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2025年12月27日土曜日

2025年新種ヨコエビを振り返って

 

 今年もヨコエビの新種です。メリタヨコエビ科に新属が建っていますが、本稿では新種記載を含む論文のみ扱います。また、日本近海からワレカラの新種が記載されていることは把握していますが、本稿ではヨコエビのみとりあげます。

※2017年実績
※2018年実績 
※2019年実績
※2020年実績
※2021年実績
※2022年実績
※2023年実績
※2024年実績

 学名に付随する記載者については、基本的に論文中で明言のある場合につけています。

 

New Species of
Gammaridean Amphipods
Described in 2025

(Temporary list)


JANUARY 

Kim & Kim (2024)

Calliopius ulleungensis

 韓国からウラシマヨコエビ科 Calliopiidae ウラシマヨコエビ属の1新種を記載。この科は韓国初記録とのことです。西太平洋産のウラシマヨコエビ属10種の検索表を提供。本文まで無料で読めます。



Thacker, Myers, & Trivedi (2025a)

Audulla sindhu

 インド・グジャラート州からクダオソコエビ科 Photidae の1新種を記載。Latigammaropsis photisimilis の報告も行っています。本文は有料。



Tokumori, Watanabe Kayama, Tanaka, Ohara, & Tomikawa (2025)

Seba marianaensis 

 マリアナ海溝の水深 5,689–5,683 m域からセバヨコエビ科 Sebidae の1新種を記載。日本動物分類学会第59回大会でポスター発表があったものです。本文は有料。



Penoni, Bichuette, Borges, & Bueno (2025a)

Hyalella ceciliae 

Hyalella roncador 

 ブラジル南部からヒアレラ属の2種を記載。本文は有料ですが、アブストにそこそこ詳しい形態の記述があります。



Penoni, Bichuette, Borges, & Bueno, (2025b)

Hyalella sumida Penoni and Bueno

 ブラジルからヒアレラ属の1新種を記載。種小名はタイプ産地にちなみます。形態と核 DNA 16S 領域を見ています。本文は有料ですが、アブストにそこそこ詳しい形態の記述があります。




FEBRUARY

Cannizzaro, Lange, & Berg (2025a)

Hyalella tiburtiniphila 

 ネヴァダの温泉からヒアレラ属の1新種が記載されたようです。ヒアレラ・ヤシュマラみたいな特殊な種が他にもいたとは驚きです。本文は有料。




MARCH

Gouillieux & Hughes (2025) 

Pwaxumak keysersozei

 ニューカレドニアからクチバシソコエビ科 Oedicerotidae の新属新種を記載。本科に新属が建てられるのは13年ぶりです。本文は有料。



Kodama, Mukaida, Hosoki, & Jimi (2025)

トゲナガガイコツヨコエビ Lepechinella macrospinosa 

 屋久島沖の水深1,178mからガイコツヨコエビ科 Lepechinellidae の1新種を記載。ミトコンドリアCOI領域の解析を行っています。本文は有料ですが、アブストに詳細な形態情報があります。



Limberger, Castiglioni, & Santos (2025)

Hyalella terrasolis

 ブラジルのリオグランデ・ド・スル州の湿地帯からヒアレラ属の1新種を記載。これでブラジル産ヒアレラ属は43種になったとのこと。本文は有料ですが、アブストにわりと詳細な形態の記述があります。



Ortiz, Capetillo, & Lopeztegui (2025)

Batea floreshiguerai 

 バハ・カリフォルニアから、狭義のテンロウ上科に含まれる Bateidae科 Batea属 の1新種を記載。15種の過去の研究状況のマトリクスと、14種の検索表を提供。本文は有料。



APRIL

Marinho & Souza-Filho (2025)

Ampelisca milenae

 ブラジルからスガメソコエビ属の1新種を記載。本文は有料ですがアブストにわりと詳しい形態の記述があります。



Labay (2025a)

Dactylopleustes awatschensis 

Dactylopleustes longoantennis 

Dactylopleustes okhotensis 

Dactylopleustes ornatus 

Dactylopleustes tzvetkovae 

 樺太からテングノウニヤドリの5新種を記載。本文は有料です。



Wang & Sha (2025)

Metopa propoda 

 西太平洋の海山から Metopa属 の1新種を記載。太平洋産 Metopa属 19種の二又式検索表を提供。なんかこの属は多系統になりそうな系統樹が掲載されています。本文は無料で読めます。



Deotti, Penoni,Bichuette, & Bueno (2025)

Hyalella bocaina Deotti, Penoni and Bueno, 2025

Hyalella temimina Penoni, Deotti and Bueno, 2025

 ブラジルの洞窟からヒアレラ属の2新種を記載。形態のみを見ています。ブラジル産44種のヒアレラ属の形態マトリクスを提供。本文は無料で読めます。




MAY

Suklom, Keetapithchayakul, Rahim, and Wongkamhaeng (2025)

Floresorchestia trisetosa 

Platorchestia aquaticus 

 タイからハマトビムシ上科の2新種を記載。東南アジア周辺のFloresorchestia属16種の二又式検索表と、新種と近縁のPlatorchestia属13種のマトリクス検索表を提供しています。本文は無料。



Sir & White (2025)

Konatopus tridens 

Photis butalus 

Photis bulla 

Photis probolion

Podocerus offucia 

 パナマから15既知種と5新種を含む、5科12属のヨコエビ・ワレカラを報告。標本でも全身像の写真があるのはいいですね。掲載種全種の二又式検索表を提供。本文は無料。



CopilaŞ-Ciocianu, Marin, & Palatov (2025)

Litorogammarus glareophilus Marin, Palatov, CopilaŞ-Ciocianu, 2025

Litorogammarus samuricus Palatov, CopilaŞ-Ciocianu, Marin, 2025

 ポントカスピ海からヨコエビ上科の2新種を記載。付属肢の描画が特徴的で、白黒の透過光写真のコントラストをいじりながら適宜フォトショで線を書き加えているようです。同定などの形態分類用途で参照するにあたってテクスチャは正直いらないなと思いますが、再現可能性が皆無な線画と比較して、生成効率・見やすさ・科学的オーソリティの全てに配慮された、現状最も優れた手法だと思います。また、全身写真が添えてあります。Litorogammarus属5種の検索表を提供。本文は有料。



Springthorpe & Hughes (2025) 

Alexandrella wimdecocki

 オーストラリアの深海無光帯からStilipedidae科の1新種を含む4科のヨコエビを報告。Amathillopsis australisは記載以来の報告、ネコゼヨコエビ類はこれで豪州沿岸産種が倍増、Octomana hadromischaは新産地とのことです。本文は有料。



Myers, Ball, & Shepherd (2025)

Manawataawhiorchestia uruone 

 ニュージーランドからハマトビムシ上科の新属新種を記載したとのこと。属名が長すぎて実用性が終わっています。ディボフスキ―現象かもしれません。本文は有料。




JUNE

Marin & Palatov (2025b)

Niphargus circassianus Marin et Palatov, 2025

 ロシア連邦アディゲ共和国からニファルグス属の1新種を記載。透過光写真に線を書き入れるという、Copilaș-Ciocianu, Marin, & Palatov (2025) と同じ描画方法が用いられています。また、Marin & Palatov (2023, 2024) で記載された7種について、オンライン公開限定の学術誌において ZooBank 番号の取得を求める国際動物命名規約に準拠するために改めて ZooBank 番号と紐づけています。これは ZooBank 付与がないことが分かった時点で無効な学名になったという案件に思えるのですが、どうなんでしょう。本文は無料で読めます。



Wainwright, Weston, Bond, & Jamieson (2025) 

Eurythenes inti 

 ペルー・チリ海溝からオオソコエビ属の1新種を記載。本文は有料。



Hendrycks & Thurston (2025) 

Vemana cuspidata 

Vemana hortonae

 大西洋熱帯域の深海帯からフトヒゲソコエビ類 Vemana属 の2新種を記載。V. hortonae は深海性ヨコエビの大家であるタミー・ホートン氏に献名されています。本文は有料。



Yoshimura & Tomikawa (2025)

オセロイソヨコエビ Elasmopus projectus 

 日本沿岸から本邦4種目となるイソヨコエビ属を記載。恐らく本州の普通種と思われます。ヨコエビおじさんも採集に協力しています。本文は有料ですが、アブストにそこそこ詳しい形態の記述があります。




JULY

Yamamoto, Kodama, & Kojima (2025)

シトツヨコエビ Sicafodia pentagonum 

 深海性の珍ヨコエビとそれに寄生する珍コペを新種記載。刺突に適した口器の形状からSicafodiidaeにシトツヨコエビ科との和名を提唱。寄生性コペ Rhizorhina sicafodiae には、ヨコエビノニギリメシという漢らしくもありかわいらしくもある和名が提唱されています。本文まで無料で読めます。



Guedes-Silva, Souza-Filho, & Tavares (2025)

Bemlos myersi 

Globosolembos trindadensis 

Lembos quadrispinosus 

Latigammaropsis oliveirai 

Latigammaropsis savioi

 ブラジルからユンボソコエビ科の3新種とクダオソコエビ科の2新種を記載。本文は有料。



Labay (2025b)

