2021年7月31日土曜日

ヨコエビの寿司性に就ひての一考察(7月度活動報告)

 

  最近、アクアマリンふくしまのツイートがバズっていますね。

  展示している「ヒロメオキソコエビ」「ウオノシラミ属の一種」(しらみちゃん)が寿司に見えるという話で、過去に一世を風靡したカイコウオオソコエビも巻き込んで世間は寿司祭りの様相です。




 

※イメージ

 

 カイコウオオソコエビは長らく「エビの握り」と混同されてきましたが、しらみちゃんは「エビ」あるいは「サーモン」に見えます。ヒロメオキソコエビはさしづめ「えんがわ」か飾り包丁の入った「イカ」でしょうか。

 

 カイコウオオソコエビとしらみちゃんはともに「エビ」担当ですが、ずいぶんベクトルの違うエビに見えます。これはまさか・・・

 

 

 思った通りです。

 

 カイコウオオソコエビはおそらく、2012年にリリースされたこの記事に代表されるJAMSTECの写真が発端となって寿司説が流布したものと思われますが、その写真に見られるボディのツヤ感やローズピンクのムラ感、胸節表面を縦に走る筋の感じが、甘えびを2,3尾載せた握りによく似ています。

 一方、しらみちゃんは全体に黄色みが強く橙色に見え、背面に筋感はなくよりフラットです。これはボイルしたエビの開きを載せた握りによく似ています。

 

 これらが似ているのは、カイコウオオソコエビ(端脚目)やしらみちゃん(等脚目)と、寿司ネタのエビ(十脚目)が、同じ軟甲類というグループに属していて比較的近縁なせいだと思います。これに加えて、寿司に用いられるエビの身は第1~5腹節と尾節(尾肢と尾節板)に相当する部分で、これはそのままカイコウオオソコエビやしらみちゃんとも対応します。


 しかし、シャリは違います。寿司におけるシャリは、ネタであるエビとは分類学的にかなり遠いイネ(被子植物:単子葉類)の胚乳が人為的に付加されたもので、元々身体の一部をなしていた構造ではありません。

 カイコウオオソコエビにおけるシャリは、主に底節板より先の胸脚に相当するようです。一方、しらみちゃんの場合は底節板にわりと色がついていて、ネタ側に相当するように思えます。しらみちゃんのシャリは基節から先の胸脚と、保育嚢から構成されるようです(そう、しらみちゃんは女の子なんです!!)。


 

 思うに、以下のような要素が寿司性に寄与しているのではなかろうかと思います。

  • 上に色の濃い「ネタ」・下に白っぽい「シャリ」が位置する
  • プロポーションが一般的な寿司の範疇に収まる(幅:厚:長=1:2:2.5~4.5程度ではないでしょうか)
  • 「ネタ」の方が少し大きく、垂れ下がっている
  • 「ネタ」上面は平らで、横に筋がある
  • 「シャリ」下面は丸く、多少凹凸がある


 そういう要素を満たす動物は他にもいる気がします。例えば・・・

 


 ミズムシ(等脚目)はシャコ(口脚目)と同じ軟甲類に含まれるので、これも分類学的に近位であることと、形態的に相同であることが、寿司性の演出に寄与した例と思われます。

 ヒメアルマジロ(哺乳綱)については中トロ(マグロ:硬骨魚綱)と分類学的に遠く、相同性もありません。そのせいか、今回はガリ(被子植物:単子葉類)に助けを求めることとなりましたが、相当な寿司性を具えています。ヒメアルマジロは種小名に「truncatus」とある通り、尾部が切り落とされたような形状をしていますが、これがマグロのサクの感じとよく似ています。

 

 端脚目や等脚目は背側の殻が厚く、表面がごつごつしていたり、色素が多く含まれたりします。対照的に腹側や脚は殻の表面が平滑で色が薄めです。こういった条件は寿司への収斂を促す可能性があります。

 これからもまだまだ寿司性を具えたヨコエビやその仲間たちが見つかるかもしれません。もっと探してみたいと思います。