2019年5月6日月曜日

Once Upon a Time in Okayama 3(5月度活動報告その2)


(前回までのあらすじ)
 土曜日の朝,二日酔いにあえぐアラサーサラリーマンの目に飛び込んできたのは,半月前のツイートに対する思いがけないレスポンスだった!岡山県自然環境課,岡山大学,そしてヨコエビおじさんの思惑が交錯する中,一人の男が瀬戸内の海辺へと降り立つ.既知種か?未記載種か?立ちはだかる形態分類の壁を前に,ヨコエビストの実力が試される.果たしてヨコエビおじさんは鬼退治を成し遂げることができるのか?美しい瀬戸内海を舞台に繰り広げられる,砂と海水にまみれた偏愛の物語が今,幕を開ける…!


 また岡山です(過去の採集⇒Once Upon a Time in Okayama 1, 2).
 とりあえず今期はこれで締めです.



 晴天に恵まれ…というか,日差しが強くかなり暑いです.


 

岡山県某所.


 今回はです.


 スローライフを観光の目玉にしていることから,自然海岸が結構残されているのではないかと.また,狭い範囲に岩礁や砂浜など海岸のあらゆる要素がぎゅっと圧縮されている感があり,効率的な採集ができそうな気がしたので,〆めに選びました.

 

 本土からは船で10分.何らかのイベント期間中らしく,理解できない人数が乗っています.

 まず外湾的な岩礁を見てみます.

近くを船が通ると波をかぶる感じ.



 塩分濃度は十分なはずですが,藻類の顔ぶれが非常に単調です.打ち上げ海藻へのフサゲモクズの付着すらなく,恐ろしくヨコエビリティが低い状態です.これはまずい.
 石積っぽい雰囲気のガチ護岸がいけないのでしょうか.





 港の近くに,潟湖のような場所があります.この地域は採石を生業としているようで,かつての石切り場へ海水が流れ込んだ場所の一つかもしれません.




 モクやミルが繁っており,塩分濃度は十分そう.


 おもむろにガサると


底節板の下縁に毛が無い.



 また新たな Ampithoe です.調査地を増やすごとに新たな種が出てくる怖いやつです.


やたら泳ぎが早い.

 これはどうやらエンマヨコエビ科のあの方のようです.


 





 落ちないドロノミ.既知の約80種のうち70種ほど検討を行いましたが形態合致せず.たぶん未記載.


 


関東でも見覚えのあるメリタ(Melita).

ユンボソコエビ属(Aoroides)でしょうかね.



相変わらず変態的な擬態能力を誇るテングヨコエビ科(左).



 最干潮まであと1時間半ほど.

 橋のかかった水路を通って,潟湖からどんどん海水が流れ出しています.そこをくぐると,砂浜に出られるようです.

 陸由来と海由来の漂着物が結構あります.


 
お馴染みのヒメハマトビムシ種群の1種(Platorchestia pacifica).
  掌縁に明瞭な山が2つ.
 第1尾肢内肢に棘状剛毛が4本.



ニホンヒメハマトビムシ(Platorchestia pachypus).
  掌縁の起伏は緩く,山は2つ.
  第1尾肢内肢に棘状剛毛が3本.
 最大の特徴は,第7胸脚腕節が長節と同じくらいあるいはそれより太いこと.
前節も太め.


 これはニホンヒメハマトビムシ(Platorchestia pachypus)!
 森野・向井 (2016) にて,岡山が分布域に入っていましたが,個人的には生体を見たのは初めてです.P. pacifica みたいな淡黄色~肌色にゴマを散らした砂地の色合いとは異なり,湿った土壌や落ち葉に寄せて,藍色や褐色の強いオカトビ風あるいはホソハマ風の体色になっているんですね.



オカトビムシ(Morinoia humicola).
  掌縁の起伏は緩く,山は1つ.

 同所的にこれだけ多様なハマトビが採れるなんて,これほどの場所はそうそうありません.
 



 さて,少し進むと,砂浜と岩の間に泥干潟が広がっています.




 干潮時にひたひたの水位の泥底.
 前回の自然海岸でもこんな場所がありました.



ニホンドロソコエビ(Grandidierella japonica).

 ものすごい密度で生息しています.



アリアケドロクダムシ(Monocorophium acherusicum).


 しかし,潮よりも船の時間がシビアなのでこのへんで退散.


港にハクセンシオマネキめっちゃおった.






 2日目.

 ホテルで惰眠を貪った後,鯖飯をかっ食らい,また同じ島へと向かいます.

 1日目は北側にあたる港周辺しか廻らなかったので,今度は島の反対側,南側へと足を伸ばしてみます.

ダメっぽい.


 近年整備されたというキャンプ場と海水浴場.

 海岸林の際の倒木を返すと Morinoia らしきヨコエビがいるものの,砂浜には生命の息吹は全くありません.


 少し海水浴場を外れると立入禁止標示あり.しかし,キャンプ場の外れまで進むと,人が歩ける海岸があります. 


こちらはなかなか良さげな景色.
特に奥の砂浜のハマトビリティが良い.


