広島大学でヨコエビの展示があるとの情報を掴み、日帰りで突撃してみました。
広島大学です。 |
その道では知らぬ者のいないヨコエビのメッカで、毎年何本も記載論文が出ています。
広島大学中央図書館です。 |
地域・国際交流プラザです。 |
この「ヨコエビの系統分類学的研究とその成果の書籍化」は、去年出版された『ヨコエビはなぜ横になるのか』に関連する展示で、著者の富川先生が担当されているそうです。
基本的には、書籍やネット記事や一般向け講演の内容がコンパクトにまとめられ、ポスター化されていますが、「書籍化による研究内容の周知の意義」といった新しい切り口です。
学生さん手作りと思われる世界地図にヨコエビの写真が貼り付けられているのはなかなかかわいかったです。
標本はジンベエドロノミPodocerus jinbe,オオエゾヨコエビJesogammarus jesoensis,アケボノツノアゲソコエビAnonyx eous,ヒゲナガハマトビムシTrinorchestia trinitatis,ヒロメオキソコエビEurythenes aequilatusの5種で、うち2種が富川先生が関わって記載されたものになります(Narahara-Nakano, Nakano, & Tomikawa, 2017; Tomikawa, Yanagisawa, Higashiji, Yano, & Vader 2019)。ヒロメオキソコエビのインパクトは抜群。
ヒゲナガハマトビムシは…よくわかりませんでした。 trinitatis/longiramus問題についてはこちら。 |
また、シツコヨコエビJesogammarus acalceolus,Paronesimoides calceolus,アカツカメクラヨコエビPseudocrangonyx akatsukaiの直筆原画と原記載論文(Tomikawa & Nakano 2018; Tomikawa & Kimura 2021; Tomikawa, Watanabe Kayama, Tanaka, & Ohara 2022)、そして”例のパンダメリタ”の直筆原画の展示。ほとんどホワイトを入れず一気に全身図を描ききる技が工芸品や絵画の職人そのものです。
「原画展」というとマンガでは一般的でしょうか。一方、分類に携わる人間として、記載論文に使われたスケッチの実物を見られるというのは、その実物の貴重さのみならず、テクニックの一端を見られるという実利があります。私は記憶の限り一発で線画の墨入れをできたためしがないのですが、手直しするには余計な時間がかかるので、一発で仕上げるというのは芸術的なスキルだけでなく、効率的な記載図の生産という部分を考えずにはいられませんでした。
展示は1月いっぱいまでとのこと。無料で誰でも見れます。
<参考文献>
— 富川光 2023. 『ヨコエビはなぜ「横」になるのか』. 広島大学出版会, 東広島. 198pp. ISBN:978-4-903068-59-6
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