2020年7月8日水曜日

書籍紹介『海の極小!いきもの図鑑』(7月度活動報告その2)


 またもや唐突に書籍紹介です.

星野修 2020. 『海の極小!いきもの図鑑』.築地書館,東京.176 pp. ISBN978-4-8067-1599-3


ちょっと図鑑っぽい装丁になりましたね.

 本書の出版に際して,ベイエフエムの某番組に星野氏が出演していました.フクロエビ上目とかゴカイの話題が電波に乗ってびっくりしました.
 2016年に出た『海の寄生・共生生物図鑑』の姉妹書とのことで,また「寄生・共生」とのワードがついていますが,中には寄生・共生とは関係ない純粋な砂質底種等も多く掲載されていますね・・・


 全体的な構成は姉妹書と同じで,生態や分類の情報が添えられたポケット写真集といった雰囲気です.各ページは和名のみ使用していますが,最後にしっかりした学名リストと,参考文献が掲載されています.


 とりあえず,掲載されているヨコエビの種リストを出しておきましょうか.



星野 (2020) に掲載されているヨコエビ(14種群)

ワレカラ類やウミノミ類も掲載されていますが,今回は割愛しました.


  Family Maxillipiidae Ledoyer, 1973 ”アシマワシヨコエビ科”
  • Maxillipius rectitelson Ledoyer, 1973 アシマワシヨコエビ(新称)

     
     
     Family Stenothoidae Boeck, 1871 タテソコエビ科
  • Stenothoidae gen. sp. or spp. 

     
     
     Family Dexaminidae Leach, 1814 エンマヨコエビ科
  • Polycheria atolli orientalis Hirayama, 1984 トウヨウホヤノカンノン

     
     
     Family Aoridae Stebbing, 1899 ユンボソコエビ科
  • Grandidierella osakaensis Ariyama, 1996 オオサカドロソコエビ

     
     
     Family Dulichiidae Dana, 1849 シャクトリドロノミ科
  • Dulichia biarticulata Hirayama & Takeuchi, 1993 キシシャクトリドロノミ

     
     
     Family Podoceridae Leach, 1814 ドロノミ科
  • Podoceridae gen. sp. 


    Family Ischyroceridae Stebbing, 1899 カマキリヨコエビ科
  • Ericthonius convexus Ariyama, 2009 ソコホソヨコエビ
  • Ericthonius pugnax (Dana, 1852) イソホソヨコエビ
  • Ericthonius sp.
  • Microjassa sp.
  • Cerapus sp.
  • Rhinoecetes spinicaudus Kodama, Ohtsuchi & Kon, 2016 トゲオツノアルキ

     
     
     Family Protodulichiidae Ariyama & Hoshino, 2020 ボウノボリヨコエビ科
  • Protodulichia scandens Ariyama & Hoshino, 2020 ボウノボリヨコエビ


     
     
  • Gammaridea fam. gen. sp.

  
 

 何と言っても特筆すべきは,Maxillipius rectitelson に和名が提唱されたことです.
 このグループは沖縄の方のブログで生態写真が紹介されてますが,日本において種同定された生態写真が世に出るのは恐らく初ではないでしょうか.有山 (1988) 以降,環境省 (2008) や 熊谷ら (2008:本文未参照) によって日本近海で報告されており,日本海洋データセンターのリストに記載があります.しかしながら,あまり採れないことと,和名がないことから,マイナーもいいとこでした.上位分類群の和名は出てませんが・・・まあ「アシマワシヨコエビ科アシマワシヨコエビ属」でしょうね・・・

 他には,新上科・新科・新属・新種として記載されたばかりのボウノボリヨコエビについても美麗な生態写真を多数掲載しています.また,上記ヨコエビのみならず,タナイスやカイアシなどの小型甲殻類に加えて,多毛類なども主役級の扱いで採り上げられています.普段からフィールドでこういったサイズ感の手合いを相手にしていると,地域や環境によってこれほど多様なのかと面白く感じる部分があり,一方で巷の図鑑や写真集ではまずお目にかかれないメンバーが次から次へと出てくるので,不思議な感覚もあります.




 
<参考文献>
有山啓之 1988. 飼料生物開発試験. 大阪府水産試験場 (ed.) In: 昭和61年度大阪府水産試験場業務報告. 132–142.
熊谷直喜・恵良拓哉・仲岡雅裕・青木優和・石井光廣 2008. Maxillipiidae (ヨコエビ亜目) の北半球初記録:特異な出現パターンの原因. 日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会講演要旨集.
環境省自然環境局生物多様性センター 2008. 第7回自然環境保全基礎調査 浅海域生態系調査(藻場調査)報告書(平成20年). 第 4 章 葉上動物. 243–432.

<参考WEB>
日本海洋データセンター(2020年5月30日閲覧)

2020年7月6日月曜日

100本目記念・ヨコエビの形態分類は何故こんなにエグいのか本気で考えてみた(7月度活動報告)



 数百年にわたって(?)人類を悩ませてきた謎に挑戦してみたいと思います.学術的な根拠は少なく,ほぼ思考実験です.

 
 ヨコエビの形態分類が難しいのは,なんでだろう?

 今回は主に「ヨコエビはどれも似通っていて形態の変化に乏しい」という観点から出発し,次の要因を考えていきます. 

  • 生活機能
  • 生殖隔離
  • 他の感覚情報


生活機能

生息環境・生活様式による形態の差異



 ヨコエビに限らず,生物のカタチは生態と密接な関係にあります.

 ヨコエビの形態を観察すると,筒に棲むものは全身が筒状,泳ぎが得意なものは腹肢の毛や筋肉が発達する,砂に潜るものは砂を掻くブラシを持つ,濾過食者は粒子を濾し取る剛毛を持つ,捕食性のものは獲物を捉える構造があるなど,生態と関係した特徴は枚挙に暇がありません(菊池 1986; 樋渡 1998).こういった特徴は科や属の中で共通しているばかりでなく,同じような環境に生息する異なるグループの間にも類似性を見ることができます.機能に忠実な形態形質を見るにつけ,ヨコエビがメカニカルに感じられることも多々あります.


ヨコエビは環境に適した形態に変化する.
別のルートから同じ環境に侵入したヨコエビは,似た姿になりがち(収斂).


 しかし,言い換えれば,生態がさほど変わらない科や属の中では,身体の構造は似たりよったりになりがちです.一般論として,生物のカタチが種間ではあまり変わらないのは仕方ないように思います.



 生態がさほど変わらないグループ内では,機能がわからない形態の差異がみられることがあります.
 微妙に切れ込みが違う尾節板や,付属肢の小さいトゲやコブなど,「このカタチはどんな意味があるのか?」と考えても分からないものがたくさんあります.
 こうした「謎の構造」は,機能ではなく系統を反映している,つまり環境への適応とは関係なく祖先が持っていた要素(共有原始形質)とも考えられます.しかし,科や属に共通せず他のグループにまたがって散発的に存在していることもあり,種より大きい分類を考える上でも悩ましい存在です.

 ヨコエビの生息環境を種ごとに見ていくと,粒径とか,塩分とか,潮当たりとか,深度とか,好む海藻とか,わずかに好みが違ったりします.しかし,これらが必ずしも外形に変化を要求するとは限りませんし,例えばそういった環境要因に応答して二次的に獲得された形質であっても,その機能が未発見な場合も多々あることでしょう.

 つまり,ヨコエビの形態には未解明な部分が多く,研究者は100年以上もこのモンスターに闘いを挑んできたわけです.ヨコエビの形態分類がややこしい一つの要因は,神出鬼没なこの「謎の構造」が分類群の識別形質になっているせいではと思っています.



