~ とう場人ぶつ ~
こうたくん
さいきんヨコエビとまりちゃんのことが気になっている男の子。
まりちゃん
ヨコエビのことがすきなちょっとおませな女の子。
こうたくんとはかせのことはあまりすきじゃない。
今日はお休み。
ひろきくん
まりちゃんのきんじょにすんでいる。
あまりしゃべらないけど、するどい。
よこえびはかせ
ヨコエビの本やひょうほんをいっぱいもっている。
ヨコエビのことにくわしくて、何でもしらべて教えてくれるけど、
そのほかのことにはまるっきりきょうみがないんだ。
~~~~~~~
よこえびたんていだん
だい3話 ようぎしゃ フトヒゲソコエビ
(1)じけんはっせい
こうたくん:はかせ!こわい生きものがいるんだって!
はかせ:どれどれ、見せてごらん。
こうたくん:ウミノミっていうやつで、日本にもいるらしいよ!しってた?
はかせ:ホッホッホ、こうたくん、これはごやくじゃよ。
こうたくん:ごひゃく?ウミノミって番ごうがついてるの?
はかせ:ちがわい!えいごから日本語にしたときに、まちがえたのじゃ。
こうたくん:えー!じゃあこのウミノミはうそなの?
はかせ:まあまあ、これからたしかめるぞい。
はかせ:これはワシントンポストのニュースじゃよ。
こうたくん:しってる!ワシントンにあるポストでしょ!
はかせ:ちがわい!アメリカの新聞じゃよ。
こうたくん:えいごじゃん!
はかせ:アメリカなんじゃから、当たり前じゃよ。
こうたくん:なんて書いてあるの?
はかせ:とりあえず、日本語にしてみるかのう。
『肉食性の海の虫がオーストラリアの十代の若者の足を襲った「血が止まらなかった」』
先週金曜日、16歳のサム・カニザイはブリンストンビーチの水の中を歩いていた。それはこのオーストラリアの少年にとってよくあることだった。彼はメルボルンのこの地域で育ち、トライアスロンに参加したり、よく海で泳いだりするような、活動的な家族に囲まれていた。
今日早くからのサッカーの練習で足には痛みがあり、それを冷たい海水で鎮めようと、アイフォーンで音楽を聴きながら、暗闇の中で30分ほど腰の深さほどの海に立っていた。
水から揚がって間もなく、彼は足からの出血に気付いた。それもかなりの量だった。
”私たちは道路をはさんで海岸の向かいに住んでいます。”サムの父、ジャロッド・カニザイ氏はワシントンポストの取材にこう話した。
”サムはびっこを引きながらとても急いで家に戻ってきた。彼はすぐ外から私に電話をしてきた。そして彼は言った「父さん、外に出てきてくれないかな?」私が「どうして?」と訊くと、彼はこう言った「すぐに来て!」”
”私たちはとても驚きました。”
彼らが少年の足に発見した、何千もの細かな噛み跡は、ピンで何度も突き刺したのとほとんど同じだった。大量の血もまた同様だった。
”血が止まらなかった。”ジャロッドは言った。”私たちはすぐに彼を病院に連れて行きました。”
湾に立っている間に噛まれたのを感じなかったとき、水によってサムの足は全く感覚がなくなるまで冷えきっていた。
しかし、病院へ向かう途中、サムは”8割以上”痛みが増した、と話したという。
緊急措置室でそう長く待たねばならないということはなさそうだったため、ジャロッドは息子に、痛みについて正直に看護士へ話すよう言い聞かせた。
サムの足と血だまりを一目見て、病院のスタッフはすぐにサムを収容してくれた。心配はなかったと、カニザイ氏は言った。
(サムへのインタビュー動画)
当初、サムの傷は医師と看護士を困惑させた。
彼らは出血を手当てするとともに足を診察したが、誰一人サムの足が映画『ピラニア 3D』 に出てくるエキストラのように血塗れになった原因について、確かなことを言えなかった。
20年ほどブリンストンビーチの地区に住んでいるというカニザイ氏は、サムの足の写真をフェイスブックに投稿し、近所の住民や友人にミステリーとして話した。
”私も、ご近所さんも友人も、医療関係者の誰も、こんな事件は聞いたことがなかった。”ジャロッドは言った。”報道されるまで、何人かは小さな出血をしたことがあっても、地方の医者に行っただけだったのです。”
カニザイ氏は湾に戻り、サムが立っていたのと同じ場所に歩いて行った - 皮膚を護るためにウェットスーツを二重に身に付けた上ではあったが。
プールのゴミ取り用すくい網と生肉を使い、彼は体長2mmほどのダニのようなものを何千匹も採集した。
”御存知の通り、病院の看護士と医者は、この生物に言及することも捕らえようと試みることもしなかったんですよ?”カニザイ氏は言った。”何がサムの足を食ったのか、誰かがその難題を解いてくれると思っていました。”
(サムの写真)
メルボルンにあるヴィクトリア博物館はフェイスブックの記事で、海洋生物学者ジェニファー・ウォーカースミスが、カニザイ氏が採集した生物を、分解されている肉から出る化学物質などに誘引される腐肉食性の小型生物であるフトヒゲソコエビの仲間の端脚類と同定したことを明かした。
端脚類の仲間はしばしば”海のノミ”と呼ばれるが、傷が長引く原因にならないだろうと、彼女は言った。
”彼らは大群をなし、死んだ魚に群がり、瞬く間に食べてしまう”と、ウォーカースミス女史はABC(オーストラリア放送協会)に語った。
彼女はこの事件はサムの”不幸”によって起きたものとして、ビーチを楽しむ他の人は同じような攻撃を怖がる必要のないことを付け加えた。
”食事をしている群れをサムがかき乱した可能性がありますが、彼らは普通はピラニアのように攻撃の期を待っていることはありません。”彼女はABCの取材に語った。”この甲殻類は死んだ魚の肉片に群がっていて、サムの足に接触したのでしょう。サムには恐らくすでに切り傷があって、彼らはその匂いや化学物質を嗅ぎつけたのです。”
(フトヒゲソコエビ類の動画)
サムは快方に向かっている。
”確実に治ってきている。私たちは完治することを願っています。”父は言った。”彼が帰宅するとき、たぶん幾つか傷跡があるのでしょう。望んではいませんが。”
サムは水を避けることは考えていない - もっとも、彼は水中の同じ場所に長い時間立つ前に2倍は考えなくてはいけない、と父は言っている。
”彼は大人しい子です。大人しくて落ち着いている。”カニザイ氏は言った。”これはちょっと人生が脇道に逸れただけ。些細なことです。息子の身に起こった本当に奇妙な一つの出来事に過ぎないのです。私たちは気持ちよく水辺に戻り、安心を感じることだってできます。”
こうたくん:かんじが多すぎるよ!
