今年もヨコエビの新種です。
メキシコとオーストラリアからワレカラの新種が記載されていますが、あえて掲載していません。
※2017年実績
※2018年実績
※2019年実績
※2020年実績
※2021年実績
学名に付随する記載者については、基本的に論文中あるいは私信で明言のある場合につけています。
(Temporary list)
JANUARY
Jażdżewska, Brandt, Martínez Arbizu and Vink (2022)
Oedicerina teresae
Oedicerina claudei
Oedicerina lesci
クチバシソコエビ科 Oedicerotidae の4新種を記載。2022年1月現在本文は無料で読めます。
Ceriello, Senna, Andrade and Stampar (2022)
Podocerus carmelina
ブラジルからハナギンチャク付着性の ドロノミ属 Podocerus 1新種を記載。種が未同定のものも含めて同所的に得られたヨコエビのほか、等脚類、タナイス、コノハエビの記述もあります。
Tomikawa, Sasaki, Aoyagi and Nakano (2022)
Melita miyakoensis ミヤコメリタヨコエビ
Melita nunomurai ヌノムラメリタヨコエビ
Melita ogasawaraensis オガサワラメリタヨコエビ
Melita okinawaensis オキナワメリタヨコエビ
沖縄および小笠原から メリタヨコエビ属 Melita の4新種を記載。既知種も加えた系統関係を解析し、本州・沖縄・小笠原にまたがるクレードと、沖縄・小笠原のみのクレードが存在することを明らかにしています。本文は有料。
ミヤコメリタヨコエビについては沖縄タイムス等で取り上げられ、Yahoo!ニュースにも取り上げられてコメ欄やTwitterが賑わいました。メリタヨコエビ属において無眼種は珍しく、特に今回は表層水で発見されたとのことで憶測が憶測を呼んでいますが、筆頭著者の富川先生曰く「地下水棲種が湧水に乗って表層へ出てきたのでは」とのことです(2021年日本動物分類学会第56回大会発表)。また、海を隔てて近縁種が生息することに疑問をもつ方もいるようですが、本属は海水種・汽水種・淡水種を内包する極めて適応力の高いグループであり、海流等の検証は済んでいないものの、祖先が海を渡ってきたというシナリオが最も妥当と思います(同発表)。御多分に漏れず研究が進んでいないため、他の地域の記述が進めば、より精度が高い分散様式の推定が可能になるのではないでしょうか。そして、生息地は外来植物アカギの繁殖が進み、ヨコエビをはじめとする淡水性の動物が生息する渓流が堰き止められて消滅するという危機的状況にあるとのことです(同発表)。争点にするべきはそういった喫緊の課題だと思います。
FEBRUARY
Sir and White (2022)
Elasmopus mukuinu
沖縄から イソヨコエビ属 Elasmopus の1新種を記載するとともに、これまでマレーシアでの原記載のみが既知であった同科の Ceradocus mizani Lim, Azman & Othman, 2010 を報告しています。新種として記載された E. mukuinu の種小名は日本語の「尨犬」のことで、第2咬脚に不揃いの剛毛を密生する様子にちなむとのことです。命名したのは米国人研究者ですが、日本語センスがずば抜けています。南西諸島ではスンナリヨコエビ科を含めてヨコエビ相の記録は乏しく、またイソヨコエビ属は世界的に見て日本が分布の北端にあたるものの種多様性の高さに記載が追いついておらず、貴重な研究です。また、これらの種の他にも同所的に未記載のヨコエビはたくさんいそうです。アブストに簡単な形態の記述あり。本文は有料。
ちなみに、本種の記載の過程は「New species podcast」というポッドキャスト番組に採り上げられ、コレスポの White博士が出演しています。
Marin and Palatov (2022)
Victoriopisa nhatrangensis
Victoriopisa cangio
ヴィエトナムのマングローブ林から ホソオヨコエビ属 Victoriopisa の2新種を記載。本文は有料。
Lowry and Myers (2022)
Demaorchestia hatakejima
Demaorchestia mie
Demaorchestia pseudojoi
Insularorchestia susorum
ハマトビムシ大改造論文がまた出ました。3新属(Cocorchestia,Demaorchestia, Insularorchestia)を含む15属を Platorchestiinae亜科として再構成し、Talitrinae亜科から分離・独立させました。何といっても注目すべきは、これまで2種として扱うのも不評だった「ヒメハマトビムシ」が、とうとう2属4種の大所帯になった点です。本論文は「armchair taxonomy」(自ら標本を収集・検討して分類に必要な一次情報を得ることはせず、出版済の文献およびそれに付随した私信を拠り所として行われる分類学研究:わたしの造語)に終始しており、このような細分化が果たして意味を持つのか疑問がありますが、少なくとも同種とするには気持ち悪い形質の違いがあることもまた事実です。今後の研究、主に分子系統解析に期待です。巻末で15属のオスの検索表を提供。本文は有料。「ヒメハマトビムシ」をめぐる本論文の処遇について、特に本論文で記載された2新種と、タイプロカリティ付近に現在棲息している個体群との対応については、こちらで考察しています。