 ヨコエビの形態形質が「生息環境」や「起源(大枠の分類)」だけで説明できないのは,ヨコエビには微環境を見つけては繰り返し進出を試みるという「ニッチ開拓精神」があるからではと思っています.あるヨコエビの集団が別の環境に進出した場合,ある形質は環境に適応して変容し,またある形質は保持されるでしょう.そうした微環境に後から別の集団が侵入して独自に適応を遂げ,またある集団が元の環境から別の環境に適応して・・・というような営みが繰り返される中で,ヨコエビの形態は複雑な変遷を辿って,現在のような地味な差異によって識別されるグループとなったのではないでしょうか.
 実際に,同じグループから同じ生息環境に対して間隔をあけた侵入が何度もあったり,別ルートを経由した侵入があったり,ヨコエビの特性を示す事例が報告されています(笹子 2011など)


多様な環境に進出したヨコエビは分化・侵入を繰り返し,
  そのたびに変異が起きることで,形態形質が複雑化していくのではないか.




生殖隔離

同種との出会い・繁殖行動における形態の差異


 次に,生息環境以外の要素を考えてみます.

 動物でよくあるのは,生殖隔離と形態が直接結びつく場合です.例えば,種の識別に使う形質(色や形など)が違うことで別種同士が出会わないシステムがあったり,生殖器の形状に「鍵と鍵穴の関係」があって種が違うと交尾ができず子孫を残せなかったり.
 嵌合性の機構が全て解明されていないにせよ,生殖隔離と関係が深い部位にフォーカスできれば,形態分類の説得力はとても高くなります.

 しかしながら,ヨコエビは体外受精であることに加えて,種内でサイズ差のある個体が交接可能であることが示されており (草野・草野 1989),昆虫などと違って交尾器の形状での生殖隔離は無いと考えたほうがよさそうです(近いサイズの個体同士のほうがカップルになる確率が高い傾向はあるようですが)
 ヨコエビの幾つかの種は交尾前ガードといって,オスがメスをキープする習性があります.一部のグループにおいて,オスは第1咬脚を使ってメスの底節板(Yamato 1988)や胸節(Bousfield and Hendrycks 2002; 富川 2018)を把握したり,十字固めのように保持することが分かっていますが,必ずしも生殖隔離は立証されていないようです.この構造は種により特異的な構造を示すことがあるため,種分類に用いられることもあります.将来的に「鍵と鍵穴の関係」が見つかるかもしれませんが,いずれにせよ交尾前ガードしない種には適用できません.
  ヨコエビにおいて形態的な要因での生殖隔離は期待し難く,「この部位さえ押さえればOK」と言えないことが,形態分類をややこしくしているのかもしれません.


生殖器の構造が異なることで生殖隔離が起こるイメージ.
実際は3D構造なので,あくまでイメージです.
昆虫類ではペニスや把握器の形状が種同定に用いられるケースが多いですが,
例えばクモ類ではオスが精子を受け渡すのに使う触肢の形状が決め手になることもあります.



 物理的接触以前に,オスのヨコエビは適齢期のメスを探し出す必要があります.この段階で,形態による種特異性が発揮されることはないのでしょうか.
 たとえば陸上において視覚によって同種を識別し,配偶者を選別する節足動物の例としては,クモや昆虫が思い浮かびます.クジャクグモでは,メスの注意を引くために腹部の模様を発達させていることが示されています (Harris and Morehouse 2020).モンシロチョウでは,翅の表面で紫外線を反射・吸収することで種や雌雄を見分けていることがよく知られています (藤条 1972).ヨコエビも種によって特有の模様があったり,昆虫と同じようにヒトの可視領域や紫外線が見えるらしいですが(外山 2018;Ciofini et al. 2019),色彩によって互いを見分けているのでしょうか.


 視覚による同族認知には,疑問があります.
 ヨコエビは蝶のように目立つところをひらひらと舞うより,目立たないよう自らの体色を背景に似せ,専ら物陰に隠れて生活しているものがかなりの割合を占めます.比較的ヨコエビに近縁で生態も似ているヘラムシの仲間は,捕食に対抗するため棲み処とする海藻に体色を似せていることが明らかになっており (Hultgren and Mittelstaedt 2015),表在底生のヨコエビの多くも同様に背景に溶け込むことを優先しているように思えます.また,ヨコエビはほとんどの種において体サイズは小さく,たとえ物陰から姿を見せたとしても,遠目に視認しやすいとは思えません.
 昆虫も,視覚に頼るものばかりではありません.例えば,物陰に隠れて生活するコオロギやキリギリスが摩擦音を反響させたり,穴に棲むシロアリが打撃音を出したりと,視覚に頼らずコミュニケーションをとる戦略が発達しています (Virant-Doberlet and Cokl 2004)

 性戦略において視覚情報が重要と考えられる事例としては,雌雄で複眼の大きさが異なる昆虫(特に双翅目)が挙げられます.そのような多型がみられないグループにおいては,性戦略において視覚情報はあまり重要でないと考えられます.ヨコエビには有眼と無眼を切り替える種 (篠田 2006) や,底節板が顔面を覆うグループColumbaora,Conicostomatidae)さえおり,暗居性種のみならず普通の底生種においても,視覚への依存度が高いようには思えません.
 ヨコエビが視覚情報を異性へのアピールに使うとすれば,「隠れながら目立つ」という相反する要素を同時に満たす必要があるのではないでしょうか.こういった事情を総合すると,底生のヨコエビの大部分は,視覚に依存しない生活を送っているように思われます.


 一方,クチバシソコエビ科やハマトビムシ類など,多くの構成種が複眼を発達させているグループもあります.こういったヨコエビは,視覚を活用した生活を送っていると考えられます.
 ただし,その用途は捕食や移動に限られていて,必ずしも同族認知とは関係ないかもしれません.
 先に挙げた Ciofini et al. (2019) がハマトビムシ科の Talitrus saltator において複眼の色素分布を分析した結果によると,上部と下部で性質が異なることから,景色を見ることに特化しているようです.また,別のハマトビムシ科である Megalorchestia californiana のオスは,赤や青に染め分けられた長い触角を持ちますが,メスは見た目でオスを選んでいないことが示されています (Iyengaraand and Starks 2008).ヨコエビにおいて,鳥類や昆虫類のように立証された「派手オス/地味メス」の例はないように思われ,視覚による同族認知・生殖隔離を裏付ける材料は非常に乏しいです.そもそも,オスが交尾前ガード(あるいはこれに似た戦略)によってメスを確保する甲殻類では,メスがオスを選ぶ局面はせいぜい相手を拒むくらいなのかもしれません.
 よって,仮に色彩など視覚による生殖隔離がヨコエビにあったとしても,それが発揮されるのはオスがメスを探す時だけに留まるかもしれません.また,固定により失われうる色彩は記録に乏しく,形態分類には活用しにくい要素でしょう.


 物陰に隠れてしまう底生種と異なり,中層遊泳種や底生種の中でも鉛直運動をするヨコエビは,泳ぎながら仲間を探索します.その全身を同族に見てもらう機会がありそうです.
 しかし,仲間と出会うために特殊な姿かたちを発達させようものなら,やはり捕食者から容易に見つかってしまうでしょう.ヨコエビはしばしば魚類 (Barnard and Ingram 1986; 尾崎ほか 2004; 片山ほか 2007; 柴田ほか 2010; 長坂ほか 2018; Glazier et al. 2020) や頭足類 (神奈川県水産技術センター メールマガジン),鳥類 (Goss-Custard 1977; Barnard and Ingram 1986; Sherman and Smith 1989; 坂井 2008) など視覚の発達した捕食者に狙われます.遊泳性ヨコエビの中には発光器を具えるものもわずかに知られ (Lowry and Stoddart 2011),捕食者への目くらましや,同族認知に使っているのかもしれませんが,明確な用途は不明のようです.

