2024年6月30日日曜日

書籍紹介『小学館の図鑑NEO POCKET プランクトン』(6月度活動報告その2)

 

 書籍紹介です。

 SNSで話題となっていた『小学館の図鑑NEO POCKET プランクトン クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物(以下、山崎ほか 2024)が、6月25日に発売されました。

 端脚類界隈ではプランクトニックな役割はウミノミ・クラゲノミ・タルマワシなんかに任せている関係で、まずヨコエビは載っていない想定でしたが、タナイスなど底生生物も本邦トップクラスの専門家が監修を行った上でしっかり掲載しているとのことで、ヨコエビも多少の期待ができるかもしれないと考え、おそるおそる購入しました。

 それにしても…安すぎんか?小学館大丈夫か。

 ただ所詮は子供向けの簡易図鑑ですからね。端脚類コーナーが半ページくらいあって、種同定が半分以上合ってれば、まぁ、大手出版社の一般向け書籍としては及第点ではないでしょうか。過去の学習図鑑は惨憺たるものですから。

 前フリはここまでにして。



 山崎ほか (2024) の掲載端脚類は以下の通りです。

  • ニホンウミノミ
  • オオトガリズキンウミノミ
  • オリタタミヒゲ類
  • オナガズキン
  • ツノウミノミ
  • アシナガタルマワシ
  • タルマワシモドキ
  • オオタルマワシ
  • アリアケドロクダムシ
  • フトベニスンナリヨコエビ
  • チゴケスベヨコエビ
  • ニホンドロソコエビ
  • トゲワレカラ
  • ヒヌマヨコエビ
  • モズミヨコエビ
  • マルエラワレカラ


 プランクトンの話題がメインではありますが、ベントスの生息地の説明にもわずかに底生端脚類(アリアケドロクダムシやトゲワレカラ)が登場しています。また、大きさ比較のコーナーでアシナガタルマワシが、チリモンのコーナーにはトガリズキンウミノミが紹介されています。

 それにしても…

 ヨコエビの種の選定が絶妙、かつ同定精度の高さが尋常ではありません。写真で確認できる形質を見る限り、おかしな点は見当たりません。

 エンカウント率が高い浅海普通種を多く収録して実用性に軸足を置きつつ、咬脚など写真同定の余地のある形態形質が発達している種をメインに据えて正確性・検証可能性を担保し、なおかつこれらにこだわらず話題の種もしっかりフォローしています。何が起きたのかと思ったら、K大のK先生が協力されているとのこと。納得の仕上がり。


 結論。

 山崎ほか (2024) は海洋ベントスを扱った一般向け写真図鑑のニュースタンダードと言えるのではないでしょうか。他の分類群の精度は分かりませんが、ヨコエビのクオリティが相当高いことから考えると、全体にわたって細かく注意が払われた、かなりの労作であることが窺えます。1冊1,100円はさすがに安すぎるのではないでしょうか。特にヤバいと思ったのは巻末付近にある系統樹。スーパーグループの概念に基づいていて、監修に名を連ねている錚々たるメンバーの本気度が伝わってきます。

 残念な点を挙げるとすれば、学名の併記がないようです。こういった一般的図鑑の仕様上仕方ないですが、分類体系が確定的とはとても言えない分類群をこれだけふんだんに扱っているので、良い写真を載せながらも結局何を示しているのか分からなくなる展開は予想されます。この点では、一般向け写真図鑑の分野でいえば、丸山 (2022) に分があるように思えます(陸棲ヨコエビの掲載あり)

 何はともあれ、こういった専門家の膨大な知識や技術を子供に惜しげもなく伝える図鑑が低価格で出回ることは、非常に良いことです。各社がこういった方面に参入し、名作が生み出され続けることを願います。



<参考文献>

丸山宗利(総監修)2022.『学研の図鑑 LIVE(ライブ)昆虫 新版』.学習研究社,東京.316pp. ISBN978-4-05-205176-0

山崎博史・仲村康秀・田中隼人(指導・執筆) 2024. 『小学館の図鑑NEO POCKET プランクトン クラゲ・ミジンコ・小さな水の生物』.小学館,東京.176pp. ISBN9784092172975


<補遺>

  • (I-vii-2024)タナイスを担当された角井先生が、掲載種の学名を別途補完されたようです。これに倣って以下の通り端脚類の学名を補完します。
  • ニホンウミノミ Themisto japonica
  • オオトガリズキンウミノミ Oxycephalus clausi 
  • オリタタミヒゲ類 Platysceloidea fam. gen. sp.
  • オナガズキン Rhabdosoma whitei
  • ツノウミノミ Phrosina semilunata
  • アシナガタルマワシ Phronima atlantica 
  • タルマワシモドキ Phronimella elongata
  • オオタルマワシ Phronima sedentaria
  • アリアケドロクダムシ Monocorophium acherusicum
  • フトベニスンナリヨコエビ Orientomaera decipiens 
  • チゴケスベヨコエビ Postodius sanguineus 
  • ニホンドロソコエビ Grandidierella japonica
  • トゲワレカラ Caprella scaura
  • ヒヌマヨコエビ Jesogammarus (Jesogammarus) hinumensis
  • モズミヨコエビ Ampithoe valida
  • マルエラワレカラ Caprella penantis(Sタイプ)

2024年6月29日土曜日

まんが王国はヨコエビ王国たるか(6月度活動報告)

 

 日本動物分類学会大会に参加しました。

 論文化されていない未発表の内容も含まれるため、発表についてこの場で言及することは避けますが、第n回全日本端脚振興協会懇親会(仮称)や、第n回日本端脚類評議会和名問題対策チームミーティング(仮称)、サシ飲みなどが併催され、盛況を極めました。牛骨ラーメンと猛者エビとらっきょううまい。




日本端脚審議会和名分科会(仮称)報告

 このたび、本邦に産しないヨコエビの分類群に対して個別の和名は提唱せず、学名のカタカナ表記揺れへの配慮を行うという今後の方針が示されました。属では以下のような先例があります。

  • タリトルス Talitrus (朝日新聞社 1974)
  • ニファルグス Niphargus (朝日新聞社 1974)
  • アカントガンマルス Acanthogammarus (山本 2016;富川 2023)
  • ディケロガマルス Dikerogammarus(環境省 2020)
  • アマリリス Amaryllis(大森 2021)
  • オルケスティア Orchestia(大森 2021)
  • ヒヤレラ Hyalella (大森 2021)
  • プリンカクセリア Princaxelia(石井 2022;富川 2023)
  • ヒアレラ Hyalella (広島大学 2023;富川 2023)
  • ディオペドス Dyopedos(富川 2023)
  • ミゾタルサ Myzotarsa(富川 2023)
  • パキスケスィス Pachyschesis(富川 2023)
  • ガリャエウィア Garjajewia(富川 2023)

 ラテン語をバックグラウンドとする学名に画一的な読みを与えカタカナで表記するのは言語学的に難しい部分がありそうですが、幸い日本はローマ字に親しんでいるので、古典式に近い読みを無理なく直感的に発音できる素地はある気がします。

 現状既に Hyalella属 については「ヒアレラ」(広島大学 2023;富川 2023)と「ヒヤレラ」(大森 2021)という異なる読みがあてられており、今後はこういった差異の調整が必要となってくるものと思われます。

 また、過去に日本から報告されていた種が移動してしまい、和名提唱後に本邦既知種が不在になったグループというのもあります。移動先の分類群が、新設されたり本邦初記録だったりすれば和名を移植すれば事足りますが、既に和名があった場合、元の分類群に和名が取り残される感じになります。厳密には和名を廃してカタカナ読みを当て直すべきですが、分類というものはコロコロ変わるので、また戻ってきたり、別の種が報告されたりする可能性もあり、都度改めて和名を提唱するというのは無用な混乱に繋がる気がします。この辺をどう扱うかは更なる議論が必要かもしれません。