ちなみに、本論文は端脚類分類学における巨人の一人ジェームス・ケネス・ロウリーの遺稿となってしまいました。しかし、極めて重要な論文にも関わらず、本文中に「P. koreaensis sp. nov.」という記述がある一方でアブストで新種として示されず、属の構成種に挙げられず、記載らしいパートも見当たらないという不可思議な点があり、恐らくミスと思われます。査読者は何をしていたのでしょうか。
King, Fagan-Jeffries, Bradford, Stringer, Finston, Halse, Eberhard, Humphreys, Humphreys, Austin and Cooper (2022)
Nedsia canensis King & Cooper, 2022
Nedsia cheela King & Cooper, 2022
Nedsia erinnae King & Cooper, 2022
Nedsia mcraeae King & Cooper, 2022
Nedsia nanutarra King & Cooper, 2022
Nedsia pannawonica King & Cooper, 2022
Nedsia quobba King & Cooper, 2022
Nedsia robensis King & Cooper, 2022
Nedsia shawensis King & Cooper, 2022
Nedsia wanna King & Cooper, 2022
Nedsia weelumurra King & Cooper, 2022
Nedsia wyloo King & Cooper, 2022
Nedsia yarraloola King & Cooper, 2022
西オーストラリアの地下水からハッジヨコエビ上科 センドウヨコエビ科Eriopsidae の13新種を記載した超大作が出ました。分子と形態の両刀使いです。本文まで無料で読めます。
Verónica, Águeda and Alejandra (2022).
Hyalella fatimae Verónica & Alejandra, 2022
アルゼンチンの標高 4,000 m 級の山地から Hyalella属 の1新種を記載。形態を用いた記載で、アブストにもかなり詳しく記述があります。
Myers and Ashelby (2022)
Pontocrates moorei
クチバシソコエビ科 Pontocrates属 の1新種を記載。全世界の既知種レビューと全種の検索表を掲載という、これまでありそうでなかった文献です。本文は有料。
Rangel, Da Silva, Siegloch, Limberger and Da Silva Castiglioni (2022)
Hyalella insulae
ブラジルから Hyalella属 の1新種を記載。本属初の島嶼性とのことで、それを示す種小名がついています。本文は有料。
Tong, Wang, Liu, Li and Hou (2022)
Gammarus hoboksar Hou, 2022
新疆ウイグルから ヨコエビ属 Gammarus の1新種を記載。Gammarus zhouqiongi Zhang, Wang, Ge and Zhou, 2021 のタイプ産地にほど近いようです。本文は有料。
APRIL
Wang, Sha and Ren (2022)
Cyphocaris lubrica
Cyphocaris formosa
南シナ海のメタン湧出域から ネコゼヨコエビ属 Cyphocaris の2新種を記載。形態のみを用い、線画のほか固定前の全身写真と、一部口器のSEM画像も載せています。世界の既知のネコゼヨコエビ科全種の検索表を提供するとともに、世界のメタン湧出域から得られた端脚類を総括しているかなり意欲的な論文です。本文まで無料で読めます。
Labay (2022a)
Eosymtes magnumoculis
サハリンに産するテングヨコエビ科 Eosymtinae亜科 をレビューするとともに1新種を記載。亜科から属の検索表、および Eosymtes属 の全種の検索表を提供。本文は有料。
Ariyama and Kawabe (2022)
Aoroides macrops オオメブラブラソコエビ
Grandidierella ogasawarensis オガサワラドロソコエビ
父島から ユンボソコエビ科 Aoridae の2新種を記載。このうちオガサワラドロソコエビは、濵邉 (2017) で Aoridae sp. とされていたものとのことです。SDなのでタダで読めます。
Andrade, Souza-Filho and Senna (2022)
Magnaphoxus ajaja
Magnaphoxus simplex
Magnaphoxus longicarpus
ブラジルから ヒサシソコエビ科 Phoxocephalidae の1新属3新種を記載。属の識別形質はアブストに詳しく書かれています。
Paz-Ríos and Daniel Pech (2022)
