2015年10月24日土曜日

湘南の海にヨコエビを求めて(10月度活動報告)

ヨコ活を再開しました。ヨコ充なうの10月です。

湘南の海風に誘われて、ぶらりと片瀬海岸にやってきました。

 
海だ。



地引き網にかかったビゼンクラゲのかさの中から寄生性等脚類が出現。
(なぜ湘南まで来たのかといえば、そういうイベントだったからのですが…^^)


 たぶん、イワシノコバンと呼ばれているものだと思います。
身体の両脇に黒い模様があるのね。

 雑魚の中から等脚類が出てきて嬉しいが、知識も設備もないため現場では結論に至らず、とりあえず持ち帰ります。

砂浜上に投げ捨てられた魚の頭などに群がっていた等脚類。
スナホリムシ科かな?


cf.イワシノコバンは網をぶちまけた後の砂浜に、イワシの鱗にまみれた状態で多く発見されました。今日の漁獲は、イワシ類(3種),アジ,サッパ,ギマ,カマス,イトヒキアジ,シマイシガニなど。一番多かったのはウルメイワシだったと思いますが、それについていたのかもしれない。
 そういえばギマって、銀馬から転じたものなんですね。 シルバーホース。かっちょいい。

 砂の上に落ちていた個体は圧倒的に細長いタイプが多く、これは未成熟個体であったりオスだったりするのでしょうか。観察していると、元気のあるものはお尻を砂にグイグイッと差し込み、そのまま埋まっていきました。砂の状態が悪いのか、力尽きたのか、半ば刺さったままもがいてるやつもいました。
 ビゼンクラゲの中から出てきたものは、おそらく、網で引かれる時に傘の中に入り込んだイワシから外れたものかと思われます。ちなみに、クラゲノミ的なものはぜんぜん見つかりませんでした(号泣)


 湘南の海は波が引くと黒い線が残る。
 よく見ると黒いフレーク状の石のようだ。
  雲母のような薄片の結晶が多く含まれる砂なのかな。




 魚の入っていた桶の中から出てきたのは、、、

 Cerapus sp.
すべての付属肢を確かめたわけではないが、状態は良さそう

  ホソツツムシ属Cerapusではないですか!?
 私は盤州でCerapus nudusを発見しているが、これはC. nudusよりも各胸節が短くてそれぞれ似通っているように思われる。最普通種とされるC, tuburalisにより近いかもしれん。
(というか、節の形がぜんぜん違うものを同じ属に入れっぱなしというのも・・・) 

 Cerapusは他のカマキリヨコエビ科やドロクダムシ上科とよく似ていますが、肢が非常に短く、管内での生活に適応していることが考えられます。





せっかくなので。
(予定外の行動)
 
 浜から上がって、初めての新江ノ島水族館。外観はショーの案内が多く、ショーに比重を置いた水族館なのかと思った。
 しかし、相模湾という稀有なロケーションを最大限に活かした個性豊かな展示物と、学術的裏付けを感じさせる、日本初の臨海実験所発祥の地という歴史を継承するかのようなテイスト。驚いたのは、やんごとなきご研究を紹介するコーナー。昭和天皇のヒドロ虫の論文や、今上天皇のハゼの論文がいくつも展示されていて、関連する生物の水槽が並んでいたりして、こんな水族館みたことないと感服いたしました。
  Александр Сокуров監督の映画『太陽』でも昭和天皇がカニだったかを研究される場面が登場するほどに、天皇陛下は分類学に取り組まれるものだということは周知されているはずなので、どうか日本の皆さん分類学のすばらしさを知ってくださいお願いします。


「クラゲまん」はクラゲが入っている肉まん。
甘めの味付けがクラゲにマッチしてGood♪



 さて、深海のコーナーに足を踏み入れると・・・ 

まさかの実機が置いてあるんすけど

しんかい2000だよ!!! 
JAMSTECで6500を見たことがあるから、これで制覇だわーい(*´▽`*)



 そしていよいよ・・・
 

 こ、これは・・・●ikipediaをはじめとしてネットで写真がよく使われるカイコウオオソコエビHirondellea gigasの標本じゃないか・・・。
 瓶の中には3個体の標本があり、よくネットに流れてるのはそのうち一番下の個体のようです。
 でも、科学博物館の深海展の標本がいちばんよかったな・・・たくさんあったし・・・これよりもなんとなく生きてる姿に近かったし・・・
一発で本命を引き当てた。
何年分の運を使ったのか(大袈裟)





