなぞっていく、一種の習字のような趣を感じます。

 自分用の図を書く時はフリーハンドでやってきて、不具合を感じたことはほとんどありませんでしたが、記載図となるとなかなか苦しいものを感じます。
 これまでのお絵描きでは、写真や線画をパワーポイントのオートシェイプでなぞって作った図も多いのですが、サンプルの写真を撮って同じ方法で記載図を作成するには難があるように感じます。写真で表現が難しい部分としては、焦点距離を調整しながら見えてくる関節の線であったり剛毛であったり、そういったディテールが挙げられます。これを正攻法でクリアするには深度合成処理を前提とした写真が必要で、その手間を考えるとやはりスケッチした方がマシです。


 ジャーナルについては、ほぼこれという雑誌に目星をつけることができました。人と会ったこと(学会に参加したこと)から候補が決まった部分があり、サイエンスはコミュニケーションでできていることを痛感しました。


 
 また進捗がありましたら更新します。




<参考文献>

-富川光・森野浩 2009. ヨコエビ類(節足動物門:甲殻亜門)の描画方法. 広島大学大学院教育学研究科紀要, 2(58): 27-3.



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