Dentimelita lecroyae
Pardaliscella perdido
Paraeperopeus longirostris
Pardaliscoides ecosur
Tosilus cigomensis
Neohela winfieldi
メキシコ湾の深海域から メリタヨコエビ科 Melitidae の1新属(Dentimelita)・1新種,Pardaliscidae科の1新属(Paraeperopeus)・4新種,Unciolidae科の1新種を記載。本文は有料。Tomikawa, Watanabe Kayama, Tanaka and Ohara (2022)
Paronesimoides calceolus
マリアナ海溝から タカラソコエビ科 Tryphosidae の1新種を記載。3種のオスの検索表を提供。本文は有料。
MAY
Wongkamhaeng, Dumrongrojwattana, Sumitrakij and Keetapithchayakul (2022)
Thailandorchestia rhizophila
タイからハマトビムシ上科の 1新属 1新種 を記載。Protorchestiidae科 の 7属 の検索表を提供。本科において最東端かつ初の漂着木性属の報告と思われます。本文まで無料で読め、しかも生態動画付きです。漂着木性ハマトビムシ類の生態動画そのものが大変貴重だと思います。この発見は現地の新聞でも取り上げられました。
Marin, Sinelnikov and Antokhina (2022)
Pleusymtes actiniae
北極バレンツ海から、イソギンチャク類 Urticina eques に付着している テングヨコエビ科 Pleustidae の1新種を記載。なかなか書き込みが多いスケッチが楽しめます。本文は無料で読めます。
JUNE
Cannizzaro, Sisco and Sawicki (2022)
Crangonyx apalachee
フロリダから マミズヨコエビ属 Crangonyx の1新種を記載。現在「フロリダマミズヨコエビ Crangonyx floridanus」は種群として認識するのが妥当なようです。良からぬことが起きねばよいのですが。本文は有料。
Ariyama and Kohtsuka (2022a)
Aora biarticulata ニセツヒメユンボソコエビ
Aoroides sagamiensis サガミブラブラソコエビ
Grandidierella gracilis ホソナガドロソコエビ
相模湾から ユンボソコエビ科 Aoridae の3属3新種を記載。本文は有料。
Momtazi (2022)
Cymadusa makranica
オマーンから ヒゲナガヨコエビ科 Ampithoidae の1新種を記載。
Hendrycks and De Broyer (2022)
Abyssorchomene patriciae
Abyssorchomene shannonae
大西洋北東部と南極からフトヒゲ2種を記載。種小名の Patricia は Claude De Broyer の奥様で、Shannon は Ed Hendrycks の奥様とのことで、それぞれの著者のパートナーに献名しています。既知種である A. abyssorum についてこれまでに得られている標本を再同定し、かなり A. patriciae が含まれていたことを示しています。個人的には体長の測り方に納得できません。EJT なので無料で読めます。
Bueno, Bichuette, Zepon and Penoni (2022)
Spelaeogammarus ginae Bueno and Penoni, 2022
ブラジルから カンゲキヨコエビ上科 Bogidielloidea の新種を記載。同属8種の形態マトリクスを掲載。無料で読めます。
JULY
Suklom, Keetapithchayakul, Abdul Rahim and Wongkamhaeng (2022)
Floresorchestia amphawaensis
Floresorchestia pongrati
Tomikawa, Nishimoto, Nakahama and Nakano (2022)
Pseudocrangonyx dunan
メクラヨコエビ属設立100周年の今年、与那国島から メクラヨコエビ属Pseudocrangonyx の1新種を記載。本文は有料。
AUGUST
Cannizzaro, Daniels and Berg (2022)
Sicifera cahawba
アラバマ州ダラス郡から マミズヨコエビ科 Crangonyctidae の1新種を記載。この属の下に3種を加えたとのこと。昨年末に出版されているはずですが、出版年は今年になっているみたいです。本文は有料のようです。
Labay (2022b)
Desdimelita spicatimanus
オホーツク海から メリタヨコエビ科 Melitidae の1新種を記載。著者自身は属の在り方に不審を抱いているようですが、再定義等には至っていないようです。本文は有料。
Zhang, Kim and Kim (2022)
Paradexamine acuta
Paradexamine rotundogena
