2020年7月8日水曜日

書籍紹介『海の極小!いきもの図鑑』(7月度活動報告その2)


 またもや唐突に書籍紹介です.

星野修 2020. 『海の極小!いきもの図鑑』.築地書館,東京.176 pp. ISBN978-4-8067-1599-3


ちょっと図鑑っぽい装丁になりましたね.

 本書の出版に際して,ベイエフエムの某番組に星野氏が出演していました.フクロエビ上目とかゴカイの話題が電波に乗ってびっくりしました.
 2016年に出た『海の寄生・共生生物図鑑』の姉妹書とのことで,また「寄生・共生」とのワードがついていますが,中には寄生・共生とは関係ない純粋な砂質底種等も多く掲載されていますね・・・


 全体的な構成は姉妹書と同じで,生態や分類の情報が添えられたポケット写真集といった雰囲気です.各ページは和名のみ使用していますが,最後にしっかりした学名リストと,参考文献が掲載されています.


 とりあえず,掲載されているヨコエビの種リストを出しておきましょうか.



星野 (2020) に掲載されているヨコエビ(14種群)

ワレカラ類やウミノミ類も掲載されていますが,今回は割愛しました.


  Family Maxillipiidae Ledoyer, 1973 ”アシマワシヨコエビ科”
  • Maxillipius rectitelson Ledoyer, 1973 アシマワシヨコエビ(新称)

     
     
     Family Stenothoidae Boeck, 1871 タテソコエビ科
  • Stenothoidae gen. sp. or spp. 

     
     
     Family Dexaminidae Leach, 1814 エンマヨコエビ科
  • Polycheria atolli orientalis Hirayama, 1984 トウヨウホヤノカンノン

     
     
     Family Aoridae Stebbing, 1899 ユンボソコエビ科
  • Grandidierella osakaensis Ariyama, 1996 オオサカドロソコエビ

     
     
     Family Dulichiidae Dana, 1849 シャクトリドロノミ科
  • Dulichia biarticulata Hirayama & Takeuchi, 1993 キシシャクトリドロノミ

     
     
     Family Podoceridae Leach, 1814 ドロノミ科
  • Podoceridae gen. sp. 


    Family Ischyroceridae Stebbing, 1899 カマキリヨコエビ科
  • Ericthonius convexus Ariyama, 2009 ソコホソヨコエビ
  • Ericthonius pugnax (Dana, 1852) イソホソヨコエビ
  • Ericthonius sp.
  • Microjassa sp.
  • Cerapus sp.
  • Rhinoecetes spinicaudus Kodama, Ohtsuchi & Kon, 2016 トゲオツノアルキ

     
     
     Family Protodulichiidae Ariyama & Hoshino, 2020 ボウノボリヨコエビ科
  • Protodulichia scandens Ariyama & Hoshino, 2020 ボウノボリヨコエビ


     
     
  • Gammaridea fam. gen. sp.

  
 

 何と言っても特筆すべきは,Maxillipius rectitelson に和名が提唱されたことです.
 このグループは沖縄の方のブログで生態写真が紹介されてますが,日本において種同定された生態写真が世に出るのは恐らく初ではないでしょうか.有山 (1988) 以降,環境省 (2008) や 熊谷ら (2008:本文未参照) によって日本近海で報告されており,日本海洋データセンターのリストに記載があります.しかしながら,あまり採れないことと,和名がないことから,マイナーもいいとこでした.上位分類群の和名は出てませんが・・・まあ「アシマワシヨコエビ科アシマワシヨコエビ属」でしょうね・・・

 他には,新上科・新科・新属・新種として記載されたばかりのボウノボリヨコエビについても美麗な生態写真を多数掲載しています.また,上記ヨコエビのみならず,タナイスやカイアシなどの小型甲殻類に加えて,多毛類なども主役級の扱いで採り上げられています.普段からフィールドでこういったサイズ感の手合いを相手にしていると,地域や環境によってこれほど多様なのかと面白く感じる部分があり,一方で巷の図鑑や写真集ではまずお目にかかれないメンバーが次から次へと出てくるので,不思議な感覚もあります.




 
<参考文献>
有山啓之 1988. 飼料生物開発試験. 大阪府水産試験場 (ed.) In: 昭和61年度大阪府水産試験場業務報告. 132–142.
熊谷直喜・恵良拓哉・仲岡雅裕・青木優和・石井光廣 2008. Maxillipiidae (ヨコエビ亜目) の北半球初記録:特異な出現パターンの原因. 日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会講演要旨集.
環境省自然環境局生物多様性センター 2008. 第7回自然環境保全基礎調査 浅海域生態系調査(藻場調査)報告書(平成20年). 第 4 章 葉上動物. 243–432.

<参考WEB>
日本海洋データセンター(2020年5月30日閲覧)

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