2018年2月18日日曜日

冬のたしなみ干潟採集(2月度活動報告)


 干潟のオンシーズンといえば、潮干狩り場が開く春から夏の間というイメージは根強いものですが、実はいつ行っても面白いのです。

 潮干狩りシーズンにあたる晩春から初夏は、真っ昼間からマイナス何センチというガチめの干潮が大盤振る舞いされるので、確かに潮間帯の散策には適しているのですが、遠浅の干潟であればそんなに引かなくてもそれなりの広さの干潟を楽しむことができるでしょう。
 むしろワンドに水が残っているくらいのほうが、ヨコエビのついたアオサやらオゴノリやらがそこらへんに漂っていて、ガシャガシャと洗うのにも便利だったりします。

 冬の干潟で期待できるのは次のようなことだと思います。


①混まない
 潮干狩りシーズンの競合は半端ありません


②熱中症にならない
 遮るものの無い干潟面では、真夏でなくても日差しに当たりすぎて体調を崩すことがありますよね


③サンプルが傷まない
 干潟の生き物は熱せられるとクタクタになって良い標本にならないことが多い


④生物がデカい
 種類により夏期は短時間で世代を繰り返すため冬のほうが大きな個体を簡単に得られるということもあります



 今回の最干潮は正午過ぎの63センチです。

 予報では、気温は13℃で天気は晴天。冬干潟日和と言えるのではないでしょうか。






 こちら、内房線巌根駅です。ここに来るのは何年ぶりだろう・・・


のどかな駅ですが近くにコンビニもあり便利です


 初の試みとなりますが、ここから盤州干潟まで歩いてみます。


 汀線までは・・・そうですね・・・片道徒歩1時間30分くらいです(白目)。



県道87号線脇を国鳥が走る

 小櫃川を渡ります。





 はい着きました。



 今回はのんびり散策というわけではなく、目的があります。

 ある特定の種のヨコエビを採らなければいけないのです。

 ソロ干潟も冬干潟も経験済ですが、ソロの冬干潟はたぶん自己初です。緊張します。



 最干潮の時間があるため、ひとまず汀線まで行き、戻りながら探索します。




 打ち上げ海藻は少なく、干潟面にもあまり見られません。
 海面近くでの植プの増殖は夏ほどではないはずなので、大型藻類には有利かと思いましたが、大型藻類についても増殖が抑制されているみたいです。


 そんな中、何やらヨコエビリティの高そうな海藻を発見…



 海藻のまわりを掘ると、泳ぎつつ潜りつつ、怪しげなヨコエビがたくさんいました。

リップルマークの間を泳ぎ回っています(撮影困難)


 めっちゃおるやん。


 狙いの潜砂性ヨコエビかと思って採ってみましたが・・・


アゴナガヨコエビ類(ラヴ・プリズン済)

 九十九里のものとは別種でしょうか。この感じはPontogeneia rostrataアゴナガヨコエビかも・・・?
 アゴナガヨコエビさんはやはりかなりちょこまかと泳ぎます。眼はかなり背中側に寄っていて、生時は白色に見えます。ヨコエビっぽくないというか、脚を下側にして基質に取り付きます。



 海藻にはポシェットタソ

たぶんポシェットトゲオヨコエビ


 しかしやはり干出面からはなかなか採れません。


 
 今回、決戦に備えて新兵器をご用意しました。



 これを


 こうして


 こうじゃ



 百均のカゴを洗濯ネットで包んでみました。
 基質の色により黒と白を使い分けたいと思います。

 目合いは1mmより小さいので、大きな砂粒が残る程度のはず。

レッツガシャガシャタイム



 
かなり残っています やっぱり1mmのほうがやりやすい・・・


 目的の種は潜砂性であるため、今回の新兵器は未完成ながらかなり役に立ちました。いや、むしろ今日この日のために開発したと言ってもよい。

 今回の洗濯ネットはギリギリの大きさで装着に1分半ほどかかるのと、袋状なので当然裏側にも砂が入って使うたびどんどん重くなります。ネットがピンと張ることを優先したので、これからどのくらい最適化できるかを考えます。

 普通のフルイは1mmメッシュを切り出して貼って作りますが、金属は嫌なのでナイロンメッシュを探したところ、やはり一般での販売はそう無いようです。裏技を使えば買えるかもですが・・・今回はとりあえず目当てのサンプルが採れたので良いことにしましょう(いいのか)。


 今回、目的種を得る工夫ができました。
 一緒にメリタも採れたので、干潟採集では役立ちそうです。

  確立したらご案内します。

 

 洗濯ネット法は磯採集や潜水採集などでは広く用いられているらしく、ヨコエビストにおいては海藻のガサりでも使えると思います。
 今回は少しやってみて、ヒゲナガヨコエビ科がちょこっと出ましたが、成熟オスが出なかったためリリースしてきました。海藻が増えればまたやってみたいと思います。

 



 冬干潟の良いところは満喫できましたが、とにかく寒い。

 陽が照るとそれなりに暖かくも感じるものの、吹き抜ける風は身に沁み、ひとたび陰ると春がまだ遠いことを実感いたしました。
 
 

(今回の採集の目的のヨコエビについては発表予定なので詳細は後程・・・)




2018年1月31日水曜日

ROAD TO DESCRIPTION IV (1月度活動報告)


 ヨコエビの新種記載を目指す野望をスレスレで発信するこの企画。
 過去の経緯はこのような感じです。

I(立志篇)
II(救済篇)
III(解剖篇・前篇)


 今回は、精密な解剖と、プレパラートに封入するところまでを扱います。 なお、例のごとく以下の内容は執筆当時の状況ですので予めご了承下さいませ。

タングステンニードル

Polish Hyper Fine SPINE


 前回のIIIにてちらっとふれたタングステンニードルの自作。
 できそうなのでやってみることにしました。

 今回の標本はやはり5mmより小さいのが含まれていて、私の解剖技術の向上も芳しくなく、昆虫針を砥石で研いで拵えた業物には限界が見えてきました。

 そこで、糸口を道具に求めたわけです。




素 材 集 め

 タングステンニードル作成にあたって必要なものは、ほとんどがホムセンなんかを回って揃えることができました。

 しかし、一つだけ手に入らなかったものが・・・それは・・・

 主役のタングステン線です。


 タングステンというのは非常にロマンのある物質で、非放射性元素の中では最も融点・沸点が高く、比重からしてもヘビー級の金属です。クラーク数は6×10の三乗とされており、地殻における存在度は1ppmを若干上回り、金や銀と比べても多めとなりますが、太陽系における珪素原子との相対存在量度の常用対数をとると-1程度と見積もられており、わりとレアな元素といえるでしょう。第6周期で両隣がタンタルとレニウムというところからも、物理的・化学的に非常に安定であることが伺えますが、我々の日常生活において電球のフィラメントやアクセサリーなどに使用されるほか、クロム族でもあり鋼に添加されてその性質を強化するという利用もなされています。そういった感じで大活躍しているものの、タングステン製などと言われてもピンとこない人がほとんどと思われ、素材としてはマイナーな部類に含まれます。

 基本的にホームセンターは普通の針金のほか、ステンレス,アルミ,銅,真鍮,エナメルくらいまでは何とかなるものの、タングステンは無いです。ぜんぜん見つからないです。タングステン鋼が置いてあることもありますがそれは違うやつです。

 そこでネットの出番ですが、さしものamaz○nにも無し。
 m○notaroにはタングステン棒の扱いはあるものの、これは1桁太いやつです。
 AS ○NEなど有名通販サイトでは各種太さのタングステン線が見つかりましたが、個人には開かれていません。
 直接取引のない場合は代理店を通すことになります。アテがないわけではありませんがそれは最終手段として、何か方法はないものか…

 途方に暮れていたところ、このようなサイトを発見。


 なんと、金属材料を直接仕入れられるようです。


  郵便番号を入力しても住所が自動で入らない,選択肢にクレカ決済が無いなど怪しげな雰囲気を感じさせるサイト設計ですが、もう他に頼れるところはありません。さすがに会員登録後にメールで送ったログインURLを踏ませるくらいはしてもいい気が・・・

 タングステン線φ0.5×500mmで4500円(別途送料)です。AS ○NEでは3000円しないのでやはり法人価格と個人価格は違います。(※1)