はかせ:シーエヌエヌのほうも読んでみるかのう。
オーストラリア メルボルンの十代の若者がビーチを訪れたところ、そこはホラー映画の世界へと変貌してしまった。真相はちょっとしたミステリーだが、おそらく小さな甲殻類によるものだろう。
7ニュースによると、土曜日、16歳のサム・カニザイは友人とサッカーをした後、火照った筋肉を鎮めようと、慣れ親しんだブライトンデンジー通りの浜に足を浸していた。そして予期せぬことが起こった。
”歩いて水から揚がろうとしたら、ふくらはぎから足首に砂が覆っているのが見えて、強く振るうと、それは落ちたんだ。”彼はオーストラリアのセブンネットワークニュースに語った。だが、その時彼の足から振り落とされたのは砂ではなかった。
サムの父、ジャロッド・カニザイは、サムが水から足を引き揚げたとき、大量の血を見たと言っている。
”サムはびっこを引きながらとても急いで家に戻ってきた。彼はすぐ外から私に電話をしてきた。そして彼は言った「父さん、外に出てきてくれないかな?」私が「どうして?」と訊くと、彼はこう言った「すぐに来て!」”
彼らが少年の足に発見した、何千もの細かな噛み跡は、ピンで何度も突き刺したのとほとんど同じだった。大量の血もまた同様だった。
”私たちはこの細かい出血を拭き取ったほうがよいと考えたのですが、洗い流すことができないことがわかりました。”サムの母親、ジェーン・カニザイはセブンネットワークニュースに語った。
”血が止まらなかった。”サムの父はワシントンポストの取材に語った。”私たちはすぐに彼を病院に連れて行きました。”
地方病院では医師たちが止血を試みていたが、サムの足にできた無数の針穴の大きさの噛み跡からは血が流れ続けていた。
ジャロッドはワシントンポストの取材に、痛みについてサムは”8割以上”と言っていたと語り、病院のスタッフはサムの負傷に困惑していたと付け加えた。
自ら調査すべく、ジャロッド・カニザイはウェットスーツを二重に着込むと、息子が足を休めていた場所へと戻って、生肉を餌に未知の有害生物をプールのゴミ取りネットに収めた。ワシントンポストによると、彼は体長2mmほどのダニのような小虫を数千匹採集した。
その後、彼の信じる犯人が生肉の塊を貪る映像をユーチューブにアップロードした。
(フトヒゲソコエビの動画)
”奴らは肉片から血を啜り、表面に食らいつき続けたんです。”ジャロッド・カニザイはオーストラリアのセブンネットワークニュースにそう話した。
ヴィクトリア博物館のフェイスブックの投稿によると、この甲殻類が出す抗凝血物質によって血が止まらなかったものと考えられるという。同組織の海洋生物学者ジェニファー・ウォーカースミスはカニザイ氏が捕獲したサンプルを検討し、”腐肉食性甲殻類の一種フトヒゲソコエビの仲間の端脚類”が容疑者らしいと結論づけた。
投稿によると”端脚類はときに「海のノミ」と呼ばれる。” ”メディアは加害者を「海のシラミ」と記述して報道したが、この用語は、甲殻類の別のグループである等脚類に対して用いられるものである。”
端脚類は咬むことが知られている”自然にいる腐肉食生物”である。しかしながら、投稿によるとこのような類の負傷を引き起こすことは普通は無いという。
”血が止まらなかったことは抗凝血物質によって説明でき、また非常に冷たい水によってサムは噛まれたのを感じなかった”ことが有り得るという。
投稿によると、彼らは有毒物質をもっておらず、ケガはそう長引かない、サムはすぐ回復するだろうという。
オーストラリアのモナシュ大学生物科学部のリチャード・レイナ助教授は、フェイスブックの投稿で”海のシラミ”がサムのケガを引き起こしたとした。
サムが足を齧られているのに気づかなかったことに対して、レイナ氏は”私の想像に余りある非開放創だが、長時間水の中に立ち続けたことが原因となったのだろう。”と記している。
”これは、あなたが蚊をとまらせるのに少し似ているが、もし何千匹もの蚊に腕の上で30分も食事を続けさせたなら - ただならぬ反応を示すだろうが、普通はそんなことをする人はいない。”そうレイナ氏は記した。彼は人々にさほど心配しなくていいと、加えてこう綴っている。
”水から出ていなければいけない、ということはないのです。”
はかせ:ワシントンポストとシーエヌエヌは、どっちも「うみのノミ」ということばがあるんじゃ。えいごでは「sea flea」と書いてあったものじゃよ。
こうたくん:じゃあウミノミは、ほんとうにいるの?
はかせ:ワシントンポストには「Sometimes referred to as “sea fleas,” the amphipods will not cause lasting damage, she said.」と書いてあったんじゃ。じつは、この「シ―フリー(sea flea)」は、ヨコエビのなかまのことなんじゃよ。
こうたくん:ウミノミはヨコエビってこと?
ひろきくん: ・・・こっちは・・・ヨコエビって・・・書いて・・・あるっす。
はかせ:ひろきくん、来てたのかい。
こうたくん:だれ?
ひろきくん:・・・まりちゃんの・・・きんじょに・・・すんでます。・・・あんのひろきです。
こうたくん:せちこうたです。
はかせ:ウミノミはヨコエビとはちがう生きもので、ひろきくんがおしえてくれたほうが、正しいんじゃよ。
こうたくん:ひろきくん、すごいじゃん!
はかせ:シ―フリー(sea flea)はざっくりしたよびかたなんじゃが、ニュースのしゃしんのヨコエビは、ウミノミのなかまとは、ぜんぜんちがうんじゃよ。
こうたくん:ふ~ん。
(2)ひぎしゃのなまえ
はかせ:ウミノミと書いてあるニュースは、かなりあるんじゃ。いくつかのニュースは、あとで気づいて、「ウミノミはまちがいでした」といって、あやまったりしておるんじゃよ。
こうたくん:どうしてそうなっちゃったの?
はかせ:まず、このニュースがどうやってつたわったのか、たしかめてみようかのう。
こうたくん:うん!
国内ニュース12本,海外ニュース15本を調査。 記事に明記されていた出典を収録したが、3AWとHerald Sunは原典を確認できず。 |
はかせ:ネットにあるニュースをしらべてみたんじゃ。日本のニュースはだいたいシーエヌエヌかワシントンポストを元にしておるのう。
こうたくん:そうなんだ!
