2016年1月9日土曜日

国立国会図書館は分類ヲタクの救世主たるか?(1月度活動報告)

 あけましておめでとうございます。今年もLet 's 端脚ライフの精神で頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

 私はヨコエビとは繋がりのない会社でヨコエビとは無縁の仕事をするサラリーマンでして、研究機関や教育機関の類には属していません。そのため学術的な活動には様々な限界が存在するのですが、今回はその一つ、「文献の限界」に挑戦します。


 訪れたのはここ。



 天下の国立国会図書館です。


 国立国会図書館(東京本館)は東京は永田町、国会議事堂のすぐ近くに位置しています。最寄駅は東京メトロ「国会議事堂前」および「永田町」です。
 日曜祝日は休館ですが、土曜はやっていて、朝の9時半から開いてます。基本的に誰でも利用できますが、入館にはカードが必要です。アドホックなものを貸してもらう方法と、登録をして3年有効の利用者カードをもらう方法がありますが、今回は今後の展開を考えて、登録利用者カードを発行してもらうことにしました。


 左側の大きな建物が本館、右側の低い建物が新館です。新館は9時から開いていて、カードを発行してもらえるのはこちらです。
 事前に調べたのは、アクセス,開館時間,複写サービスはあるか,持ち物に決まりはあるか、という点のみ。国立国会図書館の実力やいかばかりか、いざ現場検証です。

 朝イチで新館に突入。必要事項を所定用紙に記入して、本人確認書類を見せるだけ。ほぼ待ちなしでカードをもらえました。


 利用者カードは今回のように直接足を運べば即日発行が可能で、来れない場合は郵送で対応してくれるとのこと。3年で期限が切れますが、期間内にwebで更新すればそのまま使えるとのことです。


 国会図書館の入口には無料ロッカー(100円戻ってくるやつ)があり、持ち込み制限がかかるものについてはそこに預けます。
 B5以上の不透明なバッグは既に持ち込み制限品なので、A4の透明な書類ケースを持参しました。そういったものがなくても、小物を入れるための透明なビニール袋を入口でもらえます。
 
 入館用のカードにはICチップが内蔵されており、ゲートにタッチして入館します。
 館内の撮影行為は禁止です。飲食や携帯端末での通話が可能な場所は限られています。


 ちなみに、今回チャレンジした文献は次のとおり。


Derzhavin,1930
 ソ連のデルジャヴィンが1930年にAllorchestesの1種として現在のDogielinotus moskvitiniを記載した論文です。その他の沿岸性軟甲亜綱についても記述されており、この界隈では重要な文献です(たぶん)。

Gurjanova,1953
 ソ連のヨコエビ研究における超巨人グリャノバが著した論文で、これによってDogielinotidaeナミノリソコエビ科が設立されました。

上平,1992
 Kamihira,1977にて函館の海岸でHaustorioides japonicusナミノリソコエビを記載した上平先生の博士論文です。本種は島根や宮城にも生息しているといわれてますが、そのソースはこの文献なのです。



 国会図書館の中に、たくさんのPCが並ぶ一角があります。ここで書籍の検索、閲覧依頼ができるほか、電子化されているものの閲覧や出力依頼が可能です。もちろん国会図書館には普通の図書館のように開架式のコーナーもありますが、論文などは端末で探したほうがよいでしょう。早速、著者名や雑誌名を叩き込んでみます。
 この検索システムはwebでも利用できます

 検索してみましたが、Derzhavin.1930とGurjanova,1953は見つかりません。
 自宅で調べたときにもNDL-OPACではヒットしなかった記憶があるので、この方法ではみつからないのかもしれません。
  
 上平先生のD論はといえばバッチリ。自宅でも収蔵は確認済でした。自宅からでは本文の閲覧はできませんでしたが、国会図書館の端末からは見ることができます。

 さっそくプリントアウトをかけようとするとエラー。150ページ近くの大著なため、一度に依頼できる上限を超えてしまったみたいです。とりあえずイントロと分類に関わる部分のみ指定して依頼。

 プリントアウトは窓口での受け取りとなりますが、それは10時からのスタート。
 まだ時間があるので上平先生の他の文献がないかと調べてみたところ、函館大学の論究に垂涎ものの論文が大量に投稿されていることが分かり、この中からすぐに必要な箇所を選んで複写することにしました。
 大学のBulletinや学位論文は外からはなかなかアクセスできないもの。外からというか、改修前の九大図書館を襲撃(?)した時は、D論の棚は鍵がかかっていて一般利用者は閲覧できないような感じだった記憶があります。平山さんのD論を読みたかったのに・・・ 国会図書館はかなりの博士論文を収集しており、今回の調べものにはうってつけの場所だったようです。
 
 さて、そうこうしているうちに10時をまわりました。窓口が開く時間です。ここで役立つのが実はこのPC。カードのICチップ情報+パスワードを使ってログインする仕組みですが、書籍の検索や依頼の送信だけでなく、進捗をチェックできる優れもの。画面で確認すると、閲覧依頼の論究3題2冊も、プリントアウト依頼のD論も、どちらも用意できたとのこと。仕事早い!