 物陰へ逃げず捕食者へ対抗する戦略としては,種特異性を保持しつつ背景に溶け込むデザインを追求することや,運動性能を更に向上させること,巨大化することが考えられます.実際に中層遊泳性の端脚類において,あるものは尾肢を尖らせ,あるものは体節の一部を突き出させ,捕食者が容易に口にできないような形に変化しています.こういった構造は種に特異的で,しばしば種分類に用いられますが,当事者にとっても互いを識別するのに有効なのではないでしょうか.


 もし,トゲのように大きく突出した構造に生殖隔離の機能があれば,形態による種分類の説得力はかなり高くなると思います.メスがオスを選ぶという場面がないとしても,相手が同種かどうかを知るのに役立つのではないでしょうか.
 深海に棲む Epimeria ヨロイヨコエビ属(Epimeriidae ヨロイヨコエビ科)は,深海ならではの大柄の体躯に加えて,硬い表皮とトゲを有しています.棘の形状や色彩が発達しており,これは基質となる環境(例えば多様化した付着生物群集に溶け込むこと)への適応かもしれません.強調したいのは,このトゲにはパッと見で分かるレベルの種特異性があり、この違いが分子系統解析で裏付けられている点です (d’Udekem d’Acoz and Verheye 2017; Beermann et al. 2018).つまり,解剖しないと分からないような微かな違いで隠蔽種がゴロゴロ出てくる連中とはだいぶ事情が違うのです.このことから,ある程度視覚による同族認知をしている可能性は,検討の余地があるのではないでしょうか.
 また,形態的な特徴は近縁種との生殖隔離だけでなく,風景の中から仲間を識別したり,雌雄の判別に役立つ場面もあるのではないでしょうか.例えば,浅海域では高密度のハーレムを構築するヨコエビもおり,オス(major male)の咬脚が大きく発達します (Beermann et al. 2015).これは雄間闘争において戦闘力をUPする効果があるのかもしれませんが,ハーレムを束ねるオス個体の存在を視覚的に示している可能性はあると思います.ただ,咬脚にある程度種の特徴が出るにせよ,ぱっと見で近似種との識別ができるレベルではなさそうです.


トゲ,咬脚,触角が目立つと,仲間を見分けるのに役立つ(のかな)?

 ヨコエビが外形で仲間を見つけている可能性を示しましたが,やはり大部分の種には当てはまらないものと考えられます.話が元に戻りますが,形態分類がややこしい理由の一つとして,目立つところに種の特徴が表れにくいことが挙げられます.




他の感覚情報

形態の差異に依存しない生殖隔離


 ヨコエビは,何をもって同族認知を行っているのか.
 思うに,ヨコエビが暮らす環境というのは,視覚より嗅覚がモノを言うのではないでしょうか.例えば浅海域のヨコエビは,起伏に富んだ岩場や入り組んだ海藻の中で,捕食者から逃れようとして隠れている仲間を,視覚によって探し出せるのかどうか?普通に考えると無理ゲーでしょう.ヨコエビの隠れ家を暴くと,同所的に高密度で生息している姿を目にしますが,こうした生態は繁殖のタイミングを逃さないようにする戦略かもしれませんし,何らかのケミカルトークが行われているとすれば高密度で集合するメリット(何らかの集合フェロモンを分泌することで,より濃度の高い場所へ仲間を誘導して群れを大きくできる等)もあるように思われます.


お互いに隠れているヨコエビ同士が互いを認識するには,視覚以外の要素が大切?



 例えば,あるヨコエビの触角には callynophore という化学受容体があり,オスが同種のメスを見つけるのに使っているとされています (Lowry 1986).ヘラ状感覚毛(aesthetasc)についても化学受容体と理解されています (Bousfield and Shih 1994; Hallberg and Skog 2010).触角の感覚毛については,ウミノミ類において雌雄で密度に違いがある(Hallberg and Skog 2010) との報告があり,私もヨコエビでヘラ状感覚毛がオスにしかない例を確認しているので,性戦略に関わっている可能性が高いと思います.

 ヨコエビのケミカルトークについては他に Thiel (2010) などもありますが,まだまだ解明度は低いと言えそうです.



 ヨコエビの触角には他にカルセオラス(calceolous)という器官もあり,こちらは水の振動を感知すると考えられています (Bousfield and Shih 1994)

 音(振動)を使って求愛する昆虫とヨコエビの生態は既に比較しましたが,陸上より疎密波が伝わりやすい水中において,振動が活用されている可能性はないのでしょうか.
 水生昆虫のマツモムシ科ではオスが音を発生させるメカニズムが明らかになっており,種に特異的な発音によって生殖隔離が起きている可能性が示されています(Wilcox 1975).また,海産等脚類であるニホンコツブムシにおいては,オスが発音することで他のオスを威嚇してメスを独占しているとの報告があります (Nakamachi et al. 2015).今のところヨコエビにおいて検証は進んでいないようですが,Beermann et al. (2015) は一部の属において発音器のような構造がみられると指摘しています.


 ヨコエビの触角の構造は分類群によって異なり,種によっては callynophore やカルセオラスが無いこともあります.それだけ化学物質や振動を感知する仕組みが多様化しているということは,明らかになっていない感覚器など,まだまだ数多くの謎がヨコエビには隠されていることを示唆するのではないでしょうか.将来的に,発音器の構造とかで種同定ができるような展開になれば,生殖隔離の根拠に基づいた形態分類が可能になるのですが・・・




 以上,ヨコエビの形態分類がどれだけエグいか,つらつら述べてきたわけですが,現在は遺伝子を使った分類が進められています.中には形態の情報を全く使わない新種記載もあります (Delić et al. 2017)
 種の閾値については幾つかの文献で示されており,3~4%がよく用いられている指標です (Rock et al. 2007; Witt et al. 2008; Hou et al. 2009; Tomikawa et al. 2018).しかし,海産ヨコエビにおいて一定の閾値を決めるべきでないとする研究もあり (Tempestini et al. 2018),闇はまだまだ深そうです.

 次は200回記念あたりで続きをやりたいと思います.




