2012年9月12日水曜日

~9月の活動報告


怠け癖がついております。
ちゃんとしろや、仕事!

やはり、仕事に追われて更新する時間がない、というかそもそもネタになる活動をする時間がない、というのが正直なところですが、それは言い訳ですね。禁断の紙綴器ネタなら溜まってるけどなあ・・

さて、今回のご報告はこんな感じです。



イラスト作成

 今年の10月に開かれる某学会の大会要旨集の表紙イラストを担当させて頂きました。

事務局にことわらずにあまりポンポンと出すのは良くなさそうですので、ヨコエビの部分だけ抜粋します(何やねんそれ)。
ちなみに、表紙デザインをあしらったTシャツも販売予定ですので、是非お買い求めください。(大会までにこのブログを読む人はいないだろうなあ(^^;))

 第二咬脚はニホンモバヨコエビAmpithoe lacertosaに似て、眼はポシェットトゲオヨコエビEogammarus possjeticusで、尾肢はヨコエビ上科Gammaroideaっぽいですね。第一咬脚はクチバシソコエビ科Oedicerotidaeか、はたまたUrothoe属か・・。全体はMaera属にも見えますが、実際は特にモデルはありません。一円玉の若木みたいなものです。


 学生時代は研究室Tシャツというものも作りました。
その頃のヨコエビはこんな感じ。
 
 体節構造を大切にしているのがよく分かります。尾肢も含めてヒゲナガヨコエビ科Ampithoidaeを意識しているのか?

イラストは、紙に書いてからそれをスキャンして、必要に応じてペイントで修正しています。イラストレーターのようなソフトは持っていないので、画を描くとすればペイントかパワーポイントです。「パワポで どうやって画を書くねん!」という話題については、また改めて触れます。たぶん。
ゆくゆくは、ヨコエビ46種(群)を萌えキャラ化して「横蝦46」としてデビューさせたいのですが、そのような類のイラストを描くにはまだ勇気と技術が足りません。
人の絵を描くのは、幼稚園の時から大の苦手です。

さて、2012年の日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会は、10月5日~8日に開催されます。詳しくは、公式ホームページをご覧ください。



 
文献翻訳

 卒論の時もそうでしたが、分類の研究(もどき)をしていると、膨大な本数の文献に目を通す必要に迫られます。
 日本語の文献などごくわずか。英語ならまだ良い方。フランス語の調査報告書,ドイツ語の生態観察論文,ラテン語の記載文,中国語のモノグラフ・・・ 色々と読んだ気がしますが、何より手強いのはロシア語の論文群でした。
 ロシアでは、グリャノワ氏を筆頭に数多くの学者がヨコエビを分類しまくってきたという経緯があります。ロシアは日本海を挟んで日本と隣り合っていて、ヨコエビの種を語る上でロシアでの研究というものは無視できません。実際、フトメリタヨコエビMelita rylovaeポシェットトゲオヨコエビE. possjeticusなど浅海域でみられる普通種の中にも、ロシアで記載された種が数多く含まれています。
 ロシアのヨコエビ研究における最重要文献は、Gurjanova(1951)ではないかと、私は勝手にそう思っています。
 1,000Pを越える本文献は、ロシアとその周辺海域に生息するヨコエビを、ひたすら解説している論文です。もちろん、分類的に変わってしまっている種や、新たに記載されている種というのもかなりの数に上るのですが、1950年代までの知見が凝縮された本文献は必読です。
 とはいえ、この重要文献を読むには、大きな問題があります。
 それこそ、言語の壁です。
 このマンモス文献は、全編ロシア語で書かれているのです!

 関係者の間では「これを英訳したら英雄になれる」などという冗談が囁かれたりもする本文献ですが、分類学的研究において、文献を全て通読する必要はありません。シノニムリストの追跡をしたり、種の特徴を知ることができれば十分なので、読むのはごく一部です。とはいえ、ロシア語です。まず、字が意味不明です。RやNがひっくり返ったりしています。

 このブログはロシア語を解説するものではないため、私がどのようにロシア語の文献を翻訳してきたか、書かせて頂きます。
必要なのは、僅かなロシア語の素養と、インターネット環境です。


① Googleを開きます。Google翻訳のページに飛びます。

② 翻訳したい言語を「ロシア語→英語」に設定します。

③ ここで、2通りの方法があります。
 3-1 仮想キーボードを使う
  あなたのキーボードでキリル文字(ロシア語の文字)を打てるようになります。画面を見ながら、どのキーがどの文字に対応するかを確かめてタイプしていきます。効率よく作業するには、キリル文字の名前くらいは覚えておいたほうがよいです。間違いやすい文字(ЩとШ,ЧとЦ,ЫとЬとЪ)は特に注意です。 

 3-2 発音に基づいた入力を行う
  アルファベットがキリル文字に変換されます。この方法をとる場合、キリル文字の発音をマスターしておく必要があります。ただ、ロシア語として成り立つようにGoogle先生が修整をかけてくれるので、極端にシビアな発音の再現を求められたりはしません。
  例えば、treugoljnyiと入力してスペースを押すと、треугольныйと変換されます。

④表示される翻訳結果をチェックします。時々、翻訳されない単語があったりするので、ロシア語辞典やインターネットを使って調べます。

⑤必要に応じて、英語の文章を日本語に訳します。



日本語と英語の相性が悪いことは感じてらっしゃるとは思いますが、英語とロシア語は結構相性がよいので、Google翻訳の結果はおおむねそのまま使えます。分類学の記述自体が単純な文法だから、というのも大きいかもしれません。
手打ちなので時間はかかりますが、手調べよりは遥かに短時間で翻訳できます。キリル文字が認識できるツールがもしあれば、文献の画像をそれにかけて文字情報を抽出すれば、驚くべき手軽さで翻訳できます。


この度はBudnikova(1995)を翻訳中です。ある一種の記載文だけですが、相当時間がかかってます。





さて、これから趣味に奔走かといえば、まだそうもいかないと思います。
とりあえず、10月の学会には出たいです。
自分がやるべきことは、卒論でやりかけた、東京湾産ヨコエビの再同定。
属(属群)ごとに全ての既知種を洗い出すという作業が不十分なので、今月以降時間がとれれば、しばらくはこれに専念するかと思います。
そして、自分の首を絞めるようですが、新たなサンプルの入手もやりたいです。
既知種が洗い出されたら、順次必要な文献を集めて、読みにくいものに関しては翻訳作業を行います。

次はもう少しビジュアル的に楽しいご報告ができますように。





<引用文献>


・Будникова, Л.Л. [Budnikova,L.L.]  (1995) Два новых вида амфипод семейства Pleustidae (Amphipoda, Gammaridea) с шельфа западного сахалина [Two new species of amphipods of the family Pleustidae (Amphipoda, Gammaridea) from the shelf of western Sakhalin]. Зоологический журнал [Zoological Journal], 74(2).


・Гурьяаоонова,Е.Ф. [Gurjanova, E.F.] (1951) Бокоплавы морей СССР сопредельных вод (Amphipoda - Gammaridea) [ Gammarids from USSR seas and adjacent waters (Amphipoda – Gammaridea), determinants of fauna in USSR ]. Определители по фауне СССР. [ Zoological Institute Academy of Science ], 41: 1-1029.