Gurjanovometopa onenusica

 樺太からタテソコエビ科の新属新種を記載。属名は著名なソ連の端脚類研究者であるグリャノワにちなんでいます。全世界48属中32属の検索表を掲載。本文は有料ですが、アブストにわりと詳細な形態の記述があります。



Varela & Ortiz (2025)

Rhachotropis winfieldi

 カリブからリュウグウヨコエビ属の1新種を記載。著名なヨコエビ研究者である、メキシコ国立自治大学のイグナシオ・ウィンフィールド氏に献名されています。大西洋熱帯域に産するリュウグウヨコエビ属4種の検索表を提供。本文は無料で読めますが、アブスト以外スペイン語というのは今どき記載論文としてどうなんでしょうか。



Varela (2025)

Tepidopleustes vivianae

 メキシコからテングヨコエビ科の1新種を記載。本文は無料で読めますが、これも相変わらずスペイン語です。



AUGUST

Elassad, Messouli, Boulal, Boudellah, & Ghamizi (2024)

Metacrangonyx boutini 

 モロッコからハッジヨコエビ上科 Metacrangonyctidae科 の1新種が記載されたようです。この科はモロッコに固有種をもつなど、この地で多様化が進んでいるグループのようです。本文は有料ですがアブストに詳細な形態の記述があります。



Weber, Brad, & Weigand (2025)

Niphargus luxemburgensis Weber, Weigand & Brad, 2025

Niphargus palatinensis Weber & Brad, 2025

Niphargus normandiensis Weber & Brad, 2025

Niphargus wasgauensis Weber & Brad, 2025

Niphargus saraviensis Weber & Brad, 2025

Niphargus lotharingiensis Weber & Brad, 2025

 Niphargus aquilex 種群に含まれるニファルグス属の6新種を欧州から記載。形態と分子の両方をみていますが、腹肢結合棘の本数が属内でこれだけ幅広いのは驚きです。使用プライマーや28S rDNAの全配列が付属資料としてまとめられている、なかなかヴォリュームのある論文です。EJTなので本文は無料で読めます。



Lörz & Tandberg (2025)

Neopleustes schwentneri 

Stenopleustes jeskulkeae 

 テングヨコエビ科2属の2新種を記載。4属にまたがって4既知種も報告。SEM観察 ならではと思える Neopleustes 属 尾節板の‘swan-neck’ setae が気になりますね。EJTなので無料で読めます。



SEPTEMBER

Ball, Myers, & Shepherd (2025)

Koekotroides moowhitihauuru 

Koekotroides taapinea 

Koekotroides tewhaarua 

Koekotroides maene 

Koekotroides pekehau 

Koekotroides ngaokiroa 

 ニュージーランドからハマトビムシ上科の1新属6新種を記載。6種のうち5種についてミトコンドリア遺伝子16S領域を解析。アラン・マイヤース氏が絡んだハマトビムシ論文で分子系統解析が行われた例は極めて少ないと思います。本文は有料。



Cardoso, Oliveira, & Ferreira (2025)

Hyalella amazonica

Hyalella karaja

Hyalella nebula

Hyalella uva

 ブラジルの洞窟からヒアレラ属の4新種を記載。アマゾンにおいて本属の初めての発見とのことです。暗居性への適応として、身体に色素や伸長部を欠くことが指摘されています。本文は有料。



Choi, Kim, & Kim (2025)

Dulichiella tridentata 

 韓国からウチデノコヅチ属の1新種を記載。形態的に類似した広義のホソウチデノコヅチ Dulichiella appendiculata との比較検討がなされています。本文は有料ですが、アブストに詳細な形態の解説があります。



Hanaoka, Goto, Nakajima, & Kodama (2025)

ユキミノノマルハサミヨコエビ Leucothoe limidicola 

 菅島からウスユキミノ Limaria hirasei 付着性のマルハサミヨコエビ属の1新種が記載されました。本文は有料。京大のプレリリはこちら



Ariyama, Kohtsuka, Hoshino, Kodama, Moritaki, & Chen (2025)

カドウデナガヨコエビ Lobatoradarea angulata 

アンコウデナガヨコエビ Lobatoradarea anko  

ベニウデナガヨコエビ Lobatoradarea coccina 

トゲナシウデナガヨコエビ Lobatoradarea inermis 

カゴシマウデナガヨコエビ Lobatoradarea kagoshimensis 

チンボクウデナガヨコエビ Lobatoradarea lignorum 

キシウデナガヨコエビ Lobatoradarea littoralis 

ナナメウデナガヨコエビ Lobatoradarea obliquua 

トゲナシウデナガヨコエビモドキ Lobatoradarea subinermis 

ネッスイウデナガヨコエビ Lobatoradarea thermicola 

 ウラシマヨコエビ科に新属Lobatoradareaを建てつつ、10新種を記載した驚異の大ヴォリューム記載論文が出版されました。本文は有料。タイプ標本の様子はこんな感じらしいです。

 このうちチンボクウデナガヨコエビについて謎のバズりが発生してしまいました。その節は申し訳ありません。



Karaman (2025)

Niphargus bencaensis

 アルバニアからニファルグス属の1新種を記載。御年87歳の大御所研究者、ゴードン・スタンコ・カラマン氏による仕事です。本文は無料で読めます。なおニファルグス属の記載者は Schiődte と表記されていますが、Schiödteとするのが正しいと思われます。




OCTOBER

Di Rossi & Arcángel (2025)

Maera epuwingkul 

 アルゼンチンからホンスンナリヨコエビ属の1新種を記載。当地での移入種であるワカメに付着していたとのこと。本文は有料ですが、アブストにそこそこ詳しい形態の記述があります。



Momtazi, Myers, Knorrn, Moctar, Freiwald, & Sonnewald (2025)

Orchestia mauritanica

 モーリタニアからOrchestia属ハマトビムシ類の1新種を記載。本属の全種検索表を掲載しているようです。本文は有料。



SOSA, Andrade, Boyko, Brandt, Buge, Jiménez, Henseler, Alcántara, Jóźwiak, Knauber, Machado, Martínez-Muñoz, Momtazi, Nakadera, Qiu, Riehl, Rouse, Sigwart, Sirenko, Souza-Filho, Steger, Stępień, Tilic,  Trautwein,  Vončina, Williams, & Zhang (2025)

Apotectonia senckenbergae Momtazi & Riehl, 

Metharpinia hirsuta Souza-Filho & Andrade

 太平洋の熱水噴出孔およびブラジル沖の大西洋から、2新種のヨコエビを記載。ファンドのプロジェクトで大量に記載された無脊椎動物の中の一部ということのようです。本文は無料で読めます。



Queiroz, Senna, & Silva (2025)

Maera guaiao

 ブラジルからホンスンナリヨコエビ属の1新種を記載。他にノコギリヨコエビ属の未確認種 Ceradocus (Denticeradocus) sp. とウチデノコヅチ属の既知種 Dulichiella  anisochir も報告。剛毛のバリエーションを記述したユニークな論文です。本文は有料。




NOVEMBER

Tomikawa, Yamato, & Ariyama (2025)

ヨリパンダメリタヨコエビ Melita pandina

 メリタヨコエビ属から1新種を記載。分類学に限定せず動物学という括りで発表したい、という意向でズーサイに掲載されたとのことです。パンダメリタヨコエビ M. panda「より」もジャイアントパンダAiluropoda melanoleuca に似ていることからつけられた和名が、学界内外で大きな話題となりました。パンダメリタヨコエビとは系統的に離れている点も生物学的な示唆深さをもっています。

 この和名はパンダ愛好家のエッセイスト・藤岡みなみ氏が考案したもので、記載論文の筆頭著者である富川先生と藤岡氏とのトークイベントが開催されるなど、文化的側面からのアプローチが目立ちました。他には「パンダパンダメリタヨコエビ」「メリヒン」といった候補もあったようですが、斬新さとさりげなさが同居した「ヨリパンダメリタヨコエビ」には光るものがあります。そして種小名も和名に寄せてつけられたとのことです。なお、パラタイプに「時空の切れ目で採取されたサンプル」が含まれており、これは永遠の謎となりそうです。



Thacker, Patro, Bhoi, Myers, Kumar, & Trivedi (2025)

Grandidierella khambhatensis

Grandidierella geetanjalae 

 インドからドロソコエビ属の新種が記載されたようです。インドの底力みたいな豪華な著者勢にビビります。これで世界のドロソコエビ属のメンバーは56種、うちインドに分布する種は11種になったとのこと。本文は有料。



Thacker, Myers, & Trivedi (2025b)

Melita ajmali 

 インド・クジャラート州からメリタヨコエビ属の1新種を記載。本文は有料。



Lee, Kim, & Kim (2025)

Maxillipius koreanus

 韓国からアシマワシヨコエビ属の1新種を記載。同国初のアシマワシヨコエビ科の記録となるようです。形態に加えてミトコンドリアCOI領域を見ています。本文は有料ですが、アブストにわりと詳しい形態の記述があります。