<参考文献>
Barnard, J. L.; Ingram, C. L. 1986. The supergiant amphipod Alicella gigantea Chevreux from the North Pacific Gyre. Journal of Crustacean Biology, 6(4): 825–839.
Beermann, J.; Dick, J. T. A.; Thiel, M. 2015. Chapter 6. Social recognition in amphipods: An overview. In: Aquiloni, L.; Tricarico, E. (ed.) Social Recognition in Invertebrates. 85–100.
Beermann, J.; Westbury, M. V.; Hofreiter, M.; Hilgers, L.; Deister, F.; Neumann, H.; Raupach, M. J. 2018. Cryptic species in a well-known habitat: applying taxonomics to the amphipod genus Epimeria (Crustacea, Peracarida). Scientific Reports, 8 Article number: 6893.
Bousfield, E. L.; Hendrycks, E. A. 2002. The talitroidean amphipod Family Hyalidae revised, with emphasis on the North Pacific Fauna: Systematics and distributional ecology. Amphipacifica, 3(3): 7–134.
— Bousfield, E.; Shih, C.-T. 1994. The phyletic classification of amphipod crustaceans: Problems in resolution. Amphipacifica, 1(3): 76–134.
Ciofini, A.; Mercatelli, L.; Yamahama, Y.; Hariyama, T.; Ugolini, A. 2019. Regionalization in the compound eye of Talitrus saltator (Crustacea, Amphipoda). bioRxiv, 844027.
Delić, T.; Trontelj, P.; Rendoš, M.; Fišer, C. 2017. The importance of naming cryptic species and the conservation of endemic subterranean amphipods. Scientific Reports, 7(3391).
d’Udekem d’Acoz, C.; Verheye, M. L. 2017. Epimeria of the Southern Ocean with notes on their relatives (Crustacea, Amphipoda, Eusiroidea). European Journal of Taxonomy, 359: 1–553.
Glazier, D. S.; Borrelli, J. J.; Hoffman, C. L. 2020. Effects of fish predators on the mass‐related energetics of a Keystone Freshwater Crustacean. Biology, 9(40).
Goss-Custard, J. D. 1977. Predator responses and prey mortality in Redshank, Tringa totanus (L.), and a preferred prey, Corophium volutator (PALLAS). Journal of Animal Ecology, 46: 21–35.
Hallberg, E.; Skog, M. 2010. Chemosensory Sensilla in Crustaceans. In: Breithaupt, T.; Thiel, M. (eds.) Chemical Communication in Crustaceans. Springer, New York.
Harris, O.; Morehouse, N. 2020. P1-95  Saturday, Jan. 4  Predator-mimicking sensory exploitation in the courtship display of Maratus jumping spiders. Society for Integrative and Comparative Biology 2020 Annual Meeting.
樋渡 武彦 1998. 付着生物群集としての端脚類. Sessile Organisms, 14(2): 25–32.
Hou, Z.-E.; Li., Z.; Li, S. 2009. Identifying Chinese species of Gammarus (Crustacea: Amphipoda) using DNA barcoding. Current Zoology, 55: 158–164.
Hultgren, K. M.; Mittelstaedt, H. 2015. Color change in a marine isopod is adaptive in reducing predation. Current Zoology, 61(4): 739–748.
Iyengar, V. K.; Starks, B. D. 2008. Sexual selection in harems: male competition plays a larger role than female choice in an amphipod. Behavioral Ecology, 19: 642–649.
片山 知史・一色 竜也・張 成年・渡部 諭史 2007. 相模湾におけるヒラメ種苗の摂食生態および摂食日周期性. 神奈川県水産技術センター研究報告, 第2号: 37–41.
菊池 泰二 1986. 第1編 ヨコエビ類の分類検索, 及び生態, 生活史に関する研究. In: ヨコエビ類の生物生産に関する基礎的研究. 昭和60年度農林水産業特別試験研究費補助金による研究報告書, pp. 9–68, 34 pls.
草野 晴美・草野 保 1989. 同類交配と性的二型:ヨコエビをめぐる論争. 日本生態学会誌, 39: 147–161.
Lowry, J. K. 1986. The callynophore, a eucaridan/peracaridan sensory organ prevalent among the Amphipoda (Crustacea). Zoologica Scripta, 15: 333–349.
Lowry, J. K.; Stoddart, H. E. 2011. The tryphosine genera Photosella gen. nov. and Tryphosella Bonnier, 1893 (Crustacea: Amphipoda: Lysianassoidea: Lysianassidae: Tryphosinae) in Australian waters. Zootaxa, 2956: 1–76.
長坂 晶子・長坂 有・速水 将人 2016. —森と海が出会う場所— 汽水域の生き物と森のつながり. グリーントピックス, 56. ISSN 0915-5171
Nakamachi, T.; Ishida, H.; Hirohashi, N. 2015. Sound production in the aquatic isopod Cymodoce japonica (Crustacea: Peracarida). Biological Bulletin, 229: 167–172.
尾崎 仁・濵中 雄一・井谷 匡志・竹野 功璽 2004. 若狭湾西部海域におけるアカアマダイ未成魚の食性(短報). 京都府立海洋センター研究報告. (26).
Rock, J.; Ironside, J.; Potter, T.; Whiteley, N. M.; Lunt, D. H. 2007. Phylogeography and environmental diversification of a highly adaptable marine amphipod Gammarus duebeni. Heredity, 99: 102–111.
坂井 恵一 2008. 石川県の砂浜海岸における生態学的基礎調査 II ―シギ・チドリ類の飛来を促すナミノリソコエビ―(環境省委託調査 平成18年度自然環境保全基礎調査 種の多様性調査). 能登の海中林, 28: 2–3.
Sherman, B. J.; Smith, P. C. 1989. Crawling behaviour of the amphipod Corophium volutator and foraging by Semipalmated Sandpipers, Calidris pusilla. Canadian Journal of Zoology, 67(2): 457–462.
—  柴田 玲奈・片山 知史・渡部 諭史・荒川 久幸 2010. アイゴ成魚に対する動物性餌料の重要性. Lamer, 48: 103–111.
篠田 授樹 2006. 東京都の湧水等に出現する地下水生生物の調査. 研究助成・一般研究 vol.28-No.164.
Tempestini, A.; Rysgaard, S.; Dufresne, F. 2018. Species identification and connectivity of marine amphipods in Canada’s three oceans. Plosone, 13(5): e0197174.
Thiel, M. 2010. Chapter 10 Chemical communication in peracarid crustaceans. In: Breithaupt, T.; Thiel, M. (eds.) Chemical Communication in Crustaceans, 199–218. Springer, New York.
藤条 純夫 1972. チョウの翅の尿酸とその代謝物. 化学と生物, 10(1): 63–67.
Tomikawa, K.; Hirashima, K.; Hirai, A.; Uchiyama, R. 2018. A new species of Melita from Japan (Crustacea, Amphipoda, Melitidae). ZooKeys, 760: 73–88.
外山 美奈 2018. 甲殻類端脚目がもつ2つの視物質発色団の環境依存性の生物学的意義.科学研究費助成事業 2018 年度 実績報告書, 18H00345.
Virant-Doberlet, M.; Cokl, A. 2004. Vibrational Communication in Insects. Neotropical Entomology, 33(2): 121–134.
Yamato, S. 1988. Two species of the genus Melita (Crustacea: Amphipoda) from brackish waters in Japan. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 33 (1/3): 79–95.
Wilcox, R. S. 1975. Sound-producing Mechanisms of Bueno macrotibialis Hungerford (Hemiptera: Notonectidae). International Journal of Insect Morphology & Embryology, 4(21): 169–182.
Witt, J. D. S.; Threloff, D. L.; Hebert, P. D. N. 2008. Genetic zoogeography of the Hyalella azteca species complex in the Great Basin: rapid rates of molecular diversification in desert springs. The Geological Society of America Special Paper, 439: 103–114.



<参考WEB>
「あなたの知らない○○ワールド 第4回 ヨコエビの世界 〜エビじゃない! どこにでもいる? 不思議生物」BuNa(文一総合出版,2018年7月30日公表)



2020年5月28日木曜日

ハマトビムシ科バラバラ事件(5月度活動報告その2)


 2020年5月14日,ヨコエビ界隈を震撼させる出来事がありました.

 「ヨコエビ亜目」分裂および消滅に次ぐ大事件と言えるでしょう.


 長らく,端脚目唯一の陸棲科として不動の地位を誇っていた「ハマトビムシ科」が,Myers and Lowry (2020) によって7つの科に分裂したのです.
 まあ,思い返せば昨年,Lowry and Myers (2019) がハマトビムシ上科から「ハマトビムシ科」以外のメンバーを追い出して”モクズヨコエビ上科”を設立したあたりから,この計画は動いていたのでしょうが・・・

 とりあえず,以下に「新しいハマトビムシ体制」をご紹介します.




Members of superfamily Talitroidae sensu Myers and Lowry (2020)


 和名は 森野 (2015),森野・向井 (2016),Morino (2020) に拠った.また,正式に提唱されていないが順当と思われる和名は ” ” 内に示した.種数や分布は Myers and Lowry (2020) および WoRMS を参照している.


