2024年3月4日月曜日

2024年のヨコエビギナーへ(文献紹介第十弾)

 

  今年もヨコエビの知見を得るのに有用な文献を紹介します。

 

(第一弾)
— 富川・森野 (2009) ヨコエビ類の描画方法
— 小川 (2011) 東京湾のヨコエビガイドブック
— 石丸 (1985) ヨコエビ類の研究方法
— Chapman (2007) "Chapman Chapter" In: Carlton Light and Smith Manual (West coast of USA)
— 平山 (1995) In: 西村 海岸動物図鑑
— Barnard & Karaman (1991) World Families and Genera of Marine gammaridean Amphipoda

(第二弾)
— Lowry & Myers (2013) Phylogeny and Classification of the Senticaudata
— World Amphipod Database / Amphipod Newsletter
— 富川・森野 (2012) 日本産淡水ヨコエビ類の分類と見分け方
— Arimoto (1976) Taxonomic studies of Caprellids
— Takeuchi (1999) Checklist and bibliography of the Caprellidea
— 森野 (2015) In: 青木 日本産土壌動物
【コラム】文献情報のルール

(第三弾)
— 有山 (2016) ヨコエビとはどんな動物か
— 森野・向井 (2016) 日本のハマトビムシ類
— Tomikawa (2017) Freshwater and Terrestrial amphipod In: Species Diversity of Animals in Japan
— Bousfield (1973) Shallow-Water Gammaridean Amphipoda of New England
— Ishimaru (1994) Catalogue of gammaridean and ingolfiellidean amphipod
— 椎野 (1964) 動物系統分類学
【コラム】ヨコエビの分類にはどこから手を付けるか

(第四弾)
— Lowry & Myers (2017) Phylogeny and Classification
— Bellan-Santini (2015) Anatomy, Taxonomy, Biology
— Hirayama (1983–1988) West Kyushu
— 井上 (2012) 茨城県のヨコエビ
— 永田 (1975) 端脚類の分類
— 菊池 (1986) 分類検索, 生態, 生活史
【コラム】文献の入手

(第五弾)
— Arfianti et al. (2018) Progress in the discovery
— Ortiz & Jimeno (2001) Península Ibérica
— Miyamoto & Morino (1999) Talorchestia and Sinorchestia from Taiwan
— Miyamoto & Morino (2004) Platorchestia from Taiwan
— Morino & Miyamoto (2015) Paciforchestia and Pyatakovestia
— 笹子 (2011) 日本産ハマトビムシ科
【コラム】野良研究者

(第六弾)
— Lecroy (2000–2011) Illustrated identification guide of Florida
— Cadien (2015) Review of NE Pacific
— Copias-Ciocianua et al. (2019) The late blooming amphipods
— Spence Bate & Westwood (1863) British sessile-eyed Crustacea
— 青木・畑中 (2019) われから
— Bousfield & Hoover (1997) Corophiidae
【コラム】ヨコエビの同定

(第七弾)
— 岡西 (2020) 新種の発見
— Conlan (1990) Revision of Jassa 
— Ariyama (1996) Four Species of Grandidierella 
— Ariyama (2004) Nine Species of Aoroides 
— Ariyama (2007) Aoridae from Osaka and Wakayama
— Ariyama (2020) Six species of Grandidierella
【コラム】ヨコエビリティの探索

(第八弾)
— Hughes & Ahyong (2016) Collecting and processing
— Буруковский & Судник (2018) Атлас-определитель Балтики и Калининградской 
— Гурьянова (1938) Gammaroidea заливов Сяуху и Судухе 
— Гурьянова (1951) Бокоплавы морей СССР
— Цветкова (1967) Бокоплавов залива Посьет
— Takhteev et al. (2015) Checklist of the Amphipoda from continental waters of Russia
【コラム】海外の司書さんを$29でパシる方法

(第九弾)
— 有山 (2022) ヨコエビガイドブック
富川 (2023) ヨコエビはなぜ「横」になるのか 
— Bousfield & Hendrycks (1995) Eusiroidea in North American Pacific I 
— Гурьянова (1938) Amphipoda, gammaroidea Zajibob Siaukhu i Sudzukhe
— Гурьянова (1951) Бокоплавы морей СССР
— Tomikawa et al. (2017) enigmatic groundwater amphipod Awacaris kawasawai revisited
【コラム】ヨコエビ採集の安全対策

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<今年の新作>

Morino H. 2024. Variations in the characters of Platorchestia pacifica and Demaorchestia joi (Amphipoda Talitridae, Talitrinae) with revised diagnoses based on specimens from Japan. Diversity, 16(31). 

