干潟のオンシーズンといえば、潮干狩り場が開く春から夏の間というイメージは根強いものですが、実はいつ行っても面白いのです。
潮干狩りシーズンにあたる晩春から初夏は、真っ昼間からマイナス何センチというガチめの干潮が大盤振る舞いされるので、確かに潮間帯の散策には適しているのですが、遠浅の干潟であればそんなに引かなくてもそれなりの広さの干潟を楽しむことができるでしょう。
むしろワンドに水が残っているくらいのほうが、ヨコエビのついたアオサやらオゴノリやらがそこらへんに漂っていて、ガシャガシャと洗うのにも便利だったりします。
冬の干潟で期待できるのは次のようなことだと思います。
①混まない
潮干狩りシーズンの競合は半端ありません
②熱中症にならない
遮るものの無い干潟面では、真夏でなくても日差しに当たりすぎて体調を崩すことがありますよね
③サンプルが傷まない
干潟の生き物は熱せられるとクタクタになって良い標本にならないことが多い
④生物がデカい
種類により夏期は短時間で世代を繰り返すため冬のほうが大きな個体を簡単に得られるということもあります
今回の最干潮は正午過ぎの63センチです。
予報では、気温は13℃で天気は晴天。冬干潟日和と言えるのではないでしょうか。
こちら、内房線巌根駅です。ここに来るのは何年ぶりだろう・・・
のどかな駅ですが近くにコンビニもあり便利です |
初の試みとなりますが、ここから盤州干潟まで歩いてみます。
汀線までは・・・そうですね・・・片道徒歩1時間30分くらいです(白目)。
県道87号線脇を国鳥が走る |
小櫃川を渡ります。
はい着きました。
今回はのんびり散策というわけではなく、目的があります。
ある特定の種のヨコエビを採らなければいけないのです。
ソロ干潟も冬干潟も経験済ですが、ソロの冬干潟はたぶん自己初です。緊張します。
最干潮の時間があるため、ひとまず汀線まで行き、戻りながら探索します。
打ち上げ海藻は少なく、干潟面にもあまり見られません。
海面近くでの植プの増殖は夏ほどではないはずなので、大型藻類には有利かと思いましたが、大型藻類についても増殖が抑制されているみたいです。
そんな中、何やらヨコエビリティの高そうな海藻を発見…
海藻のまわりを掘ると、泳ぎつつ潜りつつ、怪しげなヨコエビがたくさんいました。
リップルマークの間を泳ぎ回っています(撮影困難) |
めっちゃおるやん。
狙いの潜砂性ヨコエビかと思って採ってみましたが・・・
アゴナガヨコエビ類(ラヴ・プリズン済) |
九十九里のものとは別種でしょうか。この感じはPontogeneia rostrataアゴナガヨコエビかも・・・?
アゴナガヨコエビさんはやはりかなりちょこまかと泳ぎます。眼はかなり背中側に寄っていて、生時は白色に見えます。ヨコエビっぽくないというか、脚を下側にして基質に取り付きます。
海藻にはポシェットタソ
たぶんポシェットトゲオヨコエビ |
しかしやはり干出面からはなかなか採れません。
今回、決戦に備えて新兵器をご用意しました。
これを
こうして
こうじゃ
百均のカゴを洗濯ネットで包んでみました。
基質の色により黒と白を使い分けたいと思います。
目合いは1mmより小さいので、大きな砂粒が残る程度のはず。
レッツガシャガシャタイム |
かなり残っています やっぱり1mmのほうがやりやすい・・・ |
目的の種は潜砂性であるため、今回の新兵器は未完成ながらかなり役に立ちました。いや、むしろ今日この日のために開発したと言ってもよい。
今回の洗濯ネットはギリギリの大きさで装着に1分半ほどかかるのと、袋状なので当然裏側にも砂が入って使うたびどんどん重くなります。ネットがピンと張ることを優先したので、これからどのくらい最適化できるかを考えます。
普通のフルイは1mmメッシュを切り出して貼って作りますが、金属は嫌なのでナイロンメッシュを探したところ、やはり一般での販売はそう無いようです。裏技を使えば買えるかもですが・・・今回はとりあえず目当てのサンプルが採れたので良いことにしましょう(いいのか)。
今回、目的種を得る工夫ができました。
一緒にメリタも採れたので、干潟採集では役立ちそうです。
確立したらご案内します。
洗濯ネット法は磯採集や潜水採集などでは広く用いられているらしく、ヨコエビストにおいては海藻のガサりでも使えると思います。
今回は少しやってみて、ヒゲナガヨコエビ科がちょこっと出ましたが、成熟オスが出なかったためリリースしてきました。海藻が増えればまたやってみたいと思います。
冬干潟の良いところは満喫できましたが、とにかく寒い。
陽が照るとそれなりに暖かくも感じるものの、吹き抜ける風は身に沁み、ひとたび陰ると春がまだ遠いことを実感いたしました。
(今回の採集の目的のヨコエビについては発表予定なので詳細は後程・・・)
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