  • シンヨコエビ科 Neoniphargidae:コジマチカヨコエビ Eoniphargus kojimai が含まれていたが、後の研究で ナギサヨコエビ科 Mesogammaridae へ移されたため、本邦未知科となった。
  • カワリヒゲナガヨコエビ属 Pleonexes:コウライヒゲナガ Ampithoe koreana が含められていたが、後の研究でヒゲナガヨコエビ属へ移されたため、本邦未知属となった。

 なお、本邦に自然分布しないと判明しているグループ(フロリダマミズヨコエビ、ツメオカトビムシなど)にも和名は提唱されています。将来的に日本への侵入・定着が起これば、ディケロガマルスなどにも和名が提唱される可能性があります。



T県F海岸

 学会は午後からなので、午前は採集を行うことにします。潮回りは気にせず、ハマトビムシを狙う感じです。

 

とても細かな白砂です。
どうやら花崗岩の風化砕屑物が形成している砂浜のようです。


Trinorchestia sp.
恐らく今日本で一番種同定が困難、
というか不可能なハマトビムシでしょう。
完璧な標本が手元にあっても無理です。
詳細はこちら


メスばかりでよくわかりませんがおそらくヒメハマトビムシ属Platorchestia?
背中に見たことの無いバッテンがついてます。

 なかなか巡り会えずボウズの予感に打ち震えましたが、汀線際の濡れている漂着物の周りにいました。房総や熱海のパターンを思い出します。しかし、ヒゲナガハマトビムシとヒメハマトビムシが混ざっているのはあまり見た覚えがありません。

 他のハマトビムシは採れず。バスの本数がヤバいので撤収。





T県U海水浴場

 学会後に最干潮となるので、夕方から採集を行うことにします。といっても日本海側で小潮なので、ちょっと出れば御の字です。

 天気も微妙な感じで駐車場に若干の余裕が感じられましたが、展望台には人が多く、ヨコエビスト一行はかなり浮き気味…。



 小潮でしたが、引く範囲でも様々なタイプの基質を見られる、変化に富む海岸でした。少し歩いただけでヨコエビ相ががらりと変わる、なかなかポテンシャルの高い自然海岸といえます。


Ampithoe changbaensis は褐藻についていました。
近々和名を提唱したいです。


コウライヒゲナガ Ampithoe koreana
磯的環境の緑藻上だとよく見かけます。


ユンボソコエビ属 Aoroides
なぜか状態よく採れました。


何らかの カマキリヨコエビ属 Jassa


Parhyalella属が結構採れました。
本属の日本における分布情報は文献として出版されたことはないはず。
ちなみに江ノ島で採れた本属は未記載種だったので、
ここのも怪しいです。


日本海沿いだけどオス第7胸脚の太さからすると
タイヘイヨウヒメハマトビムシ Platorchestia cf. pacifica と思われる。
未記載だとしても驚きはない。 


ニホンスナハマトビムシ Sinorchestia nipponensis でした。

 10科13属くらいは採れました。大潮の時はさぞかし、といったところ。ヨコエビ王国の資格あり、と言ってよいでしょう。



あとこれなに…?



<参考文献・サイト>

朝日新聞社 [編] 1974. 週刊世界動物百科 (181). 朝日新聞社.

広島大学 2023.【研究成果】ペルー北部の温泉から新種ヨコエビ発見. (プレスリリース)

石井英雄 2022.『深海の生き物超大全』.彩図社,東京.359 pp. [ISBN: 9784801305861]

大森信 2021. 『エビとカニの博物誌―世界の切手になった甲殻類』. 築地書館, 東京. 208pp. ISBN978-4-8067-1622-8 

環境省 2020. 報道発表資料「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定 について. (2020年09月11日)

富川光 2023. 『ヨコエビはなぜ「横」になるのか』. 広島大学出版会, 東広島. 198pp. ISBN:978-4-903068-59-6

山本充孝 2016. (280)極寒 バイカル湖の生き物. 2016年12月10日 00時44分 (10月17日 13時23分更新). 中日新聞.

2024年5月30日木曜日

LNO敗れる(5月度活動報告)

 

 今回はボウズかました話です。


【I海水浴場】

 例の未記載種の新鮮なサンプルが必要になりました。ヨコエビネットワークの情報に基づくと、今ここにいるはずです。


セーリングのサークルとかが活動しているようですね。


 なんというか…

 場違い感が…


 凝灰岩砕屑物を主体とすると思われる砂地をLNO法(ランドリーネットオペレーション)でガサゴソすると、よく分からない細いタナイスが大量に採れますが、ヨコエビは全くといっていいほど採れません。

 さすがに来た甲斐がなさすぎるため、ウミウチワ Padina をガサってみます。


コウライヒゲナガ Ampithoe koreana


カマキリヨコエビ科

 その他諸々。同定できそうな状態のサンプルも採れました。機会があればファウナの記述もできそう。

 しかし、目的のヨコエビは得られず。



【S海水浴場】

 ここにはいないそうですが、この近さで分布してないのは不自然なのと、昨日採れてない場所でまた採れなかった場合の精神的ダメージは計り知れないため、味変します。


ツバサゴカイ Chaetopterus のものと思われる棲管が大量に。
樋之口ほか(2024)には記載がなかったような。


 かなり遠浅ですね。

 火山岩質の黒っぽい細砂のリップルマークの畝の間に、河川から供給される凝灰岩系の淡色の粗砂が溜まっている感じです。


ドロソコエビ属 Grandidierella


 樋之口ほか(2024) にもニッポンドロソコエビの報告はありますが、学名の authorship と年との間にカンマがないのは気になるポイントですね。

 あとはクチバシソコエビ科 Oedicerotidae が大量に。今のところ属までは落としてません。
 せっかくなので検索表を載せておきます。


世界のクチバシソコエビ科の属までの二又式検索表 

(Barnard and Karaman 1991, Bousfield and Chevier 1996 に基づく)