韓国近海から トゲホホヨコエビ属 Paradexamine の2新種を記載。頭側葉の形状が尖っているものと丸まっているものという、対照的な2種のようです。韓国近海産5種の検索表を提供。本文無料。
Ahn, Lee and Min (2022)
Gammarus somaemulensis
韓国から ヨコエビ属 Gammarus の1新種を記載。本文は無料で読めます。
Limberger, Santos and Castiglioni (2022)
Hyalella luciae
ブラジルのヴァルゼア川流域から5種目となる Hyalella属 の新種を記載。アブストに形態がわりと細かく書かれています。本文は有料。
Shintani, Lee and Tomikawa (2022)
Eoniphargus iwataorum イワタチカヨコエビ
Eoniphargus toriii トリイチカヨコエビ
静岡と栃木から チカヨコエビ属 Eoniphargus の2新種を記載。属内全種の検索表を提供。ヨコエビ小目7科22属29種(+外群としてマミズヨコエビ小目1種)の分子系統樹を描き、Eoniphargus属, Octopupilla属, Mesogammarus属 の 3属5種 についてまとまりよさげな枝が描かれたので一安心しましたが、ヨコエビ科どころかヨコエビ属の散らばりっぷりに眩暈がします。本文は無料。
SEPTEMBER
Ortiz, Winfield and Ardisson (2022)
Bathypisella spinicauda
メキシコ湾南西部の深海 884m から センドウヨコエビ科 Eriopisidae の1新属1新種を記載。このグループは淡水から浅海にかけて見つかることが多く、深海性は珍しいです。アブストでは省略されていますが、第3尾肢の形状から、伝統的区分における Eriopisella line に該当するものと思われます。本文は有料。
Ariyama and Kohtsuka (2022b)
Metarhachotropis parva カワリリュウグウウヨコエビ
相模湾から テンロウ科 Eusiridae の新属新種を記載。属名はカワリリュウグウウヨコエビ属となりました。頭身低めの特徴的なプロポーションをしています。本文は有料。
Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar (2022)
Hyalella alvarezi Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar, 2022
Hyalella garyi Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar, 2022
Hyalella sarukhani Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar, 2022
Hyalella villalobosi Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar, 2022
Hyalella viviannae Marrón-Becerra and Hermoso-Salazar, 2022
ベラクルスおよびメキシコシティから Hyalella属 の5新種を記載。分類には形態を用い、SEMでの観察を行ったとのことです。本文は有料。
Stringer, King, Austin and Guzik (2022)
Pilbarana grandis Stringer & King, 2022
Pilbarana lowryi Stringer & King, 2022
オーストラリアから センドウヨコエビ科 Eriopisidae の1新属2新種を記載。河床間隙性の無眼種とのことで、形態的に Eriopisella line に属するものとみられます。Pilbarana Stringer & King, 2022 という属名は産地である西オーストラリアの地名・ピルバラに由来するとのことです。本文はなんと無料です(2022年9月22日現在)。
Andrade and Souza-Filho (2022)
Biancolina suassunai Andrade & Souza-Filho, 2022
ブラジルからガラモノネクイムシの1新種を記載。本属がヒゲナガヨコエビ科に移されてから初めての新種です。本文は無料で読めます(2022年10月12日現在)。
Liu, Tong, Zheng, Li and Hou (2022)
Morinoia aosen
中国から モリノオカトビムシ属 Morinoia の1新種を記載。日本,中国,韓国に分布する ニホンオカトビムシ M. japonica に生物地理学的に8系統が内包されるとの結果を導いており、その中で遺伝的・形態的に識別されうる中国の種を記載したようです。本文は有料。
Kodama, White, Hosoki and Yoshida (2022)
Leucothoe vermicola Kodama, White, Hosoki & Yoshida, 2022 ユキレンゲマルハサミヨコエビ
フサゴカイ類の棲管・ホヤ類の内部に棲み込みを行う マルハサミヨコエビ属 Leucothoe の1新種を記載。本科においてホヤ類への棲み込みは報告があるものの、環形動物とヨコエビとの関係はあまり報告がなく、近年研究が進み始めた感はあります。ヨコエビ屈指の風雅な提唱されていますが、ちょっと長すぎる気も…。遺伝子は COI mtDNA のほか 18S rDNA を解析。飼育下での行動を観察した動画も付属させている労作。本文は有料。