 ダイレクトマテリアル社のタングステン線はφ0.5×10mで4500円(別途送料)です。AS ○NE(とその代理店である楽天)では50cmで2800円程度(別途送料)なので、どう見ても破格の安さです。
(※1:定格と思いこんでいて長さを比較していませんでしたが、ダイレクトマテリアル社はAS ○NEの単価の8%しかしないことになります。ダイレクトマテリアル社のものは輪っかに巻いてありますが、AS ○NEのものは巻いていないのかもしれません。)


 さて、ダイレクトマテリアル社へのweb発注から2日後・・・

 タングステン線は無事納品されました。

 何ということでしょう。

 分析表とSDSが同封されています。混じりっけ無しのタングステンであることは間違いないとのことです。怪しげなどと言ってすみませんでした。




 さて、ネットの情報を頼りに揃えた道具はこの通り。

 こちらのサイトを参考にさせて頂きました。




・瓶

 適当な大きさのジャムの瓶です。電極を手で持ってるのもしんどいので割りばしやアイスの棒などで台を作成します。
 後述しますが、弐號機では別の材料を用います。
 ※ガラス瓶,バー: 0円


・溶液

 過炭酸ナトリウム溶液を水に飽和させたものです。 この過炭酸ナトリウムというのは衣類の漂白や洗濯槽の洗浄に用いられ、ホームセンターやドラッグストアで普通に売っています。参照サイトでは水酸化カリウムを推奨していますが、そんな危ないモノはやめておきましょう。"子供想い品質"どころではありません。
 60℃以上の熱湯を注いで溶かすとものすごい勢いで発泡しますが、これは酸素です。温度には気を付けましょう。
 参照サイトによると、溶液を再利用する際には全体の濃度が均一になるよう倒立混和する必要があるとのことです。ということで、保存・混合用の容器を用意するか、瓶のフタは捨てずにとっておくようにしましょう。
 ※過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)500g : 300円



・電源

 今回は直流法です。
 交流法を行う場合は家庭用電源に何らかの抵抗を噛ませてやるようですが、家庭用電源は言わずもがな100Vで、結線だけならば電気工事士の資格が要らないとはいえ、まかり間違えば火花が散ってビリッときてしまいます。大惨事です。
 直流法に必要な電圧は12Vとのことで、1.5Vの単三電池を8本直列にしました。電池の電圧の計算は中学生以来ですが、足し算なので簡単ですね。トーシロ心に電圧を上げればもっと早くできるのでは、と思ってしまいますが、こちらのサイトによるとどうやらそうでもないらしく、とりあえず教科書通りに12Vに設定します。
 12Vといえばバイク用のバッテリーがこのくらいの電圧ですが、充電済みのものをホームセンターで買うと5,000円以上します。タングステンニードル作成にあたっての消費電力がどのくらいか分かりませんが、使用するうちに使えなくなった場合はまた充電済のものを買うか、充電器で充電することになるわけで、普段から縁のある人ならまだしも、そうではない人間としてはあまり手が出ません。
 これに対して1.5Vの単三電池は10本買っても1000円しませんし、電池ケースもやはり500円以内で揃えられるため、遥かにお得です。乾電池であれば他に普段の生活の中でも用途があるというのも強みです。
 ※工作用電池ボックス(単三×4本 6V用)×2 : 400~500円
 ※バッテリースナップ×2セット : 300円
 ※アルカリ単三電池(8本) : 600円


・配線

 ワニ口は100均で購入。配線はホームセンターで買いました。
 結線は絶縁テープを使用。
 タングステン線はプラス側に挟みます。
 参照サイトでは、マイナス側には銅線を使っていますが、 今回は銅メッキ鉄製ステイプルを使いました。林檎か蜜柑の段ボールの底を留めていたやつを真っすぐに伸ばしてとっておいたものです。貧乏性です。ステイプルを流用する場合、モノによって被膜があるかもしれないので要注意です。
 ※家庭用ワニ口(8個入り): 100円
 ※工作用コード(φ0.18mm×12芯 5m)ブラック・レッド: 320円
 ※ビニテープ(0.2mm×19mm×10m): 90円
 ※陰極用金属薄片 : 0円

 今回はスイッチを省略したので、乾電池の出し入れによってON/OFFを切り替えます。

たぶん図にするとこんな感じ

 (このへんのテストは常に成績が悪かったのでやらかしてたら教えてください)


 ニッパーやバーナーなどを含まずに、今回もろもろ一式かかったコストは8000円程度です(ニードルホルダーについては後述します)。ガラス瓶や陰極用銅線を買っても+200円程度でしょう。一番高かったのはタングステンですが、出来合いのタングステンニードルは3本で10000円くらいするので、それと比べるとかなりお得なはずです。


工作用コード,バッテリースナップ,電池ボックス,ワニ口クリップ,絶縁テープ


 懸念として、タングステン線から作成したニードルは、研磨を重ねるうちに焼結できていない撚り合わせ部分が出てきて、そういった状態で再研磨すると針先がホウキ状になって使い物にならなくなるのでは、ということが挙げられます。恐らく出来合いのタングステンニードルは内部が均一になっているはずで、もしそうであれば、理論上は消えてなくなるまで研磨して再利用できるはずです。

 まあ、ホウキ化したらそうなったで考えるとして、出来合いのニードルを研ぎ直すにも研磨装置が必要なので、どちらの針を使うにせよ数千円ばかりの投資で研磨装置を用意しておく必要性は看過できません。

 新人タングステンニードル作家としてはまずどんな品物が良作なのかが掴めていないため、試行錯誤しながら生み出される様々な形状のニードルをとっておいて、実地で試すことにします。また、七人の侍における三船敏郎スタイルよろしく、ダメになったらすぐ別のを使いたいというのもあります。結果は後程。





T E P U - I 、始 動


 材料が揃いましたので、さっそく研磨していきます。


割り箸の処理などいろいろひどい電解装置初號機
名付けて「TEPU-I」



タングステンニードル職人の朝は早い。

「まぁ好きではじめた仕事ですから」

最近は良い空き瓶が無いと愚痴をこぼした

まず、ガスバーナーの入念なチェックから始まる。

「やっぱり一番うれしいのはヨコエビのきれいな標本ができた時ね、この仕事やっててよかったなと」

「毎日毎日濃度と電圧が違う 自動では出来ない」


額に流れる汗をぬぐいながら

「いずれは一家に一本、うちのニードルが置いてある時代がくればと」


そんな夢をてらいもなく語る彼の横顔は職人のそれであった




①切断

 参照サイトの注意に従い、赤くなるまで焼いたタングステン線をニッパーで切断します。タングステンの融点は3000℃以上なのでたかだか2000℃に満たない炎に炙ったくらいで融着するとは思えませんが、ものは試しです。真空中で通電させながら切断すべしというサイトもありますが、いろいろと無理があるので私はガスコンロで焼きます。
 赤くなったところを切るために、とりあえずラジオペンチで端を押さえ、ニッパーを炎の中に入れるくらいの勢いで切りました。扱いの良さなどを考え、5~10cm程度の針を作ることになりますが、目分量です。
 ニッパーで切る時に切り口が潰れると、後述のホルダーへの取り付けに支障をきたす場合があります。要注意です。



②電解

 スタンバイしてある電解装置の陽極側に加熱切断したタングステン線をセットし、スイッチ代わりの電池を嵌めます。初回、溶液は熱めに溶かしたため酸素の泡で満たされています。
 すると、両極から細かな発泡がみとめられました。参照サイトには直流法はあまり泡が出ず、交流法は激しく発泡して針の表面を洗う、などと書かれていましたが、見た感じは直流法で生まれた発泡も針の表面を撫でて水流を起こすには十分なのではと思われました。
 そして放置。

 参照サイトによると1本仕上げるのに7~8時間かかるとのことで、夜仕掛けて朝には出来上がっているというのが普通とのことでしたが・・・
  
 なんと、ものの1時間弱で出来上がっているではありませんか・・・

 私が炭酸水素ナトリウムの泡に包まれながら温泉科学に身を委ねている間に、タングステン線は酸素やら何やらの泡に包まれながらニードルへと変身していました。

 もう1本作ろうとしたところ、1時間やそこらでは尖らないことが分かりました。やはり酸素がシュワシュワしている状態での電気分解は時短になるようです。

 2本目の針はとりあえず室温で一晩放置してみます。

 翌朝・・・

 2号の針もかなりいびつな形状に変わっていました。

 しかも短い・・・

 200円分くらいのタングステンは私が夢を見ているうちに溶けて消えたようです。


 電解研磨されるタングステン線のイメージ図です。

この真ん中の針が欲しい

 実際は微妙に水位が変動したり、針先への付着物によって研磨が妨げられたりして、多少いびつな形状になります。
 理想的なタングステンニードルの形状は約5mm長円錐形です。このようなニードルを安定的に作成できればタングステンニードル職人としては一人前でしょう。
 細すぎると針としての突破力がなくなり、更に研磨すると途中で脱落して短い針になってしまいます。