1. 大顎臼歯部は粉砕形 … 20
— 大顎臼歯部は粉砕形でない … 2
2. 第2咬脚ははさみ形 … 3
— 第2咬脚は亜はさみ形 ... 6
3. 第3,4胸脚の指節は縮退する … 4
— 第3,4胸脚の指節は通常形 … 5
4. 第7胸脚の基節は後縁端部に葉状突起を具える … アメリカサンパツソコエビ属 Americhelidium
 第7胸脚の基節は後縁端部に葉状突起を欠く … サンパツソコエビ属 Synchelidium 
5. 第2咬脚の前節の半分までがはさみ形となる … Chitonomandibulum
— 第2咬脚の前節の1/3未満までがはさみ形となる … ムカシサンパツソコエビ属 Eochelidium 
6. 第1咬脚の前節は延伸せず、延伸する第2咬脚の前節より明らかに短い … 7
— 第1咬脚と第2咬脚の前節はおおむね同長 … 8
7. 第1咬脚は transeverse … Monoculodopsis
—  第1咬脚は亜はさみ形 … Hartmanodes
8. 第1,2咬脚は腕節に葉状突起を具える … 10
— 第1,2咬脚は腕節に明瞭な葉状突起を欠く … 9
9. 第1触角柄部第1節は歯状突起を具える … Cornudilla 
 第1触角柄部第1節は歯状突起を欠く … Aborolobatea 
10. 大顎髭を欠く;第1,2咬脚は発達しない … Machaironyx 
— 大顎髭を具える;第1,2咬脚は強壮 … 11
11. 第1咬脚の腕節の葉状突起は短い/前節をほとんど覆うことはない … 12
— 第1,2咬脚の腕節の葉状突起は長く前節を覆う … 13
12. 腕節の葉状突起は、第1,2咬脚において互いにほぼ同長 … Oediceros 
— 腕節の葉状突起は、第2咬脚より第1咬脚のほうが遥かに短い … Paroediceros 
13. 大顎髭の第3節は第2節とほぼ同長 … 14
— 大顎髭の第3節は第2節より短い … 15
14. 頭頂を具える;第3,4胸脚は長節側面に剛毛列を具える … Finoculodes 
— 頭頂を欠く;第3,4胸脚は長節側面に剛毛列を欠く … Arrhinopsis 
15. 第1,2咬脚の腕節は前縁が伸長し前節とほぼ同長となる、腕節の葉状突起は短く前節の掌縁に届かない … 16
— 第1,2咬脚の腕節は前縁が短い/不明瞭、腕節の葉状突起は伸長して前節の掌縁に達するか、あるいはこれを越える… 17
16. 第1,2咬脚の掌縁は指節と同長、後角は鈍角 … Imbachoculodes 
 第1,2咬脚の掌縁は指節より短い、後角は不明瞭 … Hongkongvena 
17. 顎脚の外板は顎脚髭第1節の端部に達する;第1,2咬脚の腕節の後縁端部に葉状突起を欠く;第3,4胸脚の指節は前節より長い … Sinoediceros 
— 顎脚の外板は顎脚髭第1節の端部を越える;第1,2咬脚の腕節の後縁端部に葉状突起が伸長する;第3,4胸脚の指節は前節より明瞭に短い … 18
18. 第1触角柄部第1節は剛毛を欠く;大顎切歯部は歯状突起がよく発達する;尾節後縁は弯入しない … 19
— 第1触角柄部第1節は剛毛を具える;大顎切歯部は歯状突起を欠く;尾節後縁は弯入する … Perioculopsis 
19. 第1,2咬脚の腕節の前縁は前節長の約20%の長さ ... カンフーソコエビ属 Perioculodes 
— 第1,2咬脚の腕節の前縁は短い … Orthomanus 
20. 第2咬脚ははさみ形 … ハサミソコエビ属 Pontocrates
— 第2咬脚は亜はさみ形 … 21
21. 第1咬脚の掌縁は transverse … Carolobatea 
—  第1咬脚は強壮あるいは掌縁は鈍角 … 22
22. 大顎切歯部の歯状突起はよく発達する… 29
— 大顎切歯部の歯状突起は発達しない … 23
23. 第1咬脚は第2咬脚より大きい;第1触角柄部第1,3節は同長 … Monoculopsis
— 第1咬脚は第2咬脚より短い;第1触角柄部第3節は第1節より短い … 24
24. 第3あるいは第4底節板後部は弯入する … 25
— 第3および第4底節板後部は弯入しない … 27
25. 第1触角柄部第2節は第1節より短い … 26
— 第1触角柄部第2節は第1節と同長 … Arrhis 
26. 頭頂は尖り、第1触角柄部第1節の半分に届かない … Aceroides 
— 頭頂は伸長し、第1触角柄部第1節端部に到達する ... Rostroculodes
27. 第1,2咬脚は退化的;複眼は背面に円形を形作る  … Gulbarentsia
— 第1,2咬脚は退化的;複眼は背面に円形を形作らない、あるいは複眼を欠く ... 28
28. 複眼は縮退するかこれを欠く;大顎髭第2節は直線的 … ツッパリソコエビ属 Bathymedon
— 複眼はよく発達する;大顎髭第2節は湾曲する … Westwoodilla 
29. 第2尾節副肢先端は、第3尾肢柄部の端部に届く;第3尾肢は長大 … Halicreion
— 第2尾節副肢先端は、第3尾肢柄部の端部を明瞭に越える;第3尾肢は通常形 … 30
30. 第2咬脚の前節は第1咬脚の前節より短く、細長い … リクスイクチバシソコエビ属 Limnoculodes 
— 第2咬脚の前節は第1咬脚の前節より長いか、あるいは同長 … 31
31. 第5胸脚の長節後縁は伸長し腕節を覆う … 32
— 第5胸脚の長節は腕節を覆う突起を欠く … 33
32. 第5胸脚の長節は後縁端部に、腕節へ覆いかぶさる葉状突起を具え … Parexoediceros 
— 第5胸脚の長節は端部に突出部を欠く … Kroyera
33. 胸節背面に多数の隆起をもつ … 34
— 胸節背面に突起を欠く … 35
34. 複眼は大きく頭部背面で相接し、頭頂内へは入り込まない … Acanthostepheia
— 複眼は小さく頭頂内に収まる、あるいはこれを欠く ... Oediceroides
35. 左右の複眼は完全に癒合し、頭部の背面に位置する  … 36
— 複眼は癒合しない、あるいは癒合しても頭頂内に収まる、あるいはこれを欠く … 40
36.  第4底節板の葉状突起は発達が弱く鈍い;尾節板は後縁に切れ込みをもたず全縁  … 37
— 第4底節板は鋭く尖る葉状突起を具える;尾節板は後縁に切れ込みを具える … Paroediceroides 
37. 第1,2咬脚の腕節後縁端部の葉状突起は小さい …  Paraperioculodes 
— 第1,2咬脚の腕節後縁端部の葉状突起は、前節の掌縁後角に達する … 38
38. 第1咬脚の腕節は大きく、細長い … Pacifoculodes
— 第1咬脚の腕節は小さく、幅広い … 39
39. 第3,4胸脚の長節は腕節より長いか同長;第7胸脚の基節後角の葉状突起は不明瞭か、あるいはこれを欠く … Deflexilodes
— 第3,4胸脚の長節は腕節より長い;第7胸脚の基節は、座節を越える明瞭な葉状突起を後角に具える … Ameroculodes 
40. 第4底節板の後角は大きく鈍い葉状突起を具える … Oedicerina 
— 第4底節板の後角は大きな突出部を欠くか、あるいは大きく尖った葉状突起を具える … 41
41. 第2小顎の外板は強壮な棘状剛毛を具える … Anoediceros(一部)
— 第2小顎の外板は剛毛を欠く … 42
42. 第1触角は短く痕跡的/全長は第2触角柄部第5節を越えない;第2触角柄部は伸長し、湾曲した長剛毛を具える … 43
— 第1触角全長は第2触角柄部第5節を明らかに越える;第2触角柄部は湾曲した長剛毛を欠く … 45
43. 頭頂はよく発達する;第4底節板の後角は丸みを帯び葉状突起は不明瞭 ... Oediceroides
— 頭頂は痕跡的;第4底節板の後角は尖る … 44
44. 第1触角の柄部第1,2節は伸長する;第2触角の柄部は長剛毛を欠く;第2小顎の外板は剛毛を具える;第4底節板の葉状突起の突出は弱い … Anoediceros(一部)
— 第1触角の柄部第1,2節は短い;第2触角の柄部は長剛毛を具える;第2小顎の外板は剛毛を欠く;第4底節板は拡張する … Oediceropsis
45. 第1触角の柄部第3節は第1節より短い … クチバシソコエビ属 Monoculodes
— 第1触角の柄部第3節は第1節と同長 … 46
46. 第1,2咬脚の腕節葉状突起は前節に覆いかぶさる … Monoculopsis
— 第1,2咬脚の腕節葉状突起は前節に覆いかぶさらない … 47
47. 頭頂は前方へ伸長する … Paramonoculopsis 
 — 頭頂は伸長しない … Lopiceros

 クチバシソコエビも科としては 樋之口ほか(2024) に記録があります。

 なお、今回は上記グループ以外に文献記録がないと思われる属も見つかったので、K大での解析をお願いする予定です(丸投げ)。

 この地でもLNO法で採集を試みましたが、よりサンプルの損傷を防ぎ効率的に採捕する方法を編み出しました。これはヨコエビネットワークで共有していきたいと思います。

 東からの風が止まず、上げ潮はかなり食い気味に訪れました。潮上決戦にもつれこむことにします。


第7胸脚の長節,腕節の太さからすると、 
 タイヘイヨウヒメハマトビムシ Platorchestia pacifica 
 のような気がします。

 あまり大きな個体は採れませんでした。

 海岸に設置された環境学習施設のスタッフによると、ここの「干潟生物」の定義は厳密な干潟の定義に対して忠実に設定され、「潮間帯砂地のもののみ」に限定しているとのことで、ハマトビの類は「干潟生物ではない」という位置づけのようです。ただ 樋之口ほか(2024) は周辺の湿地のファウナも含んでいるようで、ハマトビの類もしっかり分類ができれば今後改訂版に掲載される可能性はあるかと思います。