 潮は全く良くないのと,昨日の潟湖ほど海藻のバリエーションが無さそうで,あまり採れる気がしません.とりあえず浅場の海藻をガサってみます.


ヒゲナガヨコエビ属のいつものあいつ.






ふさげもくず.

 あまりバリエーションのある顔ぶれではありませんね.


 潮上帯に絞ることにします.

 切り立った崖が汀線まで迫り,岩の間に砂利と砂の間くらいの粗い粒が溜まっています.松葉を返してみると



またオカトビムシ(Morinoia humicola).


 打ち上げ海藻から落葉溜まりにかけて,ハマトビとオカトビがグラデーションをなしているように思われます.

 しかし,崖の下にある砂浜では,汀線からの距離の問題か,粗い粒の影響か,小さいハマトビしかいない新鮮な海藻と,何もいない乾いた海藻の二極化が進んでいます.ちょうどいい海藻を見極めないと採れない感じです.宿がとれれば夜間灯火採集をしたいところです.






 しかし,草地と連続した幅広めの砂浜にさしかかると,歩くだけで,ハマトビやらヒョウタンゴミムシやらがうろちょろしています.




 しかし,ここのハマトビは触角が小さく,頭部が大きく,全体に色が薄いような・・・
 

ヒメハマトビムシ(Platorchestia joi).


 これが森野・向井2016でいうところの真のヒメハマトビムシ!!
 自己初&岡山初!!
 こんなところで出会えるとは!


 
P. joi(♂):第1咬脚指節の上面の段差に棘状剛毛が無い;
第2咬脚前節の下面に3~5本(※1)の棘状剛毛がある.
P. pacifica(♂):第1咬脚指節の上面の段差に棘状剛毛がある;
第2咬脚前節の下面に棘状剛毛が無い(※2).

  • ※1:今回検鏡した個体は7本の棘状剛毛がありました.Miyamoto and Morino (2004) の範囲からは外れますが,個体差と考えました.
  • ※2:横須賀では2~3本程度の痕跡的な棘状剛毛を具える個体が得られており,今回も1本具える個体が得られています.森野博士の私信によると,第2咬脚のこの形質より,第1咬脚の形質のほうがより精度が高いとのことです.


 ほかに,腹肢柄部の端部に棘状剛毛があるかどうか,などの形質も使えますが,今回はとりあえず簡便に咬脚のみ確認しました.詳しくは過去のブログをご確認ください.



 岡山のヨコエビ調査の総括.

 船やバスがシビアで潮との調整が難しいのもさることながら,やはり見慣れないグループの同定がなかなか進みません.
 しかし,やればやるだけ見つかるという手ごたえは確かにあります.
 何とかこの成果をまとめたいと思います.
 



ありがとう岡山.





<参考文献>
—  Miyamoto, H. and Morino, H. 2004. Taxonomic studies on the Talitridae (Crustacea, Amphipoda) from Taiwan, II. The genus Platorchestia. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 40: 67–96.
森野浩・向井宏 2016. 砂浜フィールド図鑑 (1) 日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 京都市.

 

2019年5月3日金曜日

令和はバイブレーションとともに(5月度活動報告)



 元号が改まって初めての採集です.平成をどう終えたかといえば自宅に籠って文献調査,令和をどう迎えたかといえば自宅に籠って文献調査をしておりました.岡山は手強いです…


 さて,今回はせっかくの10連休の中の大潮を大切にしたい(?)という気持ちから,採集会を企画いたしました.



干潟漫画家・小原先生と行く!
GW 電マ端脚採集会!!


物好きな皆さん.


 電マ採集とは,昨年から私が提唱している新しい干潟採集法で,大地とひとつになる感覚を味わえる稀有な方法です.昨年11月の深夜に実施した実績はあるものの,目覚ましい成果を上げるには至っていません.


   今回はその真価を確かめたいと思います.


11月に使用したものと同じ,干潟専用の完全防水マッサージ器です.



 電マを使うことに加えて,採るのは端脚類だけというニッチ・オブ・ニッチの企画ですが,普段から科とか属とか種レベルで採集計画を立てることが常のヨコエビストにしてみれば,何ら違和感はありませんね().




 千葉県某所干潟.午前9時30分.
 



 潮はわりと引いています.


 あと,親子連れをはじめとして,人がめっちゃいます.


 そこに響き渡るモーター音.


 干潟面の穴や海藻を刺激してみます.

 すると

電マは優しく当てます.


 海藻から這い出してくるトゲワレカラ(Caprella scaura)の皆さん.



 バットを用いて採集をする際,海藻に付いているヨコエビやワレカラを洗い落とす工程を経た後,バットに残った生き物を収集します.しかし,電マを使うことで,拾ったままの海藻から這い出してくる生物を効率よく発見することができそうです.


定番のモズミん(Ampithoe valida).


 モズミんに混じって,赤みを帯びたヒゲナガヨコエビがいます.確か過去にこの界隈で赤茶色のヒゲナガが採れた時は別種だったような気が・・・


こちらはAmpithoe tarasoviです.


 Ampithoe valida A. tarasovi はよく似ていますが,底節板後縁に剛毛束があるかどうかで見分けられます.