  水族館を満喫したところで、浜に戻ります。
 サーファーのいるような場所は漂着物がほとんどなかったため、江ノ島に続く橋の下あたりを物色。

漂着物をあさってヒメハマトビムシPlatorchestia cf.pacificaを探す。

 最近の三番瀬ではあまり見かけないような大型の個体がいる。
 砕屑物,人工物の多いポイントには小型の個体が多く、大型の個体は海藻や陸の草の茎などが大きめの欠片となって固まっている場所に多かった。 

 本種については分類が混乱していて頭が痛い状況だが、こうして当人たちは今日も明日もずっとぴょんぴょんしてるんだなぁと。そう考えながら・・・



よく見るとガラモの又の間に・・・
画面中央よりやや左上、穴のようなものが見えます。
 見えるといったら見えます。


お わ か り い た だ け た だ ろ う か 。



これは造管性ヨコエビの巣なのではないだろうか。

と思っていたら、表面をEricthonius pugnaxらしきヨコエビが這い回ってるのを発見。
中にいると信じて、とりあえず巣を持ち帰って開いてみます。

 (左)E. pugnaxらしき未成熟個体
画面やや右上,頭を上にしているMonocorophium sp.(右) 
 

 なんかいる!!でも大人がいない!!
 じゃあ予め拾っておいた大人の個体を検鏡してみよう。

 あれ?

 いないよ?

 くまなく探すこと数分、

これ触角だよね!?

 長いブランクのせいか、よりによってハマトビムシの袋へ放り込んでよしとしてしまった私のイージーミスです。ハマトビムシは浜の掃除屋。生き物の死骸などを探して食べてくれます。しかし、ようここまで食い尽くしたのう。
 ハマトビ・・・生きて返さんぞ・・・(元よりそのつもり)

  
 ホヤをパッカーンしてみたけど何も出てこないやんけ!!!



江ノ島の隣に沈む夕陽・・・
次は江ノ島を攻めたいな・・・

2015年10月10日土曜日

ヨコエビ新体制Senticaudata亜目について(10月:フクロエビ類自由集会に行ってきました)

学会に出かけてホクホクしております。勢いでブログを更新します。


 昨日、10月9日に「第53回日本甲殻類学会」の自由集会「フクロエビ類の生物学」に参加しました。

 卒論とガイドブックをやり逃げした身としてはちょっと半身を引きつつ、でも、絶対にこんな機会を逃すことはできないという思いが強かった。

 このブログを読んでくださっていたり、ガイドブックを活用してくださっていたり、また、皆さんとヨコエビ談義で盛り上がったり、やっぱりヨコエビはやめられないと改めて強く思いました。サヨナラは次に会うための色あせることのない約束だったんですね・・・


 さて、題記の件ですが、2013年に新亜目Senticaudataが設立され、ヨコエビの分類は私が卒論をやった頃とは大きく変わっています。ヨコエビ亜目Gammaridaeからハマトビムシ上科Talitroideaやヨコエビ上科Gammaroidea,ハッジヨコエビ上科Hadzioidea,ドロクダムシ上科Corophioideaといった主だったグループが引き抜かれ、ワレカラ亜目CaprellidaeとともにSenticaudataに含められました。それ以外の科はヨコエビ亜目に残ったわけですが、氾濫後の河川のごとく、大移動の後のヨコエビ亜目は上科や下目などの枠組みが半ば崩壊しており、実質上、細かなグループがデトリタスのように浮遊するカオスな状態です。

 せめて新しいSenticaudataに対する理解だけでも深めなければと、Lowry & Myers (2013) のリストにauthorshipと和名を加筆して科リストを作成しましたので、以下に掲載します。

 和名は日本分類学会連合のホームページを参照しました。上位分類群の和名は未だ公式に提唱されていないものもありますが、間違いないだろうというものは推測して()内に示しました。

 気になる点などありましたらコメント欄やメールにてお教えいただければ幸いです。







Suborder Senticaudata Lowry & Myers, 2013


Infraorder Carangoliopsida Bousfield, 1977

Parvorder Caramgoliopsidira Myers & Lowry, 2013

Superfamily Carangoliopsoidea Bousfield, 1977

Family Carangoliopsidae Bousfield, 1977

Family Kairosidae Myers & Lowry, 2013


Infraorder Talitrida Rafinesque, 1815(ハマトビムシ下目)

Parvorder Talitridira Rafinesque, 1815(ハマトビムシ小目)