Piscart, Mabrouki, & Taybi (2025)

Gammarus latispinus 

Gammarus tazekkaensis 

 モロッコからヨコエビ属の2新種を記載。形態に加えて、COI領域と28S領域を見ています。EJTなので無料で読めます。



Boonyanusith, Putchakarn, & Wongkamhaeng (2025) 

Quadrimaera sirindhornae

 タイからカクスンナリヨコエビ属の1新種を記載。形態のみを見ています。東南アジア産カクスンナリヨコエビ属7種の二又式検索表を提供。本文は無料で読めます。



Cannizzaro, Lange, & Berg (2025b)

Hyalella plutonia Cannizzaro, Lange & Berg, 2025

Hyalella keepuikantun Cannizzaro, Lange & Berg, 2025

 ネヴァダ州モハヴェ砂漠からヒアレラ属の新種を記載。Hyalella cretae 種群について整理を行っています。本文まで無料で読めます。




DECEMBER

Isa-Miranda, Peralta, González, & Nieto (2025)

Hyalella inca 

Hyalella oscari 

 アルゼンチンからヒアレラ属の2新種を記載。ヒアレラ属の系統樹の中で、Chiltoniidae科がヒアレラ属に内包される可能性が示されています。本文は無料で読めます。



Marin & Palatov (2025b)

Synurella psezuapsi Palatov et Marin, 2025

Synurella teshebi Marin et Palatov, 2025

 ロシアからマミズヨコエビ科の2新種を記載。形態に加えてミトコンドリア遺伝子COI領域も見ています。本文は無料で読めます。



Myers, Park, & Ball (2025)

Lowryorchestia riparicola

 インド洋・東南アジア・オセアニア・亜南極にかけて分布するハマトビムシ上科のProtorchestiidae科に、2新亜科(Protorchestiinae,Microrchestiinae),3新属LowryorchestiaRichardsonorchestiaSerejorchestiaを設立。他属も含めて本科の整理を試みており、7属の検索表を提供しています。本文は有料。



Yoshimura, Lee, & Tomikawa (2025)

セワタイソヨコエビ Elasmopus lumbiniger 

 本州各地からイソヨコエビ属 Elasmopus の1新種を記載するとともに、コウライイソヨコエビ E. koreana の和名提唱と本邦からの初記録を行っています。E. mukuinu にはムクイヌイソヨコエビとの極めて妥当な和名を提唱。日本のイソヨコエビ属相のかなりの部分をカバーできる画期的な報文が無料で読めるのはありがたいです。



Tokumori, Kakui, & Tomikawa (2025)

ナンゴクキクイモドキ Tropichelura barasu

 キクイモドキ科から本邦初記録属かつ新種の報告です。この科において最後に有効な学名が記載されたのは半世紀前なので、相当な快挙です。本文は有料。



Dugger & White (2025)

Apolochus dragensis 

 カリブ海からチビヨコエビ科の1新種を記載。「竜の口」という意味をもつタイプ産地の地名が種小名の由来になっているとのこと。本文は無料で読めます。



Lörz, Peart, & Freiwald (2025)

Paracanthonotozomella steffi 

 ニュージーランドからカッチュウヨコエビ上科 Acanthonotozomellidae科 の新属新種を記載したとのこと。この異常に長ったらしい名前の科は太平洋から初記録だそうです。本文は有料。



Labay (2025c)

Desdimelita awatschensis 

 カムチャツカ半島からメリタヨコエビ科の1新種を記載。本文は有料ですが、アブストにそこそこ細かい記述があります。



Baytaşoğlu, Özbek, & Aksu (2025)

Gammarus arasensis 

 トルコからヨコエビ属の1新種を記載。形態と分子を見ているようです。本文は有料。アブストに詳しい形態情報があります。



 ということで、今年は 98 99 101 種 が記載されたようです。



<参考文献>


Ball, O. J.-P.; Myers, A. A.; Shepherd, L. D. 2025. A new genus and six new species of endemic landhopper in the family Arcitalitridae (Amphipoda: Talitroidea) from New Zealand. Zootaxa, 5691 (2), 277–311. 

— Baytaşoğlu, H.; Özbek, M.; Aksu, I. 2025. Morpho-molecular studies suggest a new species from a transboundary river of Turkiye: Gammarus arasensis sp. nov. (Amphipoda: Gammaridae). Zootaxa, 5737 (2), 235–253. 

Boonyanusith, C.; Putchakarn, S.; Wongkamhaeng, K. 2025. A New Species of Quadrimaera (Amphipoda: Maeridae) from Coral Reefs of Chon Buri Province, Thailand. Tropical Natural History, 25 (8): 472–480. 

Cannizzaro, A. G.; Lange, C. J.; Berg, D. J. 2025a. A new species of Hyalella Smith, 1874 (Amphipoda: Hyalellidae) from a unique thermal-spring habitat. Journal of Crustacean Biology, 45 (1): ruaf004. 

— Cannizzaro, A. G.; Lange, C. J.; Berg, D. J. 2025b. Gateways to the underworld: molecular phylogenetic analyses identify patterns of groundwater fauna and two new species of hypogean Hyalella Smith, 1874 (Amphipoda, Hyalellidae) from the northern Mojave Desert. Subterranean Biology, 54: 35-68. 

Cardoso, G. M.; Oliveira, M. P. A. D.; Ferreira, R. L. 2025. Widespread yet hidden in darkness: new troglobitic Hyalella species from Brazilian caves (Amphipoda: Hyalellidae). Zootaxa, 5692 (3): 519–540. 

— Choi, J.-H.; Kim, K.-W.; Kim, Y.-H. 2025. A new species of the genus Dulichiella (Crustacea, Amphipoda, Melitidae) from the continental shelf of the Southern Sea, Korea, with comparison to the previously recorded D. appendiculata. Zootaxa, 5696 (1): 102–112. 

CopilaŞ-Ciocianu, D.; Marin, I.; Palatov, D. 2025. Evolution and biogeography of Litorogammarus Marin, Palatov & Copilaș-Ciocianu, 2023 (Amphipoda: Gammaridae) with description of two new Caspian endemic species. Systematics and Biodiversity, 23, 1, 2454025.  

Deotti, C. M.; Penoni, L. R.; Bichuette, M. E.; Bueno, A. A. de P. 2025. Expanding the knowledge of Hyalella Smith, 1874 (Amphipoda: Hyalellidae) for southeast Brazil: two new troglophilic species from caves of the Atlantic Rainforest.  Nauplius, 33: e20250478. 

Di Rossi, C.; Arcángel, A. E.  2025. Maera epuwingkul (Amphipoda, Maeridae): a new species of amphipod from the coast of San Matías Gulf, Argentina. Crustaceana, 98, 9-10: 825–840.  

Dugger, A. R.; White, K. N. 2025. Caribbean Amphipoda (Crustacea) of Panama. Part V: parvorder Amphilochidira. ZooKeys, 1259: 57–102. 

Elassad, N.; Messouli, M.; Boulal, M.; Boudellah, A.; Ghamizi, M. 2024. A new species of the genus Metacrangonyx (Crustacea: Amphipoda) from the ground waters of Morocco, with comparisons to all other species in the genus. Zootaxa, 5683 (4): 513–529.

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— Hendrycks, E. A.; Thurston, M. H. 2025. Two new species of Vemana Barnard, 1964 (Crustacea, Amphipoda, Vemanidae) from abyssal depths in the eastern tropical Atlantic Ocean. Zootaxa, 5653 (1): 97–115. 

Isa-Miranda, Á. V.; Peralta, M. A.; González, J. C.; Nieto, C. 2025. Two new Hyalella (Amphipoda: Hyalellidae) from the Puna and High An-dean ecoregions of South America. Arthropoda Selecta, 34 (1): 17–40. 

Karaman, G. 2025. Further study of the subterranean genus Niphargus (Schiődte, 1949) (Fam. Nipharidae) in Albania (Contribution to the Knowledge of the Amphipoda 342) . Agriculture and Forestry, 71 (3): 25-45.

— Kim K.-W.; Kim Y.-H. 2025. First record of the family Calliopiidae (Crustacea, Malacostraca, Amphipoda) from Korean waters, with description of new species Calliopius ulleungensis sp. nov. ZooKeys, 1221: 297–307. 

Kodama M.; Mukaida Y.; Hosoki T. K.; Jimi N. 2025. A new species of the genus Lepechinella Stebbing, 1908 (Crustacea: Amphipoda: Lepechinellidae) from Japan. Zootaxa, 68: 127–142. 

Labay, V. S. 2025a. Review of amphipods of the family Pleustidae Buchholz, 1874 (Amphipoda) from the coastal waters of Sakhalin Island and Kamchatka Peninsula (Far East of Russia). IV. Subfamily Dactylopleustinae Bousfield and Hendrycks, 1994. Zootaxa, 5627 (2): 201–253. 

Labay, V. S. 2025b. Gurjanovometopa onenusica gen. nov., sp. nov. (Crustacea: Amphipoda: Stenothoidae) from the Russian coasts of the Sea of Japan. Zootaxa, 5661 (3): 407–419.