はかせ:シーエヌエヌが「ウミノミ」と言いはじめたようなんじゃが、シーエヌエヌをそのままのせているヤフーやライブドアのニュースにも「ウミノミ」ということばが出てきて、いっきに広まったのじゃ。ナショナルジオグラフィックやカラパイアは、べつの新聞を元にしてるんじゃが、「ウミノミ」というなまえは、つられてつかってしまったようじゃのう。
こうたくん:へえ~、ニュースっていつも正しいのかとおもってた!
はかせ:「ウミノミ」と書いてないのが、ビービーシーと、ひろきくんがおしえてくれた、ギガジンなんじゃ。ビービーシーでは「フトヒゲソコエビ」と書いてあるし、ギガジンは「ヨコエビ」と書いてあったのう。
こうたくん:つられなかったんだね!
はかせ:おそらくそうじゃろう。ニュースの書きかたが、ちがったんじゃな。
こうたくん:つられないには、どうすればいいの?
はかせ:そうじゃのう・・・ たとえば左下にギガジンがあって、その上にエーエフピービービーというニュースがあるじゃろう。
こうたくん:うん!
はかせ:エーエフピーは、とてもれきしが長いニュースのかいしゃで、あんしんのブランドなんじゃ。サムくんの話も地元のラジオなどから聞いて、オーストラリアの海にくわしい人からも話を聞いて、ほかとはちがうニュースを書いているんじゃよ。それを元にしたギガジンも、シーエヌエヌやワシントンポストとはちがうニュースになっておるのう。
こうたくん:へえ~
はかせ:あと、よく見ると、右上のエイジという新聞は、赤い線が多いじゃろう。
こうたくん:たしかに!
はかせ:エイジはメルボルンの新聞で、4本の地方ニュースと、1本のしゃせつを出しておるんじゃ。地元の海でいつもおよいでいる人にインタビューするなど、ほかの新聞のやらないことをやっておるのう。ナショナルジオグラフィックは、いっしゅんつられてしまったようじゃが、エイジを元にして、ほかとはちがうニュースを書いていたんじゃよ。
こうたくん:そうなんだ!
はかせ:ナショナルジオグラフィックは、エイジなどがとりあげている「sea lice(海のシラミ)」を「ウオジラミ」として、ほかの新聞がのせていない話もとりあげているんじゃ。
こうたくん:ほかの新聞がやらないことをやればいいんだね!
はかせ:それがそうでもないんじゃ。シーエヌエヌなどの日本のニュースに、つられずに書かれたハザードラボのニュースだと、「リシエンサス両生類(りょうせいる)」という、わけの分からないことばが生まれたりしておる。「amphipod(端脚類)」を「amphibia(両生類)」に、してしまったんじゃろう。
こうたくん:むずかしいんだね!
はかせ:そうじゃのう。とりあえず、日本でもともと「ウミノミ」と言っているものと、海外のニュースで「シ―フリー(sea flea)」と言っていたものとは、ちがうことはわかったかな?
こうたくん:うん…。でも、どっちもヨコエビのなかまなんでしょ?
はかせ:そうじゃのう・・・・。こうたくん、セミとカメムシが同じなかまというのは知ってるかな?
こうたくん:カメムシってあのくさいやつ?
はかせ:そうじゃ。セミとカメムシは見た目やくらしかたがちがうんじゃが、ハリのような口をもっているとか、よくにているところもあるから、おなじ目(もく)にぶんるいされているんじゃ。ヨコエビとウミノミも、そんなかんじなんじゃよ。
フトヒゲソコエビ(ヨコエビ)とウミノミ(クラゲノミ)の関係。Lowry and Myers (2017)に基づく。 |
こうたくん:じゃあ、このあぶないウミノミはヨコエビなの?ウミノミなの?
はかせ:「Genefor Walker-Smith, a marine biologist at Museum Victoria in Melbourne, identified the creatures Kanizay had collected as lysianassid amphipods, minuscule scavenging crustaceans that are attracted to the chemicals emitted by decaying meat, the museum said in a statement.」と書いてあるじゃろう。ウォーカースミスさんが言うには、これはフトヒゲソコエビというなかまのヨコエビなんじゃよ。
こうたくん:フトヒゲソコエビは人を食べるの?こわーっ!
はかせ:フトヒゲソコエビのなかまはたくさんおるんじゃが、ふつうはしんだ魚を食べたりしておるんじゃ。
こうたくん:フトヒゲソコエビは日本にもいるの?
はかせ:東北のりょうしさんは「スムス」といって、海にしずんだしたいを食べる虫をよく知っているようなんじゃよ。ここには、そんな話が書いてある。あと「とやまわん」で、りょうしさんが魚がかかったあみをひとばん海に入れておいたら、ほねとかわだけになったという、そんな話がテレビに出たこともあったんじゃ。そのはんにんもフトヒゲソコエビのなかまじゃよ。
こうたくん:こわすぎじゃん!
はかせ:フトヒゲソコエビのなかまは、日本のすなはまでは、ほとんど見つからないんじゃ。
こうたくん:よかった~。これであんしんして海に行けるよ!
はかせ:海水よくのときには、クラゲやエイなどあぶない生きものも多いから、気をつけるんじゃぞい。
こうたくん:うん!
(3)けんしょう
ひろきくん:・・・でも・・・フトヒゲソコエビはほんとうに・・・はんにん・・・なんですかね・・・。
はかせ:ひろきくん、なかなかするどいのう。じつは、何とも言えないんじゃよ。
こうたくん:ええっ!?こんなに引っぱったのに!?
はかせ:ホッホッホ、すまんのう。ニュースには「ちが止まらなくなった」と書いてあったじゃろう?
こうたくん:そうだったかも…
はかせ:ちが止まらないのは、フトヒゲソコエビが「ちをかたまらなくするぶっしつ」を出しているから、という人もおるんじゃが、それはカやヒルのように、ふだんから「ちをすっている」生きものが出すもので、しんだ魚を食べているフトヒゲソコエビのような生きものが出すとは、思えないんじゃよ。
こうたくん:そうなの!?
ひろきくん:・・・ヨコエビのなかまについて・・・日本一か二か三か四のせいたいけんきゅうしゃの人が・・・このブログで・・・ニュースにダメ出ししてる・・・っすね・・・
こうたくん:すごい人がいるんだ!