 やはり狙ったヨコエビが採れなかったことには忸怩たる思いがありますが、久々に未踏の地で干潟を堪能できて良かったです。いるはずのヨコエビを採集できないという事態は回避していきたいので、採集方法や微環境選定など見直す精度の向上を図りたいと思います。



<参考文献>

— Barnard, J. L.; Karaman, G. S. 1991. The Families and Genera of Marine Gammaridean Amphipoa (Except Marine Gammaroids). Records of Australian Museum supplment 13, part 1,2, 866p. <part 1> <part2>

Bousfield, E. L.; Chevrier, A. 1996. The Amphipod Family Oedicerotidae on the Pacific Coast of North America. 1. The Monoculodes & Synchelidium Generic Complexes: Systematics and Distributional Ecology. Amphipacifica, 2(2): 75–148.

樋之口蓉子・田島奏一朗・是枝伶旺・本村浩之 (編著) 2024. 『改訂版錦江湾奥干潟の生き物図鑑』. 特定非営利活動法人くすの木自然館, 姶良市. ISBN978-4-600-01440-7


2024年4月8日月曜日

ヨコエビがいない(4月度活動報告その2)

 

 科博に行ってきました。


企画展「知られざる海生無脊椎動物の世界」


 3月半ばから開催されているこの展示、チラシからも口コミからも端脚類の噂は聞こえてこない。海産無脊椎マイナー分類群の権化・ヨコエビがまさかハブられているというのか?(権化なのか?)行ってみないとわからないので、現場を確認してみたわけです。


…おや、いません。
 
絶妙なバランス感覚の上に成立しているこの解説。
たしかに”脚”は1節あたり一対だが、”肢”は二対ある。






フクロエビ上目の親戚を表敬訪問。



ヨコエビいました。




 どうやら寄生虫の話題の中の挿絵として登場する以上の役割はないらしいです。ヨコエビ上科っぽい。おそらく鉤頭虫の生活環を意識しているのでしょう。



最後に真理が書かれていた。



 今回一番の目玉は、やはりこのアリアケカワゴカイのシンタイプでしょう。1個体のみの展示ではありますが、十分すぎる。ラベルは本物か、あるいは本物を忠実に複製したもののようです。それにしてもすごい。
 児島湾というのは、埋め立てにより土地を獲得してきた岡山市の成り立ちを端的に表している場所です。湾奥は完全に底質が死んでいて、塩分なんかも昔とはだいぶ違っているのだろうなと思います。現地を訪れた時のことを思い出しながら展示を見ていました。



この冊子、展示内容がぎゅっとまとまってるのに無料です。
正気とは思えないぜ(誉め言葉)。


 展示の中にもありましたが、門の数でいうとむしろ「非海産」「脊椎動物」という動物のカテゴリのほうがマイナーで、「海産無脊椎動物」のほうが遥かに多様で基盤的なんですよね。そういった生物の見方を提案する、ありそうでなかった展示だと思います。
 膨大な数の門を扱う関係で、節足動物門のごく一角を成すに過ぎない我らが端脚目の存在感が薄まっているのは必然といえましょう。ちょっと残念な気持ちもありましたが。


 さて、件のヨコエビ(が含まれる)イラストの右下に注目してほしいのですが、提供は目黒寄生虫館の倉持館長ですよね。ということは、目黒寄生虫館に元図があるってコト…?


ざっと15年ぶりですかね。


 2012年頃に2階の大リニューアルをしたみたいですね。その後も展示内容はこまめに更新されていて、昔訪れた時とはだいぶ違うようです。
 子細に覚えていたわけではないけど、確かに目新しい感じが。

 あの図は、ありませんね。
 昔はあったのかもしれませんが、何しろ当時はヨコエビに従事する前なので、気づくことはなかったでしょう。


クジラジラミを表敬訪問。


 相変わらず無料でやってるとのことで、展示室に人が溢れているというのに売店からスタッフがすぐ居なくなったり、管理の手がちゃんと回っていないようです。あまりにひどいと思ったので、つい感情的になり、募金箱に1000円を突っ込んでしまいました。
 

 まぁ、こういう時もあります。
 

2024年4月1日月曜日

2024年4月1日活動報告

 

 端脚類にまつわる楽曲は以前紹介しましたが、今回は端脚類をコンセプトに含むバンドというのを採り上げたいと思います。


 それは、1970年台からアメリカを拠点に活動した「Pods」(ポッズ)です。

 ジャンルとしてはサイケデリックロックとファンクのブレンドとされ、近未来的なコンセプトを貫いたエレクトリックミュージックの実験者でした。メンバーはオリオン・ガストロポッドマルス・ストマトポッドといった具合に、天体+生物という組み合わせの名前をもち、ルナ・アンフィポッドが端脚類担当ということになります。



[左より] ソラ・アイソポッド(ドラム),ルナ・アンフィポッド(キーボード),オリオン・ガストロポッド(リーダー兼メインボーカル),マルス・ストマトポッド(ギター),メテオ・コペポッド(ベース)


 国内外で有名なのは、1980年に発売された5枚目のアルバム「Stellar Morphology」で、全米200万枚のヒットを飛ばしました。

 また、1985年7月にロサンゼルスで開催されたライブ「Jagged Orbit: Kaleidoscopic Exoskeleton」は、2万人の熱狂的なファンを集めました。この伝説的ライブでは、途中の演出で海産無脊椎動物をモチーフにしたコスチュームをまとったダンサーが登場したことも有名で、その中にはヨコエビっぽいものもいます。


サード・ディスコグラフィー「Ethereal Articulation」(1977年)


 そんな「Pods」ですが、音楽スタイルが時代とマッチせず興行に陰りが出始めたこと、環境活動へのメッセージ性を強めたことで純粋な音楽ファンが離れて徐々に勢いを失い、リーダーのオリオンがスピリチュアルへの傾倒を深めて放浪の旅に出たことが決定打となり、1990年台の早い時期に音楽シーンから姿を消してしまいました。

 しかし、サイケデリックロックのブームが再燃するたび、「Pods」は後の時代の聴衆に再発見され続けているようです。今後も「Pods」の伝説は続いていくのではないでしょうか。
















 というわけで、今年もエイプリルフールでした。ただ、端脚類をモチーフとしたバンドが本当に存在しないとは言い切れないので、今後も捜索は続けていきます。

 なお、本稿の画像作成にはChatGPTおよびCraiyonのサポートを得ました。



2024年3月4日月曜日

2024年のヨコエビギナーへ(文献紹介第十弾)

 

  今年もヨコエビの知見を得るのに有用な文献を紹介します。

 

(第一弾)
— 富川・森野 (2009) ヨコエビ類の描画方法
— 小川 (2011) 東京湾のヨコエビガイドブック
— 石丸 (1985) ヨコエビ類の研究方法
— Chapman (2007) "Chapman Chapter" In: Carlton Light and Smith Manual (West coast of USA)
— 平山 (1995) In: 西村 海岸動物図鑑
— Barnard & Karaman (1991) World Families and Genera of Marine gammaridean Amphipoda

(第二弾)
— Lowry & Myers (2013) Phylogeny and Classification of the Senticaudata
— World Amphipod Database / Amphipod Newsletter
— 富川・森野 (2012) 日本産淡水ヨコエビ類の分類と見分け方
— Arimoto (1976) Taxonomic studies of Caprellids
— Takeuchi (1999) Checklist and bibliography of the Caprellidea
— 森野 (2015) In: 青木 日本産土壌動物
【コラム】文献情報のルール