 Arcitalitridae科・・・15属33種+1不明種

  •     Albidiator Lowry & Myers, 2019・・・1種【豪州】
  •     Arcitalitrus Hurley, 1975・・・9種【豪州】
  •     Austrotroides Friend, 1982・・・1種【豪州】
  •     Calviator Lowry & Myers, 2019・・・1種【南アフリカ】
  •     Fleuriella Lowry, Myers and Nakano, 2019・・・1種【大西洋】
  •     Hermaniator Lowry & Myers, 2019・・・2種【南大西洋】
  •     Insulariator Lowry & Myers, 2019・・・1種【豪州】
  •     Keratroides Hurely, 1975・・・5種【豪州】
  •     Lutruwitiator Lowry & Myers, 2019・・・3種【南太平洋】
  •     Myanmarorchestia Hou in Hou & Zhao, 2017・・・3種【南太平洋】
  •     Mysticotalitrus Hurley, 1975・・・1種【豪州】
  •     Richardsoniella Lowry, Myers and Nakano, 2019・・・1種【豪州】
  •     Solitroides Suzuki et al., 2017・・・1種【南太平洋】
  •     Swaziator Lowry & Myers, 2019・・・1種【南アフリカ】
  •     Talitriator Methuen, 1913・・・2種+1不明種【南アフリカ】

Protorchestiidae科・・・5属14種

  •     Cochinorchestia Lowry & Peart, 2010・・・7種【インド洋~南太平洋】
  •     Eorchestia Bousfield, 1984・・・1種【南アフリカ】
  •     Microrchestia Bousfield, 1984・・・1種【豪州】
  •     Neorchestia Friend, 1987・・・1種【豪州】
  •     Protorchestia Bousfield, 1982・・・4種【豪州】

Uhlorchestiidae科・・・1属2種

  •     Uhlorchestia Bousfield, 1984・・・2種【北米東岸】

Brevitalitridae科・・・9属26種

  •     ヤエヤマオカトビムシ属 Bousfieldia Chou & Lee, 1982・・・2種【東アジア】
  •     Brevitalitrus Bousfield, 1971・・・9種【アジア】
  •     Caribitroides Bousfield, 1984・・・4種【中米】
  •     Cerrorchestia Lindeman, 1990・・・2種【中米】
  •     Hawaiorchestia Bousfield, 1984・・・2種【ハワイ】
  •     Mexitroides Lindeman, 1990・・・2種【中米】
  •     ミズホトビムシ属 Mizuhorchestia Morino, 2014・・・2種【日本】
  •     Spelaeorchestia Bousfield & Howarth, 1976・・・1種【ハワイ】
  •     ”ツメオカトビムシ属” Talitroides Bonnier, 1898・・・2種【南太平洋】

Curiotalitridae科・・・1属1種

  •     Curiotalitrus Lowry & Coleman, 2012・・・1種【南アジア】 

Makawidae科・・・23属35種+3不明種

  •     Agilestia Friend, 1982・・・2種【豪州】
  •     Chiltonorchestia Bousfield, 1984・・・2種【南太平洋】
  •     Dallwitzia Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Dana Lowry, 2011・・・2種【新西蘭】
  •     Dendrorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Deshurleyella Lowry, Myers & Nakano, 2019・・・4種【新西蘭】
  •     Dracorchestia Lowry & Myers, 2019・・・2種【新西蘭】
  •     Ignamborchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【南太平洋】
  •     Kanikania Duncan, 1994・・・2種【新西蘭】
  •     Kellyduncania Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Kohuroa Lowry, Myers and Nakano, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Laurenia Lowry & Myers, 2019・・・1種【豪州】
  •     Lesliorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Makawe Duncan, 1994・・・2種【新西蘭】
  •     Oamaru Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Omaiorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Orchestiella Friend, 1987・・・2種【豪州】
  •     Parorchestia Stebbing, 1899・・・1種+不明種3種【新西蘭】
  •     Puhuruhuru Duncan, 1984・・・1種【新西蘭】
  •     Sinbadorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Snaresorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【新西蘭】
  •     Tasmanorchestia Friend, 1987・・・1種【豪州】
  •     Waematau Duncan, 1994・・・3種【新西蘭】


ハマトビムシ科 Talitridae・・・3亜科65属222種+α

  Talitrinae亜科・・・56属172現生種+1化石種+8不明種

  •     Africorchestia Lowry & Coleman, 2011・・・6種【大西洋】
  •     Amphiatlantica Lowry & Myers, 2019・・・2種【中米】
  •     Atlantorchestoidea Serejo, 2004・・・1種【南米東岸】
  •     Australorchestia Serejo & Lowry, 2008・・・2種【豪州】
  •     Bellorchestia Serejo & Lowry, 2008・・・9種【豪州】
  •     Bulychevia Lowry & Myers, 2019・・・3種【北太平洋】
  •     Canariorchestia Lowry & Myers, 2019・・・5種【欧州】
  •     Capeorchestia Lowry & Baldanzi, 2016・・・1種【南アフリカ】
  •     Cariborchestia Smith, 1998・・・1種【中米】
  •     Chelorchestia Bousfield, 1984・・・5種【中米】 
  •     Chevreuxiana Lowry & Myers, 2019・・・1種【南太平洋】
  •     Chroestia Marsden & Fenwick, 1984・・・1種【豪州】
  •     Cryptorchestia Lowry & Fanini, 2013・・・4種+1不明種【欧州】
  •     Defeo Lowry & Myers, 2019・・・1種【南米】
  •     Derzhavinia Lowry & Myers, 2019・・・1種【ロシア】
  •     Deshayesorchestia Ruffo in Tafani et al., 2004・・・1種【地中海】
  •     ホッカイハマトビムシ属 Ditmorchestia Morino & Miyamoto, 2015・・・1種【日本】
  •     キタオカトビムシ属 Ezotinorchestia Morino & Miyamoto, 2016・・・1種【日本】
  •     Galaporchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【南米】
  •     Hermesorchestia Hughes & Lowry, 2017・・・1種【豪州】
  •     Houlia Lowry & Myers, 2019・・・1種【東アジア?】
  •     Indiorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【インド】
  •     Kaalorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【ハワイ】
  •     コクボオカトビムシ属 Kokuborchestia Morino & Miyamoto, 2015・・・1種【日本】
  •     Laniporchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【ハワイ】
  •     Lanorchestia Miyamoto & Morino, 2010・・・1種【台湾】
  •     ホソオカトビムシ属 Leptorchestia Morino, 2020・・・1種【日本】 
  •     ヨシハラハマトビムシ属 Lowryella Morino & Miyamoto, 2016・・・1種【日本】
  •     Macarorchestia Stock, 1989・・・5種【地中海】
  •     Megalorchestia Brandt, 1851・・・7種【北米西岸】
  •     Mexorchestia Wildish & LeCroy, 2014・・・3種【中米】
  •     ”イワヤトビムシ属” Minamitalitrus White, Lowry & Morino, 2013・・・1種【日本】
  •     ミヤモトオカトビムシ属 Miyamotoia Morino, 2020・・・2種【日本】
  •     モリノオカトビムシ属 Morinoia Lowry & Myers, 2019・・・4種【東アジア】
  •   ニッポントビムシ属 Nipponorchestia Morino & Miyamoto, 2015・・・2種【日本】
  •     Notorchestia Serejo & Lowry, 2008・・・5種【豪州】
  •     Opunorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【南太平洋】
  •     Orchestia Leach, 1814・・・7種+7不明種【地中海,大西洋】
  •     Orchestoidea Nicolet, 1849・・・1種【南米西岸】
  •     Paciforchestia Bousfield, 1982・・・1種【北米西岸】
  •     Palmorchestia Stock & Martin, 1988・・・2種【大西洋】
  •     Pickorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【ハワイ】
  •     ヒメハマトビムシ属 Platorchestia Bousfield, 1982・・・14種【インド洋,太平洋,大西洋】
  •     ホソハマトビムシ属 Pyatakovestia Morino & Miyamoto, 2015・・・4種【東アジア】
  •     スナハマトビムシ属 Sinorchestia Miyamoto & Morino, 1999・・・3種【東アジア】
  •     Speziorchestia Lowry & Myers, 2019・・・4種【欧州】
  •     Talitrus Bosc, 1802・・・3種【欧州】
  •     Talorchestia Dana, 1853・・・29種【赤道】
  •     Tethorchestia Bousfield, 1984・・・2現生種+1化石種【中米】
  •     Tongorchestia Lowry & Bopiah, 2013・・・3種【南太平洋】
  •     Transorchestia Bousfield, 1982・・・6種【豪州】
  •     Traskorchestia Bousfield, 1982・・・1種【北米西岸】
  •     ”ヒゲナガハマトビムシ属” Trinorchestia Bousfield, 1982・・・2種【東アジア】
  •     Tropicorchestia Lowry & Springthorpe, 2015・・・2種【豪州】
  •     Vallorchestia Lowry, 2012・・・1種【豪州】
  •     Vietorchestia Dang & Le, 2011・・・1種【南アジア】