はかせ:これはすごい人のブログを見つけたのう。じゃが、ユーチューブを見て「ナミノリソコエビ」と言っておる。 ナミノリソコエビ科は、2004年からほかのヨコエビも入ることになったんじゃが、もともとは、すなはまにもぐって小さなエサのカケラを食べているヨコエビなんじゃ。
こうたくん:ちがうヨコエビなの?
はかせ:フトヒゲソコエビとはちがうんじゃ。日本にいるものとくらべても、目はここまで大きくないし、こんなに力強くおよがないし、「生にく」にむらがったりはせんのじゃよ。
ひろきくん:・・・オーストラリアにいるのが・・・とくべつということは・・・ありませんかね・・・?
はかせ:そうじゃのう・・・すなにもぐるナミノリソコエビは今のところ12しゅいるが、中国、かんこく、日本、カナダ、アメリカなど北たいへいようだけにすんでおるんじゃ。今のところオーストラリアでは見つかっておらん、ということじゃ。あと、ABCなどの新聞には、ウォーカースミスさんは、サムくんのお父さんがあつめた「ひょうほん」をその目でたしかめてから、「フトヒゲソコエビ」という答えを出したと書いてある。このユーチューブのヨコエビを「ナミノリソコエビ」と言うのは、むりがあるのう。
こうたくん:なんだ~またうそか~。
フトヒゲソコエビ類とナミノリソコエビ類 太い触角など似ている特徴もあるが複眼の形状は全く異なる。 |
はかせ:それが、あながちウソとも言えんのじゃ。このブログでは、ヨコエビがとれたからといってケガはさせてないと思う、スナホリムシがやったのではないか、と言っておるじゃろう。たしかに、明らかにスナホリムシにかまれてケガをしたという話はネットで見かけるんじゃが、生きた人がヨコエビにかまれてケガをしたという話は、これといったものがないんじゃ。
こうたくん:え~!?
はかせ:これは、こうかくるいのけんきゅうをしている人が、フェイスブックでしょうかいしてくれた話じゃ。海外のけんきゅうしゃが教えてくれたらしい。
このニュース記事を見てすぐ、私は博物館のコレクションにあるPseudolana concinna(スナホリムシ科)の標本のことを思い出した。
これは1959年の夏にパース海岸にほど近いロットネスト島(西オーストラリア)で採集されたものだ。古い登記書類にはこのような備考がある ”水辺に座っていた小さな子供のペニスに取り付いて食らいついてた;非常に出血していた”。確証はないが、その小さな子供は、当時の西オーストラリア博物館理事長の息子だったと考えられる。
アンドリュー・ホジー氏(西オーストラリア博物館)の証言
こうたくん:ふぇぇ・・・っ・・・
はかせ:男子には、ちとつらい話じゃのう。これは、サムくんのお父さんが海にもどってフトヒゲソコエビをあつめてウォーカースミスさんに見てもらう前のニュースじゃが、この時に、うたがわれていたのが、スナホリムシのなかま(モモブトスナホリムシぞく)なんじゃよ。このニュースはオーストラリアのゆうめいなおいしゃさん、ドクター・クリス・ブラウンがフェイスブックでしょうかいして、ネットで広まったんじゃ。ほかにも、スナホリムシがあやしい、と言っている人はけっこういるんじゃよ。
こうたくん:ってことは、スナホリムシがやったの?
はかせ:それじゃあ、これまでのニュースやしょうげんを、まとめてみよう。
こうたくん:うん!
各メディアの報道より抜粋した専門家の意見。 Facebookへの投稿を記事に掲載したものなど、 メディアによる直接取材に基づかないものもあるが、特に区別せずに集めた。 |
はかせ:この中で、ヨコエビのろんぶんをよく書いているのは、ニューサウスウェールズ大学の「プアじょきょうじゅ」と、メイン大学の「ワットリングきょうじゅ」じゃのう。シドニー大学のはかせは、お父さんがつかまえた「ひょうほん」を見ないで「ニセスナホリムシ」ときめつけておるようじゃが、あやしいもんじゃ。
こうたくん:「きょうじゅ」や「はかせ」でも、分からないの?
はかせ:たとえば、サムくんの足に食らいついている時につかまえたら、何でキズがついたのか、なやむことはないじゃろう。
こうたくん:そうだね。
はかせ:おしいことじゃが、サムくんは「しんはんにん」をつかまえてないし、すがたを見てもいないんじゃ。ただ、「水から上がる時に足にすなのようなものがモヤモヤまとわりついていた」という話をしておるから、小さな生きもののしわざとかんがえてみよう。そうすると、やはりフトヒゲソコエビとスナホリムシが、ようぎしゃになるんじゃ。「はかせ」や「きょうじゅ」も、答えを出すために、もっと知りたいことがあると思っているはずじゃ。
こうたくん:なるほどね。
フトヒゲソコエビ類とスナホリムシ類の比較。 人を出血させる可能性は、スナホリムシ類の方が高い。 一方、サム・カニザイ君の近くにいた可能性が高いのは、フトヒゲソコエビ類である。 サム君に傷を負わせたことについて、 どちらも裏が取れている状態ではない。 |
はかせ:ところでこうたくん、ダイダラボッチの話をおぼえているかな?
こうたくん:えっと・・・大きいヨコエビはうそだったっていう・・・
はかせ:ちがわい!ダイダラボッチはたしかに海の中におるんじゃが、つかまえようとしても、ちょっと日がたったりすると、もうつかまらないという話じゃわい。
こうたくん:ああ、そういえば・・
はかせ:サムくんのお父さんはフトヒゲソコエビをたくさんつかまえたが、それがほんとうにサムくんが海に入っていた時にもいたのか、たしかめることはできないんじゃよ。
こうたくん:ほかにかまれた人は、ほんとうにいないの?
はかせ:サムくんのニュースが広まったあと、オーストラリアのクイーンズランドにある「ゴールドコースト」というところで、3年前に同じような生きもの「シーライス(sea lice)」にかまれた、ということがあったらしく、アデーレ・シュリンプトンという女の人の話が、オーストラリアの新聞に出たんじゃ。2015年には、ヴィクトリアにある「サンドリンガム」というところで、ニック・マリーとウィル・マリーという父子が、サムくんほどではないが、こまかいキズをたくさんうけていたんじゃ。この時はメルボルン大学「マイケル・キーオきょうじゅ」が、「シーライス(sea lice)」だったと言っていたんじゃ。
こうたくん:シーライス?カレーライスみたいなの?