モズミんの第4底節板以外の剛毛は見えにくいですが,
 顕微鏡下で剛毛の存在を確認しました.

 見慣れてくると,全体のプロポーションやオス第2咬脚の形状を見れば,肉眼でも見分けられます.また,成熟しきったオスは第1咬脚が大きく発達するので,A. valida とはだいぶ趣が異なるように見えます.




 電マを砂の中に押し込んだり,沈めたりして待っていると,オサガニなんかが飛び出してきます.他にはヒモハゼやシミズメリタなど.

 やるじゃないか,俺の電マ.

シミズメリタヨコエビ(Melita shimizui)ですね.


 しかし,途中からどうもスイッチの反応が悪くなり,汀線へたどり着くころにはとうとう沈黙・・・

 大地はやはり強かった.

 次の出撃に備え,さっそく新たに(もっと強そうな)電マを発注しました.
 

※機器の操作に集中しており,あまり写真を撮っていませんでした.ご了承ください.








 さて,電マ採集後は,谷津干潟に寄って「ガタガール原画展」を拝ませていただきました.


何年振りかの谷津干潟.


 原画撮影自由という太っ腹!
 

ガタガール既刊を買うこともできます.




フェスティバルと原画展のポスターが干潟の柵にも張ってあります.



2019年4月27日土曜日

Once Upon a Time in Okayama 2(4月度活動報告その2)


 また岡山です.
 こないだの様子はこちら.目録の行を1つでも増やすという目標に対しての成果はありましたが,フィールドの手応えはしょっぱい感じでした.海だけに.


 前回の反省をもとに,地形から塩分濃度を推定し,衛星写真から緑藻が多すぎるところを探り,採集候補地を更に絞り込みました.Googleで着生藻の種類まで特定するのは難しそうですが,リモセンでどんな光合成色素が多いとか将来的にロケハンに使えないものかしら.


 今回は日差しもあり,だいぶ暖かですが,海風が涼しいお陰で体力には影響ありません.申し分のない干潟日和です.

 


※雰囲気のみお楽しみください♡


 港の回りは新しい護岸が整備されています.着生生物には全く期待できません.


 最干潮のタイミングで本来の目的地をアタックしたいところですが,バスの本数がしぬほど少ない関係で結構早く到着していて,まだ時間があります.
 波消しブロックの間にいろいろあるので覗いてみます.


 そこらへんにアオサがでろでろと展開して,ところどころカヤモノリが生えているのはあまり魅力的に見えないものの,浅いところにもわずかにホンダワラ系が生えているのと,ロープが張ってあって,フクロノリを付けていたりして,基質のバリエーションが豊富です.張り出した岩の裏にはコケムシやカイメンがちらほら.

 この周辺は結構良いかもしれない.


Melita属の一種.たぶん東京湾にもいるあの方.



 信頼できる基質が少ない中,フクロノリの根元がかなり狙い目のようです

 石の下にはカニダマシ.どうやら競合するらしく,カニダマシがいるとヨコエビが採れません.果たして転石下はダメでした.





 さて,本命の自然海岸を目指します.

※雰囲気のみお楽しみください☆


 緑藻が目につきますが,潮が引くにつれて,着生したワカメやホンダワラ,紅藻などが見えてきます.緑藻や褐藻も先週の地点よりだいぶ種類が多いようです.岩肌にはカイメンのほか,群体ボヤ,オオヘビガイなど楽しい仲間がいっぱい.



Ampithoe属のアノカタ.

 
 色合いは変異が多いようですが,形態は外房で見たものによく似ています.最初は歓喜しましたがこの後は飽きるほど採れます.持ち帰って種同定したところ,やはり大陸で記載された種であると確信を得ました.




 付着生物も多様です.ワレカラやらタナイスやら小さなカニやら巻き貝やらやたら黒いコソミジンコやら貝形虫やら.特にタナイスはドロクダムシに混じって出現して非常に紛らわしい.



 そんなこんなで

Pereionotus属の一種.


 思わず声が出ました.
 あまり多くはないようですがよく探すと採れます.こいつがいるということは,外房並みの磯環境に出会えたようです.




 そして懸案の

Podocerus属の一種.


 これを採らずして帰れない,逆に採れたらもうこのへんで帰ってもいいかな的なドロノミです.ネットで話題(?)のフランダードロノミ(仮称)にたくさん会えました(黄色というより橙と青の組み合わせなので少し違いますが).

 岡山大学臨海実験所の伝統的リーフレットに Podocerus inconspicuus との記録があるものの,そもそも日本の沿岸からまともに記録のあるドロノミが少なすぎて真に受けるわけにはいきません.この種はオーストラリアのポートジャクソンから記載されたという怪しさもあります.しかし,分布や生息環境の齟齬を無視したとしても,背面の隆起の様子からして P. inconspicuus ではないようです.これから検討します.
 そして Podocerus brasiliensis でもないようです.関東でも海藻からPodocerus をたびたび得ていますが,全体の印象が結構違うのと,体サイズは小さく何と言っても数が少ないので性別やステージの違いを検討できていませんでした.壊れることも多いし.