Floresorchestiinae亜科・・・3属34種

  •     Austropacifica Lowry & Springthorpe, 2019・・・1種【豪州】
  •     Floresorchestia Bousfield, 1984・・・29種【アジア】
  •     Gazia Lowry & Springthorpe, 2019・・・4種【インド洋,太平洋】

Pseudorchestoideinae亜科・・・6属15種

  •     Americorchestia Bousfield, 1991・・・5種【北米】
  •     Asiaorchestia Lowry & Myers, 2019・・・1種【南アジア】
  •     Britorchestia Lowry & Bopiah, 2012・・・2種【欧州】
  •     Persianorchestia Momtazi et al., 2017・・・1種【中東】
  •     Pseudorchestoidea Bousfield, 1982・・・4種
  •     Sardorchestia Ruffo in Tafani et al., 2004・・・2種【欧州】


所属不明群

  •     Protaustrotroides Bousfield, 1984・・・1種【豪州】




 とりあえず,属や種は増えていないようです.今回の大分類にあたっては,世界16地域の在不在データと,2~7に類別した34項目の形態形質データが用いられています.

 一部のハマトビムシは外来種として扱われています(Cowling et al. 2004; Berezina et al. 2011; Daneliya and Wowor 2016).例えば,Arcitalitrus属 の分布は「Australia」と記されており,移入個体群とされる欧州が外されています.また,Talitroides属の分布は「Micronesia」とされており,移入個体群とされている日本が外されています.これらの記述から,原産地を議論の対象としていると考えてよさそうです.
 また,咬脚については性的二形の影響を受ける項目があるものの,それ以外は性差のない項目がほとんどを占めており,根幹を揺るがすことはなさそうです.
 てなわけで,何となく各科の分布を世界地図に落としてみました.

この図はWoRMSを基礎として代表種の採集地情報をマッピングしたもので,
 プロットの無い地点にハマトビムシが居ないことを示すものではありません. 


 見る人が見れば何らかの進化の道筋が浮かび上がってくるのかもしれませんが,よくわかりません.とりあえず,「狭義のハマトビムシ科」は汎世界分布で,それ以外はわりと地域が限定されているのがわかります.



 今回の論文では,旧ハマトビムシ科に含まれていた属の約半数が「狭義のハマトビムシ科」の”ハマトビムシ亜科”に収められることになりました.
 
 本邦産15属のうち12属がハマトビムシ亜科です.残りの本邦産3属3種は Brevitalitridae科 になりました.

 以下,本邦産種の一覧です.


  Brevitalitridae科

  1.  Bousfieldia omoto Morino, 2014 ヤエヤマオカトビムシ / 森林;石垣島,西表島(森野 2015)
  2.  Mizuhorchestia urospina Morino, 2014 トゲオカトビムシ / 海岸林~森林;本州,四国,九州(森野 2015)
  3.   Talitroides topitotum (Burt, 1934) ツメオカトビムシ / 草地性 (Lowry and Myers 2019),林床;沖縄 国頭郡 (森野 2015)

     

    ハマトビムシ科 Talitridae

  4.  Bulychevia ochotensis (Brandt, 1851) オオハマトビムシ / 礫浜;北海道東部 (森野・向井 2016)
  5.   Ditmorchestia ditmari (Derzhavin, 1923) ホッカイハマトビムシ / 海岸性 (Lowry and Myers 2019),海岸林;北海道東部 (森野・向井 2016)
  6.  Ezotinorchestia solifuga (Iwasa, 1939) キタオカトビムシ / 草地性 (Lowry and Myers 2019),海岸林;北海道東部,福井(森野 2015)
  7.  Kokuborchestia kokuboi (Uéno, 1929) コクボオカトビムシ / 草地性 (Lowry and Myers 2019),海岸林~森林;北海道南西部,東北北部 (森野 2015)
  8.  Leptorchestia biseta Morino, 2020 ホソオカトビムシ / 林床 落葉下;小笠原諸島 (Morino 2020)
  9.  Lowryella wadai Morino & Miyamoto, 2016 ヨシハラハマトビムシ / 湿地性 (Lowry and Myers 2019),ヨシ原;宮崎県,愛媛県 (Morino and Miyamoto 2016b)   
  10.  Miyamotoia daitoensis Morino, 2020 ダイトウオカトビムシ / 海岸草地~海岸林?;南大東島,北大東島 (Morino 2020)
  11.  Miyamotoia spinolabrum Morino, 2020 クチトゲオカトビムシ / 砂浜~森林;小笠原諸島 (Morino 2020)
  12.   Morinoia chichijimaensis Morino, 2020 チチジマオカトビムシ / 河岸性;父島 (Morino 2020)
  13.  Morinoia humicola (Martens, 1868) オカトビムシ / 森林;本州 (森野 2015),台湾 (Miyamoto and Morino 2004)
  14.  Morinoia japonica (Tattersall, 1922) ニホンオカトビムシ / 湖岸,森林;北海道~沖縄 (森野 2015),台湾 (Miyamoto and Morino 2004)
  15.  Nipponorchestia curvatus Morino and Miyamoto, 2015 ヒメオカトビムシ / 海岸~海岸林;近畿,伊豆,四国,九州,対馬 (Morino and Miyamoto 2015a)
  16.  Nipponorchestia nudiramus Morino and Miyamoto, 2015 トゲナシオカトビムシ / 海岸林~森林;近畿,東海 (Morino and Miyamoto 2015a)
  17.  Platorchestia joi Stock and Biernbaum, 1994 ヒメハマトビムシ /  内湾的砂浜;日本各地 (森野・向井 2016),ロシア極東部,韓国 (Jo  1988),台湾 (Miyamoto and Morino 2004)
  18.  Platorchestia pachypus (Derzharvin, 1937) ニホンヒメハマトビムシ / 外湾的砂浜,砂利浜 (笹子 2011),潮間帯~潮上帯;北海道~九州 (森野・向井 2016),韓国 (Jo 1988)
  19.  Platorchestia pacifica Miyamoto and Morino, 2004 (和名未提唱)/ 内湾的砂浜,砂利浜,岩礁上部 (笹子 2011),礫浜 (小川 未発表);台湾 (Miyamoto and Morino 2004),日本各地,韓国 (笹子 2011)
  20.  Platorchestia sp. sensu 森野 (1999) ミナミオカトビムシ (※未記載種.将来的にMorinoia属に含められるものと推測する.) / 海岸林;本州日本海岸,四国,九州,トカラ(森野 2015)
  21.  Pyatakovestia boninensis Morino and Miyamoto, 2015 オガサワラホソハマトビムシ / 海岸~森林;母島 (森野 2015)
  22.  Pyatakovestia iwasai Morino and Miyamoto, 2015 ミナミホソハマトビムシ / 海岸林 (森野 2015),礫浜;台湾,沖縄,本州関東以南太平洋岸,福井以南日本海岸 (Morino and Miyamoto 2015b)
  23.  Pyatakovestia pyatakovi (Derzhavin, 1937) ホソハマトビムシ / 海岸林 (森野 2015),礫浜;ロシア,韓国,北海道,本州日本海岸,伊豆半島以北太平洋岸(Morino and Miyamoto 2015b)
  24.  Sinorchestia nipponensis (Morino, 1972) ニホンスナハマトビムシ / 砂浜性 潮上帯上部 漂着物;茨城以南~四国,九州 (森野・向井 2016)
  25.  Sinorchestia sinensis (Chilton, 1925) タイリクスナハマトビムシ / 砂浜性 潮上帯上部 漂着物;台湾,沖縄,西表,四国,紀伊半島 (森野・向井 2016)
  26.  Trinorchestia longiramus Jo, 1988(和名未提唱)/ 韓国,日本(笹子 2011)
  27.  Trinorchestia trinitatis (Derzhavin, 1937) ヒゲナガハマトビムシ / 砂浜性;韓国,北海道~九州 (森野・向井 2016)
  28.  Minamitalitrus zoltani White et al., 2013 ダイトウイワヤトビムシ / 洞窟性;南大東島 星野洞 (森野 2015)