はかせ:ちがわい!ナショジオの話にも出たじゃろう。この「ライス」はお米じゃなくて、「シラミ」のほうじゃ。ウオジラミのことを「シーライス」とよぶこともあるが、シーエヌエヌのニュースでウォーカースミスさんは、スナホリムシのなかまの「とうきゃくるい」のことじゃと言っておる。どのみち、ヨコエビとはちがうんじゃ。
こうたくん:ええ~!じゃあ、スナホリムシがはんにんじゃん!
はかせ:そうとも言えるんじゃが、シュリンプトンさんがかじられてケガをしているとき、あせっていたはずじゃから、スナホリムシやヨコエビを正しく見分けていたとは思えんじゃろう?これも、はんにんときめつけることはできないんじゃ。
こうたくん:けっきょく、どっちも人を食べるってこと?
(4)さいはんのおそれ
はかせ:サムくんやシュリンプトンさんをおそったのは、どっちか分からんが、もしこうたくんが海でかじられるとすれば、スナホリムシの方かも知れないのう。
こうたくん:そうなの!?
ニセスナホリムシとフトヒゲソコエビ類の比較。 矢印は、大顎のナイフ状突起の有無を示す。 体長は、Auroi onagawaeが11mmで、 ニセスナホリムシは12~13mmである。 スナホリムシ類の大顎の切歯部および中間突起は、 Auroi onagawaeより発達していると考えられ、 より肉食に特化している可能性がある。 |
はかせ:ヨコエビやスナホリムシは、「大あご」をもっておる。これをつかって、食べものをこまかくするようなんじゃが、食べものによって、かたちはちがうんじゃ。「ワットリングきょうじゅ」が言っていたのも、これじゃな。
こうたくん:ふ~ん。
はかせ:スナホリムシのなかま(ニセスナホリムシCirolana harfordi)は、「大あご」に大きなナイフのようなものがついておる。じゃが、フトヒゲソコエビのなかま(アウロイ・オナガワエAuroi onagawae)には、それはないんじゃ。おそらくじゃが、にくを食べるのがとくいなのは、スナホリムシの方なんじゃよ。
こうたくん:そうなんだ!
(5)そうさしゅうりょう
はかせ:けっきょく、はんにんのきめては、見つからなかったのう。
こうたくん:どうすればいいの?
はかせ:たしかなことを、1つずつ、つみかさねることが、ちかみちになるんじゃ。さっき、シーエヌエヌのニュースが日本でいろいろなニュースにそのままながしていた、という話があったじゃろう?
こうたくん:あったかも。
はかせ:シーエヌエヌは”「ウミノミ」原因か”という見出しだったんじゃが、ライブドアニュースは”原因はウミノミと判明”と、きめつけたんじゃ。おんなじニュースなのに、見出しだけ、おおげさに書いたんじゃよ。
こうたくん:ええー!?うそじゃん!
はかせ:ライブドアだけではないぞい。カラパイアはヨコエビのしゃしんを、ウィキペディアコモンズから引っぱってきたんじゃ。これはBathyporeia sarsi(バシポレイア・サルシィ)というヨコエビなんじゃが、「Amphilochideaあもく」のフトヒゲソコエビではなく、べつの「Senticaudataあもく」の「Gammaridaかもく」のなかまなんじゃ。カラパイアはほかにも、「half an hour」を「30分」ではなく「一時間半」と言ったり、かなりざつなんじゃ。
こうたくん:ええーっ!?これもうそじゃん!
はかせ:「ウミノミ」というなまえも、よくしらべてみるとまちがっていたし、お父さんがつかまえたフトヒゲソコエビも、しらべてみると、はんにんとは言いきれないことが分かったじゃろう。あせって、おおげさに言うと、知らず知らずのうちに、うそをついてしまうこともあるんじゃ。
こうたくん:うん!帰ったらお母さんにも教えてあげようっと。
(参考ウェブページ)
- ABC. 'Sea bug' creatures behind bloody attack on Melbourne teen's legs identified as amphipods. (投稿:現地時間2017.8.7 15:27)
- abc 10 NEWS. Teen taken to hospital after dozens mysterious sea creatures bite his feet. (投稿:現地時間2017.8.7 14:30)
- AFP BB. 海に漬かって血だらけに、足に原因不明の無数の穴 オーストラリア.(投稿:日本時間2017.8.7 22:00)
- AFP BB. 海で両足血まみれの少年、原因は肉食小型甲殻類? 父親が写真公開.(投稿:日本時間2017.8.10 12:17)
- Au one. 海水に浸した両足が血まみれに、「ウミノミ」原因か 豪州. (投稿:日本時間2017.8.8 11:47)
- BBC news. Sea bug attack: Why was a wading teenager left covered in blood? (投稿:現地時間2017.8.8)
- BBC日本版.豪の16歳、海に足をつけたら血だらけに 出血止まらず. (投稿:日本時間2017.8.8)
- BIGLOBE. 海の中にある恐怖。オーストラリアの少年を襲った人食いヨコエビ(小型甲殻類大量注意).(投稿:日本時間2017.8.12 22:30)
- BUZFEED NEWS. An Australian Teenager's Legs Were Eaten By Sea Fleas And Everyone Is Traumatised. (投稿:現地時間2017.8.7 20:13)
- CNN. Are 'sea fleas' to blame for bloody bites on Australian teen's legs? (投稿:グリニッジ標準時2017.8.8)
- CNN日本版. 海水に浸した両足が血まみれに、「ウミノミ」原因か 豪州. (投稿:日本時間2017.8.8 11:47)
- Daily mail. 'He was in the wrong place at the wrong time': Expert solves mystery of exactly what ate teen's flesh when he went for evening swim at Melbourne beach - and why he was targeted. (発行:英国夏時間2017.8.7 11:25,投稿:英国夏時間2017.8.7 13:45)
- Dr. Chris Brown Facebook (投稿:現地時間2017.8.8 11:47)
- excite NEWS. 海の中にある恐怖。オーストラリアの少年を襲った人食いヨコエビ(小型甲殻類大量注意).(投稿:日本時間2017.8.12)
- フジテレビ FNSアワード. 第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品 『不可解な事実 ~黒部川ダム排砂問題~』 (制作:富山テレビ)
- GIGAZINE. 海から上がった少年の足に出血を伴う無数の穴ができるホラー現象発生、その原因とは? (投稿:日本時間2017.8.8 17:00)
- ハザードラボ. 閲覧注意「血が止まらない!」ビーチで謎の生物に足を食われた少年 豪州. (投稿:日本時間2017.8.8 13:48)
- Herald Sun. Gold Coast woman recalls sea flea bites after Melbourne teen likely ‘eaten’ by critters. (投稿:現地時間2017.8.8 22:56)
- Herald Sun. Sea lice bite and draw blood from swimmers at Sandringham beach. (投稿:現地時間2015.8.6 2:17)
- Independent. Experts reveal why Australian teenager's legs were ravaged by 'meat fleas' on Melbourne beach. (投稿:英国夏時間2017.8.8 10:36)
- カラパイア. 海の中にある恐怖。オーストラリアの少年を襲った人食いヨコエビ(小型甲殻類大量注意). (投稿:日本時間2017.8.12,訂正:日本時間2017.8.14)
- 駒井智幸 Facebook (投稿:日本時間2017.8.11 12:32)
- LIVE SCIENCE. Horror at the Beach: 'Sea Fleas' Dine on Aussie Teen's Legs. (投稿:東部標準時2017.8.7 20:11)
- livedoor NEWS. オーストラリアで海に入った少年の足が血だらけ 原因はウミノミと判明. (投稿:日本時間2017.8.8 11:47)
- msn. Flesh-eating bugs at Brighton beach: What really ate Sam and why. (投稿:現地時間2017.8.7)
- National Geographic. Mysterious Flesh-Eating Sea Creature Causes Shocking Injury. (投稿:現地時間2017.8.7)