 このブログでもたびたび取り上げてきた「ヒメハマトビムシ問題」について、本邦ハマトビムシ上科の権威・森野先生によるレビューが出ました。膨大な仕事量が伺えますが、本文はかなりコンパクトにまとまっています。標本の検討が国内の2種のみに留まっている点と、遺伝子の解析を行っていない点については、更なる研究が俟たれる状態といえますが、日本全国のかなりの地点を網羅していることから、地域個体群の種同定においてかなり心強い資料になるかと思います。

 本研究では、Lowry and Myers (2022) で記載された Demaorchestia hatakejima を、記載の根拠となったスケッチと同ロットの標本を用いて検証し、タイヘイヨウヒメハマトビムシ Platorchestia pacifica の新参シノニムとするのが妥当との結論を下しています。また、同じ論文で記載された D. mie について、有効性の否定には及んでいませんが、同じ特徴を具える個体は国内から得られなかったと述べています。本邦の「ヒメハマトビムシ種群」は完全に解明されたとは言えないまでも、専らタイヘイヨウヒメハマトビムシとクシヒメハマトビムシ Demaorchestia joi の2種が優占すると考えてよさそうです。この2種については笹子 (2011) や森野・向井 (2016) で既に国内分布の検討が行われているため、これら資料を組み合わせることで地域個体群の理解はさらに深まるものと思われます。また、本論文の出版により「ヒメハマトビムシ」という種名のヨコエビは消滅し、この和名は種群名あるいは便宜名となりました。

 日本産および採集される可能性がある7種について、二又式検索表を提供。ただし、かなりあっさりしているため、標本の同定に際しては、本文や他の文献も参考にして、複数の角度から検討したほうがよいです。本文は無料で読めます。



<アゴナガヨコエビ科の分類にオススメ>

 2022年10月よりアゴナガヨコエビ科担当に就任しましたが、まだあまり仕事をもらってません。粛々と情報発信してまいります。


— Bowman, T. E. 1974. The "Sea Flea" Dolobrotus mardenis n. gen.n. sp., A Deep-Water Amarican Lobster bait Scavenger (Amphipoda, Eusiridae). Proceedings of the Biological Society of Washington87(14): 129–138.

 6属の検索表を掲載。Djerboa属,Dolobrotus属,Schraderia属はアゴナガヨコエビ科から変更ありませんが、Leptamphopus属,Oradarea属はウラシマヨコエビ科、Bouvierella属のみテンロウヨコエビ科に移っています。



<イソヨコエビ属の分類にオススメ>

— Alves, J.; Johnsson, R.; Senna, J. 2016. On the genus Elasmopus Costa, 1853 from the Northeastern Coast of Brazil with five new species and new records.  Zootaxa4184(1): 1–40.

 ブラジルからイソヨコエビの新種を記載した論文ですが、当時の世界の既知102種全てが検索表に落とし込まれており、非常に重要な資料です。ただし、なぜかNo.8が無いなど一部不可解な部分があるため注意が必要です。



<トゲホホヨコエビ属の分類にオススメ>

 Barnard, J. L. 1972. Gammaridean Amphipoda from Australia, Part I. Smithsonian Contributions to Zoology, 103: 1–333.

 50年前の文献ですが、今なおトゲホホヨコエビ属の同定に有用な資料です。入手の敷居が低いのも嬉しいです。



 Kim Y. H.; Eun Y.; Lee K. S. 2006. Two New Records of Dexaminidae (Crustacea: Amphipoda) from Korea. The Korean Journal of Systematics Zoology22(1): 37-49.

— Kim Y.-H.; Lee K.-S. 2008. A new species of the genus Paradexamine (Crustacea: Amphipoda: Dexaminidae) from Korea. Animal Cells and Systems12(3): 157–163. 

 韓国に産するトゲホホヨコエビ属のキーが掲載されています。日本近海で本属を同定するには欠かせない資料といえます。



<参考文献>

— Lowry, J. K.; Myers, A. A. 2022. Platorchestiinae subfam. nov. (Amphipoda, Senticaudata, Talitridae) with the description of three new genera and four new species. Zootaxa, 5100: 1–53.