(第三弾)
— 有山 (2016) ヨコエビとはどんな動物か
— 森野・向井 (2016) 日本のハマトビムシ類
— Tomikawa (2017) Freshwater and Terrestrial amphipod In: Species Diversity of Animals in Japan
— Bousfield (1973) Shallow-Water Gammaridean Amphipoda of New England
— Ishimaru (1994) Catalogue of gammaridean and ingolfiellidean amphipod
— 椎野 (1964) 動物系統分類学
【コラム】ヨコエビの分類にはどこから手を付けるか

(第四弾)
— Lowry & Myers (2017) Phylogeny and Classification
— Bellan-Santini (2015) Anatomy, Taxonomy, Biology
— Hirayama (1983–1988) West Kyushu
— 井上 (2012) 茨城県のヨコエビ
— 永田 (1975) 端脚類の分類
— 菊池 (1986) 分類検索, 生態, 生活史
【コラム】文献の入手

(第五弾)
— Arfianti et al. (2018) Progress in the discovery
— Ortiz & Jimeno (2001) Península Ibérica
— Miyamoto & Morino (1999) Talorchestia and Sinorchestia from Taiwan
— Miyamoto & Morino (2004) Platorchestia from Taiwan
— Morino & Miyamoto (2015) Paciforchestia and Pyatakovestia
— 笹子 (2011) 日本産ハマトビムシ科
【コラム】野良研究者

(第六弾)
— Lecroy (2000–2011) Illustrated identification guide of Florida
— Cadien (2015) Review of NE Pacific
— Copias-Ciocianua et al. (2019) The late blooming amphipods
— Spence Bate & Westwood (1863) British sessile-eyed Crustacea
— 青木・畑中 (2019) われから
— Bousfield & Hoover (1997) Corophiidae
【コラム】ヨコエビの同定

(第七弾)
— 岡西 (2020) 新種の発見
— Conlan (1990) Revision of Jassa 
— Ariyama (1996) Four Species of Grandidierella 
— Ariyama (2004) Nine Species of Aoroides 
— Ariyama (2007) Aoridae from Osaka and Wakayama
— Ariyama (2020) Six species of Grandidierella
【コラム】ヨコエビリティの探索

(第八弾)
— Hughes & Ahyong (2016) Collecting and processing
— Буруковский & Судник (2018) Атлас-определитель Балтики и Калининградской 
— Гурьянова (1938) Gammaroidea заливов Сяуху и Судухе 
— Гурьянова (1951) Бокоплавы морей СССР
— Цветкова (1967) Бокоплавов залива Посьет
— Takhteev et al. (2015) Checklist of the Amphipoda from continental waters of Russia
【コラム】海外の司書さんを$29でパシる方法

(第九弾)
— 有山 (2022) ヨコエビガイドブック
富川 (2023) ヨコエビはなぜ「横」になるのか 
— Bousfield & Hendrycks (1995) Eusiroidea in North American Pacific I 
— Гурьянова (1938) Amphipoda, gammaroidea Zajibob Siaukhu i Sudzukhe
— Гурьянова (1951) Бокоплавы морей СССР
— Tomikawa et al. (2017) enigmatic groundwater amphipod Awacaris kawasawai revisited
【コラム】ヨコエビ採集の安全対策

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<今年の新作>

Morino H. 2024. Variations in the characters of Platorchestia pacifica and Demaorchestia joi (Amphipoda Talitridae, Talitrinae) with revised diagnoses based on specimens from Japan. Diversity, 16(31). 

 このブログでもたびたび取り上げてきた「ヒメハマトビムシ問題」について、本邦ハマトビムシ上科の権威・森野先生によるレビューが出ました。膨大な仕事量が伺えますが、本文はかなりコンパクトにまとまっています。標本の検討が国内の2種のみに留まっている点と、遺伝子の解析を行っていない点については、更なる研究が俟たれる状態といえますが、日本全国のかなりの地点を網羅していることから、地域個体群の種同定においてかなり心強い資料になるかと思います。

 本研究では、Lowry and Myers (2022) で記載された Demaorchestia hatakejima を、記載の根拠となったスケッチと同ロットの標本を用いて検証し、タイヘイヨウヒメハマトビムシ Platorchestia pacifica の新参シノニムとするのが妥当との結論を下しています。また、同じ論文で記載された D. mie について、有効性の否定には及んでいませんが、同じ特徴を具える個体は国内から得られなかったと述べています。本邦の「ヒメハマトビムシ種群」は完全に解明されたとは言えないまでも、専らタイヘイヨウヒメハマトビムシとクシヒメハマトビムシ Demaorchestia joi の2種が優占すると考えてよさそうです。この2種については笹子 (2011) や森野・向井 (2016) で既に国内分布の検討が行われているため、これら資料を組み合わせることで地域個体群の理解はさらに深まるものと思われます。また、本論文の出版により「ヒメハマトビムシ」という種名のヨコエビは消滅し、この和名は種群名あるいは便宜名となりました。

 日本産および採集される可能性がある7種について、二又式検索表を提供。ただし、かなりあっさりしているため、標本の同定に際しては、本文や他の文献も参考にして、複数の角度から検討したほうがよいです。本文は無料で読めます。



<アゴナガヨコエビ科の分類にオススメ>

 2022年10月よりアゴナガヨコエビ科担当に就任しましたが、まだあまり仕事をもらってません。粛々と情報発信してまいります。


— Bowman, T. E. 1974. The "Sea Flea" Dolobrotus mardenis n. gen.n. sp., A Deep-Water Amarican Lobster bait Scavenger (Amphipoda, Eusiridae). Proceedings of the Biological Society of Washington87(14): 129–138.

 6属の検索表を掲載。Djerboa属,Dolobrotus属,Schraderia属はアゴナガヨコエビ科から変更ありませんが、Leptamphopus属,Oradarea属はウラシマヨコエビ科、Bouvierella属のみテンロウヨコエビ科に移っています。



<イソヨコエビ属の分類にオススメ>

— Alves, J.; Johnsson, R.; Senna, J. 2016. On the genus Elasmopus Costa, 1853 from the Northeastern Coast of Brazil with five new species and new records.  Zootaxa4184(1): 1–40.

 ブラジルからイソヨコエビの新種を記載した論文ですが、当時の世界の既知102種全てが検索表に落とし込まれており、非常に重要な資料です。ただし、なぜかNo.8が無いなど一部不可解な部分があるため注意が必要です。



<トゲホホヨコエビ属の分類にオススメ>

 Barnard, J. L. 1972. Gammaridean Amphipoda from Australia, Part I. Smithsonian Contributions to Zoology, 103: 1–333.

 50年前の文献ですが、今なおトゲホホヨコエビ属の同定に有用な資料です。入手の敷居が低いのも嬉しいです。



 Kim Y. H.; Eun Y.; Lee K. S. 2006. Two New Records of Dexaminidae (Crustacea: Amphipoda) from Korea. The Korean Journal of Systematics Zoology22(1): 37-49.

— Kim Y.-H.; Lee K.-S. 2008. A new species of the genus Paradexamine (Crustacea: Amphipoda: Dexaminidae) from Korea. Animal Cells and Systems12(3): 157–163. 

 韓国に産するトゲホホヨコエビ属のキーが掲載されています。日本近海で本属を同定するには欠かせない資料といえます。



<参考文献>

— Lowry, J. K.; Myers, A. A. 2022. Platorchestiinae subfam. nov. (Amphipoda, Senticaudata, Talitridae) with the description of three new genera and four new species. Zootaxa, 5100: 1–53.