- ナショナルジオグラフィック日本版ニュース. 【動画】海で脚が血まみれに、犯人は?対策は? (投稿:日本時間2017.8.8,訂正:日本時間2017.8.9)
- 漁師の徒然なるブログ. 海の分解者 スムス. (投稿:日本時間2010.08.27 17:3'57")
- The Age. It's not a movie: Did marine critters eat Brighton teenager's legs? (投稿:現地時間2017.8.7)
- The Age. Explainer: What are sea fleas anyway? (投稿:現地時間2017.8.7)
- The Age. Bitten teen's dad films Brighton Beach sea fleas enjoying a meal of fresh meat. (投稿:現地時間2017.8.7)
- The Age. Flesh-eating bugs at Brighton beach: What really ate Sam and why. (投稿:現地時間2017.8.8)
- The Age.Flesh-eating sea fleas enter the great Aussie wildlife folklore. (投稿:現地時間2017.8.8)
- The New York Times. Mysterious Sea Creatures in Australia Chew Up Teenager’s Legs. (投稿:現地時間2017.8.7)
- The Washington Post. Flesh-eating sea bugs attacked an Australian teen’s legs: ‘There was no stopping the bleeding.’
- Time. Strange Sea Creatures Chewed Up This Teen Boy's Legs. (投稿:東部標準時2017.8.7 11:37)
- 超サーランピー.【取り急ぎ】オーストラリアの海辺で青年が「ウミノミ」に足を食われて血まみれ事故案件について、ご質問へのお応えと所感.(投稿:日本時間2013.8.13)
- Wikipedia commons. File:Bathyporeia sarsi.jpg
- Yahoo! ニュース.海水に浸した両足が血まみれに、「ウミノミ」原因か 豪州. (投稿:日本時間2017.8.8 11:48)
- YAHOO! 7. WATCH: Mystery sea creatures devour meat after vicious attack on teen. (投稿:現地時間2017.8.7)
(参考文献)
- Barnard, J.L., G.S. Karaman 1991. The families and genera of marine gammaridean Amphipoda (except marine gammaroids). Part 1-2. Records of the Australian Museum, Supplement 13(1), (2): p.1–866.
- Bousfield, E.L., N.L. Tzvetkova 1982. K izucheniju Dogielinotidae (Amphipoda, Talitroidea) iz priborezhnijh vod severnoij chasti Tihogo okeana. In; Korotkebich, B.S. (ed.) Bespozvonochnije pribpezhijh biochenozov Sebernogo ledovitogo i Tihogo okeanov. Issledovaniya faunij morej L.: Zool. in-t AN SSSR. 29(37): 76-94. (in Russian with English abstract)
- Jo, Y.W. 1988. Taxonomic studies on Dogielinotidae (Crustacea - Amphipoda) from the Korean coasts. Bijdragen tot de Dierkunde, 58(1): 25-46.
- Lowry, J.K., A.A. Myers 2017. A Phylogeny and Classification of the Amphipoda with the establishment of the new order Ingolfiellida (Crustacea: Peracarida). Zootaxa, 4265 (1): 1-89.
- Ren, X. 2006. Fauna Sinica, Invertebra. Vol. 41, Crustacea, Amphipoda, Gammaridea (I). Science Press, Beijing, China. 588 pp.
- Serejo, C.S. 2004. Cladistic revision of talitroidean amphipods (Crustacea, Gammaridea), with a proposal of a new classification. Zoologica Scripta, 33: 551–586.
-----
補遺(18 VIII 2017)
・コメント欄を通して指摘を受け、ブログ記事に対する「よこえびはかせ」のコメントを修正(赤字)。
-----
補遺[2] (15-VIII-2024)
・一部書式設定変更。
・一部書式設定変更。
拙ブログご引用誠にありがとうございます。恥ずかしながら “自称” 日本一か二か三か四の生態研究者です(自分の足を大量のスナホリムシに噛ませる実験をしている方が他にいらっしゃらないので、おのずと…。結果が出たらCANCERに投稿します)。仰るとおり当件おかしな見解が錯綜していますね。
拙文中ヨコエビの記述についてですが、私は確かに、
>「俺ヨコエビ同定ほとんど分かんないんですけど、顔かたち、泳ぎ方、見たことあるののうちではナミノリソコエビという種に近い感じを抱きました。」
とは記述致しました。ただこの文章につきましてはまさにこの程度の信頼性しかない例示で、映像のヨコエビを「こりはナミノリに違いなく、従ってこいつらが犯人なのダ!!」 と断定していませんし、コロコロと愛らしいナミノリとは異なると思っています。同様にヒメスナホリムシを引き合いに出しましたが「こりは絶対ヒメスナホリムシの仕業に間違いないっ!! 」と断言もしていません。凝血阻害という海外の見解もウソこけよ〜と疑っていますが、もしかしたら世界にはそんな特技のある海ムシもいるかもわからんネと考え、決めつけるのは見送りました。
結論としては〈 こりゃオーストラリア産の肉食スナホリムシが主犯では?とは思うが、誰かがもう一度噛まれてみなきゃどの種が犯人かまでは同定しづらいし、やはり現地調査を待ちましょう、自分も噛まれて確かめてみたいね~ 〉と推測の域を出ずに結びました次第です。
ですのでウソを書いていると受け止められてしまったことは残念で、ナミノリを引き合いに出したこと自体がヨコエビ分類学上ナンセンスかつ一般の方にナミノリは悪者という誤解を吹聴してしまうとすれば、当方の無学と表現力の乏しさゆえ誤解を生じさせました点、不徳と致す所でありお詫び申し上げます。「ナミノリに見えたがナミノリでもないし、ナミノリや近似種があそこまで人を齧るとも思えない。ならば犯人は?!」というところがお伝えしたかった真意です。
さすがご専門の御方、ご掲載の文面は非常に鋭く頼もしいのですが、僭越ながら一点申し上げますと…
待ってくれ署長!『(5)そうさしゅうりょう』は、まだ早いぜ!(byスナホリ刑事)
確かにこの件は世界中を巻き込んで錯綜しており、拙速なデマが一般に広まり拭いきれなくなることは大変な問題です。しかし、誤りながらも多少なりともつまびらかになっていくことは、むしろ明るい結果や新しい知見を生むチャンスではないかと期待もしているんです。よこえびはかせには真偽ツッコミにばかり留まらず、是非そのことを未来あるチビッコたちに伝えて戴きたかった。
例えばこんなくだりが文末に添えられていたら読み物としても完璧でした。
===============================
こうたくん:
では、はかせ、たしかなことをつみかさねるために、今すぐスッポンポンになって、オーストラリアの海でおぼれて、ムシにたべられてみせてよ。
はかせ:
へッ?! わしゃイヤじゃよ。文献を読めば済むことじゃろうが… 科学とは先人の積み重ねの…
ひろきくん:
先人の業績を蒐集しただけで知った気になってしまうのは、物知り博士の悪い癖です。何事も自分の目で確かめてみることが大切と言ったじゃないですか。さあ、脱〜げ、脱〜げ。
こうたくん:
脱〜げ、脱〜げ。
はかせ:
いきなりどうしたんじゃ。離せッ。やめろぉぉぉぉー!!
