2026年10月19日月曜日

水辺の小さな住人/ヨコエビみっけ!(10月度活動報告)

 

 小倉でヨコエビの生体展示と観察イベントがあるとのことで、まぁ、行くしかないです。


ストビューで見たときは目を疑いました。


 紫川という河川のほとりにある、ウナギの寝床のような施設ですね(なおパンダウナギの展示もあります)。

 1階がモンベルで2階が料理店?地階が水族館というのが、何を考えてるのかさっぱり分かりません。すばらしい。


 コンパクトで熱量に溢れる水族館という感じで、足立区生物園やすさみエビとカニの水族館に通ずるものを感じます。

 受付からみて一番奥に、企画展会場があります。


ヨコエビの生体展示が含まれる「水辺の小さな住人」


 現時点の展示種は以下の通りです。

  • ニホンドロソコエビ Grandidierella japonica
  • フサゲモクズ Ptilohyale barbicornis
  • ニッポンヨコエビ Gammarus nipponensis
  • ヒゲツノメリタヨコエビ Melita setiflagella
  • モズミヨコエビ Ampithoe valida
  • ヒメハマトビムシ種群 Platorchestiinae gen. sp. (species group of Platorchestia pacifica, Demaorchestia joi)


 スタッフの完全独学かつ数日前まで同定に追われていた出来たてホヤホヤの展示とのことですが、最新の知見を織り込みながら、子供の好奇心に寄り添うパネルは完成度が高いです。ヒメハマトビムシを種群として扱っているのも好感が持てます。というか、これほどの規模で種同定された端脚目が一堂に会している生体展示は、世界初ではないでしょうか。


 観察イベント「ヨコエビみっけ!」は、ソーティングとヒメハマトビムシ種群の跳躍で約40分があっという間でした。


かなり甘いところから採ったという緑藻と
落ち葉の混じった塊の中に、
ヒゲツノメリタとニホンドロソコ、
よくわからん水棲幼虫とチビゲン的サムシングと
ウズムシとケンミジンコ。

 午前の部、午後の部で各4組の募集でしたが、前日は5枠埋まっているとのことで、当日は午後1枠を残して全て埋まっていたようです。異常成人男性は私だけのようで、概ねご夫婦?やお子さん連れで、施設イベントの常連の方もいるようです。これまでの感じから、イベント皆勤みたいなモチベーションでヨコエビに触れる、という流れが見えてきます。


 宮崎県での作者の体験をルーツに持つ「ガタガール」が置かれているなど、九州の水辺の環境学習施設らしさ?を強く感じました。

 ヨコエビの分類を身につけるというような目的ではなく、あくまで、ありふれた生物を調べてみたら姿形な動きが面白い、よく見たら種類によって全然違う、という部分を主題としていて、ヒメハマトビムシの跳躍の距離を実測するという、ありそうで無かった企画に落とし込んでいるのは面白かったです。



 以下、会場で交わされていた疑問に絡んで、一般の方が関心を持っていると思われる事柄について私見を述べます。


【北九州のヒメハマトビムシの正体】

 今回サンプルを解剖することはできませんでしたが、オス第7胸脚の膨らみを見るに、門司の個体はタイヘイヨウヒメハマトビムシの可能性が高いです。和白の個体もタイヘイヨウヒメハマトビムシでしたし、Morino (2024) はタイヘイヨウヒメハマトビムシとクシヒメハマトビムシ以外のヒメハマトビムシ種群の日本での分布を報告していないため、ヤバい未記載種がいない限りタイヘイヨウヒメハマトビムシと思います。


【ハマトビムシのジャンプ】

 尾肢を地面に打ち付けて跳ねています。歩く足を使わない点で昆虫とは全く異なる行動といえます。尾肢のトゲが地面を良い感じにグリップするのに役立っていて、エネルギーが上方へ分散するのを防いで水平方向への飛距離を稼いでいるとのことです(須藤・天野,2014)。


【ハマトビムシの産卵】

 他のヨコエビと同様、覆卵葉の中で産卵と放精が行われるため、産卵の瞬間は普段の生活空間と同じものと思います。抱卵個体やプレコピュラ個体がその他のものに混じって獲れることがその証左です。実際、ヒメハマトビムシ種群において、湿った砂中に掘った巣穴深部において交尾行動が報告されています(井上,1982)。放精は産卵直後に行われるため、交尾(≠交接)行動が確認された時点でそれは産卵の直後と考えられます。

 ただ、水中に住む一般的なフクロエビ類は当然水に満たされた覆卵葉の中に放精するはずで、水から揚がった状態の覆卵葉の中の卵へ放精して、満遍なく受精できるのでしょうか…?

 ハマトビムシ類と同じ属や科のものには水辺から離れた森林に暮らすものもいて、そういう種は遊泳できないほど腹肢が退化していることもあるので、受精のタイミングで必ず水に入るとは到底考えられません。

 これは後で調べることとします。



〈参考文献〉

— Morino H. 2024. Variations in the characters of Platorchestia pacifica and Demaorchestia joi (Amphipoda Talitridae, Talitrinae) with revised diagnoses based on specimens from Japan. Diversity, 16(31). 

— 井上久夫 1982. 潮上帯棲端脚類ヒメハマトビムシの砂中における行動について.Edaphologia,25 (26):1–13.

— 須藤 誠一・天野 拓也 2014. O220404 ハマトビムシの跳躍とそれに倣う跳躍メ力ニズ厶.日本機械学会2014年度年次大会講演論文集.