 今回は壊れることを想定し,スウィートルームをご用意しました.厳選したオスとメスをそれぞれ個室へとご案内.
 それにしても,これほど飽きるくらいドロノミが採れたのはお台場以来です・・・



 あと,ヨコエビにありがちな3~7mmサイズ帯にひしめく怪しいヤツら.



Atylidaeは自己初.目録にもなし.

 Nototropis がどういう環境にいるのか今一つ分かっていませんでした.
 わりと外湾的な磯で,紅藻より褐藻や緑藻のある環境?少し土砂がある場所?


恐らく Gitanopsis属ではないかと.自己初.目録にもなし.



 あと,トゲホホヨコエビ(Paradexamine属)やテングの類(Pleustidae)っぽいのも採れました.



Ptilohyale 以外のモクズもやはりいる.属まで落ちるかすら不安.

 


Grandidierella属のアノカタ.


 Grandidierella は成熟オス採れず現場での種同定に至らず.メスと未成熟オスで何とかしなくては.



 最干潮を過ぎたので今日のところは撤収.ハマトビリティが感じられなかったのでハマトビチャレンジは割愛.








 二日目.

 頭が痛いです.

 駅前のチェーン居酒屋で地酒を引っかけたからでしょうか.
 それとも,深夜のスナックでバランタイン12年をロックで煽りながらヨコエビの良さについて熱く語ったせいでしょうか.
 岡山に来ると深酒をしてしまうのはなぜか.そんなことを考えながら濃いめのコーヒーを飲み干し,ホテルを抜け出します.


 6時半が最干潮です.採集に関係ない荷物を部屋に置いておけるのは便利.Googleロケハンでヨコエビリティを感じる海岸に近い宿を探したのは,他ならない朝の最干潮を狙うためです.

 朝の散歩が可能との旨を予め確認しておきましたが,フロントの人はどこを散歩するのかとても訝っていました.


※雰囲気のみお楽しみください♪


 釣り船の港のようです.1艘が港の中ほどでアイドリングしています.



 砂泥と緑藻を厚く纏った護岸.
イガイやフジツボは少なくわずかにコケムシが見られます.

 泥を掘ると小さなスナモグリ.これはこれで楽しい収穫ではありますが,ドロクダは少なくオスが採れません.


 屈んで,立ち上がって,の動作のたびに頭痛が走ります.もしかすると,ハーパー12年のせいかもしれません.


 アイドリングしていた釣り船が,調整を終えて港を出ていきます.浜を見ると,船底を掃除したのでしょう,カイメンやらコケムシやらシロボヤやらがごそっと転がっていました.これはありがたい.


Elasmopus属の誰か.種まで落ちる気がしない.



 科・属ともに目録に記載なし.前日のポイントで稼げなかったので儲けもの.ただ,このグループは日本での分類が進んでいなさすぎて,種に落ちる予感は全くありません.


とても少なかった Stenothoidae の一種.目録に記載なし.



 あとは先週のポイントにも多かったAmpithoeとか.



 砂浜は狭すぎ かつ キレイすぎたのでハマトビチャレンジを割愛.最干潮を見届けて,今回の採集を終了しました.






 総括.


 私のイメージしていた岡山の磯環境はまさにこんな感じです.ようやく狙ったレベルの採集が出来た気がします.
 ではこれから,と言いたいところですが,公共交通機関を利用した採集スタイルを基準に考えると,Googleロケハンで見る限りもう期待できる場所がほとんどないっぽいので,個人で稼げる種数はわりとこんなものなのではと思います(弱気).

 もちろん,確かめてみたいグループはまだ幾つもありますが,ピンポイントで狙って採りに行くには今ひとつ土地勘が足りない気がします.長期的な取り組みが必要です.また,潮下帯へのアタックは術がなく,文献に頼るほかないので,これから種数を増やすにあたってのやりこみ要素はそのへんにあるような気もします.

(つづく?)




(参考文献)
— 岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所 刊行年不詳. 無脊椎動物実習手引 第3版.岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所, 牛窓.

2019年4月19日金曜日

Once Upon a Time in Okayama(4月度活動報告)



 岡山に行きました.


 学生時代,臨海実習で牛窓に行ったことがあります.後にも先にも例のない3日酔いという失態を犯し,各方面に御迷惑をお掛けしました.改めましてこの場をお借りして謝罪します.大変申し訳ありませんでした.


 ひょんなことから,そんな思い出深い岡山のヨコエビ相を記述する機会を得ました.潮はあまり良くありませんが,発作的に新幹線へ飛び乗り,岡山攻略に向けた一歩を踏み出しました.臨海実習を受けていた当時はヨコエビを志す前だったので,全く採集はしていません.


 予報通り雨です.
 未経験のフィールドを訪ねるにはあまり良い条件とは言えませんが,弾丸ツアーなので仕方がない.前進あるのみ.


 夜なべをして県下の海岸をGoogleロケハンした末,ヨコエビリティが高そうで公共交通機関が使える場所を幾つか見つけました.今回は初回の肩慣らしとして,特に自然度の高そうなポイントが集まっていて,短時間でサクッと回れそうところにしました.

※雰囲気のみお楽しみください.


 自然ですね.