森野浩・向井宏 2016. 砂浜フィールド図鑑(1)日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 京都市(*). (*当時)

笹子由希夫 2011. 日本産ハマトビムシ科端脚類の分布と分子系統解析. 三重大学修士論文.

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コラム:新種ヨコエビの「見つけ」方

 近年、新種発見がブームとのことなので(馬場・福田 2022)、ヨコエビの新種を「発見する」方法をご案内します。


1.新種を「発見する」には

 馬場・福田 (2022) の中でも紹介されていますが、新種「発見」の近道はやはりある程度の分類群を絞り込んでおくことだと思います。漠然と珍しそうな生物を蒐集しても、そのジャンル(分類群)の範囲が広ければ広いほど、新種として記載されうるかを検討する手間は膨大になります。しかし、幸か不幸か世の中には手つかずの分類群がゴロゴロしており、人が必ず避けて通ることで、逆に目立つことがあります(目録においてsp.やcf.が多い等)。そこを意図的に狙うことで、未記載種にエンカウントする確率はぐんと上がるわけです。
 なお、馬場・福田 (2022) や件の NHK の特番では、新種の発見にあたっては専門家の目に留まるきっかけが必要であり、そのためには写真をネットにバンバン上げよと勧めているように見えるくだりがあります。確かに SNS や AI同定プラットフォーム などに上がっている写真には未記載種やレア種がゴロゴロしていて、眺めているだけで楽しいですし、実際に記載に繋がった例もあります(私もツイッターでしか知り得なかった分布情報がきっかけの新種記載案件を抱えています)。しかし、全ての分類群の専門家がネット上をまめに巡回しているわけではありませんし、生物の写真をネットに上げる時は適宜生息地情報をぼかすなどそれなりの配慮が必要で、不特定多数へ安易に推奨すべきものとは思えません。
 無闇矢鱈なアップロードは避け、興味のある分類群の写真や話題を地道に上げながら過ごしていれば、コミュニティが見つかるのではと思います。そこから詳しい人に繋がったり、同好会や学会のような組織を紹介してもらい、そこに持ち込むことで、記載への道が拓けると思います。

 また、ネット上ではしばしば誤同定が見受けられます。誤同定はネットの普及と無関係に紙の出版物だけの世界でも普通に起こることで、それそのものは仕方ないことですが、中には「教えてあげる姿勢だけ見せ合えば本当の名前はどうでもいい」とか「自分が知っている名前を当てずっぽうに提案すること=同定」と思っているようなユーザも少なくないようで、同定の再考を期待することはおろか意思疎通すら困難な場合もあります。SNSは人と人が繋がるためのツールであって、正確な同定を担保するものではないのです。
 そんなわけで「ネットに生物の写真をあげまくることが新種記載に役立つ」のは一側面としては真であったとしても、そのメッセージだけが独り歩きした場合、最悪の展開として、新種とか珍種とかをデタラメに判定する”善意の”荒らし行為を助長し、例えば該当種の乱獲や該当分類群の検索汚染といった問題を引き起こす惧れを禁じ得ません。

 そして、近年は生成AIによる検索汚染が深刻な問題となりつつあるとの指摘も見受けられます。前述の通り、そもそも生身の人間による検索汚染が根深く存在するため、AIだけが問題というわけではないと思います。しかし、専門家はそういった地雷を踏んで時間を無駄にすることはしないため、AIによる検索汚染が進行すれば、ネットを巡回する人口は更に減っていくことは想像に難くありません。即ち、一般人がネットに上げる写真が記載能力のある専門家の目に留まる機会というのは、AI隆盛の時代にあって減ることはあっても、有効性を増す見通しは立ちにくい気がします。
 もちろん、ひとかどの専門家であれば、新種発見の場面で、誤同定による検索汚染や生成AIによる架空生物画像に惑わされることは無いといってよいでしょう(個々の識別能力以前にタイプ標本の指定といった手続き上の制約もあります)。ただし、ゴミ情報が相対的に多くなっていく傾向にあれば、それだけ選別に手間がかかり、それに付きあおうという人は限られます。一方、記載能力を有する専門家がこれからどんどんSNSなどに参入してくるかというと、そういった母数の増加が期待できる時期でもないと思います。あくまで「今のSNSのフレームワークでは専門家が新種生物を探すデメリットは大きくなり、ネットにあげる側としてはエンカウント率が減るばかりではないか」という話です。これを打開するアイディアが無いわけではありませんが、本稿の意図を大幅に逸脱するため、割愛します。