 これまで1科だったハマトビムシが激しく分裂したことで,今後の研究に与える影響は計り知れません.しかも,過去に属の整理に用いられたことのある「Orchestia/Talitrus グループ」「Sand hopper/Beach hopper/Marsh hopper」等の枠組みとも微妙に違っているため,簡単には馴染めなさそうです.
 恐らく,しばらくは「広義のハマトビムシ科」として運用されていくか,便宜的に上科レベルでの扱いになる気もします(Wikipediaではそのようにしました)
 今回も今回とて,分子系統解析は全く使用しない,形態一本道の仕事となっています.妥当性については議論を呼びそうですが,この規模で分子を流すには気の遠くなる作業が必要と思われ,しばらく覆すことは難しいでしょう.




<注意>
 Myers and Lowry (2020) を通読して気になった箇所がありましたので,以下に示しておきます.
  • p. 292: (誤)Caribitroides Lindeman, 1990 →(正)Caribitroides Bousfield, 1984
あと,誤りではありませんが,Bousfieldia属の分布が「Taiwan」とだけ記されているのも気になります.これは担名種の B. phoenixae を示すものと思われますが,もう1種の B. omoto (台湾と目と鼻の先とはいえ)日本の八重山列島産のはずなので・・・

 おかしいところは他にもあるかもしれませんが,全ては検証できていません.あしからず.




<参考文献>
Berezina, N. A.; Petryashev, V. V.; Razinkovas, A.; Lesutienė, J. 2011. Alien Malacostracan Crustaceans in the Eastern Baltic Sea: Pathways and Consequences. In: Galil, B. S.; Clark, P. F.; Carlton, J. T. (eds.) In the Wrong Place — Alien Marine Crustaceans: Distribution, 419 Biology and Impacts, Invading Nature — Springer Series in Invasion Ecology 6. 301–322.
— Bousfield, E. L. 1984. Recent advances in the systematics and biogeography of landhoppers (Amphipoda: Talitridae) of the Indo-Pacific Region. In: Radovsky, F. J.; Raven, P. H.; Sohmer, S. H. (ed.) Biogeography pf the tropical pacific. Proceedings of a Symposium. 171–205.
Cowling, J.; Spicer, J.; Gaston, K. J.; Weeks, J. 2004. Current status of an amphipod invader, Arcitalitrus dorrieni (Hunt, 1925), in Britain. Journal of Natural History, 38(13): 1665–1675.
Daneliy, M. E.; Wowor, D. 2016. Cosmopolitan landhopper Talitroides topitotum (Crustacea, Amphipoda, Talitridae) in Java, Indonesia. Check List, 12(4)1933: 1–9.
Hou, Z. E.; Lee, S. 2003. Terrestrial talitrid amphipods (Crustacea: Amphipoda) from China and Vietnam: studies on the collection of IZCAS. Journal of Natural History, 37(20): 2441–2460.
Jo, Y. W. 1988. Talitridae (Crustacea — Amphipoda) of the Korean coasts.   Beaufortia, 38(7): 153–179.
Lowry, J. K.; Myers, A. A. 2019. New genera of Talitridae in the revised Superfamily Talitroidea Bulycheva 1957 (Crustacea, Amphipoda, Senticaudata). Zootaxa, 4553(1).
Miyamoto, H.; Morino, H. 2004. Taxonomic studies on the Talitridae (Crustacea,  Amphipoda) from Taiwan, II. The genus Platorchestia. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory, 40: 67–96.
— 森野浩 2015. ヨコエビ目. In: 青木淳一 (ed.) 『日本産土壌動物 第二版 —分類のための図解検索』[1]. pp.1069–1089. 東海大学出版会, 東京. [ISBN978-4-486-01945-9]
Morino, H. 2020. The description of two new genera and four new species of the terrestrial Talitridae (Crustacea, Amphipoda) from the Ogasawara and Daito Islands, Southern Japan. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A, Zoology, 46(1): 1–23.
Morino, H.; Miyamoto, H. 2015a. A new Land-hopper genus, Nipponorchestia, with two new species from Japan (Crustacea, Amphipoda, Talitridae). Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Ser. A, Zoology, 41(1): 1–13.
Morino, H.; Miyamoto, H. 2015b. Redefinition of Paciforchestia Bousfield, 1982 and description of Pyatakovestia gen. nov. (Crustacea, Amphipoda,Talitridae). Bulletin of the National Museum of Natural Sciences, Ser. A, Zoology, 41: 105–121.
Morino, H.; Miyamoto, H. 2016b. A new talitrid genus and species, Lowryella wadai, from estuarine reed marshes of Western Japan (Crustacea: Amphipoda: Talitridae). Species Diversity, 21(2): 143–149.
森野浩・向井宏 2016. 砂浜フィールド図鑑 (1) 日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 京都市.
Myers, A. A.; Lowry, J. K. 2020. A phylogeny and classification of the Talitroidea (Amphipoda, Senticaudata) based on interpretation of morphological synapomorphies and homoplasies. Zootaxa, 4778(2): 281–310.
笹子由希夫 2011. 日本産ハマトビムシ科端脚類の分布と分子系統解析. 修士論文. 三重大学.


<参考web>
・WoRMS(2020年5月14日閲覧)

2020年5月1日金曜日

スベヨコエビについて(5月度活動報告)


 スベヨコエビに関する疑義がありましたので,ここで整理したいと思います.


 スベヨコエビ科 Odiidae というのは,Amphilochidea亜目 に属する小型のヨコエビで,5属16種2亜種が含まれます.いわゆるビジュアル系で,ホムラスベヨコエビは Crustacean Research の表紙を飾ったこともあります.
 


 スベヨコエビ科および近縁の Ochlesidae科は,触角鞭部や小顎の形状等によって他のヨコエビから識別されます.代表的な識別点は以下の通りです(これが全てではありません).
 
触角の鞭部が柄部より短い;第1小顎の内葉および髭が縮退する.



 スベヨコエビ科とOchlesidae科は, 第1咬脚と底節板の形状で見分けられます.


スベヨコエビ科:第1咬脚ははさみ形.第1~4底節板はほぼ同じ深さ.
Ochlesidae科:第1咬脚は単純形または亜はさみ形.第1~4底節板はいびつで,第1と第4が他より小さい.



 スベヨコエビ科の5属は,概ね以下の特徴によって見分けられます.ただし,第5胸脚については今回新たに開発した形質で,過去の文献では用いられていないのでご注意ください.