 関東でどうしてあんなにせせこましく採集していたのか分からなくなるくらい,ザ・自然という感じです(語彙力).

 ロケハンしていて,岡山県下の沿岸にはたくさん海苔網らしきものがあることは分かっていましたが,この場所も海苔網が見えました.沖合には漁師さんの船.立ち入り禁止標示などはありませんが,このへんは間違いなく漁師さんの仕事場の近くです.



 石英分の多いカーキの岩肌と粗砂の浜が瀬戸内っぽくて良いです.帰ってきた感じです.河口に程近く,前浜干潟に属するものと考えてよいのでしょう.


 岩場をよく見ると,海藻はあまりに貧弱.アオサの類などの緑藻に混じって,カヤモノリっぽい褐藻が少々.ヨコエビにしっかりした構造を提供してくれるワカメやホンダワラは岸には根を張らず,沖合いから切れ藻として漂着しているようです.

 外房や江ノ島では,岩を抱くように根を伸ばす紅藻や褐藻の間でたくさんヨコエビが採れたものです.

 ヨコエビリティを感じられないまま海中へ.


いつもの Ampithoe のあの方.


泥のたまったところに Monocorophium

 残念なことに「もう見た」の連続.悪い意味で予想を裏切らない展開です.

 海藻相が単調で,またどれも構造が単純なので,恐ろしくヨコエビリティが低いように感じられます.モズミヨコエビ(Ampithoe valida)は繁殖期のようでアオサの間ではよく成熟した個体も見ることができましたが,三番瀬などでよくあるcopepodやdecapod優占というわけでもなく,生き物の活性そのものが少ない感じです.
 

打ち上げ海藻の下に Ptilohyale のあの方.


 岡山のヨコエビリティは今年3月刊行の野性動物目録の3倍は下らないと豪語していた(してない)だけに,焦りが募ります.悪夢再来でしょうか.





 しかしここで落ち葉の下から岡山初記録属登場.

Pyatakovestia のあの方.



 こちらは目録上は初記録科.ただし,藤井ほか (1997) では普通に記録あります.

何らかの Pontogeneiidae.

 

 あとは Jassa も出ました(種まで落ちる予感は無いです).何とかリストの拡充に繋げることができそうです.




 砂浜には打ち上げ海草があります.アマモ場は沖にあるのでしょうか.確かに牛窓の実習でもアマモ場へは船で行った気がします.


Platorchestia属 の一種.この個体は P. joi ではなさそう.

 Platorchestia の密度はかなり良い感じです.そして気温も低いので,あまり跳ねず採りやすい.オス第2咬脚下部にわずかに毛が散生しており,第7胸脚腕節が細いので,もしかすると P. joi かもしれませんが,関東で採れるのとはまた顔立ちが違う印象の P. pacifica も採れており,訳が分かりません.
 砂浜は,堤防をくぐって注ぐ水路と通じていて,後背湿地を伴う汽水環境のグラデーションを保っている感じがします.浜の攪乱があまりないのもさることながら,堤防の内側にハマダイコンやヨシなんかがあって,他のsand hopperやmarsh hopper系に期待してもよいかもしれない.

 しかし,バスの本数があまりにえぐいので,採集は1時間ほどで切り上げ.




 総括.

 鬼退治に出掛けたら返り討ちにされたというか,ヨコエビ連れ去り犯という点で実は私が鬼だったのか.
 何にせよ,岡山侵攻はまだはじまったばかり.これから他の場所も回るので,その際にはより慎重にロケハンをする必要がありそうです.
 このように緑藻が優占する感じは三番瀬や盤州に似ているので,河口に近いことで海水が甘すぎて,外房のような外湾的な藻類に適さないのかもしれません.確かに浜の漂着物には陸由来のものが多いです.

 まだ日はあるので,次こそはヨコエビリティ溢れるポイントにたどり着けるよう精進します.

 

(参考文献)
— 藤井義弘・松村眞作・篠原基之 1997. 片上湾における底生生物の分布とエビ類の生息状況. 岡山水試報, 12: 51–58.

岡山県野生動植物調査検討会 (ed.) 2019. 岡山県野生生物目録2019 Ver. 1.0. 岡山県環境文化部自然環境課.


2019年4月1日月曜日

2019年4月1日活動報告


 ヨコエビは,海から陸まで幅広い環境に進出したと言われます.

 では,空はどうでしょうか.

 南太平洋沖の小島から得られた標本について記述した19世紀の文献に,次のような記述があります.



Pterotalitrus plumosa sp. nov. (fig.1–3.)

   Body cylindrical. Eyes oval. Upperlip inflated to 1/3 of the head and with convex epistoma. Flagellum of anterior antenna is vestigial. Anterior antennal sinus is absent, lateral head lobe placed behind of rostrum. Posterior antenna length as twice as body, armed plumose setæ with complicated fine setæ. Proximal part of mandible is inflated.  Anterior and posterior gnathopods, first and seond pereiopods similar; each segment with many setæ; coxæ fleshy and elongated proximally; first to seventh segments minutes. Each segment of fifth to seventh pereopods is strongly fringed; sixth and seventh segments strongly curved, with spinous setæ. Each pleopod with single-segmented rami, peduncles and rami with long setæ. Urosome fused completely and all uropods without rami and setæ. First uropod robust and reach to root of third uropod. Lacking second uropod. Telson single, fleshy and broad, same to third uropod in length. Length 1/2 in.
   Hab. Moss forest. 
   We collected the specimen which flying to oil lamp with many DIPTERA.




