久々に海に行きましたので活動報告です。
なお、「ヨコエビ」の呼称が文献に登場してから180年(たぶん)、日本で端脚類学が勃興して121年(たぶん)にあたる今年、日本中が熱望していたある本が出るとのニュースが駆け巡り、日本のみならず世界の研究者に衝撃を与えました。出版予定日は明日ですが、事情により本ブログでの書評は控えさせていただきます(追って情報は出します)。
I県某所。タイトルとラベルで語るに落ちていますが。 |
イソケナシザルの群れが多数みられました。エビトリケナシザルは異質な存在です。
カルガモ先輩。 |
ソファに寝そべるヒザラガイ。 |
大小さまざまな紅藻が優占している波当たりの強い海岸で、ところどころ褐藻がみられます。
ミサキモクズ Hyale misakiensis 同地の既往研究 (井上 2012) でも記録があります。 |
テングヨコエビ科 |
海藻を適当に採るとほとんどモクズヨコエビ科、少しテングヨコエビ科といった感じです。紅藻と褐藻からなる潮間帯の海藻群落だと、関東ではまあこんなもんでしょう。
イソヨコエビ属 Elasmopus の未記載種。 |
イソヨコエビ属はこういった環境でしばしば優占しますが、今回は局所的でした。形態をざっと見ましたがやはり未記載種です。本邦のイソヨコエビ属はたぶん半分かそれ以下の解明度なので、見つかる個体はだいたい種に落ちません。全世界の種に対しては極めて有用な検索表が作成されている (Alves et al. 2016) ので、それ以降に出版された記載論文 (Myers 2014; Gouillieux & Sorbe 2015; Myers & Montazi 2015; Hughes 2015; Myers 2016; Myers et al. 2018; Nakamura et al. 2019; Sir & White 2022) と照らし合わせれば、未記載種の確認は比較的容易です。
よく探すとアマモ Zostera marina が生えている砂底があります。 |
ヤドカリモドキ亜科 Siphonoecetini |
岩礁の間の砂地に生える海藻を探ると採れます。触角が出てないものもたぶん中身は入ってると思いますが見ていません。
しかし、今回の目的はこれらではありません。
材料が揃わない例のグループをそろそろ補完しておきたいと考えていました。
しかし、銚子にあったあの紅藻が見つからないのと、しっかりめの緑藻がないようなので、なかなか厳しい挑戦となりました。
触角に剛毛を密生する系のヒゲナガヨコエビ属 Ampithoe の一種。 |
既知種でこの特徴をもつ種は限られるのですが、ちょっと怪しいので念のため汐ちゃんに隠してもらっています。成長途中の個体か、あるいは…
ヒゲナガヨコエビ属 Ampithoe の未記載種。 |
千葉でメスだけ採れていたあのヒゲナガ(銚子に乗って/最近の銚子)、とうとうオスを得ることができました。じつに4年越し。さすがに銚子固有ではないだろうと思っていましたが、それでも目と鼻の先でやっと見つかる程度なので、全国的に普遍的な種ではないのかもしれません。ざっと形態を見たところ、未記載であることはほぼ確実で、しかも過去の報告から30年以上放置されていた種であることがわかりました。詳細な検討を経てからの話にはなりますが、然るべき場でちゃんと学問のまな板に上げないといけませんね…
何となく狙ったものは採れましたが、オスの個体差を見れるようなレベルではありません。しかし、最干潮時刻の前から東風が強く、そこそこの引きから上げ潮に転じてしまいました。気温が上がってきたらまた考えます。
<参考文献>
— 井上久夫 2012. 茨城県の海産小型甲殻類 III. ヨコエビ相(端脚目,ヨコエビ亜目). 茨城生物, 32: 9–16.
— Myers, A. A. 2014. Amphipoda (Crustacea) from the Chagos Archipelago. Zootaxa, 3754(1).
— Sir, S.; White, K. N. 2022. Maerid amphipods (Crustacea: Amphipoda) from Okinawa, Japan with description of a new species. Zootaxa, 5093(5): 569–583.
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