副鞭の有無;第1小顎および顎脚の髭の節数;第5胸脚底節板と基節のサイズ比.
 Odiusスベヨコエビ属 と Cryptodius属 は底節板が発達しており,基節長と同程度の深さで,面積は基節の2倍程度.他の3属の底節板は基節長より浅く,面積は同程度かより小さい.


 WoRMS(2020年5月1日閲覧)では,スベヨコエビ科は存在しないことになっていて,構成員は Ochlesidae科 に移されています(詳細は後述).合体しても9属35種2亜種の小さなグループなので,以下に既知全種をご案内します. 







World Species of Ochlesidae sensu lato


Ochlesidae Stebbing, 1910 sensu strict

Genus Curidia Thomas, 1983
Curidia andreae Coleman & Maturana Heinz, 2010 / オーストラリア
Curidia debrogania Thomas, 1983 / ベリーズ
Curidia knoxi Lowry & Myers, 2003 / ニュージーランド
Curidia magellanica Coleman & Barnard, 1991 / チリ
Curidia monicae Ortiz, Lalana & Varela, 2007 / キューバ
Curidia nunoi Winfield & Ortiz, 2013 / メキシコ湾
Curidia ramonae Lowry & Myers, 2003 / パプアニューギニア
Curidia wakabarae De Souza-Filho & Serejo, 2008 / ブラジル
Genus Meraldia Barnard & Karaman, 1987
Meraldia birgeri Coleman & Lowry, 2006 / オーストラリア
Meraldia madeleinae Coleman & Lowry, 2006 / オーストラリア
Meraldia meraldi (J.L. Barnard, 1972)  / オーストラリア
Meraldia yorki Coleman & Lowry, 2006 / オーストラリア
Genus Ochlesis Stebbing, 1910
Ochlesis alii J.L. Barnard, 1970 / ハワイ
Ochlesis carinatus Ledoyer, 1986 / インド洋
Ochlesis caroleoninae Coleman & Lowry, 2006 / オーストラリア
Ochlesis eridundi J.L. Barnard, 1972 / オーストラリア
Ochlesis innocens Stebbing, 1910 / オーストラリア
Ochlesis lenticulosus K.H. Barnard, 1940 / 南アフリカ
Ochlesis levetzowi Schellenberg, 1953 / ナミビア
Ochlesis morgani Coleman & Lowry, 2006 / オーストラリア
Genus Ochlesodius Ledoyer, 1982
Ochlesodius spinicornis Ledoyer, 1982 / マダガスカル


Odiidae Coleman & Barnard, 1991 sensu Ariyama (2011) スベヨコエビ科

Genus Antarctodius Berge, Vader & Coleman, 1999 ムカシスベヨコエビ属
Antarctodius antarcticus (Watling & Holman, 1981)  / 南極
Antarctodius japonicus Ariyama, 2011 ムカシスベヨコエビ / 有明海
Antarctodius noncarinatus Labay, 2010 / オホーツク海
Antarctodius rauscherti Coleman & Kauffeldt, 2001 / 南極
Genus Cryptodius Moore, 1992
Cryptodius kelleri (Brüggen, 1907)  / カナダ
Cryptodius sakhalinensis Labay, 2019 / オホーツク海
Cryptodius unguidactylus Moore, 1992 / アメリカ
Genus Gordonodius Ariyama, 2011 ゴードンスベヨコエビ属
Gordonodius zelleri (Berge, Vader and Coleman, 1999) ゴードンスベヨコエビ / 福井県
Genus Odius Liljeborg, 1865 スベヨコエビ属
Odius carinatus (Spence Bate, 1862)  / 北極
Odius cassigerus Gurjanova, 1972
Odius cassigerus cassigerus Gurjanova, 1972 / オホーツク海
Odius cassigerous ochoticus Labay, 2010 / オホーツク海
Odius oclairi (Moore, 1992) / アラスカ
Odius polarsterni (Brandt & Vassilenko, 1995) / グリーンランド
Genus Postodius Hirayama, 1983 ヒメスベヨコエビ属
Postodius igneus Ariyama, 2011 ホムラスベヨコエビ / 八丈島
Postodius imperfectus Hirayama, 1983 ヒメスベヨコエビ / 有明海
Postodius ornatus Ariyama, 2011 ニシキスベヨコエビ / 西伊豆
Postodius striatus Ariyama, 2011 アオスジスベヨコエビ / 宮城


 スベヨコエビ科は本邦から3属6種が知られています.その全種の線画および写真は Ariyama (2011) で確認することができます.体色の変化はあまりないようなので,スベヨコエビ科の特徴に合致するヨコエビで,この6種と絵合わせして”かすらない”場合,未記録種あるいは未記載種の可能性が高いです.



 さて,スベヨコエビ科とOchlesidae科の因縁は,スベヨコエビ科が設立された30年前に遡ります.

  1. Coleman and Barnard (1991) がスベヨコエビ科を設立.
  2. Berge et al. (1999) が,Ochlesidae科にスベヨコエビ科を統合する.
  3. Coleman and Lowry (2006) が,Berge et al. (1999) を踏まえつつ,狭義のOchlesidae科をレビューする.
  4. Ariyama (2011) が,Ochlesidae科とスベヨコエビ科の違いを示しつつ,日本産スベヨコエビ科をレビューする.
  5. Lowry and Myers (2013) がスベヨコエビ科の存在を認める.
  6. Labay (2019) が再びスベヨコエビ科を廃止する. 


 こんな感じで,数年ごとに状況が変わって油断ができない状況です.

 スベヨコエビ科とOchlesidae科は分布も北半球と南半球で分かれており,属以上の単位で分割する意義はあると(個人的には)思います.ただ,咬脚と底節板の形状だけで科を建てるべきかは微妙なところだと思います.分子系統解析が行われてスッキリするまでは,亜科とかが妥当なラインのような気がしますが,いかがでしょうか. 



(おまけ)
 「STAY HOME」の一環で,ホムラスベヨコエビのペーパークラフトを作りました.

厚紙に印刷してください.
 
 グーグルドライブのリンクを貼っておきますのでご査収ください.





(参考文献)

Ariyama, H. 2011. Six species of the family Odiidae (Crustacea: Amphipoda) from Japan, with descriptions of a new genus and four new species. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Ser. A, Supplment 5: 1–39. 
— Berge, J.; Vader, W.; Coleman, O. 1999. A cladistic analysis of the amphipod families Ochlesidae and Odiidae, with description of a new species and genus. Crustaceans and the Biodiversity Crisis. Proceedings of the fourth International Crustacean Congress, Amsterdam, The Netherlands, July 2024, 1998, Volume 1. Brill, Leiden. 239–265.
Coleman, C. O.; Barnard, J. L. 1991. Revision of Iphimediidae and similar families (Amphipoda: Gammaridea). Proceedings of the Biological Society of Washington, 104(2): 253–268.
Coleman, C. O.; Lowry, J. K. 2006. Revision of the Ochlesidae sensu stricto, including five new Australian species (Crustacea: Amphipoda). Organisms Diversity & Evolution 6, Electric Supplement 4: 1–57.
Labay, V. S. 2010. A new species and subspecies of Ochlesidae Stebbing, 1910 (Amphipoda: Gammaridea) from the Okhotsk Sea. Zootaxa, 2354: 35–44.
Labay, V. S. 2019. Review of amphipods of the genus Cryptodius Moore, 1992 (Amphipoda: Ochlesidae) from the coastal waters of Sakhalin Island (Far East of Russia). Zootaxa, 4603(3): 501–519.

Lowry, J. K.; Myers, A. A. 2013. A phylogeny and classification of the Senticaudata subord. nov. (Crustacea: Amphipoda). Zootaxa, 3610(1): 1–80. 
Moore, P. G. 1992. A study on amphipods from the superfamily Stegocephaloidea Dana 1852 from the northeastern Pacific region: systematics and distributional ecology. Journal of Natural History, 26(5): 905–936.