2018年10月7日日曜日

片瀬ドロクダ(10月度活動報告)


 5度目1年半ぶりの江ノ島です。



 前回はだいぶ痛い目に遭いましたが、今回は市民向け「砂浜観察会」に参加させて頂きました。


地曳網篇

ソロ篇
タッグバトル篇
受難篇(事情によりブログ記事なし)



 だいぶひねくれた市民で申し訳ない。一人だけ胴長だし。


 
 「海の生き物を守る会」「日本自然保護協会」「東京経済大学」の共催で、会のメーリスやtaxaなどでも案内があったのですが、どうやら今回は応募者が少なく、ほぼクローズドな観察会となったようです。秋の海も楽しいのに。

 とはいえ、本日の最干潮は9時前で40cmちょっと、開始は10時なので、 わりと満ち潮な感じです。


 こうなれば潮上帯を攻めるしかない、と思ってさっそく人目を憚らず漂着物を漁ってみますが・・・

 辺りにはEDM系のミュージックがガンガンと流れ、ウィンドサーフィンを嗜むアゲアゲなヤングが集っています。そうですね。海藻や流木なんかはあらかた片づけられていますね。


 一応、打ち上げ海藻は少し分解されていてハエが集まっているのですが、漂着物の裏にはハネカクシやハサミムシもおらず、ハマトビムシもおらず、埋もれている海藻をほじくってもなにも出てきません。

 初戦、かなり苦戦してわずかばかりPlatorchestiaを得た記憶がありますが、その後もこの付近でハマトビのコレクションを充実させることはできていません。

 漂着したカジメの根をほじくり返すとメガロパがうじゃうじゃと出てきますが、ヨコエビはいません・・・カマキリヨコエビがいてもよさそうなものですが・・・




 今回のテーマはマメガニとのことですが、潮が満ちた状態で砂地の穴を探すことは難しく、しばらく粘って諦めました。

 砂地にはスナホリムシが結構います。




 あまりに坊主なので、ドロクダムシを1頭恵んでもらいました。


Monocorophium cf. uenoi

 微小なメスですが、ウエノドロクダムシに似ています。

 ネズミをくわえたネコよろしく、スナホリムシがこのドロクダをくわえている様子が観察されていましたが、どうやら腹節下面が大きく欠損しているのはそのためのようです。脚が食われなくてよかった。


ヨコエビのグリセリンプレパラートヘタクソ選手権

 ただ、咬脚の剛毛の位置や長さはStephensenの原記載の図とやや相違があり、苦しいところです。私もあまりM. uenoiの標本は持っていないのでこれから精進することとします。





  このままでは本当に坊主になってしまうので、砂地を諦めて橋脚のフジツボをこそぎ落すという反則技に出ました。

 ここでもドロクダムシ。ただし、メスがよく採れ、オスはわずかでした。

 M. uenoiっぽいものの、要検討です。



 以前江ノ島側で採れたドロクダムシ科と比較すると、オスの形態がだいぶ違う気がします。基質への付着状況も違うので、別種と考えてサンプルを増やした方がよいようです。

 江ノ島側のドロクダについては、ドロクダの決定版的な Bousfield & Hoover (1997) でも落ちなかったので、属もキメられないヨコエビストは信頼を失いがちですが、その実、Bousfield & Hoover (1997) の例えばkey7の尾節の記述などは到底適切とは思えず、尾節が癒合するグループについては何だかんだ勘に頼って乗り切る部分があります。

 現実問題として、広義のCorophiumの範疇を越えるようには見えないので97年より前の文献を用いても属へ行けないという前提が横たわっており、あとは解剖して種の特徴まで検討してしまうのも手かもしれません。


足跡は残せたかな?











<参考文献>
—  Bousfield, E.L., P.M. Hoover 1997. The amphipod Superfamily Corophioidea on the Pacific Coast of North America. Part Ⅴ. Family Corophiidae. Corophiinae,new subfamily. Systematics and Distributional Ecology. Amphipacifica, 2(3): 67-139.
—  Stephensen, K. 1932. Some amphipods from Japan. Annotationes zoologicae Japonenses, 13(5): 487-501.
—  小川洋 2011. 東京湾のヨコエビガイドブック. open edition ver.1.3. web publication. 140p.