森野浩・向井宏 2016. 砂浜フィールド図鑑(1)日本のハマトビムシ類. 海の生き物を守る会, 京都市(*). (*当時)

笹子由希夫 2011. 日本産ハマトビムシ科端脚類の分布と分子系統解析. 三重大学修士論文.

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コラム:新種ヨコエビの「見つけ」方

 近年、新種発見がブームとのことなので(馬場・福田 2022)、ヨコエビの新種を「発見する」方法をご案内します。


1.新種を「発見する」には

 馬場・福田 (2022) の中でも紹介されていますが、新種「発見」の近道はやはりある程度の分類群を絞り込んでおくことだと思います。漠然と珍しそうな生物を蒐集しても、そのジャンル(分類群)の範囲が広ければ広いほど、新種として記載されうるかを検討する手間は膨大になります。しかし、幸か不幸か世の中には手つかずの分類群がゴロゴロしており、人が必ず避けて通ることで、逆に目立つことがあります(目録においてsp.やcf.が多い等)。そこを意図的に狙うことで、未記載種にエンカウントする確率はぐんと上がるわけです。
 なお、馬場・福田 (2022) や件の NHK の特番では、新種の発見にあたっては専門家の目に留まるきっかけが必要であり、そのためには写真をネットにバンバン上げよと勧めているように見えるくだりがあります。確かに SNS や AI同定プラットフォーム などに上がっている写真には未記載種やレア種がゴロゴロしていて、眺めているだけで楽しいですし、実際に記載に繋がった例もあります(私もツイッターでしか知り得なかった分布情報がきっかけの新種記載案件を抱えています)。しかし、全ての分類群の専門家がネット上をまめに巡回しているわけではありませんし、生物の写真をネットに上げる時は適宜生息地情報をぼかすなどそれなりの配慮が必要で、不特定多数へ安易に推奨すべきものとは思えません。
 無闇矢鱈なアップロードは避け、興味のある分類群の写真や話題を地道に上げながら過ごしていれば、コミュニティが見つかるのではと思います。そこから詳しい人に繋がったり、同好会や学会のような組織を紹介してもらい、そこに持ち込むことで、記載への道が拓けると思います。

 また、ネット上ではしばしば誤同定が見受けられます。誤同定はネットの普及と無関係に紙の出版物だけの世界でも普通に起こることで、それそのものは仕方ないことですが、中には「教えてあげる姿勢だけ見せ合えば本当の名前はどうでもいい」とか「自分が知っている名前を当てずっぽうに提案すること=同定」と思っているようなユーザも少なくないようで、同定の再考を期待することはおろか意思疎通すら困難な場合もあります。SNSは人と人が繋がるためのツールであって、正確な同定を担保するものではないのです。
 そんなわけで「ネットに生物の写真をあげまくることが新種記載に役立つ」のは一側面としては真であったとしても、そのメッセージだけが独り歩きした場合、最悪の展開として、新種とか珍種とかをデタラメに判定する”善意の”荒らし行為を助長し、例えば該当種の乱獲や該当分類群の検索汚染といった問題を引き起こす惧れを禁じ得ません。

 そして、近年は生成AIによる検索汚染が深刻な問題となりつつあるとの指摘も見受けられます。前述の通り、そもそも生身の人間による検索汚染が根深く存在するため、AIだけが問題というわけではないと思います。しかし、専門家はそういった地雷を踏んで時間を無駄にすることはしないため、AIによる検索汚染が進行すれば、ネットを巡回する人口は更に減っていくことは想像に難くありません。即ち、一般人がネットに上げる写真が記載能力のある専門家の目に留まる機会というのは、AI隆盛の時代にあって減ることはあっても、有効性を増す見通しは立ちにくい気がします。
 もちろん、ひとかどの専門家であれば、新種発見の場面で、誤同定による検索汚染や生成AIによる架空生物画像に惑わされることは無いといってよいでしょう(個々の識別能力以前にタイプ標本の指定といった手続き上の制約もあります)。ただし、ゴミ情報が相対的に多くなっていく傾向にあれば、それだけ選別に手間がかかり、それに付きあおうという人は限られます。一方、記載能力を有する専門家がこれからどんどんSNSなどに参入してくるかというと、そういった母数の増加が期待できる時期でもないと思います。あくまで「今のSNSのフレームワークでは専門家が新種生物を探すデメリットは大きくなり、ネットにあげる側としてはエンカウント率が減るばかりではないか」という話です。これを打開するアイディアが無いわけではありませんが、本稿の意図を大幅に逸脱するため、割愛します。



2.新種を「発見する」とは?
 そもそも新種を「発見する」ことが具体的に何を示しているのか、一旦整理しておきます。
 ドラマ的・マンガ的な「新種発見」の描写としては、例えば「ジャングルの奥地に潜む幻の蝶を求めて道なき道を進み、苦難の末にとうとうそれを手に入れる」などといったシチュエーションがあるかと思いますが、この場合「標本を手に入れた瞬間にそれが”新種”だと確信する」ところに物語のピークがあるように思えます。しかし、実際のところ「手に取った瞬間に未記載種だと確信できる」ためには相当な条件が重なる必要があります(目視で分類形質が分かるくらいの大きさの生物であること,特別な処理や機器なしにその場で観察できること,関連文献を読み込み既知種の特徴が全て頭に入っている等)

 今回はともかく「新種記載論文に使われ発見者として記録されうる標本を得る」ことを目的とし、それに沿った狙いの付け方を考えてみます。

 さっそくですがランキングです。



第一位:イソヨコエビ属
獲れやすさ:★★☆
観察しやすさ:★★★
本邦解明度:★☆☆
調べやすさ:★★★

 今のところ種の同定形質がオスの付属肢をベースに選定されており、口器など細かい構造の重要性が高くないのが利点です。体長が10mm前後あるいはそれ以上あり、観察のストレスが小さいのも良いです主に大型藻類が豊かな硬質基質を好み、比較的どこでも採れ、性比の偏りもあまりないように思えます。
 なお、2016年までの世界の既知種が前述の文献 (Alves et al. 2017) において1つの検索表にまとまっていますので、その後に記載された種の論文 (Myers 2014; Gouillieux & Sorbe 2015; Myers & Montazi 2015; Hughes 2015; Myers 2016; Myers et al. 2018; Nakamura et al. 2019; Sir & White 2022) を拾い読みすれば、成熟オスをもとに未記載種かどうかの判断は比較的容易につきます。



第二位:アゴナガヨコエビ属
獲れやすさ:★★★
観察しやすさ:★☆☆
本邦解明度:★★☆
調べやすさ:★☆☆

 磯から干潟までどこでもたくさん採れるため、サンプル数の確保が容易で、未記載種の検討に必要な良好なコンディションの標本を選びやすい利点があります。時間帯により活発に遊泳し、夜間は灯火に集まるようです (綿貫 2022)。体長は5mm程度でヨコエビ界隈では通常サイズですが、付属肢などが外れやすく、また第2咬脚の性的二形など目立った特徴もないため、コンディション良好な個体を厳選し、全身を細部まで検討する根気が求められるでしょう。
 同定にあたっては、網羅的な検索表は今日にいたるまで作成されておらず、日本近海産の構成種を理解するための主要な論文 (Gurjanova 1938) が戦前のものでしかもロシア語で書かれているなどの難点があります。



第三位:トゲホホヨコエビ属
獲れやすさ:★★☆
観察しやすさ:★★☆
本邦解明度:★★☆
調べやすさ:★★☆

 そこそこどこにでもいるのと、5mm以上でまあまあ観察しやすい利点があります。性的二形がありますが、概ね複眼の大きさなどから見当をつけられます。ただし、付属肢が取れやすく完品が得にくいのが難点です。夜間に灯火に集まりますが、日中は海草や海藻,あるいは砂質の底質に紛れているようです。
 日本国内からは6種くらいが報告されつつ、全国的なレビューは不足していると感じます。近海では前述の韓国の文献 (Kim et al. 2006; Kim and Lee 2008) が充実しており同定の助けになります。ただし、未記載種を探すうえで必要な世界全体の検討には更に広範囲に手を伸ばして文献を探索する必要があり、多少の手間がかかります。



