4月末より別件にて取り組んでいたことがあり、ブログ更新を後回しにしていたところ気がつけばタイムリミット。月内になんとか更新を。
その別件についてはリリースされたらご紹介できると思います。
さて、5月度は三番瀬海域のベントス調査でヨコエビを探すも、主にモズミヨコエビAmpithoe validaとアリアケドロクダムシMonocorophium acherusicumしか見つからず、心なしかシミズメリタヨコエビMelita shimizuiも少なくなっているように思われました。ちなみにコドラートでの検出はなかった模様。
生息基質には大きな変化があり、特に汀線側はカキ礁が派手にぶっこわれて破片が砂干潟を覆っている状況で、 潮間帯最下部あたりから広大なカキ礁が広がって、一般の方がそこで何を掘っているかというと還元土壌に染まって真っ黒になったホンビノスだったりして、何とも言えない光景が繰り広げられていました。
ただ、カキ礁が干潟面を遮るように出来ると潮通しが悪くなり、カキの偽糞で有機物だらけになって干潟が死んでしまうかと思いきや、潮の流れが大きく変化した結果、カキ礁の手前の汀線付近の干潟の底質はさほど悪くないというか、むしろ以前の中途半端な場所にカキ礁があった頃より改善しているような印象でした。
付着生物として優先しているアリアケドロクダムシの中からカマキリヨコエビが見つからないかと試みましたが発見ならず。今シーズン三番瀬で確認されたヨコエビは5種に留まっており、さみしい限りです。
佐藤隼夫・伊藤猛夫 1980. 『改訂 無脊椎動物採集・飼育・実験法』 (1956初版), 北隆館, 東京.
僕が生まれる前に出た本ですね。そのためISBNコードもありません。
この本にヨコエビが取り上げられていると知り、 もしかして飼育方法なぞを掲載しているのではと勘繰り、探して買いました。
本書においてヨコエビが扱われている章は 13-1・8端脚類(Amphipoda)(p.257-258)。
掲載されているヨコエビは以下の種です。
二ホンソコトビムシ [as Ampithoe japonica (synonymized taxon)] Ampithoe lacertosa Bate, 1858
トゲドロクダムシ [as Corophium crassicorne] Crassicorophium crassicorne (Bruzelius, 1859)
キクイモドキ Chelura terebrans
ツノフトソコエビ [as Orchomenella nana] Tryphosa nana (Krøyer, 1846)
テングヨコエビ Pleustes panopla
モクズヨコエビ [as Hyale grandicornis] Apohyale grandicornis (Krøyer, 1845)
ヒメハマトビムシ [as Orchestia platensis ; not Platorchestia platensis (Krøyer, 1845)] cf. Platorchestia joi Stock & Biernbaum, 1994
ヒゲナガハマトビムシ [as Talorchestia brito ; not Britorchestia brito (Stebbing, 1891)] cf. Trinorchestia trinitatis (Derzhavin, 1937)
イソヨコエビ Elasmopus japonicus
ニッポンヨコエビ [as Rivulogammarus nipponensis] Gammarus (Rivulogammarus) nipponensis (Uéno, 1940)
シコクメクラヨコエビ Pseudocrangonyx shikokunis
学名は近年の知見を元に直してみましたが、和名が今と違うものや、学名の対応に疑問が少なくないため、これを無視して引用などはできない代物です。生態情報は属ないし科レベルで理解できますので、本書の記述は和名に付属して定義される日本個体群の概論ということで、細かい分類はこの際はよいことにします。
<三番瀬東浜調査>
さて、5月度は三番瀬海域のベントス調査でヨコエビを探すも、主にモズミヨコエビAmpithoe validaとアリアケドロクダムシMonocorophium acherusicumしか見つからず、心なしかシミズメリタヨコエビMelita shimizuiも少なくなっているように思われました。ちなみにコドラートでの検出はなかった模様。
生息基質には大きな変化があり、特に汀線側はカキ礁が派手にぶっこわれて破片が砂干潟を覆っている状況で、 潮間帯最下部あたりから広大なカキ礁が広がって、一般の方がそこで何を掘っているかというと還元土壌に染まって真っ黒になったホンビノスだったりして、何とも言えない光景が繰り広げられていました。
ただ、カキ礁が干潟面を遮るように出来ると潮通しが悪くなり、カキの偽糞で有機物だらけになって干潟が死んでしまうかと思いきや、潮の流れが大きく変化した結果、カキ礁の手前の汀線付近の干潟の底質はさほど悪くないというか、むしろ以前の中途半端な場所にカキ礁があった頃より改善しているような印象でした。
付着生物として優先しているアリアケドロクダムシの中からカマキリヨコエビが見つからないかと試みましたが発見ならず。今シーズン三番瀬で確認されたヨコエビは5種に留まっており、さみしい限りです。
地形が変わって大きな川が形成されていて、小学校の「水の流れ」の授業とかできるのではないかと。 |
<文献紹介>
佐藤隼夫・伊藤猛夫 1980. 『改訂 無脊椎動物採集・飼育・実験法』 (1956初版), 北隆館, 東京.