Labay, V. S. 2025c. Desdimelita awatschensis a new species of Melitidae Bousfield, 1973 (Crustacea: Amphipoda: Hadziida) from southeastern Kamchatka (Avacha Bay Pacific Ocean). Zootaxa, 5729 (4): 549–565. 

Lee J.-H.; Kim K.-W.; Kim Y.-H. 2025. First record of the family Maxillipiidae (Crustacea: Malacostraca: Amphipoda) from Korea, including a new species and a new record species of the genus Maxillipius. Zootaxa, 5717 (2): 277–290. 

Limberger, M.; Castiglioni, D. D. S.; Santos, S. 2025. Hyalella terrasolis, a new epigean species of freshwater amphipod (Crustacea, Peracarida, Hyalellidae) from southern Brazil. Zootaxa, 5609 (1): 97–115.

Lörz, A.-N.; Peart, R. A.; Freiwald, A. 2025. Cold-water coral associated Acanthonotozomellidae (Crustacea, Amphipoda) off Aotearoa New Zealand, with description of a new genus and species. Zootaxa, 5729 (4): 535–548. 

— Lörz, A.-N.; Tandberg, A. H. S. 2025. North Atlantic Pleustidae (Crustacea, Amphipoda) with a focus on cold-water coral associations. European Journal of Taxonomy, 1009 (1): 1-50. 

Marin I.N.; Palatov D.M. 2025a. Stygobiotic species of the genus Niphargus Schiödte, 1849 (Amphipoda: Niphargidae) from the Republic of Adygea, with a review and validation of the species from the northern slope of the Great Caucasian Ridge. Arthropoda Selecta, 34 (2): 241–257.

Marin, I. N.; Palatov, D. M. 2025b. Two new hyporhean species of the genus Synurella Wrześniowski, 1877 (Amphipoda: Crangonyctidae) from the Russian southern Caucasus. Arthropoda Selecta, 34 (4): 577–588. 

— Marinho, R.; Souza-Filho, J. F. 2025. A new species of Ampelisca Krøyer, 1842 (Amphipoda, Ampeliscidae) from Potiguar Basin, Brazil. Zootaxa, 5618 (1): 119–128. 

Momtazi, F.; Myers, A. A.; Knorrn, A. H.; Moctar, S. M. M.; Freiwald, A.; Sonnewald, M. 2025. Orchestia mauritanica sp. nov. (Amphipoda: Talitridae), a new sand hopper from Mauritania with a Comprehensive Key to the World Species of Orchestia. Zootaxa, 5701 (5): 563–572. 

Myers, A. A.; Ball, O. J.-P. ; Shepherd, L. D. 2025. A new landhopper, Manawataawhiorchestia uruone gen. nov., sp. nov. (Amphipoda: Talitroidea: Talitridae) from Manawatāwhi/Three Kings Islands, New Zealand. Zootaxa, 5637 (2): 363–373.

Myers, A. A.; Park, E.; Ball, O. J. -P. 2025. A revision of the family Protorchestiidae (Amphipoda: Talitroidea) with the description of two new subfamilies, three new genera and one new species. Zootaxa, 5725 (3): 371–390. 

Ortiz, M.; Capetillo, N.; Lopeztegui, A. 2025. The family Bateidae Stebbing, 1906 (Crustacea, Peracarida) in tropical America with the description of a new species. Zootaxa, 5613 (1): 153–164. 

Penoni, L. R.; Bichuette, M. E.; Borges, R. C. F.; Bueno, A. A. P. 2025a. New species of Hyalella Smith (Crustacea: Amphipoda: Hyalellidae): a contribution to the knowledge of a widely distributed genus in the Upper Ribeira karst, with redescription of the rare and endangered Hyalella caeca Pereira. Journal of Natural History, 59 (1–4): 195–226. 

Penoni, L. R.; Mantelatto, F. L.; Bichuette, M. E.; Bochini, G. L.; Bueno, A. A. P. 2025b. Integrative taxonomy reveals a new species of Hyalella Smith, 1874 (Malacostraca: Amphipoda: Hyalellidae) from caves in southeastern Brazil. Journal of Natural History, 59 (5–8), 285–302. 

Piscart, C.; Mabrouki, Y.,; Taybi, F. A. 2025. Description of two new species of freshwater Gammarus Fabricius, 1775 (Amphipoda: Gammaridae) from the Middle Atlas of Morocco. European Journal of Taxonomy, 1026 (1), 123–146. 

— Queiroz, B.; Senna, A.R.; Silva, A.R.D. 2025. A new species of Maera Leach, 1814 and new records of Ceradocus Costa, 1853 and Dulichiella Stout, 1912 (Amphipoda: Hadzioidea) from Laje de Santos, São Paulo State, southeastern Brazil. Zootaxa, 5711 (4): 527–544. 

Sir, S. J.; White, K. N. 2025. Caribbean Amphipoda (Crustacea) of Panama. Part IV: parvorder Caprellidira. ZooKeys, 1234: 151–205. 

Senckenberg Ocean Species Alliance (SOSA); Andrade, L. F.; Boyko, C. B.; Brandt, A.; Buge, B.; Jiménez, Y. D.; Henseler, M.; Alcántara, P. H.;Jóźwiak, P.; Knauber, H.; Machado, F. M.; Martínez-Muñoz, C. A.; Momtazi, F.; Nakadera Y.; Qiu J.-W.; Riehl, T.; Rouse, G. W.; Sigwart, J. D.; Sirenko, B.; Souza-Filho, J. F.; Steger, J.; Stępień, A.; Tilic, E.; Trautwein, B.; Vončina, K.; Williams, J. D.; Zhang J. 2025. Ocean Species Discoveries 13–27 — Taxonomic contributions to the diversity of Polychaeta, Mollusca and Crustacea. Biodiversity Data Journal, 13: e160349.

Springthorpe , R. T.; Hughes, L. E. 2025. Alexandrella wimdecocki sp. nov. (Stilipedidae Holmes, 1908) and new records for three Australian Abyssal Amphipods (Crustacea: Peracarida). Zootaxa, 5636 (3): 538–550.

Suklom, A.; Keetapithchayakul, T. S.; Rahim, A. A.; Wongkamhaeng, K. 2025. Two new species of riparian hoppers (Amphipoda, Talitridae) from Trat and Samut Prakan provinces, Thailand. ZooKeys, 1234: 369–396. 

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Thacker, D.; Myers, A. A.; Trivedi, J. N. 2025b. One new species of Melita Leach, 1814 (Hadzioidea, Melitidae) from Gujarat State, India. Zootaxa, 5717 (1): 127–137. 

Thacker, D. R.; Patro, S.; Bhoi, G.; Myers, A. A.; Kumar, R. K.; Trivedi, J.  N. 2025. On the genus Grandidierella Coutière, 1904 (Amphipoda: Aoridae) of India with the description of two new species. Zootaxa, 5716 (4): 451–482. 

Tokumori D.; Kakui K.; Tomikawa K. 2025. A new species of Tropichelura (Crustacea: Amphipoda: Cheluridae) from the Ryukyu Islands, Japan. Journal of Natural History, 59(45–48): 2657–2672. 

Tokumori D.; Watanabe Kayama H.; Tanaka K.; Ohara Y.; Tomikawa K. 2025. A new species of the genus Seba (Crustacea: Amphipoda: Sebidae) from a cold seep of Mariana Trench. Zootaxa, 5570 (2): 361–370.

Tomikawa K.; Yamato S.; Ariyama H. 2025. Black-and-white disruptive coloration may be convergent: a new species of Melita (Amphipoda: Melitidae) from Japan. Zoological Science, 42(6): 605–619. 

 — Varela,  C. 2025. Especie nueva de Pleustidae (Crustacea:  Amphipoda) del mar Caribe. Novitates Caribaea, (26): 49–56. 

Varela, C.; Ortiz, M. 2025. Especie nueva de Rhachotropis (Amphipoda: Eusiroidea) del estrecho de la Florida y el mar Caribe. Novitates Caribaea, (26): 11–19.

Wainwright, J. A.; Weston, J. N.; Bond, T.; Jamieson, A. J. 2025. A new species of Eurythenes (Crustacea: Amphipoda) from abyssal depths in the Peru-Chile Trench. Zootaxa, 5653 (1): 63–79. 

— Wang Y-R.; Sha Z-L 2025. Discovery and taxonomic exploration of Metopa propoda sp. nov., a new species of Stenothoidae Boeck, 1871 (Amphipoda, Amphilochoidea) from a seamount of the Caroline Plate, Western Pacific. Zoosystematics and Evolution, 101(2): 875–885. 

Weber, D.; Brad, T.; Weigand, A. M. 2025. Water diviners described: six new species of the Niphargus aquilex (Crustacea, Amphipoda) complex. European Journal of Taxonomy, 1011(1): 1–79. 