 雑誌の受け取り窓口は新館2階にあります。窓口でカードを読み取ってもらい、論究を受け取って、1階に下りて複写依頼をかけます。すべてカードに紐づけされているのでとてもスムーズ。


 
別々の利用案内に同じような内容が書いてある・・・ 
これが二重行政というやつか・・・(違)
 
 
  複写依頼の窓口に行く前に、さきほどのPCのシステムから、複写依頼用の書式を出力する必要があります。複写依頼の準備ができた状態でログインしていれば、その書式を参照できるようになります。
 プリントアウトのタスクを送信してから、カードをプリンターにかざして印刷します。本当に全部利用者カード一枚で行われます。
 印刷した書式に、複写の範囲等を記入し、書籍にも栞を挟み、窓口に持っていきます。

  複写してもらうのに10分くらいかかるということで、その間にプリントアウトの受け取りをします。プリントアウトの際に注意が必要なのは、カードを一時的に没収されて、番号札を渡されるということ。プリントアウトが終わるまでは他のことはできません。
  

 複写は、モノクロA4@\24-でした。写真や図表があるものについては、濃度の調整の注文をすることができます。

 プリントアウトは、モノクロA4@\14-カラーA4@\46-でした。

 
 さて、上平先生の文献が一通り手に入ったので、本日のメインイベント、地獄のロシア語文献狩りに参戦したいと思います。

 インフォメーション窓口に文献のリストを渡して、探してもらいます。

「この文献であれば蔵書がありますが・・・」
「これは確かにTrudy Zoologicheskigi Instituta Akademii Nauk SSSRですが、出版が1953年じゃないし巻号も違いますよね(´・ω・`)」
「同じ巻号のものは・・・ないですね(´・ω・`)」
「ですよね(´・ω・`)」
「こちらの国内の大学などにはあるみたいですが・・・(´・ω・`)」
「北大・・・(´・ω・`)」

「こちらの1930年の資料は国内の蔵書がヒットしませんが(;'∀')」
「マジすか」
「ここにはあるみたいですね」
「ロシア国立図書館・・・(´・ω・`)」
 

  おそロシア!!ロシア手強し!!見事に散華致しました!!




<今日のまとめ>

 国立国会図書館は・・・

1.卒論や紀要に強い

2.海外の論文は蔵書が無いこともある

3.所蔵の有無はウェブで確認する

4.あくまで資料を集積・公開する施設であって、取り寄せなどは行っていない



  ということで、先ほどの文献については、原典をあたらずに研究を進めるか、誰かに頼むか、別の方法を模索したいと思います。

 大学図書館も一般の利用を許可している場合が多いですが、所蔵していればまだしも、ロシアのめんどくさい論文を取り寄せてくれるかは不明です。
 また、国会図書館と異なりウェブサービスなどという気の利いたものはあるはずもないため、平日に休みをとって出向くのが現実的と思われます。

 通っていた大学の伝てをたどるか、最寄りの大学に突撃するか、というかたちになるかと思います。何かキッカケもちたいところですが・・・

 国立科学博物館は郵送やファックスでの複写対応をしてくれるみたいです。蔵書があれば、国会図書館の次に使いやすいのはこれかもしれません。あればですけど・・・



 (上記内容は、2016年1月9日現在のものです。)





<参考文献>

Derzhavin, A.N. 1930. The fresh water Malacostraca of the Russian Far East. [Russk.] Gidrobiologicheskii Zhurnal, 9(1-3): 1-8 [in Russian with English summary].

= Державин А.Н. 1930. Пресноводные Malacostraca Дальнего Востока СССР. Гидробиологический журнал, 9(1-3): 1-8.



Gurjanova, E.F. 1953. Novye dopolnenija k dal’nevostochnoi fauna morskik bokoplavov. Trudy Zoologicheskogo Instituta Akademii Nauk S.S.S.R., 13: 216-241, figs. 1-19 [in Russian].

= Гурьянова, Е.Ф. 1953. Новые дополнения к дальневосточной фауне морских бокоплавов. Труды Зоологического Института АН СССР, Т. 13. - С. 216-241.



Kamihira, Y. 1977. A new species of sand-burrowing marine amphipods from Hokkaido, Japan. Bulletin of the Faculty of Fisheries, Hokkaido University, 28(1): 1-5. pls.I-V.
上平幸好, 1992. 北海道南西部の砂質海岸に生息する端脚類 Haustorioides japonicus (Dogielinotidae) の生態学的研究. 函館大学論究特別号, 1: 72 + XXXIII Appendix.



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(追記)

 有山啓之様よりDerzhavin, 1930を送っていただくことができました。誠にありがとうございました。