 何本も針を作ってみて気付いたのは・・・

・1本目が一番反応が良い
・溶液の温度が高いと激しく反応し電解が進む
・溶液は混和するより作り直したほうが良さげ
・電池を休ませてから使うと反応が良い

  つまり、溶液は徐々に劣化するらしく、電源もゆるゆるとパワーダウンしていくため、この設備で寝ながら安定した品質の針づくりは難しいのではということです。ではどうするか。アツアツ時短プランあるいは片手間で数時間かけて様子を見ながらやるしかなさそうです。

 ちなみにホウキ化現象は今のところ起きていません。



③装着

 尖らせたタングステン線をニードルホルダーに装着。これで解剖針の完成です。
 専用のニードルホルダーはAS ○NEで取り扱いがあるものの、販路のないパンピーには手の届かない代物です。
 そこで、参照サイトにて紹介されていた代用品を、半信半疑で購入してみました。

 0.5mmのシャープペンシルです。

 タングステンニードルホルダーは4000円くらいします。どうせならここはシャープペンシルにこだわってみようと思い、398円くらいのを買ってみましたが、それでも値段は10分の1です。

 ニードルホルダーはねじ込んで締めて固定するのが普通ですが、シャープペンはノックすれば把握器が開き、手を離せば締まる簡単操作で、ネジと異なり使ううちに緩むこともありません。
 どんな長さのニードルを使っても、好きな長さで固定ができます。非の打ちどころがありません。

 シャープペンにある程度の精度(重みがありしっかり握れること)が欲しいのと、標本を扱う場面ではエタノールが付着するのでゴム部材がないほうがよいということで、いろいろと探してみました。

 そこで選ばれたのは、ぺんてるのグラフギアです。

 これはその名の通り製図などの用途でプロが使うことを想定した商品で、描いた線が見えやすいようにペン先が細長くなっているなど、随所に工夫が施されています。

メタル調なのでかっこいい

 グラフギアは最長12cmのニードルまで対応可能。長めに作ったニードルを研ぎ直しながら使い続けるという用途にピッタリです。

 他社製品にも類似の製図用シャープペンシルがありますので、より使いやすいものはあるかもしれません。



過炭酸ナトリウム顆粒,タングステン線,ニードルホルダー





T E P U - II 、始 動


 後日、弐號機となる「TEPU(Tungsten Electrolysis Polishing Unit)-II」が完成したとの連絡を受け、取材班はさっそく現場に駆け付けました。


 元ネタはネットで見かけた「百均のグッズ間違った使い方選手権」的なやつですが、その時はディテールの紹介がなかったので、いろいろと考えました。

 まず絶縁体でなければいけないので、ガラスか陶器。樹脂は軽くそれ自体が重しにならないことや劣化が嫌なのでとりあえず除外。内部の様子を見たいので陶器は除外。
 そうなると、ガラス製の醤油差しが考えられます。
 陰極を差すために空気抜きの穴は必須。
 こうして選ばれたのがダイソーのコレでした。


 1個100円(税抜)でした。
 使用にあたり、注ぎ口や空気抜きの穴は少し削って広げています。

 注ぎ口をそのまま残して陽極を下ろすガイドとしていますが、そうすると水面までの距離が長くなります。そのため、タングステン線を切断する時には初號機よりも長めにとる必要があります。

 空気抜きの穴から線を入れて陰極につなぎます。
 ワニ口をフタの下につけるとクリップを水に浸すことになるのでよろしくないと考え、電極に直巻きしました。タングステン線と接触しないよう、電極にはあるていど水面下まで被覆をつけておきます。ただし、電線そのものを電解液に浸すと毛細管現象によって溶液が陰極線を逆流するという世にも恐ろしい現象が起こるので、必ず陰極は別にして電線を水面から出しておくようにします。今回はユニクロのチェーンを下げてみました。これは電線を直巻きしやすいのと、電極を複雑な構造にして電解槽の下まで垂らすことによって水流の発生を狙ったものです(実際のところあまり効果はなさそう)。
 陽極はワニ口クリップに挟んだタングステン線を、注ぎ口から放り込むだけ。ワニ口クリップの大きさが注ぎ口に合わなければ適宜調整します。


TEPU-II
 スナップの付け替えによって陰極側を交換できるという、

 TEPU-Iと共用可能な安心設計


 ガラス瓶は初號機に使用したブラックカラントのジャム瓶より二回りほど小さく、電解槽としてはあまり適正なサイズではないと思います。両極同士が近く短絡しやすいのです。


 ちなみに短絡するとこうなります。



 付近に燃えやすいものがあると大変危険です。電池ボックス用のお皿などがあったほうが良いです(その前に短絡さすなという)。



使 用 感

 さて、気になる手作りタングステンニードルの使い心地について。

 まず、めっちゃ鋭いです。細くて硬くてよく尖ってる。ヨコエビと闘うのに理想的な武器です。

 ただし、どうやら先端が鋭すぎて、普通の針を跳ね返すような胸節やら底節板やらに対しても簡単に針先が食い込んでしまいます。
 しかも、刺さったところがクモの巣状にヒビ割れやすいようです。
 これはまずい。

 ヒビ割れ現象のため線状の切断を要する胸脚の取り外しでは苦い思いもしましたが、文字どおりピンポイントの局所破壊には非常に優れており、腹肢,尾肢,触角,口器の取り外し効率は抜群に向上しました。すばらしい。

 ただし、標本に対して無敵でも人為的な接触には極めて弱く、どっかにぶつけたりすると容易く曲がったり折れたりします。



 電解しすぎて髪の毛より細くなったタングステン線にも活躍の機会はあります。

 肉眼で目に見えるか見えないかという太さになっても曲げ加工が可能なので、顕微鏡下で細工すれば小さなループを作れます。

 石丸(1985)で言うところのループはバラした付属肢を拾ったりするものですが、解剖途中にヨコエビが逃げないようにするサスマタ的な道具を作ってみたりしました。ただし、ヨコエビに押し付けると曲がってしまうこともあるため、あまりに細くなってしまった線を大きなヨコエビに使うのは厳しいと思います。
 



 以下、タングステンニードルを活用して一般的なサイズ(体長5mm ±3mm程度)のヨコエビを解剖する場合の要点です。

・ピンポイント破壊には文句なし絶大な効果

・胸脚の取り外しを行う際にはいきなり刺さない(特に硬い標本)


 最初に自由胸節と底節板の間にナイフ状に研いだ昆虫針を入れて、針を刺す凹みを作るとわりとうまくいきます。
 
前回紹介した、昆虫針メスを用いた解剖手法への補遺







プレパラート封入

Count Three glasses
 学生以来です。
 実は小学校の頃からプレパラート封入というのは苦手な部類に入っておりまして、大学の時分にもあまり巧くいかないなぁと思ってやっていました。小中学校の勉強なんか役に立たないと決めつけてはいけませんね!

 おおむね小学校の教科書の通りです。

①スライドグラスに過不足ない量の液体を置きます(液体については後述)

②サンプルを浸します

③カバーグラスの一方の端を液体の脇に触れるようにして針などを添え、もう片方の端をピンセットなどで支えながら、気泡が入ったりサンプルが逃げたりしないよう、絶妙なテンポで被せていきます。封入剤の性質やサンプルの様子によりテンポを調節します。




 師匠のおすすめはまずグリセリンで封入した後に(半)永久プレパラート化するというものです。

 大顎など立体的な構造をもつパーツは向きを変えながら観察することが必要で、いきなり封入剤に埋入してしまうより多少動かせる状態にしておいたほうがスケッチしやすいとの配慮だそうです。

 グリセリンプレパラートはそのままにしておいても乾くことはありませんが、横にしたりすれば垂れますし、上から押したりすれば圧が標本に伝わります。

 

 

プレパラート封入の例。
1個体分のパーツはスライドグラス1枚に封入したほうが後々管理しやすい。
(口器・触角 / 胸脚 / 腹肢・尾肢)

 
 封入時に潰れやすいのは各胸脚,尾肢大顎です。

 潰さないようにふわっと封入すると、高倍率で観察する時に対物レンズにぶつかったり、グリセリンが流動してサンプルが踊ったり、カバーグラスが逃げ出したり、像がシャープに見えない原因になったりします。

 封入がうまくいかないと、剛毛やら腹肢の毛やらは絡まったりあらぬ方向へいってしまったり、顕微鏡を覗いてみてガッカリな事態になりかねません。

 腹肢の毛については省略している文献も多く、ポージングにはあまり神経質にならなくてよいと思います。ただあまり副肢が絡まりすぎるのは良くないのと、retinaculaなど記述に値する形質は見えるようにしておく必要はあるでしょう。

 プレパラートには当然のことながら後々紐づけできるように、標本番号やら何やらを記入する必要があります。しかし、油性ペンを使うと、固定液などに使用しているエタノールやカバーグラスの縁に塗るトップコートに含まれる溶剤が触れて消えてしまうことが懸念されます。というか普通に消えます。

 スライドグラスには文字を書き込めるようフロストという加工を施したものもありますが、今回は買っていません。

 そこで、描画の際に用いるメンディングテープを流用してシャープペンシルで情報を記入してみました。これはおすすめです。













(参考文献)

- 石丸信一 1985. ヨコエビ類の研究方法. 生物教材, 19(20): 91-105.
- 富川光・森野浩 2009. ヨコエビ類の描画方法. 広島大学大学院教育学研究科紀要, 17: 179-183. 