Yamamoto D.; Kodama M.; Kojima S. 2025. A new species each of Sicafodia Just, 2004 (Amphipoda: Sicafodiidae) and of its parasite Rhizorhina Hansen, 1892 (Copepoda: Nicothoidae) from the deep bathyal off northeastern Japan. Journal of Crustacean Biology, 40: ruaf027.

— Yoshimura H.; Lee C.-W.; Tomikawa K. 2025. Taxonomy of the genus Elasmopus (Crustacea, Amphipoda) in Japan and South Korea, with description of a new species. ZooKeys, 1261: 307–335. 

Yoshimura H.; Tomikawa K. 2025. A new species of the genus Elasmopus (Crustacea: Amphipoda: Maeridae), from Honshu, Japan. Zootaxa, 5653 (2): 286–296.


<その他参考文献>

Marin, I. N.; Palatov, D. M. 2023. Insights on the Existence of Ancient Glacial Refugee in the Northern Black/Azov Sea Lowland, with the Description of the First Stygobiotic Microcrustacean Species of the Genus Niphargus Schiödte, 1849 from the Mouth of the Don River. Diversity, 15 (5): 682.

Marin, I. N.; Palatov, D. M. 2024. The Diversity of Freshwater Stygobiotic Crustaceans in the Republic of North Ossetia–Alania Provides New Evidence for the Existence of an Ancient Glacial Refugium in the North Caucasus Region. Water, 16 (9): 1212. 


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補遺 7-I-2026
  • Dugger & White (2025) を追加

補遺 19-I-2026
  • Labay (2025b) の解説に加筆

補遺 20-III-2026
  • Cannizzaro, Lange, & Berg (2025b) を追加するとともに、Cannizzaro, Lange, & Berg (2025a) のauthorshipを修正


2025年9月1日月曜日

書籍紹介『水の中の小さな美しい生き物たち』(9月度活動報告)

 またヨコエビが採り上げられた書物が出版されました。

 


仲村康秀・山崎博史・田中隼人(編) 2025.『カラー図解 水の中の小さな美しい生き物たち―小型ベントス・プランクトン百科―』.朝倉書店,東京.384pp. ISBN:978-4-254-17195-2(以下、仲村ほか, 2025)


 出版社は異なりますが『小学館の図鑑NEO POCKET プランクトン』の系譜のように思えます。ボリュームが充実し、ベントス要素が強化された感じでしょうか。なお、ページ数は2倍ちょっと、価格は10倍になっています。



仲村ほか (2025) を読む

 解説のないものも入れて、掲載端脚類は以下の通りです。この他に、表紙に姿があるリザリアライダーの話題も紹介されています。

  • Orientomaera decipiens(フトベニスンナリヨコエビ)
  • Ptilohyale barbicornis(フサゲモクズ)
  • Monocorophium cf. uenoi(ウエノドロクダムシと比定される種)
  • Pontogeneia sp.(アゴナガヨコエビ属の一種)
  • Caprella penantis(マルエラワレカラ)
  • Simorhynchotus antennarius
  • Vibilia robusta(マルヘラウミノミ)
  • Oxycephalus clausi(オオトガリズキンウミノミ)
  • Melita rylovae フトメリタヨコエビ
  • Grandidierella japonica ニホンドロソコエビ
  • Podocerus setouchiensis セトウチドロノミ
  • Sunamphitoe tea コブシヒゲナガ
  • Leucothoe nagatai ツバサヨコエビ
  • Jassa morinoi モリノカマキリヨコエビ
  • Caprella californica sensu lato トゲワレカラモドキ
  • Caprella andreae ウミガメワレカラ
  • Caprella monoceros モノワレカラ
  • Themisto japonica ニホンウミノミ
  • Phronima atlantica アシナガタルマワシ
  • Lestrigonus schizogeneios サンメスクラゲノミ

※仲村ほか (2025) に明示の無い和名は()内に示しています。


 なかなかボリュームがあります。

 だいたいが筆者のKDM先生が撮られた写真のように見受けられます。先生の主な研究テーマである藻場の生態系と端脚類に関するコラムもあり、エンジニア生物や物質循環といった観点から端脚類を見ることもできる構成となっています。KDM研における最新の分類学的知見を反映して「ウエノドロクダムシ」の同定に慎重になっている、といったライブ感があるのもポイント高いです。


 白眉はなんといってもヨコエビからクラゲノミまで揃い踏みしているところにありますが、驚愕したのは、堂々と旧3亜目体制に基づいている点。海外の文献では Lowry and Myers (2017) に基づく現在の6亜目体制を追認する動きが一般的となっている印象がありますが、日本人研究者は亜目を省略するなど距離をとる雰囲気がありました。「国内では不人気」という言い方もできるかもしれませんが、それを形にしたのは非常に画期的です。

 新知見を採用しないというと時代に取り残されている感じもしますが、6亜目体制は「形態に忠実であることを謳っている一方で例外を意図的に無視しており、自己矛盾している」「かといって系統を反映させる気はない(遺伝的知見との整合性を意図したような例外の扱いではない)」「形態的な明朗性・系統反映のポリシー・過去の慣例の全てを犠牲にしたわりに直感的に分かりにくく、使い勝手が良い場面が特にない」といった問題があります。Lowry and Myers (2017) は大量の分類群について形態マトリクスを作成して議論を試みた労作であることは間違いないのですが、このように中途半端な改変を行うより、「尾肢の先端に棘状刺毛があるグループとそうでないグループを発見した」というような発表に留めておいたほうが、論文として評価は高かったのではと思います。端脚類全体を網羅する下目・小目といった新概念を提唱しつつ、結局所属不明科を残したままというのも片手落ちの感があります。そろそろ10年になりますが、特に優れた点の無い体系のため安定して使い続けられる保障がないという判断から、採用に慎重になっている人がいるものと、個人的には理解しています。

 こういった分類のややこしさについても、仲村ほか (2025) は論文を引いて示しています。


 仲村ほか (2025) の印象を一言で表すとすれば「本棚にベンプラ大会」。タイトルからすると「生物ルッキズムを含んだ写真集」のように思えますが、写真はカットの物量こそあれど思いの外小さく、種や話題のチョイスの渋さ・ガチ感が光ります。前述のような分類学の議論をはじめ、ベントス・プランクトン学会大会で聴かれるお馴染みのテーマや学術的な課題が、当然のように並べられています。細菌の項で培地の写真が並んでいるのにはドン引きしました(誉め言葉)。マニアックな生物に対して、その珍奇さよりここに収録されるべき学術的意義に立脚して選定・解説しているのが、プランクトン学会とベントス学会が全面バックアップしているだけのことはあるなと、思いました。375ページに上る大著でありながら、水圏生物の花形である魚類が4ページしかないというのも特徴的だと思います。

 ただ、解説は非常に平易な文章に仕上がっており、文字数もそれほど多くありません。「写真をパラパラ見る」用途として問題はないかと思います。これだけ幅広い生物群を、「小さく美しい」というテーマに沿って網羅的に平等に扱おうと試みた書籍の例はあまりないものと思われます。『深海生物生態図鑑』のようにグラビアの美麗さや物量で押してくるタイプではないのですが、微生物やメイオベントス群集といった、ともすれば味気ない専門書の中の住人であった生物を、ビジュアル図鑑の世界へ招き入れたというのは、大きな出来事のように思えます。中学生から大学まで、生物分類や水棲生物研究全般に興味のある学生には、興味をそそるだけでなく基礎知識の勉強にもなる一冊でしょう。

 『小学館の図鑑NEO POCKET プランクトン』のコスパの良さが異常なので、こちらのほうがエッセンスだけ摂取したい方にはお勧めできるかもしれません。ただ、当然のことながら 仲村ほか (2025) において情報量は格段に増えていますし、学名の併記や参考文献もしっかり押さえられており、実用性を付与されているのは間違いありません。


 ちなみに、「ウミガメワレカラ」という和名が学名と明確に対応された出版物は初めてだと思います(和名の初出は青木・畑中, 2019)。そういった文脈でも参照され続ける文献と思われます。


 最後に、仲村ほか (2025) における端脚類の掲載箇所を詳細にご教示いただいた朝倉書店公式ツイッターアカウント様に、この場をお借りして篤く御礼申し上げます。



<参考文献>

青木優和 (著)・畑中富美子 (イラスト) 2019.『われから: かいそうの もりにすむ ちいさな いきもの』. 仮説社, 東京.39pp. ISBN-10:4773502967

藤原義弘・土田真二・ドゥーグル・J・リンズィー(写真・文)2025.『深海生物生態図鑑』.あかね書房,東京.143 pp. ISBN:978-4-251-09347-9 

Lowry, J. K.; Myers, A. A. 2017. A phylogeny and classification of the Amphipoda with the establishment of the new order Ingolfiellida (Crustacea: Peracarida). Zootaxa, 4265 (1): 1–89.