Arai, Ohno and Tomikawa (2022)
Podocerus setouchiensis セトウチドロノミ
瀬戸内海から ドロノミ属 Podocerus の1新種を記載。愛媛県立西条農業高校3年生の男子生徒が筆頭著者になっていますが、形態のみならず分子解析の要素を加えるなど、近年の新種記載の中でも優れたものです。高校生がここまでできるというのは衝撃的です。岡山のサイトについては私がサンプル提供させていただきましたが、マテメソに「polyvinyl alcohol」とあるのは正しくはプロピレングリコールです。本文まで無料で読めます。
Ortiz and Winfield (2022)
Vemana touzeti
メキシコ湾の深海域から Vemana属の1新種を記載。ダイダラボッチと同じ上科に含まれるフトヒゲソコエビ類です。本属の5種の検索表を提供。本文は有料。
Raut, Prakash, Arjunan and Kumar (2022)
Protohyale covelongensis
インドから サキモクズ属 Protohyale の1新種を記載。形態とMt DNA COI領域の解析による検討を実施し、重要種についてはマトリクス形態比較表と系統樹を掲載しています。本文は有料。
Souza-Filho and Andrade (2022)
Pleonexes lowryi
ブラジルからカワリヒゲナガヨコエビ属 Pleonexes の1新種を記載。
カワリヒゲナガヨコエビ属は過去にヒゲナガヨコエビ属 Ampithoe のシノニムとして抹消されたことがあり、Peat and Ahyong (2016) が復活させた経緯があります。しかしながら、Peat and Ahyong (2016) にはいくつもの問題があり、この体制を継承した論文群について妥当性に議論の余地がありました。今回 Souza-Filho and Andrade (2022) はコウライヒゲナガを元のヒゲナガヨコエビ属に戻すなど、この問題を6年越しに是正してくれました。ありがたや。本文は有料。
Zettler, Hendrycks and Freiwald (2022)
Dautzenbergia concavipalma
アンゴラからアゴナガヨコエビ科 Pontogeneiidae の1新種を記載。本文は有料。
Marin, Turbanov, Prokopov and Palatov (2022)
Niphargus tarkhankuticus
クリミア半島の地下水から Niphargus属 の1新種を記載。大変珍しい手法が用いられ、解剖済付属肢の透過光写真と線画を巧みに組み合わせて形態を示しています。本文はタダで読めます。
DECEMBER
Coleman, Krapp-Schickel and Häussermann (2022)
Liouvillea rocagloria
57ページに及ぶモノグラフの中で、チリからアゴナガヨコエビ科 Pontogeneiidae の1新種を記載。この属はこれまで南極大陸から1種のみが知られていました。同じ地域で見つかった9種の端脚類も報告しており、一部の種には線画と生態写真を掲載しています。EJTなので無料で読めます。
Pereira, Andrade and Senna (2022)
Elasmopus helenae
ブラジルからイソヨコエビ属 Elasmopus の1新種を記載。第5~7胸脚基節後縁の形態的特徴から castelloserrate group に属する種とのことです。Invertebrate Zoology はあまりなじみのないジャーナルですが、本文は無料で読めるようです。
White and Thomas (2022)
Leucothoe panjang
Leucothoe wheromura
ニュージーランドおよび北インドネシアから固有の Leucothoe マルハサミヨコエビ属の2新種を記載。本文は有料。
というわけで、今年は 8789 種が記載されたようです。当方の積み新種については論文の構成が当初とだいぶ変わりそうですが、来年辺りには1本くらいお届けできる予定です。
(特記事項)
- Waller et al. (2022) はヒアレラ属に「new provisional species」を提案しているが、記載行為は行っていない模様
- Penoni et al. (2022) はタイトルからしてブラジルからヒアレラ属の1新種を記載している雰囲気の講演要旨だが、どういった形態での公表なのか、記載の要件を満たすものなのかは不明(もしオンライン集会要旨で記載したとか言い出したらケジメ案件です)
- White and Thomas (2022) を追加 (15-I-2023)。
<2022年新種ヨコエビ記載論文>
— Ariyama H.; Kawabe K. 2022. Two new Species of Aoridae from Chichijima Island, the Ogasawara Islands in Japan (Crustacea: Amphipoda). Species Diversity, 27(1):113–128.