Superfamily Biancolinoidea Barnard, 1972 ガラモノネクイムシ上科

Family Biancolinidae Barnard, 1972 ガラモノネクイムシ科

Superfamily Caspicoloidea Birstein, 1945

Family Caspicolidae Birstein, 1945

Superfamily Kurioidea Barnard, 1964

Family Kuriidae Barnard, 1964

Family Tulearidae Ledoyer, 1979

Superfamily Talitroidea Rafinesque, 1815 ハマトビムシ上科

Family Ceinidae J.L. Barnard, 1972

Family Chiltoniidae J.L. Barnard, 1972

Family Dogielinotidae Gurjanova, 1953 ナミノリソコエビ科

Family Eophliantidae Sheard, 1936 ネクイムシ科

Family Hyalellidae Bulycheva, 1957

 Family Hyalidae Bulycheva, 1957 モクズヨコエビ科

Subfamily Hyacheliinae Bousfield & Hendrycks, 2002

Subfamily Hyalinae Bulycheva, 1957 モクズヨコエビ亜科

Family Najnidae J.L. Barnard, 1972 ヒョットコヨコエビ科

Family Phliantidae Stebbing, 1899 ミノガサヨコエビ科

Family Plioplateidae J.L. Barnard, 1978

Family Talitridae Rafinesque, 1815 ハマトビムシ科

Family Temnophliantidae Griffiths, 1975


Infraorder Corophiida Leach, 1814(ドロクダムシ下目)

Parvorder Corophiidira Leach, 1814(ドロクダムシ小目)

Superfamily Aoroidea Stebbing, 1899 ユンボソコエビ上科

Family Aoridae Stebbing, 1899 ユンボソコエビ科

Family Unciolidae Myers & Lowry, 2003

Subfamily Acuminodeutopinae Myers & Lowry, 2003

Subfamily Unciolinae Myers & Lowry, 2003

Superfamily Cheluroidea Allman, 1847

Family Cheluridae Allman, 1847

Superfamily Chevalioidea Myers & Lowry, 2003

Family Chevaliidae Myers & Lowry, 2003

Superfamily Corophioidea Leach, 1814ドロクダムシ上科

Family Ampithoidae Stebbing, 1899 ヒゲナガヨコエビ科

Subfamily Ampithoinae Stebbing, 1899 ヒゲナガヨコエビ亜科

Subfamily Exampithoinae Myers & Lowry, 2003

Family Corophiidae Leach, 1814 ドロクダムシ科

Subfamily Corophiinae Leach, 1814 ドロクダムシ亜科

Tribe Corophiini Leach, 1814 ドロクダムシ族

Tribe Haplocheirini Myers & Lowry, 2003

Tribe Paracorophiini Myers & Lowry, 2003

Subfamily Protomedeiinae Myers & Lowry, 2003

Parvorder Caprelidira Leach, 1814(ワレカラ小目)

Superfamily Aetiopedesoidea Myers & Lowry, 2003

Family Aetiopedesidae Myers & Lowry, 2003

Family Paragammaropsidae Myers & Lowry, 2003

Superfamily Caprelloidea Leach, 1814  ワレカラ上科

Family Caprellidae Leach, 1814  ワレカラ科

Subfamily Caprellinae Leach, 1814 ワレカラ亜科

Subfamily Paracercopinae Vassilenko, 1972

Subfamily Phtisicinae Vassilenko, 1968

Family Caprogammaridae Kudrjaschov & Vassilenko, 1966 ヨコエビワレカラ科

Family Cyamidae Rafinesque, 1815 クジラジラミ科

Family Dulichiidae Laubitz, 1983

Family Podoceridae Leach, 1814 ドロノミ科

Superfamily Isaeoidea Dana, 1852 イシクヨコエビ上科

Family Isaeidae Dana, 1852 イシクヨコエビ科

Superfamily Microprotopoidea Myers & Lowry, 2003

Family Microprotopidae Myers & Lowry, 2003

Superfamily Neomegamphoidea Myers, 1981

Family Neomegamphopidae Myers, 1981

Family Priscomilitariidae Hirayama, 1988 キシドウヨコエビ科

Superfamily Photoidea Boeck, 1871 クダオソコエビ上科

Family Ischyroceridae Stebbing, 1899 カマキリヨコエビ科

Subfamily Bonnierellinae Myers & Lowry, 2003

Subfamily Ischyrocerinae Stebbing, 1899 カマキリヨコエビ亜科

Tribe Ischyrocerini Stebbing, 1899 カマキリヨコエビ族

Tribe Siphonoecetini Just, 1983

Family Kamakidae Myers & Lowry, 2003 カマカヨコエビ科

Subfamily Aorchinae Myers & Lowry, 2003

Subfamily Kamakinae Myers & Lowry, 2003 カマカヨコエビ亜科

Family Photidae Boeck, 1871 クダオソコエビ科

Superfamily Rakirooidea Myers & Lowry, 2003

Family Rakiroidae Myers & Lowry, 2003


Infraorder Hadziida Karaman, 1943(ハッジヨコエビ下目)

Parvorder Hadziidira Karaman, 1943(ハッジヨコエビ小目)