2.新種を「発見する」とは?
 そもそも新種を「発見する」ことが具体的に何を示しているのか、一旦整理しておきます。
 ドラマ的・マンガ的な「新種発見」の描写としては、例えば「ジャングルの奥地に潜む幻の蝶を求めて道なき道を進み、苦難の末にとうとうそれを手に入れる」などといったシチュエーションがあるかと思いますが、この場合「標本を手に入れた瞬間にそれが”新種”だと確信する」ところに物語のピークがあるように思えます。しかし、実際のところ「手に取った瞬間に未記載種だと確信できる」ためには相当な条件が重なる必要があります(目視で分類形質が分かるくらいの大きさの生物であること,特別な処理や機器なしにその場で観察できること,関連文献を読み込み既知種の特徴が全て頭に入っている等)

 今回はともかく「新種記載論文に使われ発見者として記録されうる標本を得る」ことを目的とし、それに沿った狙いの付け方を考えてみます。

 さっそくですがランキングです。



第一位:イソヨコエビ属
獲れやすさ:★★☆
観察しやすさ:★★★
本邦解明度:★☆☆
調べやすさ:★★★

 今のところ種の同定形質がオスの付属肢をベースに選定されており、口器など細かい構造の重要性が高くないのが利点です。体長が10mm前後あるいはそれ以上あり、観察のストレスが小さいのも良いです主に大型藻類が豊かな硬質基質を好み、比較的どこでも採れ、性比の偏りもあまりないように思えます。
 なお、2016年までの世界の既知種が前述の文献 (Alves et al. 2017) において1つの検索表にまとまっていますので、その後に記載された種の論文 (Myers 2014; Gouillieux & Sorbe 2015; Myers & Montazi 2015; Hughes 2015; Myers 2016; Myers et al. 2018; Nakamura et al. 2019; Sir & White 2022) を拾い読みすれば、成熟オスをもとに未記載種かどうかの判断は比較的容易につきます。



第二位:アゴナガヨコエビ属
獲れやすさ:★★★
観察しやすさ:★☆☆
本邦解明度:★★☆
調べやすさ:★☆☆

 磯から干潟までどこでもたくさん採れるため、サンプル数の確保が容易で、未記載種の検討に必要な良好なコンディションの標本を選びやすい利点があります。時間帯により活発に遊泳し、夜間は灯火に集まるようです (綿貫 2022)。体長は5mm程度でヨコエビ界隈では通常サイズですが、付属肢などが外れやすく、また第2咬脚の性的二形など目立った特徴もないため、コンディション良好な個体を厳選し、全身を細部まで検討する根気が求められるでしょう。
 同定にあたっては、網羅的な検索表は今日にいたるまで作成されておらず、日本近海産の構成種を理解するための主要な論文 (Gurjanova 1938) が戦前のものでしかもロシア語で書かれているなどの難点があります。



第三位:トゲホホヨコエビ属
獲れやすさ:★★☆
観察しやすさ:★★☆
本邦解明度:★★☆
調べやすさ:★★☆

 そこそこどこにでもいるのと、5mm以上でまあまあ観察しやすい利点があります。性的二形がありますが、概ね複眼の大きさなどから見当をつけられます。ただし、付属肢が取れやすく完品が得にくいのが難点です。夜間に灯火に集まりますが、日中は海草や海藻,あるいは砂質の底質に紛れているようです。
 日本国内からは6種くらいが報告されつつ、全国的なレビューは不足していると感じます。近海では前述の韓国の文献 (Kim et al. 2006; Kim and Lee 2008) が充実しており同定の助けになります。ただし、未記載種を探すうえで必要な世界全体の検討には更に広範囲に手を伸ばして文献を探索する必要があり、多少の手間がかかります。



第四位:ドロノミ属
獲れやすさ:★★☆
観察しやすさ:★☆☆
本邦解明度:★☆☆
調べやすさ:★☆☆

 密度に差があるものの硬質環境にはわりとどこにでもいて、付着生物をガサガサすると出てきます。有山 (2022) から察せられる通り、そのほとんどが未記載と考えられます。性比の偏りが少なく観察しやすいサイズではありますが、付属肢が非常に脆く、分類学的検討に足る完品を得るにはコツが要ります。同定形質に非定量的な要素があり、また種数が多く世界的なレビューが不足しているため、文献調査による未記載種の確定には手間のかかるグループです。