2017年12月26日火曜日

2017年の新種ヨコエビを振り返って(12月度活動報告)


 2017年のヨコエビ界隈を総括するにあたり、適当な切り口と思われる「新種記載」の集計をしてみようと思います。

 Amphipod Newsletterでは毎年のヨコエビ論文というものを洗いざらい紹介しているためいずれキャッチアップは可能ですが、今年の新種は今年のうちに振り返りたい、それが人情と言うモノではないでしょうか(何がだ)(どこがだ)。


 本来、こういったリストは学名のアルファベット順あるいは上位分類ごとに並べたほうが親切ですが、振り返り的なテイストを持たせるため敢えてここではウェブ公開日または出版日に従い時系列にしてみます。目録として使用したい場合は各自で並び替えてください。
 そして追加の注意事項。当方はいわゆる「ヨコエビ」のみを興味の対象としているためワレカラ類,クジラジラミ類は含まれていないことと、私の情報収集方法は偏っているため全ての新種を追うことはできていないと思います。予めご了承ください(今年、ワレカラの新種を記載した論文が出ているということは一応存じております)。






New Species
of
Gammaridean Amphipods
Described 
in 2017

(Temporary list)






1月 January



Zhao & Hou, 2017

Pseudocrangonyx elegantulus Hou, 2017

 中国河南省の洞窟からPseudocrangonyxメクラヨコエビ属の新種。この類は極東のみに分布する暗居性淡水ヨコエビです。メクラヨコエビ属各種の検索表と分布地図を提供しています。Zookeysなので無料で読めます。





2月 February



Davolos, Matthaeis, Latella & Vonk, 2017

Cryptorchestia ruffoi Latella & Vonk, 2017

 ギリシャのロードス島からTalitridaeハマトビムシ科の新種。形態と遺伝子を検討しています。Zookeysなので無料です。





Bastos-Pereira & Ferreira, 2017

Spelaeogammarus uai

 ブラジルより洞窟性カンゲキヨコエビ類の新種。この類は近年ブラジルを中心に研究が盛んです。第5~6歩脚の前節に剛毛が多く、オールのように使って水中を泳ぐようです。属内の検索表を提供しています。本文は有料であるものの、アブストに詳細な形態的特徴の言及あり。





Myers, Lowry & Billingham, 2017

Fluviadulzura spinicauda

 オーストラリアより淡水性Hadzioideaハッジヨコエビ科の新種新属記載。本文は有料。





3月 March




Momtazi, Lowry & Hekmatara, 2017

Persianorchestia nirvana

 イランから砂浜性ハマトビムシ科の新属新種。本文は有料。




Tomikawa, Nakano & Hanzawa, 2017

Jesogammarus (Jesogammarus) bousfieldi ナガレヨコエビ
Jesogammarus (Jesogammarus) uchiyamaryui ウチヤマヨコエビ

 山形県と長崎県から、淡水性Anisogammaridaeキタヨコエビ科の記載です。富川先生の過去の仕事の流れを汲み、形態と分子系統学的解析を行っています。キタヨコエビ科の産地と遺伝子情報(28S,COI,16S領域)を表にまとめており、しかも無料で読めます。




4月 April



Esmaeili-Rineh, Mirghaffari & Sharifi, 2017

Niphargus hakani

 イランから地下水性ヨコエビを記載。このNiphargus属は第3尾肢が非常に長く伸長するという特徴的な形態をしており、欧州から中東にかけて旧北区の地下水系から既に320種ほどが記載されているという、驚異的な多様性をもちます(詳しく知りたい方にはNIPHARGUS infoというサイトがオススメです)。形態分類と遺伝子解析を併用。本文無料公開。




Matsukami, Nakano & Tomikawa, 2017

Nicippe recticaudata トヨタマミコヨコエビ

 今年一番の話題をさらったヨコエビです(たぶん)。
 日本で馴染みの薄いPardaliscidae科に属します。宮崎県都井岬沖の水深265~367mから採取され、海に縁のある「豊玉姫」の名が冠せられました。大学がプレスリリースを行い、ニュースにもなりました。富川先生によると、やはり学生さんが筆頭著者で記載したことで大学が大きく取り上げたようです。
 Zookeysなので無料で読めます。形態分類のみならず遺伝子の差異についても分析しており、加えてNicippeミコヨコエビ属の和名提唱と検索表の提供まで行っています。





5月 May


Sawicki, Holsinger, Lazo-Wasem & Long, 2017

Crangonyx sulphurium

 フロリダの地下水系よりCrangonyctidaeマミズヨコエビ科の新種を記載。本文は有料。





Zeina & Asakura, 2017

Cerapus maculanigra

 紅海からIschyrocerinaeカマキリヨコエビ亜科Cerapusホソツツムシ属の新種を記載。筒に入ったまま泳いだりするヨコエビの仲間です。触角の色素斑が目立つ特徴的な種です。属内全21種の検索表を提供しています。本文は有料。





Peart, 2017

Sunamphitoe angrox
Sunamphitoe batavia
Sunamphitoe dampierensis
Sunamphitoe jonathani
Sunamphitoe lehae
Sunamphitoe mixtura
Sunamphitoe naturaliste
Sunamphitoe stevesmithi

 ニュージーランドとオーストラリアよりAmpithoidaeヒゲナガヨコエビ科Sunamphitoeニセヒゲナガヨコエビ属の8種を記載。本属には昨年 Peramphithoeイッケヒゲナガヨコエビ属が編入された(Sotka et al., 2016)ばかりで、それを踏まえた属全体の議論も行っています。有料。





White & Krapp-Schickel, 2017

Leucothoe minoculis
Leucothoe pansa
Leucothoe reimeri
Paranamixis sommelieri 

 紅海からLeucothoeマルハサミヨコエビ属3種とParanamixisタンゲヨコエビ属1種の記載です。いずれも付着生物に棲み込みを行うグループです。タンゲヨコエビ属はオスの第1咬脚が退化・消失するという極めて珍しい特徴をもち、片腕の剣士・丹下左膳にちなみこの名があります。
 近縁種の報告と生息地および形態の比較にも余念のない、非常に密度の濃い論文です。European Journal of Taxonomyというあまりヨコエビ界隈で馴染みのない学術誌ですが、無料で公開されています。





 Delić, Švara, Coleman, Trontelj & Fišer, 2017

Niphargus alpheus
Niphargus anchialinus
Niphargus antipodes
Niphargus arethusa
Niphargus doli
Niphargus fjakae
Niphargus pincinovae  

 バルカン半島西部より、地下水性ヨコエビNiphargus属の中で特に大型の体躯を誇るNiphargus arbiterNiphargus salonitanus species complexから隠蔽種7種を記載。本文は有料。






6月 June



Zhao, Meng & Hou, 2017

Gammarus simplex
Gammarus glaber

 中国北西部から淡水性Gammarusヨコエビ属の記載です。類縁関係にある種について検索表を提供しています。本文は有料でのリリースですが、アブストに具体的な形態の記述があります。 






Delić, Trontelj, Rendoš & Fišer, 2017

Niphargus chagankae
Niphargus cvajcki
Niphargus goricae
Niphargus gottscheeanensis