Superfamily Hadzioidea Karaman, 1943 ハッジヨコエビ上科

Family Crangoweckeliidae Lowry & Myers, 2012

Family Eriopisidae Lowry & Myers, 2013

Family Gammaroporeiidae Bousfield, 1979

Family Hadziidae Karaman, 1943 ハッジヨコエビ科

Family Maeridae Krapp-Schickel, 2008 スンナリヨコエビ科

Family Melitidae Bousfield, 1973 メリタヨコエビ科

Family Metacrangonyctidae Boutin & Missouli, 1988

Family Nuuanuidae Lowry & Myers, 2013

Superfamily Calliopioidea Sars, 1893 (ウラシマヨコエビ上科)

Family Calliopiidae Sars, 1893 ウラシマヨコエビ科

Family Cheirocratidae d'Udekem d'Acoz, 2010

Family Hornelliidae d'Udekem d'Acoz, 2010

Family Pontogeneiidae Stebbing, 1906 アゴナガヨコエビ科


Infraorder Bogidiellida Hertzog, 1936 (カンゲキヨコエビ下目)

Parvorder Bogidiellidira Hertzog, 1936 (カンゲキヨコエビ小目)

Superfamily Bogidielloidea Hertzog, 1936 (カンゲキヨコエビ上科)

Family Artesiidae Holsinger, 1980

Family Bogidiellidae Hertzog, 1936 カンゲキヨコエビ科

Family Salentinellidae Bousfield, 1977


Infraorder Gammarida Latreille, 1802(ヨコエビ下目)

Parvorder Crangonyctidira Bousfield, 1973(マミズヨコエビ小目)

Superfamily Allocrangonyctoidea Holsinger, 1989

Family Allocrangonyctidae Holsinger, 1989

Family Crymostygiidae Kristjánsson & Svavarsson, 2004

Family Dussartiellidae Lowry & Myers, 2012

Family Pseudoniphargidae Karaman, 1993

Family Kergueleniolidae Lowry & Myers, 2013

Superfamily Crangonyctoidea Bousfield, 1973 (マミズヨコエビ上科)

Family Austroniphargidae Iannilli, Krapp & Ruffo, 2011

Family Chillagoeidae Lowry & Myers, 2012

Family Crangonyctidae Bousfield, 1973 マミズヨコエビ科

Family Giniphargidae Lowry & Myers, 2012

Family Kotumsaridae Messouli, Holsinger & Reddy, 2007

Family Neoniphargidae Bousfield, 1977

Family Niphargidae Bousfield, 1977

Family Paracrangonyctidae Bousfield, 1983

Family Paramelitidae Bousfield, 1977

Family Perthiidae Williams & Barnard, 1988

Family Pseudocrangonyctidae Holsinger, 1989 メクラヨコエビ科

Family Sandroidae Lowry & Myers, 2012

Family Sternophysingidae Holsinger, 1992

Family Uronyctidae Lowry & Myers, 2012

Parvorder Gammaridira Latreille, 1802(ヨコエビ小目)

Superfamily Gammaroidea Latreille, 1802 ヨコエビ上科

Family Acanthogammaridae Garjajeff, 1901

Family Anisogammaridae Bousfield, 1977 キタヨコエビ科

Family Baikalogammaridae Kamaltynov, 2002

Family Bathyporeiidae d'Udekem d'Acoz, 2011

Family Behningiellidae Kamaltynov, 2002

Family Falklandellidae Lowry & Myers, 2012

Family Gammaracanthidae Bousfield, 1989

Family Gammarellidae Bousfield, 1977

Family Gammaridae Latreille, 1802 ヨコエビ科

Family Iphigenellidae Kamaltynov, 2002

Family Luciobliviidae Tomikawa, 2007

Family Macrohectopidae Sowinsky, 1915

Family Mesogammaridae Bousfield, 1977 ナギサヨコエビ科

Family Micruropodidae Kamaltynov, 1999

Family Ommatogammaridae Kamaltynov, 2010

Family Pachyschesidae Kamaltynov, 1999

Family Pallaseidae Tachteew, 2001

Family Paraleptamphopidae Bousfield, 1983

Family Phreatogammaridae Bousfield, 1983

Family Pontogammaridae Bousfield, 1977

Family Sensonatoridae Lowry & Myers, 2012

Family Typhlogammaridae Bousfield, 1978

 
Incertae Sedis 所属不明

Family Ichiidae Dana, 1849

Family Sanchoidae Lowry, 2006


<参考文献>



-WoRMS

- ERMS
-日本分類学会連合 




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補遺

・和名表記の誤りを訂正しました(10.Oct.2015)
・文中で言及した分類群に学名を併記(14 Jan. 2019)