山崎博史・仲村康秀・田中隼人(指導・執筆) 2024. 『小学館の図鑑NEO POCKET プランクトン クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物』.小学館,東京.176pp. ISBN:9784092172975


2025年7月12日土曜日

聖地巡礼シリーズ「松川浦」

 

 函館福井と続けてきた、主に端脚類のタイプ産地を廻るこのシリーズ(?)。今回は環境省のモニタリングサイト1000の調査協力で、福島県の松川浦に行ってきました。サンプルの同定協力はしたことがありますが、現場は初です。





松川浦の端脚類相

 松川浦は言わずと知れたヨコエビ聖地の一つではあるものの、継続して端脚類研究の拠点になっているわけではなく、何より32年前に採られた手法がプランクトンネット採集であったため、親しみやすい潮間帯のファウナはあまり語られていないのが実情だったりします。


過去の調査結果
文献 Hirayama and Takeuchi (1993) 環境省 (2013) 富川 (2013)
出現種 Pontogeneia stocki, Atylus matsukawaensis, Synchelidium longisegmentum, Dulichia biarticulata, Gitanopsis oozekii, Stenothoe dentirama, Lepidepecreum gurjanovae, Eogammarus possjeticus, Tiron spiniferus, Allorchestes angusta, Ampithoe lacertosa, Aoroides columbiae, Corophium acherusicum, Ericthonius pugnax, Gammaropsis japonicus, Guernea ezoensis, Jassa aff. falcata, Synchelidium lenorostralum, Melita shimizui Ampithoidae gen. sp., Grandidierella japonica, Corophiidae gen. sp., Melita shimizui, Melita setiflagella, Ampithoe sp.
Ampithoe lacertosaAmpithoe valida, Hyale sp., Melita shimizui, Talitridae gen. sp.

 属位変更はなんとかなるとして、後に日本個体群が別種として記載されたブラブラソコエビAoroides columbiae(→A. curvipesなどは解釈に注意が必要です。Jassa aff. falcataは順当にいけばフトヒゲカマキリヨコエビJ. slatterlyと推定されますが、他の近似種や未記載種の可能性もあります。
 富川 (2013) の各種は0.5mm目合いの篩にかけて採取されたもので、モニ1000の定量調査に近い手法で行われています。Hyale sp.は恐らくフサゲモクズPtilohyale barbicornis、Talitridae gen. sp.は広義のヒメハマトビムシであろうと思います。


 今回の調査結果はいずれ然るべき媒体でアウトプットされるはずですが、本稿ではフィールドの雰囲気だけお伝えします。比較対象が関東の干潟になってしまうのはご了承ください。



松川浦北部前浜的干潟

 砂州から内側へ突き出た遊歩道の周辺が、調査地になっています。遊歩道の左手には転石帯、右手にはヨシ原が広がっています。転石帯側は、遊歩道根元の少し引っ込んだエントリーポイントから澪筋を越えると、いつの間にか流れのある川へ至ります。ヨシ原側は、汀線方向へ進むにつれカキ礁が卓越します。基質は全体的に有機物の多い砂泥で、転石帯にはパッチ状に底無し沼的なゾーンがあります。


 今回はアオサやオゴノリの繁茂はみられず、干出面はホソウミニナとマツカワウラカワザンショウに被覆されています。深さのある場所では流れの中にアマモの群落が散見されます。


 アマモ葉上やカキ殻表面にはホンダワラ類の付着が散見されました。
 端脚類はアマモ葉上で最も充実しており、表在底生グレーザー・植物基質寄りの自由生活ジェネラリスト・遊泳グレーザーの3者が最も優占していました。いずれの基質においても、造管濾過食者はかなり少ない、むしろほとんどいない印象です。




松川浦南部河口的干潟

 最奥部に開口した細い水路周辺に形成されている、典型的な内湾の富栄養泥干潟です。表層に触れるだけで還元化した黒い部分がのぞくシルトの底質に、転石やカキ殻が散らばっています。一歩進めるごとに足をとられ、ケフサイソガニ類が横っ飛びします。膝をついてじっとしていると、いつの間にか大量のヤマトオサガニに取り囲まれます。

 造管懸濁物食者が高密度に棲息し、漂着物のような多少柔軟性のある基質の周囲には硬質基質寄りの自由生活ジェネラリストが見えますが、際立って端脚類の多様性が高い箇所はみられません。


 潮上帯において、打ち上げ物は陸由来の植物質が卓越し、転石帯とともに、関東の同様の環境から推測できる代表的な属ないし種の構成となっています。 



おまけ:松川浦北部河口

 ここはモニ1000の対象ではありませんが、かなり特色のあるポイントです。


 松川浦に注ぐ最も大きな川の河口部です。ヨシ原が発達しており、深みにはわずかなカキ殻などの硬質基質にオゴノリやアオサが付着しています。底質は基本的に石英や珪岩などが卓越する明色の砂泥で、場所により陸上植物砕屑物が多く混入したり、ヨシ原が幅広く残っている場所ではシルト・クレイ分が増えて底なし沼化しています。泥干潟おなじみのカニがひしめいています。

 甘めかつ基質の多様性が低い環境で、大型藻類上や堆積物中には植物基質寄りの自由生活ジェネラリスト,遊泳性グレーザー,表在底生グレーザー,硬質基質寄りの自由生活ジェネラリストが優占していました。顔ぶれは三番瀬や小櫃川河口に似ています。潮上帯転石下にはフナムシ属が優占し、ヨコエビは僅少でした。



 今回は、定量調査を補完しリストを充実させる意味合いで定性調査専任での参加でした。結論からいうと劇的な種数増には至りませんでしたが、フィールドの感じは何となく掴めてきたので是非ともリベンジしたいところです。もし松川浦という海域のインベントリを行う場合、燈火採集や硬質基質の要素が加われば、科~種の数はもう少し増やせそうです。もはや干潟のモニ1000ではありませんが。



おまけ:蒲生干潟

 環境省やWIJとは関係なく、地元で連綿と継承されてきた定量調査に同行しました。

過去の調査結果
文献 松政・栗原 (1988) Aikins and Kikuchi (2002) 近藤 (2017)
出現種 Grandidierella japonica, Corophium uenoi, Kamaka sp., Melita sp. Corophium uenoi, Grandidierella japonica, Eogammarus possjecticus, Melita setiflagella Monocorophium insidiosum, Grandidierella japonica


 なんと蒲生干潟には「カマカが出る」んですね。
 これはヨコエビストにとって垂涎ものなのですが(平たくいうと、この形態的にも系統的にも特異な科は生息地が限定的かつ体サイズが微小なため、おいそれとはお目にかかれないのです)、今回はダメでした。分布や生息環境を踏まえると、恐らくモリノカマカKamaka morinoiであろうと思います。宮城県のRDBにも掲載されていることですし。
 ウエノドロクダムシMonocorophium uenoiとトンガリドロクダムシM. insidiosumの是非についてここで掘り下げることは避けますが、これら文献における記述内容と今回の実地調査の結果を総合的に判断して、この地においてモノドロクダムシ属の形態種は2種いると解釈して差し支えないものと思います。


 水門を挟んで七北田川河口に接続した潟湖で、堤防の外側に陸上植生からヨシ原の連続性が維持されている奇跡的な場所です。奥部はきめ細かなシルト・クレイで、下るにつれ砂が卓越してきます。ヨシ原を縫い水門へ続く本流は、地盤高が下がるにつれて陸上植物の砕屑物が混ざった砂質からカキ殻の混じる富栄養砂泥へ変容します。本流は水門に近づくにつれ深さを増し、貧酸素化が顕著で三番瀬の澪筋を彷彿とさせます。



 潮廻りの関係か、植物基質寄りの自由生活ジェネラリストが大量に遊泳していて驚きました。底質中には造管性懸濁物食者がパッチ状に分布しており、潮上帯は海浜性種しか得られませんでした。

 調査範囲外だったため手を伸ばしていませんが、潟湖に加えて蒲生干潟の一部とされている七北田川河口の砂浜も、潟湖とはだいぶ様子がかなり違うのでなかなか面白そうです。

 


 東北の干潟をベントスの専門家と一緒にがっつり回るという経験は、かなり貴重でした。ベントス研究拠点としての東北大の将来が心配される中、石巻専修大の底力を目の当たりにしました。



<参考文献>

Aikins, S.; Kikuchi, E. 2002. Grazing pressure by amphipods on microalgae in Gamo Lagoon, Japan. Marine Ecology Progress Series245: 171–179.

Hirayama A.; Takeuchi I. 1993. New species and new Japanese records of the Gammaridea (Crustacea: Amphipoda) from Matsukawa-ura Inlet, Fukushima Prefecture, Japan. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 36(3):141–178.

環境省 2013. 平成24年度 モニタリングサイト1000 磯・干潟・アマモ場・藻場 調査報告書.

— 近藤智彦 2017. 東北地方太平洋沖地震と津波攪乱後の蒲生干潟 (宮城県) における底生生物の群集動態と優占種の生活史戦略(学位論文).

松政正俊・栗原康 1988. 宮城県蒲生潟における底生小型甲殻類の分布と環境要因.日本ベントス研究会誌33/34:33–41.

富川光 2013. 東日本大震災による津波が松川浦(福島県相馬市)の生物多様性に与えた影響の評価と環境回復に関する研究. 公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団平成25年度助成研究報告書. pp.123–132.