Niphargus iskae
 Niphargus kapelanus
Niphargus kordunensis
Niphargus malagorae

 スロヴェニアから、地下水系ヨコエビNiphargus stygiusの隠蔽種8種を記載。驚くべきことに形態の記述は一切なく、104個体37種を使った分子系統樹を描いた上で、種を識別する遺伝子配列をmolecular diagnosisとして掲出しています。従来記述されてきたN. stygiusの識別形質を全て兼ね備え、他種とは識別できても互いには形態での見分けがつかない、ということでしょう。新しい時代の幕開けを感じさせます。本文をタダで読めます。





Andrade & Senna, 2017

Ampithoe robustimana
Cymadusa ygar 

 ブラジル北部よりAmpithoidaeヒゲナガヨコエビ科2種の記載。アブスト中で識別形質の言及あり。本文は有料。






7月 July



Suzuki, Nakano, Nguyen, Nguyen, Morino & Tomikawa, 2017

Solitroides motokawai 

 ヴェトナムからオカトビムシ類の新属新種。メスしか見つかっていないため、TalitrusグループかOrchestiaグループかは不明です。本文までタダで読めます。





Ortiz & Winfield, 2017

Nuuanu jaumei

 カリブ海からNuuau属の記載。地中海や中米,南太平洋など暖かい海域に分布するハッジヨコエビ上科の仲間です。属内の検索表も提供。本文は有料です。





Myers, Trivedi, Gosavi & Vachhrajani, 2017

Parhyale piloi

 インドよりHyalidaeモクズヨコエビ科の記載。既知種との比較を実施。本文は有料です。





Hudec, Fišer & Dolanský, 2017

Niphargus diadematus

 チェコから地下水性ヨコエビNiphargus属の記載。形態を重視した分類です。本文は有料。






8月 August




Tato & Moreira, 2017

Pareurystheus vitucoi
Photis guerra

 欧州イベリア半島北西部からCorophiidaeドロクダムシ科とPhotidaeクダオソコエビ科の記載です。いずれも盲目種です。本文は有料ですがアブストに形態の言及があるのと、なぜかこちらPhotis guerraの美麗イラストを拝むことができます。





Heo & Kim, 2017

Eocorophium longiconum

 韓国よりドロクダムシの記載。Eocorophium属は1997年にBousfield & Hooverにより分離新設されたグループで、それから20年の間、E. kitamoriタイガードロクダムシ(原記載は瀬戸内海)のみが含まれる単形分類群でしたが、これで2種目が見つかったことになります。本文は有料。





Jung, Choi, Kim & Yoon, 2017

Photis stridulus
Podoceropsis clavapes

 韓国よりPhotidaeクダオソコエビ科の2種の記載と1種の再記載です。本文は有料ですが、アブストで形態的特徴について言及があります。





Arfianti & Wongkamhaeng, 2017

Victoriopisa bantenensis

 インドネシアのジャワ島から、Eriopisidaeセンドウヨコエビ科ホソオヨコエビ属の記載。日本におけるこのグループの代表種として、V. ryukyuensis リュウキュウホソオ,V. wadai シコクホソオヨコエビが知られます。世界的には眼があったりなかったりしますが、本種は無眼です。本文は有料ですが、アブストで識別形質を挙げています。






Ball, Webber & Shepherd, 2017

Waematau kohuroa
Waematau rereke
Waematau ringanohinohi

 ニュージーランドから3種のオカトビムシ類の記載。Orchestiaグループに属します。分子系統学的な解析も行っています。本文は有料。





Heo & Kim, 2017
Sinocorophium jindoense

 韓国からドロクダムシ1種の記載です。尾節がすべて分節するSinocorophium属の仲間で、日本の河口干潟泥底などに産するS. japonicum二ホンドロクダムシとは近縁ということになります。本文は有料でのリリースとなっているものの、アブストに形態と分布の記述あり。



Huges & Lowry, 2017

Hermesorchestia alastairi

 オーストラリアから砂浜性ハマトビムシの新属新種を記載。本文は有料。





9月 September



Lowry, Springthorpe & Azman, 2017

Talorchestia bunaken
Talorchestia dili
Talorchestia seringat
Talorchestia sipadan
Talorchestia yoyoae

 東ティモール,シンガポール, マレーシア,インドネシアから5種のハマトビムシ類の新種。加えてパプアニューギニアなどから既知種の報告も行っています。本文は有料。






10月 October



Jung, Coleman & Yoon, 2017

Aroui minusetosus

 韓国からクツミガキソコエビ類の記載です。日本のA. onagawaeとは近縁ということになります。Zookeysなのでタダで読めます。





Hou & Zhao, 2017

Myanmarorchestia peterjaegeri Hou, 2017
Myanmarorchestia seabri Hou, 2017

 ミャンマーからTalitridaeハマトビムシ科の2新種1新属の記載。森林性のオカトビムシです。Zookeyなので無料です。






d’Udekem d’Acoz & Verheye, 2017

Epimeria (Drakepimeria) acanthochelon 
Epimeria (Drakepimeria) anguloce 
Epimeria (Drakepimeria) colemani 
Epimeria (Drakepimeria) corbariae 
Epimeria (Drakepimeria) cyrano 
Epimeria (Drakepimeria) havermansiana 
Epimeria (Drakepimeria) leukhoplites 
Epimeria (Drakepimeria) loerzae 
Epimeria (Drakepimeria) pandora 
Epimeria (Drakepimeria) pyrodrakon 
Epimeria (Drakepimeria) robertiana 
Epimeria (Epimeriella) atalanta 
Epimeria (Hoplepimeria) cyphorachis 
Epimeria (Hoplepimeria) gargantua 
Epimeria (Hoplepimeria) linseae 
Epimeria (Hoplepimeria) quasimodo 
Epimeria (Hoplepimeria) xesta 
Epimeria (Laevepimeria) anodon 
Epimeria (Laevepimeria) cinderella 
Epimeria (Pseudepimeria) amoenitas 
Epimeria (Pseudepimeria) callista 
Epimeria (Pseudepimeria) debroyeri 
Epimeria (Pseudepimeria) kharieis 
Epimeria (Subepimeria) adeliae 
Epimeria (Subepimeria) iota 
Epimeria (Subepimeria) teres 
Epimeria (Subepimeria) urvillei 
Alexandrella chione

 Epimeriidaeヨロイヨコエビ科の27新種とStilipedidae科の1新種を記載した上で、Epimeriaヨロイヨコエビ属の中に4亜属を新設して整理を試みた意欲作で、ネット記事でも盛り上がりました。
 掲載されているのは、ヨロイヨコエビ科2属8亜属59種(+未記載6種)のほか、Acanthonotozomellidae科3属7種,Dikwidae科1属1種,Stilipedidae科3亜科4属14種(+未記載4種),Vicmusiidae科1属1種の、計5科11属82種(+未記載10種)に及び、近年稀に見る大著といえます。
 南極から亜南極にかけて分布するテンロウヨコエビ上科の7科から、各亜属を構成する種に至るまで、各分類群ごとにまめに検索表を提供しています。種の記載および亜属のグルーピングにあたって形態分類と遺伝子解析を併用しており、非常に説得力のある仕上がりになっています。
 こちらもEuropean Journal of Taxonomyで無料公開されています。美麗な写真が多数掲載され、オススメです。





Streck, Cardoso, Rodrigues, Graichen & Castiglioni, 2017

Hyalella gauchensis 
Hyalella georginae

 ヒアレラ属にブラジルから2新種。このグループは、アメリカ大陸で多様性を誇るモクズヨコエビ系淡水ヨコエビです。本文は有料ですが、アブストで識別形質を確認できます。




Winfield, Hendrickx & Ortiz, 2017


Stephonyx californiensis

 カリフォルニア湾水深1150mの深海で得られた腐肉食性ヨコエビの新種。アブストで識別形質の言及あり。種群の分布についても属内での比較検討を行った決定版的な文献です。本文は有料。




11月 November


Rodrigues, Senna, Quadra & Bueno,  2017

Hyalella montana Rodrigues, Senna, Quadra, & Bueno, 2017

 ブラジルの標高2200mよりヒアレラ属の2新種を記載。モクズヨコエビ類に近縁の淡水性ヨコエビです。本文は有料。




Esmaeili-Rineh, Sari, Fišer, Bargrizaneh, 2017

Niphargus persicus
Niphargus hosseiniei
Niphargus ilamensis
Niphargus sohrevardensis

 イランより4種の地下水系ヨコエビNiphargus属を記載。形態分類と分子系統解析の手法を併用し、今後の研究に資する分類形質の開発にも取り組んだ研究とのことです。本文は有料。