第四位:ドロノミ属
獲れやすさ:★★☆
観察しやすさ:★☆☆
本邦解明度:★☆☆
調べやすさ:★☆☆

 密度に差があるものの硬質環境にはわりとどこにでもいて、付着生物をガサガサすると出てきます。有山 (2022) から察せられる通り、そのほとんどが未記載と考えられます。性比の偏りが少なく観察しやすいサイズではありますが、付属肢が非常に脆く、分類学的検討に足る完品を得るにはコツが要ります。同定形質に非定量的な要素があり、また種数が多く世界的なレビューが不足しているため、文献調査による未記載種の確定には手間のかかるグループです。

※本邦解明度の根拠:科学的に算出できるならそうしてますが、できないので、完全に勘です。



 さて、実際に見つけた「新種」をどうするかという部分は、今回はかなり曖昧な立場をとりました。自分で記載するもよし、ネットにあげるには前述の通り大きなデメリットがありますが、ヨコエビにおいてはそもそもマトモな同定がされないのがデフォなのと、まだ乱獲の対象になったり生成AIで出鱈目な画像が大量に生み出されるような事態はみられないので、とりあえず「なんかのヨコエビ」としてネットに上げるのは有効な手段だと思います。状況が変わったら方策を考えたいと思います。

 たまに「新種1つあたり幾らか貰えるのか」と聞かれることがありますが、少なくとも日本国にそういうルールはありません。某国にはそういう制度がありものすごい勢いで記載が進んだという話も聞くので、膨大な未記載種を迅速に処理する観点からは導入してもよいかもしれませんが、記載論文の粗製濫造に繋がる懸念は拭えません。

 ちなみに 馬場・福田 (2022) においてはバリバリの分類学者である著者が、新種記載のフローや用語を明快・簡潔に解説しており、一般向けあるいは初学者にとってこれほど源泉に近い情報が手に入る文献というものはあまり例がないと思います。しかし、そういった話をするためだけの本ではなく、様々な分類群についてその記載の過程を当事者が振り返るエッセイが量的に優占しており、ヨコエビの記載としては桁違いに話題になりまくった チゴケスベヨコエビ も取り上げられています。その発見の過程には(厳選したとはいえ)同じものは二つと無く、まさにオムニバスのドラマを観ているようです。また、岩波ジュニア新書からも類書 (島野ほか 2023) が出版されており、新種ブームはしばらく続きそうです。


<コラムの参考文献>

 Gouillieux, B.; Sorbe, J. C. 2015. Elasmopus thalyae sp. nov. (Crustacea: Amphipoda: Maeridae), a new benthic species from soft and hard bottoms of Arcachon Bay (SE Bay of Biscay). Zootaxa3905(1):107–18.

— Gurjanova, E. F. 1938. Amphipoda, gammaroidea Zajibob Siaukhu I Sudzukhe (Japonskoe More) [Amphipoda, gammaroidea of Siaukhu Bay and Sudzukhe Bay (Japan Sea)]. Fijnaj Akademii Nauk SSSR, Trudy Gidrobiojogicheskoi Ekspedichii Zinan 1934 Japonskoe Morei [Reports of the Japan Sea Hydrobiological Expedition of the Zoological Institute of the Academy of Science USSR in 1934], 1: 241–404. (In Russian)

 Hughes, L. E. 2015. Maeridae from the Indo-Pacific: ElasmopusLeeuwinella gen. nov., MaeropsisPseudelasmopus and Quadrimaera (Amphipoda: Crustacea). Zootaxa4059(2): 201.

 Myers, A. A. 2014. Amphipoda (Crustacea) from the Chagos Archipelago. Zootaxa3754(1).

 Myers, A. A. 2016. Amphipoda (Crustacea) from Palau, Micronesia: Families Maeridae and Melitidae. Zootaxa4170(3). 

 Myers, A. A.; Montazi, F. 2015. Elasmopus alkhiranensis sp. nov., a new species of amphipod (Senticaudata, Maeridae) from the Persian Gulf. Zootaxa3973(1): 185–194. 

 Myers, A. A.; Trivedi J.; Gosavi, S.; Vachhrajani, K. D. 2018. Elasmopus sivaprakasami sp. nov., a new species of amphipod (Senticaudata, Maeridae) from Gujarat State, India. Zootaxa4402(1):18.

— Nakamura Y.; Nakano T.; Ota Y.; Tomikawa K. 2019. A new species of the genus Elasmopus from Miyako Island, Japan (CrustaceaAmphipodaMaeridae). Zootaxa4544 (3): 395–406. 

 島野智之・脇司 (編著) 2023. 『新種発見物語 足元から深海まで11人の研究者が行く!』. 岩波書店, 東京. 270 pp. ISBN:9784005009664

 Sir, S.; White, K. N. 2022. Maerid amphipods (Crustacea: Amphipoda) from Okinawa, Japan with description of a new species. Zootaxa5093(5): 569–583.  

2024年2月11日日曜日

ディボフスキィのたそがれ(2月度活動報告)