 形だけを見ると,ちょっと変わったハマトビがおるな~程度ですが,さらっとおかしなことが書いてあります.


 ”灯火に飛来した”


 飛ぶんかワレ


 この時に厳密にどんな双翅目が飛んでいたのかは分かりませんが,同じ報告書では,ガガンボ科,ブユ科,ヌカカ科,クロキノコバエ科の種が,雲霧林の灯火採集で捕獲されたことになっています.

 これらは湿った環境の中に生活している連中です.
 ここでいう「飛ぶ」が「跳ねる」でないと証明することはできませんが,Pterotalitrusの鰓が底節板に隠されていたり肢に毛が多かったりするのは,止まった先で湿り気を得ながら飛び石的に移動していく生態を示しているのかもしれません.

 他に似たような種がいるのか分かりません.この種とて,後に記録が見当たらないため,幻と言ってよいでしょう.

 

  








2019年3月10日日曜日

干潟初め2019(3月度活動報告)


 昼に潮が引くようになってまいりました.

 こんな感じです.


C県某所.
 最大干潮は54cm,その1時間半前でこんな感じです.


 いいじゃん.



 今回も砂を濾してみようと思います(こうやって作ります).


テクニックを身に付けました.うまくいきました.


スナウミナナフシっぽいのが採れましたね.

 
 そして今回はターゲットとなるヨコエビがいたのですが,開始30分でノルマを達成してしまったので,あとは遊びます.








 久々にメリタも何匹か採りましたが,採れたのが全部別種というのが怖いです.


ヒゲツノっぽいが要検討.


 アゴナガヨコエビはいつでもたくさんいますね.11月のとは違うようにも見えますが.

アゴナガヨコエビ属の一種.Pontogeneia rostrataだろうか.



 ヨコエビを採るのに潮の引きは十分と思いましたが,アマモ場に到達することはできませんでした.ただ,幾つか切れ藻を発見することができました.


アカクラゲこわい(ガタガールsp.第29話参照).



 3月の干潟はだいぶ春めいて見えましたが,まだ空気は冷えており,風は強く,わりと体力を使った気がします. 

 海藻の打ち上げが少なく,海藻付着ヨコエビはあまり見られず,ハマトビチャレンジという感じでもありませんでした.これらを狙うとすればもう少し季節が下ったほうがよいかもしれません.


2019年3月3日日曜日

2019年のヨコエビギナーへ(文献紹介第五弾)



 すでに20本あまりの文献を紹介しているこの企画.今回は第5弾です.



 ヨコエビの入門者が触れるのに適していると思われる文献を独断と偏見でご案内しています.
 選定理由は,その年にhotというのもありますが,基本的に気づいたもの・思い出したものから掲載しておりますので,今年からの方はぜひ過去の紹介文献もご覧ください.

※たぶん今年ネ申図鑑が出るのですが,本記事の公開には間に合いませんでした・・・出版が待ち遠しい・・・





(第一弾)
・富川・森野 (2009) ヨコエビ類の描画方法
・小川 (2011) 東京湾のヨコエビガイドブック
・石丸 (1985) ヨコエビ類の研究方法
・Chapman (2007) "Chapman Chapter" In: Carlton Light and Smith Manual (West coast of USA)
・平山 (1995) In: 西村 海岸動物図鑑
・Barnard & Karaman (1991) World Families and Genera of Marine gammaridean Amphipoda


(第二弾)
・Lowry & Myers (2013) Phylogeny and Classification of the Senticaudata
・World Amphipod Database / Amphipod Newsletter
・富川・森野 (2012) 日本産淡水ヨコエビ類の分類と見分け方
・Arimoto (1976) Taxonomic studies of Caprellids
・Takeuchi (1999) Checklist and bibliography of the Caprellidea
・森野 (2015) In: 青木 日本産土壌動物


(第三弾)
・有山 (2016) ヨコエビとはどんな動物か
・森野・向井 (2016) 日本のハマトビムシ類
・Tomikawa (2017) Freshwater and Terrestrial amphipod In: Species Diversity of Animals in Japan
・Bousfield (1973) Shallow-Water Gammaridean Amphipoda of New England
・Ishimaru (1994) Catalogue of gammaridean and ingolfiellidean amphipod
・椎野 (1964) 動物系統分類学


(第四弾)
・Lowry & Myers (2017) Phylogeny and Classification
・Bellan-Santini (2015) Anatomy, Taxonomy, Biology
・Hirayama (1983–1988) West Kyushu
・井上 (2012) 茨城県のヨコエビ
・永田 (1975) 端脚類の分類
・菊池 (1986) 分類検索, 生態, 生活史






<番外編>
— ジュディス・E・ウィンストン[馬渡峻輔・柁原宏 訳]2008.『種を記載する』新井書院,東京,653 pp.,ISBN:9784903981000

 師匠の下でヨコエビの記載を目指している中で,ふと「どのように動物分類学を学んだか」と訊かれ,ぱっと思い浮かんだのが本書です.
 分厚い書籍で、例示や資料を差し引いてもそれなりのヴォリュームがあり,英語に慣れていないと原書を読みこなすのは難しいと思います.また,著者の得意とする分類群とそうでない分類群とでは情報の濃度が違うように思え,若干アヤシイ記述があって訳者に直されていたりしますので,日本人なら,一手間加わった日本語訳版を読むのが良いのではないでしょうか.
 豊富な例を引き,「学校で教えてくれない」的な分類学の基本から実践まで懇切丁寧に記述しています.