Mamaghani-Shishvan, Esmaeili-Rineh & Fišer, 2017

Niphargus kurdistanensis

 イランの洞窟から地下水系ヨコエビNiphargus属を記載。形態分類と分子系統解析に基づいています。Zoological Studiesという聞きなれない学術誌ですが、無料で読めます。





Jung, Coleman & Yoon, 2017

Pseudorchomene boreoplebs

 韓国からLysianassidaeフトヒゲソコエビ科の記載。これまで南極および亜南極から報告されていたPseudorchomene属において、初の北半球産種かつ寒帯域外の記録となります。属内の検索表を提供。本文無料公開。





Labay, 2017

Sextonia caecus 

 サハリン島よりLiljeborgiidaeトゲヨコエビ科の1新種の記載と、Sextonia属内の検索表を提供しています。本文は有料。





Ortiz, Winfield & Ardisson, 2017

Psammogammarus barrerai

 メキシコ湾南西部の水深1317mよりEriopisidaeセンドウヨコエビ科スキマヨコエビ属の記載です。その属は日本からはP. mawatariiマワタリスキマヨコエビなどが知られます。本文は有料ですが、アブストに具体的な形態の記述があります。






12月 December


Ariyama & Taru, 2017

Grandidierella rubroantennata Ariyama & Taru, 2017 アカヒゲドロソコエビ
Grandidierella sanrikuensis Ariyama & Taru, 2017 サンリクドロソコエビ

 待望のドロソコ論文です。
 予報(藤田ほか, 2017)があったり、何かと気配が感じられていたAoridaeユンボソコエビ科Grandidierellaドロソコエビ属のニューフェイスが満を持して登場です。
 本邦において最もポピュラーと思われる、ベストオブ干潟ヨコエビことユンボソコエビ科のドロソコエビ属から、2種の新種に加えて、G. osakaensisオオサカドロソコエビを神奈川,静岡県,伊豆大島という新産地から報告しています。オオサカドロソコといえばかつて大阪市立自然史博物館に見に行った思い出のヨコエビですが、この分布を見るにもう(後略)
 かつて、アカヒゲドロソコエビという和名は、オーストラリアから記載されたG. insulaeという種に対応されていました(Ariyama, 1996)。しかし、後の研究により日本の個体群はオーストラリアのものとは別種と分かり、この度新種として記載されました。ヨコエビでは珍しく、和名を元に学名がつけられるというパターンで、rubro(紅い)+antennata(触角=ヒゲ)という種小名になっています。サンリクドロソコエビはその行く末が気になります。
 日本動物分類学会のSpecies Diversityに掲載されており、J-Stageから無料DL可能です。美麗な生体写真つきです。





Lowry & George, 2017

Leucothoe coelocarteriensis
Leucothoe coscinoderma
Leucothoe ircinia

 グレートバリアリーフにおいて3種の海綿から、Leucothoeマルハサミヨコエビ属の3新種を含む14種のヨコエビを記載。2017年の最後の記載となりました。他に、ブラブラソコエビ属の一種Aoroides parvusのハイパーアダルトを記録しています。本文は有料。





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 今回の集計では、今年の新種ヨコエビは109種です。
 ヨロイヨコエビの大量記載により種数がぐんと増えました。Niphargusが20種近く記載されているのもなかなかのハイペースだと思います。
 分子系統解析による隠蔽種の記載がトレンドとなっている感もあります。

 






(2017年新種記載論文)

Andrade, L.F., A.R. Senna 2017. Two new species of Ampithoidae (Crustacea: Amphipoda) from northeastern Brazil. Zootaxa, 4282(3).
Arfianti, T., K. Wongkamhaeng 2017. Restricted Access Subscription or Fee Access A new species of Victoriopisa bantenensis (Crustacea: Amphipoda: Eriopisidae) from West Java, Indonesia. Zootaxa, 4306(2).
Ariyama, H., M. Taru 2017. Three Species of Grandidierella (Crustacea: Amphipoda: Aoridae) from Coastal Areas of the Tohoku and Kanto-Tokai Districts, East Japan, with the Description of Two New Species. Species Diversity, 22(2): 187–200.
Ball, O.J.-P., W.R. Webber, L.D. Shepherd 2017. New species and phylogeny of landhoppers in the genus Waematau Duncan, 1994 (Crustacea: Amphipoda: Talitridae) from northern New Zealand. Zootaxa, 4306(2).
Bastos-Pereira, R., R.L. Ferreira 2017. Spelaeogammarus uai (Bogidielloidea: Artesiidae): a new troglobitic amphipod from Brazil. Zootaxa, 4231(1).

Davolos, D., E.D. Matthaeis, L. Latella, R. Vonk 2017. Cryptorchestia ruffoi sp. n. from the island of Rhodes (Greece), revealed by morphological and phylogenetic analysis (Crustacea, Amphipoda, Talitridae). ZooKeys, 652: 37–54.
Delić, T., V. Švara, C.O. Coleman, P. Trontelj, C. Fišer 2017. The giant cryptic amphipod species of the subterranean genus Niphargus (Crustacea, Amphipoda). Zoologica Scripta, 46(6): 740–752. 
Delić, T., P. Trontelj, M. Rendoš, C. Fišer 2017. The importance of naming cryptic species and the conservation of endemic subterranean amphipods. Scientific Reports, 7(3391).
d’Udekem d’Acoz,C., M.L. Verheye 2017. Epimeria of the Southern Ocean with notes on their relatives (Crustacea, Amphipoda, Eusiroidea). European Journal of Taxonomy, 359: 1–553.
Esmaeili-Rineh, S., S.A. Mirghaffari, M. Sharifi 2017. The description of a new species of Niphargus from Iran based on morphological and molecular data. Subterranean Biology, 22: 43–58. 
Esmaeili-Rineh, S., A. Sari, C. Fišer & Z. Bargrizaneh 2017. Completion of molecular taxonomy: description of four amphipod species (Crustacea: Amphipoda: Niphargidae) from Iran and release of database for morphological taxonomy. Zoologischer Anzeiger - A Journal of Comparative Zoology, 271: 57–79.
Heo, J.-H., Y.-H. Kim 2017. A new species and new record of the genus Sinocorophium (Crustacea, Amphipoda, Corophiidae) from Korean Waters. Zootaxa, 4312(1).
Heo, J.-H., Y.-H. Kim 2017. A new species of The genus Eocorophium
(Amphipoda, Corophiidae) from Korea. Crustaceana, 90(11-12): 1405-1414.