こうたくん:
はかせが血まみれで死んだら、そのようすを作文にして、べんとすがっかいにおくるから。
・
・
・
・
・
かくしてスッ裸のはかせと子供たちはオーストラリアの地へ旅立ったのであった。果たして犯人は?! (つづく)
===============================
ならばそれを地で行ってみようじゃないかというのが当方のスタンスでございます。
当方の水槽飼育では、近所の汀線砂中にひそむ数種のヨコエビに生肉(豚)を与えた場合、いちおう集まってきて口をつけてはいるようだがガツガツほどではないな~という印象で、肉片は目に見えては減りませんでした。大物にたかるより小さいカスを抱えて食べるのが好きなようです。逆にスナホリムシは血のしたたる新鮮な肉質ほど好むようで、最も勇んで飛びかかるのは殺しかけの(=まだピクピク生きてる)魚やエビ。しかし完全に死んで組織が変性していると興味を失うらしいという発見も得ました。
これらの知見は、漂着死骸の肉質ステージによって分解担当者が異なり、現在ひとからげに「砂浜の掃除屋さん」「漁師の迷惑者」「チン食い虫にやられた」「ああ! あの噛んでくる虫ね」「浜辺をピョンピョン飛ぶ虫は噛むから注意」と称される者たちの認識の整理をも促します。
オーストラリアの出来事もきっとその視点に帰結すると思いますし、「知らず知らずのうちにうそをついてしま」わないためにも、まず手元の国産材料でも確かめてみようと考え、検証観察を実行中ですので、それまでは当方の見解を拙ブログのとおり濁させて戴くことをご容赦くださいませ。先に弦楽器の研究やらないといけないので文献化はだいぶ後になってしまいますが…
のちに現地から《 精査の結果、これまで知られていなかった新種の急襲肉食性ズキンウミノミの仕業と判明した》なんて結果が出たら、世界中ひっくり返って大笑いですね。
返信削除↑【追記】あともう1点、誠にこまけえ話で恐縮ですが…
拙ブログ記事では文頭より、
>「俺これ、犯人、違うと思う。」
つまりウミノミでもヨコエビでもなくスナホリムシの仕業ではなかろうか?と疑っております。しかし「よこえびはかせ」はご引用の際、ヨコエビの誤同定をご指摘(ありがとうございます)、あながち間違ってはいないとはしながらも、この論客がスナホリムシを犯人と疑っているという点に明言してくれていません。後述のために敢えてスルーし、物知り博士としての見栄を張っているようにも読み取れます。結果ここで唐突にスナホリムシの名が出てきていますね。
つまり、
===============================
はかせ:
このブログでは、ヨコエビはケガさせてない、と言っておるじゃろう。
===============================
の部分は、
==============================
はかせ:
このブログでは、ヨコエビはケガをさせてない、させたのは「スナホリムシ」では?と言っておるじゃろう。
こうたくん:
えっ「スナホリムシ」というムシもいるんだ?! むずかしくなってきたぞ。
===============================
というふうに書いて戴かないと文脈としておかしいし、不親切だし、ずる〜いフェアじゃねえよなぁ〜、と思います。まあご引用だけでも有り難いことですし構いませんけれども… 副次的な論旨の誤認を突いて相手の主旨全体を否定し打ち負かすディベート戦術もありますから。
いずれにせよ当方としては「ある種のヨコエビ類が鋭い口器で生きたヒトの皮膚を噛み切り、血みどろでガツガツと食べ進むノーカットVTR」を早く観たいというのが本望です。もし同意に至る確証が示されたら素直にスナホリ説は撤回しますし、それまでは疑い続けなければならないかなと考えております。嗚呼、この話題、楽しい、楽しい。
川崎ピースケ様
返信削除コメント拝読させていただきました。
ご指摘の箇所
”
はかせ:それが、あながちウソとも言えんのじゃ。このブログでは、ヨコエビはケガをさせてない、と言っておるじゃろう。たしかに、明らかにスナホリムシにかまれてケガをしたという話はネットで見かけるんじゃが、生きた人がヨコエビにかまれてケガをしたという話は、これといったものがないんじゃ。
”
・・・について、引用元に配慮の至らない部分と確かに認めますので、手直しをいたします。いろいろと裏を読まれているようにもお見受けしますが、この部分は貴ブログの指摘を受けて、ヨコエビ説を否定的に捉えた上でスナホリムシ類の可能性を推す主張があることを示す意図で設けたもので、内容に踏み込んで紹介しないのはひとえに私にこれを肯定あるいは否定する知見がなく、文章の流れの中に位置づけられないためです。言い訳がましいことは承知しておりますが、他意のないことは申し添えておきます。
なお、「よこえびたんていだん」ですが、デマの掃除係をモットーとしており、未来あるチビッコたちに希望を与えることなど、思いもよらないことです。ご了承ください。
返信削除ご対応有り難うございます、ご返答の旨、理解致しました。
「>肯定あるいは否定する知見がなく、文章の流れの中に位置づけられない」段階で、「>ヨコエビ説を否定的に捉えた上でスナホリムシ類の可能性を推す主張があることを示す意図」をご認識のうえ引用なさるのであれば、やはりそこには《真犯人はスナホリムシでは?とこの男も主張している》旨を明確に書き添えてくださいませんことには、『(ピースケ某なる人物はナミノリが犯人だなどと浅はかなデマを言いふらしておる。けしからん)』というニュアンスばかりを強調した新たな「>デマ」を「>知らず知らずのうちに」読者へ発信していることになるわけです。だとすれば不本意で、よこしまな他意(≒スナホリムシの細かい生態までは正直あまり知らないが解説者の立場上スナホリムシが犯人である疑いをここで先に唱えられては都合が悪い気持ち)があるのかしら、残念だな…と受け取らざるを得ませんでした。