<今年のおすすめ文献>

Arfianti, T., Wilson, S. and Costello, M. J. 2018. Progress in the discovery of amphipod crustaceans. PeerJ, 6: e5187; DOI 10.7717/peerj.5187

 昨年出版されました.これまで端脚類がいかに発見・記載されてきたか,その過程を多角的に分析した論文です.2016年時点での種数や属数がまとめられていたり,全ての化石種を紹介していたり,ちょっとした網羅的な情報を得るのにも便利ですが,そんな楽しい論文が無料で読めるというのですから読まない手はありません.ただし,資料収集期間に含まれない Lowry & Myers (2017) の知見は反映されていませんのであしからず.




Ortiz, M. and Jimeno A. 2001. Guía ilustrada para la identificación de las familias y los géneros de los Anfípodos del suborden Gammaridea de la Península Ibérica. Graellsia, 57(2): 3–93.

 イベリア半島のヨコエビガイドブック的なものです.
 日本の浅海域に産する科はだいたい網羅されております.図を多用して視覚的に形質を検討しやすいように工夫されています.特に,適合する形態の番号を選んでその組み合わせで科から属へ落とし込める工夫が良いです.
 しかしながらというか,当然のことながらというか,オススメしておいて申し訳ないのですが,分類的知見は古く,現在の下目体系との乖離は頭に置いておかねばなりません.また,イベリア半島と日本では,属レベルでは互換性に乏しく,必ずしも同定には使えません.あくまで科レベルの把握と,共通した属があればそのレベルでの落とし込みにお使いください.あと,本文は全てスペイン語です.
  これほど多くの属を網羅しビジュアルとしてイメージできるように表現された文献はあまりない気がするので,グーグル先生の力を借りて訳しながらでも読む価値はあると思います.何にせよ無料です.



  さて,ヨコエビ全体に関する入門書的な出版物もそろそろネタ切れなので,少し細かいところに入っていこうかと思います.科などのグループごとに,分類群の概要の理解であったり,日本で分類同定を行う上で読んでおいた方がよい文献をご案内します.
 今年はひとまずハマトビムシ科をご案内します.



<ハマトビムシ科の分類にオススメ(1)>

Miyamoto, H. and Morino, H. 1999. Taxonomic Studies on the Talitridae (Crustacea, Amphipoda)from Taiwan, I. The genera Talorchestia and Sinorchestia n. gen. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 8(5–6): 169–200.

 スナハマトビムシ Sinorchestia属の分類を行う上では押さえておくべき文献です.無料で読めます.
 なお,現在の Sinorchestia属 や Trinorchestia属,そして Platorchestia属 に含まれる種には,かつて Talorchestia属 として扱われていたものが含まれますが,現在 Talorchestia属 は南太平洋(東南アジア,オセアニア)からペルシャ湾にかけて分布するグループとされており,日本からは報告されていません.



Miyamoto, H. and Morino, H. 2004. Taxonomic studies on the Talitridae (Crustacea, Amphipoda) from Taiwan, II. The genus Platorchestia. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 40: 67–96.

 Platorchestia pacifica の記載論文であるとともに,ヒメハマトビムシ種群およびオカトビムシ類の分類にあたって,非常に重要な文献です.無料で読めます.
 なお,当時 Platorchestia属 として扱われていたオカトビムシ2種(オカトビムシ,ニホンオカトビムシ)は Lowry and Myers (2019) の処遇により Morinoia属 となりました.



Morino, H. and Miyamoto, H. 2015. Redefinition of Paciforchestia Bousfield, 1982 and description of Pyatakovestia gen. nov. (Crustacea, Amphipoda,Talitridae). Bulletin of the National Museum of Natural Sciences, Ser. A 41: 105–121.

  ホソハマトビムシ Pyatakovestia属の分類にあたって欠かせない文献です.無料で読めます.Pyatakovestia属 はかつて Paciforchestia属 とされていた種を含みますが,現在 Paciforchestia属 は北米沿岸に産する1種のみで,日本からは報告されていません.



笹子由希夫 2011. 日本産ハマトビムシ科端脚類の分布と分子系統解析. 三重大学修士論文.

 日本のハマトビムシ科について,各地から得られた標本の検討を行っています.同定のキーはありませんが,近似種の識別ポイント,生息環境や国内の分布について知ることができます.何はともあれ無料です.



※また,ハマトビムシ科に関しては過去のブログ(こちらこちら)もご参照ください.