Hou, Z., S. Zhao 2017. A new terrestrial talitrid genus, Myanmarorchestia, with two new species from Myanmar (Crustacea, Amphipoda, Talitridae). Zookeys, 705: 15–39.
Hudec, I., C. Fišer, J. Dolanský 2017. Niphargus diadematus sp. n. (Crustacea, Amphipoda, Niphargidae), an inhabitant of a shallow subterranean habitat in South Moravia (Czech Republic). Zootaxa, 4291(1).
 — Huges, L. E., Lowry, J. K. 2017. Hermesorchestia alastairi gen. et sp. nov. from Australia (Talitridae: Senticaudata: Amphipoda: Crustacea). Zootaxa, 4311(4).
Jung, T.W., H.K. Choi, M.-S. Kim, S.M. Yoon 2017. Two new species of amphipods (Crustacea: Amphipoda: Photidae) from Korean waters with a redescription of Gammaropsis longipropodi. Zootaxa, 4300(3).
Jung, T.W., C.O. Coleman, S.M. Yoon 2017. Aroui minusetosus, a new species of Scopelocheiridae from Korea (Crustacea, Amphipoda, Lysianassoidea). Zookeys706: 17–29.
Jung, T.W., C.O. Coleman, S.M. Yoon 2017. Pseudorchomene boreoplebs, a new lysianassid amphipod from Korean waters (Crustacea, Amphipoda, Lysianassoidea). Zoosystematics and Evolution, 93(2): 343–352.
Labay, V.S. 2017. A new species of Sextonia Chevreux, 1920 (Crustacea: Amphipoda: Liljeborgiidae) from the Okhotsk Sea. Zootaxa, 4353(3).
Lowry, J.K., R.T. Springthorpe, B.A.R. Azman 2017. The talitrid amphipod genus Talorchestia from the South China Sea to the Indonesian Archipelago (Crustacea, Senticaudata). Zootaxa, 4319(3).
Mamaghani-Shishvan, M., S. Esmaeili-Rineh, C. Fišer 2017. An Integrated Morphological and Molecular Approach to A New Species Description of Amphipods in the Niphargidae from Two Caves in West of Iran. Zoological Studies, 56(33): 1–20.
Matsukami, S., T. Nakano, K. Tomikawa 2017. A new species of the genus Nicippe from Japan (Crustacea, Amphipoda, Pardaliscidae). Zookeys, 668: 33–47.
Momtazi, F., Lowry, J.K., Hekmatara, M. 2017. Persianorchestia, a new talitrid genus (Crustacea: Amphipoda: Talitridae) from Gulf of Oman, Iran. Zootaxa, 4238 (1): 119–126.
Myers, A.A., A.M. George 2017.  Amphipoda living in sponges on the Great Barrier Reef, Australia (Crustacea, Amphipoda). Zootaxa, 4365:(5).
Myers, A.A., J.K. Lowry, Z. Billingham 2017. A new genus and species of freshwater Hadziidae, Fluviadulzura spinicauda gen. nov., sp. nov. from rivers in Victoria, Australia (Amphipoda). Zootaxa, 4232(1).
Myers, A.A., J.N. Trivedi, S. Gosavi, K.D. Vachhrajani 2017. A new species of genus Parhyale Stebbing, 1897 (Crustacea, Amphipoda, Hyalidae) from Gujarat State, India. Zootaxa, 4294(5).
Ortiz, M., I. Winfield 2017. A new species of Nuuanu (Crustacea, Amphipoda, Nuuanuidae) from a Caribbean coral reef with identification keys to males and females of Nuuanu species. Zootaxa, 4294(2).
Ortiz, M., I. Winfield, P.-L. Ardisson 2017. A new deep-sea Psammogammarus species (Crustacea: Amphipoda: Eriopisidae) from the continental slope of the SE Gulf of Mexico.  Journal of Natural History: 1–16.
Peart, R.A. 2017. Analysis of the genus Sunamphitoe Spence Bate, 1857 (Amphipoda: Ampithoidae) with descriptions of eight new species. Zootaxa, 4269(3).
Rodrigues, S.G., A.R. Senna, A. Quadra, A.A.P. Bueno  2017. A new species of Hyalella (Crustacea: Amphipoda: Hyalellidae) from Itatiaia National Park, Brazil: an epigean freshwater amphipod with troglobiotic traits at 2,200 meters of altitude. Zootaxa, 4344(1):147–159. 
Sawicki, T.R., J.R. Holsinger, E.A. Lazo-Wasem, R.A. Long 2017. A new species of subterranean amphipod (Amphipoda: Gammaridae: Crangonyctidae) from Florida, with a genetic analysis of associated microbial mats. Journal of Crustacean Biology, 37(3): 285–295.
Streck, M.T., G.M. Cardoso, S.G. Rodrigues, D.A.S. Graichen, D.D.S. Castiglioni 2017. Two new species of Hyalella (Crustacea, Amphipoda, Hyalellidae) from state of Rio Grande do Sul, Southern Brazil. Zootaxa, 4337(2).
Suzuki, Y.,  Takafumi  Nakano,  Son  Truong  Nguyen,  Anh  Thi  Thu  Nguyen,  Hiroshi  Morino &  Ko  Tomikawa 2017. A  new  landhopper  genus  and  species  (Crustacea:  Amphipoda:  Talitridae)  from  Annamite  Range,  Vietnam. Raffles Bulletin of Zoology, 65:  304–31.
Tato, R., J. Moreira 2017. Two new species of the Suborder Senticaudata (Crustacea: Amphipoda) from the upper continental slope off Galicia (NW Iberian Peninsula). Zootaxa, 4300(2).
Tomikawa, K., T. Nakano, N. Hanzawa 2017. Two new species of Jesogammarus from Japan (Crustacea, Amphipoda, Anisogammaridae), with comments on the validity of the subgenera Jesogammarus and Annanogammarus. Zoosystematics and Evolution, 93(2): 189–210.
White, K.N., T. Krapp-Schickel 2017.  Red Sea Leucothoidae (Crustacea: Amphipoda) including new and re-described species. European Journal of Taxonomy, 324: 1–40.
Winfield, I., M.E. Hendrickx, M. Ortiz 2017. Stephonyx californiensis sp. nov. (Amphipoda: Lysianassoidea: Uristidae), a new bathyal scavenger species from the Central Gulf of California, Mexico, and comments on the bathymetric and geographic distribution of the Stephonyx species group.  Journal of Natural History, 51(47-48) :2793–2807.
Zeina、A., A. Asakura 2017. A new species of Cerapus Say, 1817 (Amphipoda: Ischyroceridae) from the Red Sea, with a key to the worldwide species of the genus. Journal of Crustacean Biology, 37(3): 296–302.
—  Zhao, S., Z. Hou 2017. A new subterranean species of Pseudocrangonyx from China with an identification key to all species of the genus (Crustacea, Amphipoda, Pseudocrangonyctidae). ZooKeys, 647: 1–22.
Zhao, S., K. Meng, Z. Hou 2017. Two new Gammarus species and a new name (Crustacea: Amphipoda: Gammaridae) from Northwest China. Zootaxa, 4273(2).



(その他参考文献)
Ariyama, H. 1996. Four species of the genus Grandidierella (Crustacea:Amphipoda: Aoridae) from Osaka Bay and the northern part ofthe Kii Channel, central Japan. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 37: 167–191.
Bousfield, E.L.,  P.M. Hoover 1997. The amphipod superfamily Corophioidea on the Pacific coast of North America. Part V. Family Corophiidae. Corophiinae, new subfamily. Systematics and distributional ecology. Amphipacifica, 2: 67-139.
藤田喜久, 下村通誉, 多留聖典, 有山啓之, 逸見泰久 2017. 近年国内から発見された希少甲殻類(端脚目,等脚目,十脚目)についての話題. Cancer, 26: 65-70.
Sotka, E.E., T. Bell, L.E. Hughes, J.K. Lowry, A.G.B. Poore 2016. A molecular phylogeny of marine amphipods in theherbivorous family Ampithoidae. Zoological Scripta, 46(1): 85-95.





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補遺(6-Mar.-2018)


*Winfield, Hendrickx & Ortiz (2017) を追加。
*種数に+1。


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補遺(9-Feb.-2019)
・Momtazi, Lowry & Hekmatara (2017) , Huges & Lowry (2017) を追加。
*種数に+2。

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補遺3 (30-VIII-2024)
・一部書式設定変更。

2017年11月25日土曜日

ROAD TO DESCRIPTION III (11月度活動報告)


 新種記載に向けた動きについて、ネタバレしない程度に御報告です。
 過去の経緯はこちらこちらから。




進捗報告

Dear Readers


 弟子入りを果たしてからのトレーニングメニューは以下のような感じです。

・プレパラート標本の観察とスケッチ
・解剖
・染色
・近縁グループのサンプルを用いた解剖,スケッチ

 今回は解剖技術の研鑽を取り上げます。





解剖について

Dissecting Me Softly


 卒論の際には勿論同定のために解剖しまくったのですが、ブランクがあるのと、そもそもそんなに巧くいった記憶がないので、レベル初期値からのスタートです。


 ヨコエビの解剖は要するに観察しやすいように付属肢を外す作業で、形態に基づいた分類を行う際には欠かせないものとされています。


 例えば、もしヨコエビの全身が無色透明で、重なりあった付属肢一つ一つの同定形質を容易に視認できれば、解剖の必要はありません

 私も驚きましたが、その例え話みたいな例が最近ありました。一切スケッチすることなく、ほとんどの種においては口器の解剖すらせず、写真のみを使用して記載を行った論文が10月に出たのです (d’Udekem d’Acoz & Verheye, 2017)。ヨロイヨコエビ属は体表の形状が極めて特徴的で変化に富んでおり(今後の研究の進捗によって資料を追加する必要性が出てくるのかもしれませんが)、現状では細かい形質を検討する必要がないのです。ヨコエビの中でもグループによって必要な解剖の度合いが異なる例です。

 とはいえ、そういったのはごくごく一部であり、大部分のヨコエビにおいて、口器を含め付属肢の取り外しは必要な作業です。何を隠そう今現在私が向き合っているヨコエビもそういった類です。






 まず解剖の前に準備する標本は、固定・保管されているものです。
 だいたいの場合、蓄積された標本の中から、アヤシイ奴が出てきます。


 以下、ヨコエビを採取してから標本を作成するのに必要になる、あるいはなるかもしれないグッズです。どれも基本的に各ネットショッピングサイトで手に入ります。




・スクリューバイアル(スクリュー管瓶,ねじ口瓶)