2019年7月5日金曜日

ヨコエビ四番勝負 ~令和最初の夏も宝虫探し~(7月度活動報告)


 潮が良いので遠征してきました.

 今季は期限や目的のはっきりした採集が多く,自分のペースでフィールドのポテンシャルを測るような旅をあまりしていなかった気がします.S.A.M. project もほったらかしだし.

 件の記載論文もあとは図表に番号を振って関係方面に回すだけという段まで来たので,7月頭のこのビッグウェーブを逃すわけにはいかないと,新幹線に飛び乗りました.スマートEXまじで楽(それにしても全ての新幹線はつながっているのになぜIC乗車券に新幹線チケットを紐付けするシステムは東海道山陽と北陸上越は互換性がない…おや、誰か来たようd).



 S.A.M project とは,ヨコエビが人をかじることを確認する,極めてシンプルな企画です.
 とりあえず,できるだけ多くの人食いヨコエビを発見し,その傾向を知ることを目標としています.
 発端はオーストラリアでのこの事件です.ヨコエビが死肉を漁るのは常識といえるかもしれませんが,生きた人間をかじるという事象はあまり一般的ではないのが現状です.生きた人間がヨコエビに齧られるのかどうか.その知見が積み重なっていけば,今後無用な不安感を抱かなくても済むのではないでしょうか.余計に心配になったりして.



 さて,新幹線は思い出の岡山を過ぎて九州へ…


 しかし…


「木曜日まで豪雨」
「3日が特に激しい」
「九州は例年7月1ヶ月分の降水量が1日で降る可能性」
「気象庁が異例の会見」


 やめてよぉっ!



福岡激闘篇


 志賀島での S.A.M project の前に,九州北東部のヨコエビリティを探っておきたいと思います.

 山奥の採集であれば早期に中止を決めたでしょうが,今回の採集地は県のハザードマップでは大規模な土砂崩れの懸念箇所には含まれていなかったので,ひとまず予定通りに…



福岡県某所.


 意外と大丈夫じゃね?
 小雨がちらつく程度で時折晴れ間さえ見えます.

 ちなみに居酒屋のおばちゃんによると,ここ何日も「明日はヤバい」と予報されつつ,
ずっとこんな感じとのこと.むしろ水不足が心配らしい.ホンマかいな.




 干潟の端に電波塔が聳えています.これで分かる人は分かるかもしれません.

 アオサしかない絶望感もさることながら,干潟を埋め尽くすあまり細くないホソウミニナとヤドカリの物量.


 ヨシ原と連続していることもあってかやや泥っぽくもろもろとした砂泥の底質は悪くありませんが,少し掘るとすぐにその黒い本性を顕す潮通しの悪さと,LNO(ランドリーネットオペレーション=洗濯ネット作戦)を阻む粒径の大きさ.

 苦戦の予感.




 さっぱり採れん.

 三番瀬と谷津干潟を足して2で割った感じと言えば,千葉県のヨコエビ事情に通じている方ならばピンとくるでしょうか.アオサにはシミズメリタ,杭にはアリアケドロクダというメンバーの単調さ.モズミヨコエビもいますがかなり少ない.


モズミヨコエビ(Ampithoe valida).


メリタ属の一種(Melita ).
シミズメリタかもしれない.


ドロクダムシ科の一種(Corophiidae).
ちょっと見たことのないスレンダーなドロクダムシですね・・・
第2触角に見たことのない突起があります・・・


 ベントス相は,汀線上にコメツキ,汀線下にタマシキ,マメコブシ,ガザミ,タイワンガザミ,アサリと,ほぼ三番瀬です.アラムシロっぽい巻き貝とオキシジミっぽい二枚貝とマハゼっぽい魚もいました.違うところといえば,主張してくるフグでしょうか.


ガザミ先輩こわすぎ.


 仕方がないので,潮上決戦へ移行します.
 
 翻って,ハマトビリティは凄まじいものがあります.

 小雨パラつくコンディションが良かったのでしょう.米粒とか稗粒サイズのハマトビムシがそこらじゅうをぴょこぴょこしてます.

 このような場面にも遭遇.


この画像,ずっと自前でほしかったんだよねぇ.


 ハマトビムシを観察していると…


(チクッ)


 チクッ?!


 見ると,なんとハマトビムシがアラサーサラリーマンの汚い足を齧っているではないですか!



 ハマトビムシが人を刺すという話は以前からネットで見かけましたが,どうやらスナホリムシなどと区別がつきにくいようで,誰が犯人なのか決定的な証拠に欠けていました.新潟で土左衛門にハマトビムシがたくさん付いていたとの検死結果がありますが(小関・山内 1964),遺体の損壊には寄与していないとされています.
 オーストラリアではスナホリムシが(嘘か真か)博物館の理事長の息子さんのポークビッツを噛んだ事例(※1)がありますが,種の同定が信頼できる事例は非常に乏しかったわけです.

 しかし同時に,ハマトビムシが人を刺さない証を立てるのは「悪魔の証明」の部類です.一件でも明確にハマトビムシであることが分かればこの問題は解決できると思っていたところ,思いがけずハマトビムシに噛まれても痛いことがわかったのです!
 

 齧っているのは1個体ではないようです.指の腹を齧られても何も感じませんが,指の上や足の甲にとりついた個体は確かに口元を押し付けて齧る仕草をしています.そして明らかな痛み.

 齧っていたのは未成熟オスあるいはメスのようです.その個体そのものは確保できませんでしたが,周辺でピョコピョコしている個体の中から同定が可能なサイズのものを採取してみます.

ヒメハマトビムシの近似種(Platorchestia pacifica).



 結果:勝ち(豊かなヨコエビリティに触れることはできなかったものの新知見を得た).




志賀島再戦(リベンジマッチ)篇



 戻ってきたぜ志賀島!

 今年は2ヶ所のサイトを設定しました.



 サイト1.


 恐らく,この沖で件の事故(※2)があったものと思われます.事件発生箇所に近ければタカラムシが採れるはずですが果たして…



 サイト2.


 昨年,○○な○○を採取してしまった場所ですね.記載準備の準備中です…



 サイト2の地形やヨコエビリティは見当がついているので,最干潮の前にサイト1を見てみます.
 


 要するに,ビキニのチャンネーやらが肌を焼いているようなビーチです.ビキニも観察したいところですが,こちらはあまり潮の影響を受けないため,まずヨコエビを探ります.

 


 銚子の先っぽで見たことあるような,良さげな岩場がありますね.モクとミルを主体として,アオサや短い紅藻,場所によりサンゴ藻がこんもり生えています.ウニの密度もそれなりに.

 おもむろにガサると



ドロノミ(Podocerus ).



ソコエビ(Gammaropsis).


 
ニセヒゲナガヨコエビ(Sunamphithoe ).



ミノガサヨコエビ(Phliantidae).


イソヨコエビ(Elasmopus).


チビヨコエビ(Amphilochidae).


ホヤノカンノン(Polycheria).
これは自己初.
各胸脚の指節が付着に特化している.



 もうこんなもんでいいや(疲労).

 これ以上潮が引いても地形に変化はないようです.最干潮にあわせて場所を変えます.




 サイト2.なつかしい.


 相変わらず海藻の打ち寄せがすごい.

 昨年は血眼で Orchomenella を探した末にヤバいものを拾ってしまいました.今回は Orchomenella Eohaustorius とついでに例のヤバいものも探してみましたが,潜砂性種は全くヒットせず.粒径の問題で LNO が機能しないという難しさが浮き彫りに.



 仕方がないので潮上決戦に持ち込み,フィニッシュとしました.採れたのはPlatorchestia pacifica でした.






 さて,今回はタカラムシに会うため,サイト1に鶏肉入りの洗濯ネットを仕掛けていたのですが…



 ダメでした…


装置の設計や設置時間に問題がある気がするので,
玄界灘に沈む夕日にリベンジを誓い,
島を後にしました.



 結果:負け(岩礁のヨコエビリティを発見したものの目的にかすりもせず)

 

ベイトトラップでなぜか Jassa がよく採れる.スカベンジャーなのかお主ら(たぶん付着基質として利用しただけ).






愛知死闘篇



 東海地方へ移動します.連戦によりぎょさん装備の足はもう限界です.

「九州南部に大雨を降らせた雨雲は東へ移動」
「東海から関東は夜にかけて雨」

 やめてよぉぉっっっ!!


 伊勢湾を挟んだ三重県と,いちおう伊豆は参戦したことがあるものの,愛知のヨコエビリティは未経験です.今回は愛知のヨコエビリティを知り,愛を知り,できれば最近集め始めた Eohaustorius を採ることを目的としています.

 愛知に Eohaustorius がいることがわかっているものの,電車で行くことを考慮して新たな干潟を探すことに.


 Googleマップでは,海苔網がかなり岸の近くまで張られているのがわかりました.李下の冠,怪しい行動は慎んで慎重な採集が求められます.

 
 しかし,串カツの美味さに我を忘れ,結局どこにも連絡しないまま現場へ.