※本邦解明度の根拠:科学的に算出できるならそうしてますが、できないので、完全に勘です。



 さて、実際に見つけた「新種」をどうするかという部分は、今回はかなり曖昧な立場をとりました。自分で記載するもよし、ネットにあげるには前述の通り大きなデメリットがありますが、ヨコエビにおいてはそもそもマトモな同定がされないのがデフォなのと、まだ乱獲の対象になったり生成AIで出鱈目な画像が大量に生み出されるような事態はみられないので、とりあえず「なんかのヨコエビ」としてネットに上げるのは有効な手段だと思います。状況が変わったら方策を考えたいと思います。

 たまに「新種1つあたり幾らか貰えるのか」と聞かれることがありますが、少なくとも日本国にそういうルールはありません。某国にはそういう制度がありものすごい勢いで記載が進んだという話も聞くので、膨大な未記載種を迅速に処理する観点からは導入してもよいかもしれませんが、記載論文の粗製濫造に繋がる懸念は拭えません。

 ちなみに 馬場・福田 (2022) においてはバリバリの分類学者である著者が、新種記載のフローや用語を明快・簡潔に解説しており、一般向けあるいは初学者にとってこれほど源泉に近い情報が手に入る文献というものはあまり例がないと思います。しかし、そういった話をするためだけの本ではなく、様々な分類群についてその記載の過程を当事者が振り返るエッセイが量的に優占しており、ヨコエビの記載としては桁違いに話題になりまくった チゴケスベヨコエビ も取り上げられています。その発見の過程には(厳選したとはいえ)同じものは二つと無く、まさにオムニバスのドラマを観ているようです。また、岩波ジュニア新書からも類書 (島野ほか 2023) が出版されており、新種ブームはしばらく続きそうです。


<コラムの参考文献>

 Gouillieux, B.; Sorbe, J. C. 2015. Elasmopus thalyae sp. nov. (Crustacea: Amphipoda: Maeridae), a new benthic species from soft and hard bottoms of Arcachon Bay (SE Bay of Biscay). Zootaxa3905(1):107–18.

— Gurjanova, E. F. 1938. Amphipoda, gammaroidea Zajibob Siaukhu I Sudzukhe (Japonskoe More) [Amphipoda, gammaroidea of Siaukhu Bay and Sudzukhe Bay (Japan Sea)]. Fijnaj Akademii Nauk SSSR, Trudy Gidrobiojogicheskoi Ekspedichii Zinan 1934 Japonskoe Morei [Reports of the Japan Sea Hydrobiological Expedition of the Zoological Institute of the Academy of Science USSR in 1934], 1: 241–404. (In Russian)

 Hughes, L. E. 2015. Maeridae from the Indo-Pacific: ElasmopusLeeuwinella gen. nov., MaeropsisPseudelasmopus and Quadrimaera (Amphipoda: Crustacea). Zootaxa4059(2): 201.

 Myers, A. A. 2014. Amphipoda (Crustacea) from the Chagos Archipelago. Zootaxa3754(1).

 Myers, A. A. 2016. Amphipoda (Crustacea) from Palau, Micronesia: Families Maeridae and Melitidae. Zootaxa4170(3). 

 Myers, A. A.; Montazi, F. 2015. Elasmopus alkhiranensis sp. nov., a new species of amphipod (Senticaudata, Maeridae) from the Persian Gulf. Zootaxa3973(1): 185–194. 

 Myers, A. A.; Trivedi J.; Gosavi, S.; Vachhrajani, K. D. 2018. Elasmopus sivaprakasami sp. nov., a new species of amphipod (Senticaudata, Maeridae) from Gujarat State, India. Zootaxa4402(1):18.

— Nakamura Y.; Nakano T.; Ota Y.; Tomikawa K. 2019. A new species of the genus Elasmopus from Miyako Island, Japan (CrustaceaAmphipodaMaeridae). Zootaxa4544 (3): 395–406. 

 島野智之・脇司 (編著) 2023. 『新種発見物語 足元から深海まで11人の研究者が行く!』. 岩波書店, 東京. 270 pp. ISBN:9784005009664

 Sir, S.; White, K. N. 2022. Maerid amphipods (Crustacea: Amphipoda) from Okinawa, Japan with description of a new species. Zootaxa5093(5): 569–583.