 No.3(9mL)100本入り:約5000~10000円
 色々な容量のものがあります。1ロットごとによほど大量に捕獲される場合でなければ、浅海性ヨコエビの保管にはNo.3で充分でしょう。材質はガラスも樹脂もありますが、フタにペフの入ったものが推奨です。



・マイクロチューブ(エッペンドルフチューブ)

 5mL 500本入り:約3000~5000円
 スクリューバイアルより小型・少量のサンプルをコンパクトに収納できます。ダーラム管を入れるのにも使えます。



・ダーラム管

 6mm径30mm長 50本入り:約1500円
 マイクロチューブは解剖済の標本を入れると、底に捉えられたり、側壁にくっついて分からなくなってしまうことがあります。スクリューバイアルは底の立ち上がりが直角で死角になりやすく、口が狭く、蓋やネジがあって構造が複雑なため、微細なサンプルの管理には向きません。ダーラム管は底の丸いガラス管であるため細かな付属肢を入れたり、小さな個体を入れるのに適しています。綿栓倒立して大きめのスクリューバイアル内にまとめて入れるか、サイズが合えばマイクロチューブ内でも保管できます。



 ・耐水紙

 A4 100枚入り:約1500円
 標本と一緒に瓶に入れるラベルを作成するのに使います。レーザープリンター対応のものとそうでないものとがあるようです。






・エタノール

 無水(99%)エタノール500mL:約1000~1500円(ドラッグストア等で購入可能)
 70%に希釈する際、水道水でもよいと思いますが、私は精製水を使っています。いろいろありますが150円程度でドラッグストア等で買えます。



・グリセリン

 50mL:約300円,500mL:約500円(ドラッグストア等で購入可能)



・スポイト

 ガラス製駒込ピペット;約1000円
 その他 約100円~
 液体の分取には必需品です。ただし、染色液や封入液を自作しない限りややこしい計量は必要ないため、100均の化粧品セットでも代用できます。



・メスシリンダー

 約200~1500円 
 70%エタノールを作るほかは特に活躍しないので、必須ではありません。



・漏斗

 約100円~
 バイアルに固定液を入れる場合など。スポイト等を使う場合は特に必要ありません。




 保存してある標本を解剖するにあたっての注意点。

 99%エタノール中では脱水が進んでかなりパリパリになってしまうので、解剖前に70%中でなじませることも必要です。また、解剖後にグリセリンプレパラートに封入する場合、アルコールとの相性が悪いため、直前に標本全体をグリセリンに浸す必要があります。そして、10年オーダーで長期間保存してあった標本はなかなか言うことを聞いてくれないのでそれはそういうものだと思ってやるしかなさそうです。


 そして以下は、標本を解剖し線画までもっていくのに必要なグッズです。


・有柄針

 柄:約500円(昆虫針用)~約4000円(タングステンニードル用)
 針:約1000円(無頭0号昆虫針100本入り)~約10000円(タングステン微細針3~5本入り)
 焼きを入れた昆虫針を柄に取り付けて使用します。柄の部分は割箸で代用可能です。



・ピンセット

 精密ピンセット:約500~5000円
 私は1000円程度のを使用しています。
 先の尖ったものを更に研いでかみ合わせを整えます。



・オイルストーン(油砥石)

 約500~2500円
 普通の包丁用砥石を使っていたので選び方がよく分かりませんが、切削工具用の精密仕上げに使われるものがよいようです。研ぐのはピンセットの先端や針先なので、小さいものが良いです。使うときはグリセリンを滴下します。



・染色液

 ローズベンガル:原体は25gで6000円程度。個人で調薬したことはないのですが、50μg/ml程度の水溶液として使うようです。入手の際には要メーカー問い合わせ。
 解剖する時、特に胸節と底節板の境界が見えにくい場合、染色するとかなり見やすくなります。〆めた後のサンプルをソーティングする時にも使えますが、濃く染めすぎると逆に分かりにくくなるなど、デメリットもあります。軟組織がよく染まりますが、毛などはそれほど見やすくなりません。







・スライドガラス

 水切放(76×26×t1mm)100枚入り:約500~1000円
 スライドガラスには「水切放」「白縁磨フロスト」などいろいろな種類があります。とりあえず水切放で良いと思いますが、「水」は傷がつきやすいため、「白」もアリです。ちなみに「水切放」と「白縁磨フロスト」では、値段が4倍くらい違います。
 ※水 = 板ガラスなどに用いられる最も一般的な種類のガラスを材料としたもの。安価。
 ※白 = ガラスの材質を指す場合、硬質で透明度の高いもの。高価。
 ※切放 = 切断したままのもの。安価。
 ※縁磨 = 切断し、縁を研磨したもの。高価。
 ※プレクリン = 脱脂処理済み。
 ※フロスト = 表面のざらつき。鉛筆で書き込めるように処理したもの。



・カバーガラス

 18×18mm 100枚入り:約500円
 高級硼珪酸ガラス使用で、材料としてはスライドガラスより良いものになります(強度と透明度を補完)。樹脂製のものもあるようですが使ったことはありません。



・封入剤

 ホイヤー氏液 20mL:約1500~2000円
 プレパラート標本を作製する時に使います。これを用いて永久プレパラートとしますが、ガム・クロラール系は長い時間を経て変質することが知られているのと、お湯で戻せるので、言うなれば半永久プレパラートです。真の永久プレパラート用封入剤としてカナダバルサムが知られていますが、扱いにくいのと、屈折率の関係からも甲殻類には適さないように思われます。ヨコエビ研究者はほぼ皆さんホイヤー氏液を使っているようです。石丸(1985)にはガム・クロラール液を自作する方法が載っていますが、便利な世の中ですので出来合いのものを買えます。20mLもあればかなりの枚数のプレパラートを作れます。



・トップコート

 10~15mL:約100~2000円
 本来はマニキュアを保護するためのものです。ホイヤー液で封入したカバーガラスの縁に塗って永久プレパラートとします。エッシーでもジルでもお気に入りのブランドのトップコートをご使用頂けますが、100円ショップでも買えます。



封入まで持っていくセット(二世)
100均のキャリアーとミニボトルを活用しています




 ヨコエビの解剖法、石丸(1985)でほぼ語り尽くされていますが、思ったところを述べます。


 明るさについて。
 顕微鏡には光源が付属していますが、解剖するにあたって光源は多ければ多いほうが良いです。手先の邪魔にならない程度に明かりを増やすことが肝要です。



 底節板について。
 ヨコエビの底節板というものは、往々にして自由胸節の背板が上に被さった状態で生えています。つまり、底節板側から胸節の被せをくぐってメスを入れないと、刃先が入りません。
例えばこのような

 刃先が入ればかなり楽になりますが、付属肢から複数の筋肉が延びており、これを断ち切るには底節板側からのアプローチは上手くありません。この段階では垂直あるいは胸節側から刃先を入れた方が得策です。



 ボディについて。
 ある程度まで解剖が進むとボディはくたびれてきます。作業は手早く正確に進める必要があり、訓練が欠かせません。

 付属肢を外した穴は(基本的には)もう使わないので、先を丸くした針を突っ込んで固定するという裏技も考えられます。


 
 道具の選定について。
 一定のサイズより小さなサンプルについては、タングステンの細線に電極をつけて電解研磨した微細解剖針を使用するのが一般的なようです。タングステンといえば強度と耐食性に優れた非常に強靭な金属なので、タングステンニードルはヨコエビを問わず幅広い微小な分類群においてポピュラーです。
 しかし、針も柄も1本でビフテキのコースが満喫できるお値段なのと、現状として設備もないため、今のところ顕微鏡下で物理的に摩擦してゴリゴリと針先を加工しています(電解設備はどうやらパンピーでも作ることができるらしく、現在模索しています)。
 
 錐状、ナイフ状、丸くしたものの3種を用意するとよいでしょう。

 分類群や解剖する人の特性にもよりますので、これもやりこむことが重要です。







(参考文献)

- d’Udekem d’Acoz,C., M.L. Verheye 2017. Epimeria of the Southern Ocean with notes on their relatives (Crustacea, Amphipoda, Eusiroidea). European Journal of Taxonomy, 359: 1–553.
- 石丸信一 1985. ヨコエビ類の研究方法. 生物教材, 19(20): 91-105.
- 富川光・森野浩 2009. ヨコエビ類の描画方法. 広島大学大学院教育学研究科紀要, 17: 179-183.