 ロープとかは張ってないのね?

 富津を思わせる密漁絶許標示と茶色がかった砂底,繁茂したアマモ.東京湾が失ったものがここにあるようです.

 やたら転がっているワタリガニの脱皮殼.時々生体.


ハサミないけど大丈夫?


これは図鑑でしか見たことがないけど
ジャノメガザミというやつか…

 潮間帯上部はアマモやコアマモの群落が占めており,その隙間の砂地にはアオサがぽつぽつと.目につくのはタマシキとアラムシロとヤドカリ.

 潮間帯を上から下に移動し,汀線に沿っても歩いてみましたが,砂の状態は非常に均質でした.河川由来の堆積物も今回見た限りでは溜まっておらず,還元化しているところもありません.リップルマークのあるところとないところがありますが,概ね地形による感じです.表層2㎝ほどはややモロモロとした感じのする褐色,その下は東京湾奥に似た黒色の海砂です.1mmの洗濯ネットでふるうと黒い粒はすっかり抜けてしまい,少しだけ透明な粒が残るのが印象的です.



 そこへ近寄ってくる人影.優しそうなおばちゃんが声をかけてきました.

 どうやら密漁監視の方のようで,タダ乗り潮干狩り客と思われたようです.干潟でアサリなんか採れてもいつもそのへんに投げてるヨコエビおじさんとしては,身に覚えのないことです.スコップ持って干潟に立ってる時点で怪しすぎますが

 ヨコエビを採っていることを伝えようとしましたが…せや…わてまだヨコエビ採れてへんかったわ…

 おっ,コアマモの間で枯草のフリしとるんはヒメイカはん…見てくださいこのイカが食べてるのがヨコエ…


エビジャコやんけ.


 現地にヨコエビに対応する言葉がないかと色々と探ってみましたが,やべー奴というのは伝わったらしく,逆に励まされて放免となりました…


 アカン…このままやとウシロマエソコエビを採る前にワイがパクられてまう…潔白を証明するためにまず何でもいいから「見せヨコエビ」を採らないと… 蛍光グリーンの活きのいいモズミヨコエビが欲しいところです.2㎝くらいの.


 それからアマモやコアマモをガサってみたものの,大量の微小巻貝とたまにヘラムシが落ちるだけで,一向にヨコエビが出ません.
 砂地からも何も採れません.


 もしかして,ヨコエビが存在しない世界線に来てしまったのでは?


 そんなことを考えつつ,汀線付近で波に洗われていたロープに付いたアオサをガサってみると





見せヨコエビGET!

ヒゲナガヨコエビ属の一種(Ampithoe cf. tarasovi).



 こんなに立派なヒゲナガを採ったのは久々です.

 がっちりした体形や体格を見ると,かなりニッポンモバヨコエビに見えます.一応第5底節板の下縁に短い剛毛があります.第1触角の特徴などから総合的に判断しました.


アゴナガヨコエビ(Pontogeneia).

チビヨコエビ科(Amphilochidae)のなにか.


タテソコエビ科(Stenothoidae)のなにか.

 しかし,それから砂を掘れども出てくるのはオフェリアとチロリとハマグリ(チョウセン?).ハマグリを遠投するたびHPが減少し,チロリをオルタナティヴする元気もありません.

 そこへまた地元の方が,貝を採っているのか聞いてきたではありませんか!見せヨコエビの出番!ヨコエビを採っていることを説明すべく懐からヨコエビセットを取り出そうとしていると「貝じゃないならいいです」と足早に去っていくではないですか!ちょっと!見てよ!かわいいモズミん見てよ!!ねぇ!!



 そうこうしているうちに潮は満ち始め,電車の時間もあるので,諦めて潮上決戦に移行します.

 海草場が豊かなので打ち寄せ物もアマモが多いようです.おや,まだ生きているワレカラが…


 どうやら,ここのハマトビムシは1種ではないようです.


ヒメハマトビムシの近似種(Platorchestia pacifica).



スナハマトビムシ(Sinorchstia sp.). 
あっ,やべぇこんな掌縁をした咬脚の種は見たことがねぇ.
やべぇ・・・
(ニホンスナハマトビムシでもタイリクスナハマトビムシでもないです).



結果:逆転勝ち(完全ボウズではないが,圧倒的ヨコエビリティ不足はロケハン技術不足.最後にヤバいのを引いたので加点.).





愛知突撃篇



 愛知の恐ろしさを知ったヨコエビおじさんは,例のごとく地元の有識者に助言を頼み,改めて採集地を見直すことにしました.ここから本気で Eohaustorius を求めます.



 かなりの密度でナミノリケナシザルが生息しています.群れを避けて,教えてもらったポイントへ向かいます.

 やはり密漁絶許看板が立っているので浜に下りてよいか近くの方に声をかけたところ,問題ないとのこと.スナホリケナシザルに優しいのは嬉しい.



 色が少し山砂っぽいものの,細かくさらっとした砂質が良い感じです.
 1mm メッシュの通りがとても良く,かといって腐った泥もなく,堤防に囲われかなり人工的な雰囲気が漂う環境ながら,自然海岸的な健全さを感じます.汀線付近にはうんざりするほどアオサが溜まっていますが,潮通しが極めて良好で,留まることなく移動しているようです.アオサだまりからやや下がるとアマモ場が広がっていて,その間にワタリガニやらタコやらが潜んでいるようです.


超 怖くね?

アミメキンセンガニというやつだろうか.


 あとは,夥しい稚魚,稚ガニ,貝形虫が印象的です.




ドロソコ(Grandidierella).
なぜか小さい個体しか採れない.




ウシロマエソコエビ(Eohaustorius).

 やったぜ.


 しかし,よく採れる場所を探し当てるまでにかなりの時間を使ってしまいました.それに小さいものばかり.
 Eohaustorius は,冬季のみ大型個体でしのぎ夏季に短いスパンで小型個体が出現するナミノリソコエビと異なり,通年で大型個体がいるはず.
 なお,持ち帰って形態を確認したところ,たいへんまずいことが発覚しました.これはまたいつの日か・・・

 

 硬い基質も見てみましょう.
 岩場の海藻をガサるとモクズとかいろいろ.少し小さめ.半ば干上がった岩の上まで歩いていて根性を感じました.

ヒゲナガヨコエビ(Ampithoe).



 そろそろタイムリミット.
 ナミノリケナシザルをかわしながらすでにハマトビリティの高さは感じていました.


プラゴミ少なくアマモがこんなに.
この海岸管理は全国のサーフスポットが真似してほしい.




 潮上決戦は残った時間でサクッとをキメたいところ.


スナハマトビムシ(Sinorchstia).

 あれ?ヒメハマは?

 ナミノリケナシザルの生息域では普通にヒメハマがいた気がします.確保しておくべきでした.これはまた後日かな…


 
 結果:辛勝(目的外のヤバいのを引いてしまった).






 総括.
 ”見せヨコエビ”以外は悉く狙いを外れ,実力不足を思い知らされました.愛知二日目は一応属レベルで目的を果たせたものの,欲しかったのは既知種の複数ポイントのサンプルであったため,今後の研究に対しては厳しい展開となりました.これは仕方ないけどね~
 とりあえず藻があればよい磯と比べて,干潟の潜砂性ヨコエビの生息密度は細かい底質状況に左右され,現場でもしばらく流してみないと狙ったヨコエビを得るのは難しいです.ヨコエビの情報がなくとも,既存の報告書などから現場の雰囲気を察知してヨコエビリティを推し量ることができればよいのですが…

 あとは,ターゲットとなる潜砂性ヨコエビの生態特性と,ヨコエビおじさんの採集スタイルとの乖離です.
 電車で移動して岸から歩いてエントリーする都合上,胴長と洗濯ネットが関の山です.盤州干潟でも潜砂ヨコエビはかなり潮下帯での活性が高かったので,メインハビタットに至らず,採集効率が悪い可能性があります.





※1:アンドリュー・ホジー氏(西オーストラリア博物館)の証言.
”このニュース記事を見てすぐ,私は博物館のコレクションにあるPseudolana concinna(スナホリムシ科)の標本のことを思い出した.
 これは1959年の夏にパース海岸にほど近いロットネスト島(西オーストラリア)で採集されたものだ古い登記書類にはこのような備考がある ”水辺に座っていた小さな子供のペニスに取り付いて食らいついてた;非常に出血していた”確証はないがその小さな子供は当時の西オーストラリア博物館理事長の息子だったと考えられる


※2:永田ほか (1967) の事例.
  投錨して操業していた小型漁船が鉄船にぶつけられ,漁師の男性が変わり果てた姿で発見された事件.ヨコエビによる蚕食事例として著名.


(参考文献)
— 小関恒雄・山内峻呉 1964. 水中死体の水生動物による死後損傷. 日本法医学雑誌, 18 (1): 12–20.
永田武明・福元孝三郎・小嶋亨 1967. フトヒゲソコエビ及びウミホタルによる水中死体損壊例. 日本法医学雑誌, 21(5): 524–530.

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補遺 (15-VIII-2024)
・一部書式設定変更。