2022年10月10日月曜日

海じまい(10月度活動報告)

 


 

 久々に桃太郎に会えました。

 最後にここに来たのは2019年の夏とかだった気がします。今回は日本甲殻類学会大会の自由集会から参加のため、連泊の旅行です。

 O大学のキャンパスには初めて立ち入ります。広い。



 オンサイトの学会大会そのものがかなり久し振りです。分類学会もベントス学会もオンラインだけでしたね。

 生物科学学会連合の加盟団体を中心に、これに隣接した分野に対応していると思われる団体を含めて、ホームページで大会や集会の類の情報を公開しているところをざっと確認したところ、水産学会や動物学会など他にもオンサイト開催をしているところはあるようです。リモート参加も「情報を得る」という意味でそれほど悪いものではなかったと思いますが、現場には現場の良さがあるのでオンラインに取って代われれることはあり得ないでしょう。


 さて、せっかくここまで来たので、個人的なヨコエビ空白地帯を埋めたいと思います。




1.河口泥干潟



 塩分はかなり甘めです。

 最干潮時間と学会開始時間を踏まえ、時間的にトライ可能な非直立護岸にアタリをつけただけで、その他の要素は多分に妥協しています。逆に、Googleロケハンの限りでは、市街から1時間圏内には海産ヨコエビの採取可能と思われる未踏ポイントは無いと言えます。


 踏み込んでみると…


 ドロドロだもん。

 ソロチャレンジしていたら最悪落命していたかもしれません。


 それなりに水草の残骸が見られますが、還元化しているというより、河川からのシルト・クレイの供給が盛んなようです。

 ボウズは回避しましたが、ドロクダ・ドロソコ近辺のラインナップで、目新しいものはありませんでした。




2.砂礫海岸


 海に迫る山肌にホテルやレストランがまばらに配されたエリアで、堤防の内側に道路、外に砂浜があります。浜はとにかく汀線方向に距離があって、今回は片道20分程度歩きました。これだけ広いとあまりコストをかけて砂の投入や漂着物除去をやっているようには思えないのでこれがデフォなのでしょうが、打ち上げ海藻はほぼ皆無で、その代わりリールから引き出された磁気テープのようになったアマモが散在しています。潮廻りや時間帯もありましょうが、カラカラのアマモの下にはハサミムシ類だけいて寂しいです。



 瀬戸内でよく見る石英の多い岩と砂ですが、岩の配置に何となくアーティフィシャルな雰囲気を感じます。道路を造る時に切り取った分を海側に置いたのかな。


 海藻少ない。

 沖合いにアマモ場がある感じなんですかね。汀線際の浮遊物も遠くから流れ着くアマモが優占していて、岩には紅藻とカヤモノリのような単純構造の褐藻だけちらほら。


モクズヨコエビ科ほか。

 

エンマヨコエビ上科ほか。丸いのは等脚です。


 主に海藻からしかヨコエビが採れません。このエンマヨコエビ上科ぽいのは恐らく県初記録ですが、同定できる自信はないです。


 打ち上げ物が砂に埋まっている部分からはハマトビムシが見つかりました。

 細かい砂は倉敷のヒゲナガハマトビを彷彿とさせますが、掘ってみて納得。ここはすぐまあまあの大きさの礫でできた層があってとても硬い。小型の動物には掘りにくそうです。


ハマトビ寄生ダニ。


 これも県初ではないでしょうか。幼体だろうけど分類できるんだろうか…


 「せっかくなら採集」なりの結果となってしまった感もありますが、新しいものも見れました。この2Pを回れたことで、公共交通機関でのアクセサビリティなどの条件を踏まえると、行ける範囲の海岸はだいたいカバーしたのではと思っています。

 離島や道があまり通っていない地域など、手付かずとなっている場所のヨコエビリティは未知数ですし、潮下帯ともなれば尚更です。目録の完成にはこのあたりへの対応が鍵となりそうです。




3.前浜砂泥干潟

 O県から戻った後、今年最後の海へと出かけました。

 今回は「潮間帯スタッカー!」の管理人・ひろこりん氏とのコラボ第二弾、干潟編です。


イマジナリーでないことの証拠として同行者の写真を載せます。


 数年前に来た時よりアオサの打ち上げは悪化しているようです。このような状況になる要因はいくつか考えられますが、あまり続くようだと底質は還元化して生物相は単純化していきます。

 沖に向かっていくとワンドのヘリにもかなりアオサが溜まっています。ここまでひどい状況はあまり見たことがない気がします。

 漂っているアオサそのものは面白くないのですが、漂着物の中や表面にはアオサに混じってヨコエビが見られました。


何らかのサキモクズ属 Protohyale と思われる。


これは何のタテソコエビ Stanothoidae だろうか…



イソヨコエビ属 Elasmopus。おそらく未記載。


 このサイトの干潟面でこれだけイソヨコエビ属が採れたのは初めてです。以前も同じような干潟面の構造物をガサガサとやったことはあったのですが、環境が何かしら変化しているのか、今回はだいぶ時間をかけてガサガサしていたのでそのお陰かもしれません。過去に1個体だけ得られたものと同じか分かりません。


 最干潮を迎えてからの上げ潮がやはりエグいですね。潮上帯へ退避。


個人的にタイヘイヨウヒメハマトビムシ Platorchestia pacifica と信じているもの。


 実は今回の主目的はこれらの種ではありません。いちおう採りたいものは採れたので、のちほどひろこりん氏からリリースされるものと思います。乞うご期待。



また来るで!


 


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