僕が生まれる前に出た本ですね。そのためISBNコードもありません。
この本にヨコエビが取り上げられていると知り、 もしかして飼育方法なぞを掲載しているのではと勘繰り、探して買いました。
本書においてヨコエビが扱われている章は 13-1・8端脚類(Amphipoda)(p.257-258)。
掲載されているヨコエビは以下の種です。
二ホンソコトビムシ [as Ampithoe japonica (synonymized taxon)] Ampithoe lacertosa Bate, 1858
トゲドロクダムシ [as Corophium crassicorne] Crassicorophium crassicorne (Bruzelius, 1859)
キクイモドキ Chelura terebrans
ツノフトソコエビ [as Orchomenella nana] Tryphosa nana (Krøyer, 1846)
テングヨコエビ Pleustes panopla
モクズヨコエビ [as Hyale grandicornis] Apohyale grandicornis (Krøyer, 1845)
ヒメハマトビムシ [as Orchestia platensis ; not Platorchestia platensis (Krøyer, 1845)] cf. Platorchestia joi Stock & Biernbaum, 1994
ヒゲナガハマトビムシ [as Talorchestia brito ; not Britorchestia brito (Stebbing, 1891)] cf. Trinorchestia trinitatis (Derzhavin, 1937)
イソヨコエビ Elasmopus japonicus
ニッポンヨコエビ [as Rivulogammarus nipponensis] Gammarus (Rivulogammarus) nipponensis (Uéno, 1940)
シコクメクラヨコエビ Pseudocrangonyx shikokunis
学名は近年の知見を元に直してみましたが、和名が今と違うものや、学名の対応に疑問が少なくないため、これを無視して引用などはできない代物です。生態情報は属ないし科レベルで理解できますので、本書の記述は和名に付属して定義される日本個体群の概論ということで、細かい分類はこの際はよいことにします。
この顔ぶれ、蟹で言うところの渓流にサワガニ、干潟にオサガニ、岩場にイソガニといったオーソドックスなチョイスと思われます。ヨコエビについて「ベタ」と呼べるほど定番化したメニューはなく、これは貴重な資料です。
特筆すべきは、ツノフトソコエビの紹介で筆者はこの仲間が魚を骨にするのを見たなどと書かれている点。実はヨコエビの入門に適した主な日本語の文献(永田1965;石丸1985;菊池1986;平山1995)において、この手の記述は見当たらない。貴重です。
飼育については個別には記述されておらず、概ね同じだから他の各種小型甲殻類を参考にしてくれと軽くあしらわれております。
まあ、かなり広範な生物を扱った中でのヨコエビということで些か物足りない部分もあるものの、当時としてはもちろん、今見てもかなり網羅的な見識が示された貴重な資料という印象です。
とにかく絵を描かねば・・・
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参考文献
-平山明 1995. 端脚類. In: 西村三郎(ed.)『原色検索日本海岸動物図鑑[II]』. 保育社, 東京.
-石丸信一 1985. ヨコエビ類の研究法. 生物教材, 19,20: 91-105.
-菊池泰二 1986. 第一編 ヨコエビ類の分類検索,及び生態, 生活史に関する研究. In: ヨコエビ類の生物生産に関する基礎研究. 昭和60年度農林水作業特別試験研究費補助金による研究報告書. pp.9-24.
-永田樹三 1965.端脚目(AMPHIPODA)概説. In: 岡田要(ed.)『新日本動物図鑑[中]』, 6th edition, 北隆館, 東京.
飼育については個別には記述されておらず、概ね同じだから他の各種小型甲殻類を参考にしてくれと軽くあしらわれております。
まあ、かなり広範な生物を扱った中でのヨコエビということで些か物足りない部分もあるものの、当時としてはもちろん、今見てもかなり網羅的な見識が示された貴重な資料という印象です。
<その他進捗>
顕微鏡がまだ買えず、記載は進んでおりません。とにかく絵を描かねば・・・
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参考文献
-平山明 1995. 端脚類. In: 西村三郎(ed.)『原色検索日本海岸動物図鑑[II]』. 保育社, 東京.
-石丸信一 1985. ヨコエビ類の研究法. 生物教材, 19,20: 91-105.
-菊池泰二 1986. 第一編 ヨコエビ類の分類検索,及び生態, 生活史に関する研究. In: ヨコエビ類の生物生産に関する基礎研究. 昭和60年度農林水作業特別試験研究費補助金による研究報告書. pp.9-24.
-永田樹三 1965.端脚目(AMPHIPODA)概説. In: 岡田要(ed.)『新日本動物図鑑[中]』, 6th edition, 北隆館, 東京.