— Jażdżewska, A. M.; Brandt, A.; Martínez Arbizu, P.; Vink, A. 2022. Exploring the diversity of the deep sea - four new species of the amphipod genus Oedicerina described using morphological and molecular methods. Zoological Journal of the Linnean Society, zlab03, 294:181–225.
— Labay, V. S. 2022a. Review of amphipods of the family Pleustidae Buchholz, 1874 (Amphipoda) from the coastal waters of Sakhalin Island (Far East of Russia). II. Subfamily Eosymtinae Bousfield & Hendrycks, 1994. Zootaxa.
— Marin, I. N.; Sinelnikov, S. Y.; Antokhina, T. I. 2022. The first Arctic conspicuously coloured Pleusymtes (Crustacea: Amphipoda: Pleustidae) associated with sea anemones in the Barents Sea. European Journal of Taxonomy, 819: 166–187.
— Momtazi, F. 2022. Ampithoidae (Crustacea: Amphipoda) from the Persian Gulf and the Gulf of Oman. Zootaxa, 5159(3): 367-382.
— Paz-Ríos, C. E.; Pech, D. 2022. Two
new genera (Paraeperopeus and Dentimelita) and four new deep-sea
amphipod crustacean species of little-known genera (Neohela,
Pardaliscella, Pardaliscoides and Tosilus) from the Perdido Fold Belt,
Gulf of Mexico. Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom, 1–26.
— Rangel,
C.; Da Silva, A. L. L.; Siegloch, A. E.; Limberger, M.; Da Silva
Castiglioni, D. 2022. First island species of Hyalella (Amphipoda,
Hyalellidae) from
Florianópolis, state of Santa Catarina, Southern Brazil. Zootaxa, 5116(1): 40–60.
— Raut, S.; Prakash, S.; Arjunan, V.; Kumar, A. 2022. A new species of the genus Protohyale Bousfield & Hendrycks, 2002 (Crustacea, Amphipoda, Hyalidae) from Covelong, Chennai, India. Zootaxa, 5205(6): 563-574.
— Sir, S.; White, K. N. 2022. Maerid amphipods (Crustacea: Amphipoda) from Okinawa, Japan with description of a new species. Zootaxa, 5093(5): 569–583.
— Souza-Filho, J. F.; Andrade; L. F. 2022. A new species of Pleonexes Spence Bate, 1857 (Amphipoda: Senticaudata: Ampithoidae) from the São Pedro and São Paulo Archipelago, Equatorial Atlantic, Brazil, with comments on the genus. Zootaxa, 5209(2): 199-210.
— Tomikawa K.; Sasaki T.; Aoyagi M.; Nakano T. 2022. Taxonomy
and phylogeny of the genus Melita (Crustacea: Amphipoda: Melitidae)
from the West Pacific Islands, with descriptions of four new species. Zoologischer Anzeiger,
296: 141–160.
— Tomikawa K.; Watanabe Kayama, H.; Tanaka, K.; Ohara, Y. 2022. Discovery of a new species of Paronesimoides (Crustacea: Amphipoda: Tryphosidae) from a cold seep of Mariana Trench. Journal of Natural History, 56(5–8): 463–474.
<その他>
— Bousfield, E.L.; Chevrier, A. 1996. The amphipod family Oedicerotidae on the Pacific Coast of North America. 1. The Monoculodes & Synchelpdium generic complexes: Systematics and distributional ecology. Amphipacifica, 2(2): 75–148.
— Penoni, L. R. et al. 2022. A new species of Hyalella Smith, 1874 (Amphipoda: Hyalellidae) from Estadual Turístico do alto Ribeira – Petar/São Paulo, Brazil. In: Annals of XI Brazilian Congress on Crustaceans / The Crustacean Society - Summer Meeting Brazil. Anais. Santos (SP) Online Event, 2022.
— 濵邉昂平 2017. 小笠原諸島父島におけるヨコエビ類について. 首都大学東京 小笠原研究年報, 40: 59–72.
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