しかしそれは些か考え過ぎだったということですね。ただ文脈的にもあそこでピースケによる嫌疑を明示せず唐突にスナホリの可能性に言及するスタイルは、解釈によっては剽窃にあたるおそれも生じてしまうので、僭越ながらそこだけは再整理を申し出ねばと考えました。細かくてごめんなさい。
今回の事故案件においてスナホリムシの仕業を疑うとなると、その立証には被害者の父親が行った捕獲方法ではなく、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1)腰まですっぽり覆えるよう工夫した細目ネットを足先に予め履かせておいて夜の海に半裸で浸り、チクリと感じた瞬間にガバッと素早くネットを履き上げて海を出る、などの方法でまず確実にチクリ容疑者を現行犯逮捕する。痛みのあった箇所は憶えておく。複数人で一斉に行えばなお効果的。
2)網にかかった容疑者らを目~属ごとに別々の水槽に分け、できれば各々空腹にさせてから、水槽に人体を浸した際に積極的に噛み付いてくる者と消極的な者とを比較し、容疑者を絞る。積極性があればその様子の拡大映像と、傷口の形状や出血の状態、回復の経過を記録しておく。
3)積極的に噛み付いてきた者を標本とし、模式標本や文献と比較して種同定する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
例えばこういった「>たしかなことを、1つずつ、つみかさねる」プロセスが、スナホリムシ科の分類学と行動学の両面によく精通した研究者によって踏まれることが望ましいと存じます。過去情報の収集整理も確かに重要ですが、それのみに基づいて議論している限りは机上の域を出ず、「>デマの掃除」は完遂できないと思われるのです。従いまして当方としては、ウソつくなデマ流すなとひたすらに義憤する前に、まず身近なヒメスナホリムシを好比較サンプルとして飼育実験を重ねつつ、オーストラリアの検証報告を待ちたいと考えております次第。
ピースケ説のミソは、生体の比較観察に基づいて「ある種のスナホリムシが人を咬むのは新鮮な肉質を好む傾向が強いためではないか? ならば混生する他属とともに専ら漂着腐死肉食性であるとされる通説を見直さねばならないかもしれない」と唱え、慎重な比較検討の必要性を促している点です。とはいえ日本産種に限った記録にすぎませんから海外事例にまんま転用は出来ませんが、ある意味では既知見の集積よりも強力な論拠を手元に持っているわけです。
たぶん今ごろオーストラリアでは有志が海に入って同じこと試してるんじゃないかと思うんです。結果やはり凶暴な端脚目甲殻類の仕業であったと判明しスナホリ説を否定できたらそれはそれで素晴らしい収穫です。しかし私はやはり等脚目、ヒメスナの属するExcirolana属か、でなければ近縁、例えばナギサEurydice属のうち浅瀬にウヨウヨいるらしい種が怪しいような気はするのですが、この領域もまたよく似てる可愛い子が沢山いますし、調べれば思わぬ未記載種が出るかもしれませんので、現物を確かめないことには断定は困難ですね。
川崎ピースケ様
返信削除コメント拝読いたしました。
既知の資料を積み上げるだけでデマの掃除はしたことにならないというのはまさにその通りかと存じます。オーストラリアの結果を待たれるのも、それは結構かと存じますし、ご自身の経験に基づいて所見を述べられるのも、貴重な知見を提供する素晴らしいことかと思います。ピースケ様の考えには何ら異存はありませんし、この問題に一定の結論を導くとすれば、報道内容や既存の知見を積み重ねるよりも、そういったスタンス・視点が重要であることは重々承知しております。
一連のご意見、人様のブログの印象を操作するような記述をしておいて説教を垂れる身分かというお叱り、ならびに当ブログの方向性、端的には>ウソつくなデマ流すなとひたすらに義憤する 姿勢に対する婉曲な批判と受け取っておりますが、前者について私自身も襟を正すべきところと重ねて反省をしている次第であります。後者については当シリーズの意図するところではありませんので、他をあたって下さい。
返信削除>他をあたってください
そうですね。今回の議題は等脚目の比較生態学にも明るくないと議論を進めるのが困難な段階に突入しつつあります。
検証や是正の目的をもって他者意見の交換経緯を取りまとめ再掲する際は、恣意的な構成で客観性を逸していないか、ときに謙虚さをもって慎重に整理しないと、編纂者自身がさらなる歪曲者・デマ拡散者に成り代わる危険性を伴い、故意の不正が認められれば信用を失います。先の小稿にていま一度のご認識を戴けましたなら幸いです。
>観音崎にもおるんかミノガサヨコエビ
観音崎にもおったですわ。泳ぎ方が独特でコツブムシと勘違い。専らオオバモク上でした。井口, 2001
(http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/sotsuken/2001graduation/youshi/980756.html)
の言及に照らしてドンガメかな?と推測したものの、ヘラムシに夢中でちゃんと同定してませ〜ん。ヨコエビはヨコエビに詳しい方に進めて戴くのがベストですし。
…ついでに、
返信削除https://twitter.com/vertical06/status/806126865236639744
これ誤同定。ホソミとこれとは別属で、広義のうちにも入りません。うそ教えてデマ拡げないで〜。こいつすら区別つかないんじゃホソミだ近似だ名前ばっか知ってても意味ねえから。
ともあれ、益々のご活躍をお祈り申し上げます。記載がんばってくださいね。
川崎ピースケ様
削除コメントありがとうございます。
件のツイートについて、ご指摘内容を追記いたしました。