<野良で研究するために>

 まだ論文が出ていないのでニセチビ研究者モドキですが,問い合わせがありましたので.
 こうして今のところ,ヨコエビと無縁の仕事をしながら採集をしたり論文を追ったりしているのは,何かしらポイントがあるのだと思います.真に受けないほうがよい部分もあるかと思いますが,私が「今思うとやっておいて良かった」「もっと早くから意識すれば良かった」と感じることをご案内します.
 予めお断りしておきますと,当方のスペックとしては,勉強ができるわけでもなく,コミュ強なわけでもなく,仕事ができるわけでもないです.具体例を挙げると切なくなるのでこのくらいにしておきます.また,研究は卒論でカタを付けるつもりでおり,野良としてやっていく予定はありませんでした.

  さて,文献紹介シリーズは卒論を書き始める学生さんを想定読者としているので,まずは論文を仕上げることに専念して頂きたいです.その上で,今のうちにやっておくべきことを挙げるとすれば,学会(大会)へ参加しまくることではないでしょうか.

 大会はだいたい年に1回なので,短い学生生活の中で何回も参加することは難しいかもしれません.それでも,例えばヨコエビでは,甲殻類学会,ベントス学会,動物分類学会など、関係する組織がいくつもあります.また,普通の大会以外にもシンポジウムとか講演会とか,付随するイベントがあったりします.必修科目とかコアタイムとかあるかもしれませんが,万障繰合せて学会のイベントに参加することをお勧めします.卒論はだいたいラボのテーマに沿う形で取り組むと思いますので,関係する組織やイベントは,教官や先輩から教えてもらえるでしょうし,参加を促される場面もあるかと思います.

 学部生ならば必ずしも発表する必要はないと思います.発表を聴けば,聴かなくても要旨集を見れば,研究というものがどのように行われているのか,どの人がどんな研究をしているか,何となくわかります.
 教官や先輩の後ろを付いて回りながらでも,名刺をばら撒いて,研究者の方と何人も知り合って,今自分が追っている対象への情熱をぶつけてみてはいかがでしょうか.懇親会に出るのもいいですね.
 卒論生というのはめまぐるしく通り過ぎる旅人みたいなもので,大会を聴いていただけで誰かの記憶に残るのは難しいかと思いますが,研究対象とかアプローチとか共通項を狙い澄ましてぶつかっていけば,強い印象が残る気がします.誰かを捕まえたら、誰かを紹介してもらうのも良いです.知り合いの知り合い,みたいな曖昧な関係であっても,逆に紹介してくれた人に紐づいて印象が強くなることもある気がします.
 大会へ参加することは,学位論文を執筆するにあたってはもちろんのこと,その後の野良研究人生において大切な宝物になると思います.

 要するに「学会で出会った方と連絡を取って情報交換をしながら研究していくのがいいよ」という話なのですが,卒業研究から野良研究生活にかけて,こちらから助力を乞う場面がほとんどかと思います.ただ,プロの研究者はあくまでプロであり,こちらがいくら研究対象に情熱を持っていようとも,趣味でやってる人と交流するかのような(同好の志の親玉みたいな)認識で近づいていくのはNGです.所詮は学生ですし,世の中の先生には「いいよいいよ」と言ってくれる方も数多いかもしれませんが,敢えて私からお伝えしたいのは,見返りなく先方へ出費や手間を求めることにはとても慎重になってほしい,ということです.
 私自身は自分の興味の赴くままに動きますが,機関に所属して研究をしている方のスタンスが同じでないことは,想像できるかと思います.私の知る限り,プロの研究者の方も,深い部分では,同じ対象に携わる人間が増えて,研究が活発化することを願って,あるいはそれを使命として,活動されています.しかし,だからといって,何でもかんでもとりあえずお願いするのはダメです.例えば,お願いする内容(標本の同定や文献の提供)が自分にとってどういう位置づけでどのくらい必要なのか,一つ一つ考えて,その上でそれが伝わるようにお願いしてみてはいかがでしょうか.結果としてその考えが間違っていても良いかと思います.ただ,最初から明らかに重要でない事柄に膨大なコストをかけて,結局学生のためにも学問のためにもならないというのが,研究者が最も避けたいことだと思います.また,研究の過程を整理して相談することは,もしかすると問題解決への近道になるかもしれません.

 野良研究生活に入ったら「研究以外にしっかりと自分の生活を持つこと」.これは大切ではないでしょうか.例えば入社して3年くらいは大人しくしておくとか,研究を始めるまでに焦らないことも大切かと思います.
 もちろん,人のモチベーションや身体能力は,時に急激に低下して,大変な後悔を引き起こすこともあります.また,パートナーがいる人は,早めに野良研究生活を切り上げる場合もあるのではないでしょうか.こればかりは人それぞれです.

 野良研究生活に正解なし.私も機会がありましたらいろいろな人のやり方を知りたいと思っています.
 


<参考文献>(過去の文献紹介で挙げていないもの)

Lowry, J. K. and Myers, A. A. 2019. New genera of Talitridae in the revised Superfamily Talitroidea Bulycheva 1957 (Crustacea, Amphipoda, Senticaudata). Zootaxa, 4553(1).