 ~ とう場人ぶつ ~
 
こうたくん
ヨコエビのことが気になっている男の子。


ひろきくん
さいきん、こうたくんやはかせと、あそぶようになった男の子。
あまりしゃべらないけど、するどい。

 
よこえびはかせ
ヨコエビの本やひょうほんをいっぱいもっている。
ヨコエビのことにくわしくて、何でもしらべて教えてくれるけど、
そのほかのことにはまるっきりきょうみがないんだ。


~~~~~~~


よこえびたんていだん

だい5話 ディボフスキィのたそがれ




じけんはっ生


こうたくん: はかせ!ヨコエビの名前が長いんだって!

はかせ: どれどれ、見せてごらん。


これまでにつけられた学名で最も長いとされるものは51文字のGammaracan-thuskytodermogammarus loricatobaical-ensisという甲殻類ヨコエビの仲間だ。発音すれば「ガンマラカントゥスキトデルモガンマルス・ロリカトバイカレンシス」となる。(ソトコト


はかせ:ホッホッホッ、これはロマンのかけらじゃよ。

こうたくん:どこが?

はかせ:これはただのエッセイで、げんじつの「生ぶつ学」と、かんけいあるとは、かぎらないんじゃ。

こうたくん:なんだ~。じゃあうそなの?

はかせ:いやいや、「もっとも長いとされる」と、大じなところはだんげんしておらん。「生ぶつ学」の話ではないが、ウソでもないぞい。

こうたくん:じゃあ、いちばん長い名前は、ほんとにこのヨコエビなの?

はかせ:それはどうかのう。ちょっとしらべてみるぞい。



しつもん

はかせ:「ガンマラカントゥスキトデルモガンマルス・ロリカトバイカレンシス」は長すぎるので、これから[K1]と書いてあったら、これのことじゃと思ってくれい。

こうたくん:うん。

はかせ:この話は、メアリー・ジェーン・ラスバンさんが「どうぶつ めい名ほう 国さい しんぎ会」にしつもんをしたところから、はじまるようじゃのう。ラスバンさんといえば、カニかいわいでちょうゆう名なアメリカのけんきゅうしゃだぞい。

こうたくん:どうぶつ…めーめー?

はかせ:どうぶつに学名をつけるときに、おきることがある、いろいろむずかしいこと話しあうための、あつまりのことじゃよ。

こうたくん:ふーん。何があったの?

はかせ:ラスバンさんのしつもんは「ディボフスキィさんが Dybowski (1926a) でヨコエビにつけた学名はこのままでいいのか?」というのじゃのう。たとえばこんな名前じゃ。

  • Siemienkiewiczieshinogammarus siemienkiewitshi
  • Cancelloidokytodermogammarus (Loveninuskytodermogammarus) loveni
  • Axelboeckiakytodermogammarus carpenteri
  • Garjajewiakytodermogammarus dershawini
  • Parapallaseakytodermogammarus borowskii var. dichrous
※以下、[R1]~[R5]

こうたくん:げー、なにこれ。きもちわるっ。ダメにきまってんじゃん。

はかせ:そしてこれが Dybowski (1926a) にのってる「ぞく」の、いちらんなわじゃが、

I. Genus Boeckia Grimm.
II. Genus Siemienkiewicziella Dyb.
III. Genus Sowicnskiella Dyb.
IV. Genus Paradoxogammarus nov. gen. Dyb.
V. Genus Hyalellopsis Stebb.
VI. Genus Crypturopus Sow.
VII. Genus Micruropus Stebb.
VIII. Genus Baicalogammarus Stebb.
IX. Genus Microgammarus Sow.
X. Genus Echiuropus Sow.
XI. Genus Brandtha Bate
XII. Genus Rugosogammarus Dyb.
XIII. Genus Morawitzigammarus Dyb.
XIV. Genus Smaradinogammarus Dyb.
XV. Genus Paramicruropus Stebb.
XVI. Genus Pentagonurus Sow.
XVII. Genus Hakonboeckia Stebb.
XVIII. Genus Gymnogammarus Sow.
XIX. Genus Plesiogammarus Stebb.
XX. Genus Sukaczewigammarus Dyb.
XXI. Genus Poekilogammarus Stebb.
XXII. Genus Ignotogammarus Dyb.
XXIII. Genus Pictogammarus Dyb.
XXIV. Genus Sophianosigammarus Dyb.
XXV. Genus Bifasciatohammarus Dyb.
XXVI. Genus Branchialogammarus Dyb.
XXVII. Genus Hyacinthinogammarus Dyb.
XXVIII. Genus Ommatogammarus Stebb.
XXIX. Genus Kietlinskigammarus Dyb.
XXX. Genus Pulexogammarus Dyb.
XXXI. Genus Macropereiopus Sow.
XXXII. Genus Ursinopereiopus Dyb.
XXXIII. Genus Pristipereiopus Dyb.
XYXIV. Genus Odontogammarus Stebb.
XXXV. Genus Cyanogammarus Dyb.
XXXVI. Genus Unguisetosogammarus Dyb.
XXXVI. Genus Stanislaviechinogammarus Dyb.
XXXVIII. Genus Kietlinskiechinogammarus Dyb.
XXXIX. Genus Laeviechinogammarus Dyb.
XL. Genus Sophiaeechinogammarus Dyb.
XLI. Genus Lividoechinogammarus Dyb.
XLII. Genus Aheneoechinogammarus Dyb.
XLIII. Genus Ceratogammarus Sow. —Ceratoechinogammarus Dyb.
XLIV. Genus Leucophtalmoechinogammarus Dyb.
XLV. Genus Leptoceroechinogammarus Dyb.
XLVI. Genus Ibexoechinogammarus Dyb.
XLVII. Genus Crassicornoechinogammarus Dyb.
XLVIII. Genus Parvoechinogammarus Dyb.
XLIX. Genus Ibexiformiechinogammarus Dyb.
L. Genus Czerskiechinogammarus Dyb.
LI. Genus Maackiechinogammarus Dyb.
LII. Genus Strenuechinogammarus Dyb.
LIII. Genus Toxophthalmoechinogammarus Dyb.
LIV. Genus Longicornoechinogammarus Dyb.
LV. Genus Polyartroechinogammarus Dyb.
LVI. Genus Parvexigammarus Dyb.
LVII. Genus Nematoceroechinogammarus Dyb.
LVIII. Genus Kuzuniezowiechinogammarus Dyb.
LIX. Genus Capreoloechinogammarus Dyb.
LX. Genus Stenophthalmoechinogammarus Dyb.
LXI. Genus Schamanensiechinogammarus Dyb.
LXII. Genus Saphiriniechinogammarus Dyb.
LXIII. Genus Viridiechinogammarus Dyb.
LXIV. Genus Viridiformiechinogammarus Dyb.
LXV. Genus Vittatoechinogammarus Dyb.
LXVI. Genus Siemienkiewicziechinogammarus 
LXVII. Genus Petersiechinogammarus Dyb.
LXVIII. Genus Violaceoechinogammarus Dyb.
LXIX. Genus Sarmatoechinogammarus Dyb.
LXX. Genus Graciliechinogammarus Dyb.
LXXI. Genus Swartschewskiechinogammarus Dyb.
LXXII. Genus Ussolzewiechinogammarus Dyb.
LXXIII. Genus Cornutokytodermogammarus Dyb.
LXXIV. Genus Eucarinogammarus K. G. Dyb.
LXV. Genus Rhodophthalmo K. G. Dyb.
LXXVI. Genus Pulchello K. G. Dyb.
LXXVII. Genus Cheiro K. G. Dyb.
LXXVIII. Genus Bronislavia (Rakowski) K. G. Dyb.
LXXIX. Genus Coniurogammarus Sow. C. K.G. Dyb.
LXXX. Genus Conipleono C.K. G. Dyb.
LXXXI. Genus Ruber K. G. Dyb.
LXXXII. Genus Reissneri K. G. Dyb.
LXXXIII. Genus Parabrandtia K. G. Dyb.
LXXXIV. Genus Axelboeckia Stebb. K. G. Dyb.
LXXXV. Genus Gammaracanthus Bate K. G. Dyb.
LXXXVI. Genus Korotniewi G. K. Dyb.
LXXXVII. Genus Flavo K. G. Dyb.
LXXXVIII. Genus Neo K. G. Dyb.
LXXXIX. Genus Zienkowiczi K. G.
XC. Genus Garjajewia Sow. K. G. Dyb.
XCI. Genus Roseo K. G. Dyb.
XCII. Genus Dryshenkoi Garj.
XCIII. Genus Meyeri K. G. Dyb.
XCIV. Genus Nigro K. G. Dyb.
XCV. Genus Radoszkowski K. G.
XCVI. Genus Platytropo K. G. Dyb.
XCVII. Genus Armato K. G. Dyb.
XCVIII. Genus Cancelloido K. G. Dyb.
XCIX. Genus Pallasea Bate K. G. Dyb.
CI. Genus Acanthogammarus Stebb. Acantho K. G. Dyb.
CII. Genus Puzylli K G. Dyb.
CIII. Genus Parapallasea Stebb.
CIV. Genus Dawydowi K. G. Dyb.
CV. Genus Varinurus Sow. Carinuro K. G. Dyb.


こうたくん:長っ。

はかせ:ふしぎなことに、ラスバンさんは「原記さい」としてこのろん文を引用してるはずなのに、本当にのってる学名は[R1]しかないぞい。

こうたくん:元気なの?

はかせ:ちがわい!その「しゅ」を「記さい」したろん文、つまりこれらのヨコエビに名前をつけた「けっていてきしゅん間」じゃ。

こうたくん:じゃあ、めーめーなんとかとは、かんけいないの?

はかせ:いくつかパターンがあるようじゃのう。バブァーさんによると、ディボフスキィさんがつけた学名を「しんぎ会」がむこうにしたのは、つぎの4つだそうじゃ (Barbour 1943)。

  • Leucophthalmoechinogammarus leucophthalmus
  • Stenophthalmoechinogammarus stenophthalmus
  • Cornutokytodermogammarus cornutus
  • Brachyuropushkydermatogammarus grewinglii mnemonotus
※以下、[B1]~[B4]

はかせ:じゃが、ラスバンさんの[R1]~[R5]と同じ学名は、1つもないんじゃ。Dybowski (1926a) には1つだけ同じ学名が、のっておるがのう。

こうたくん:長いヨコエビの名前は、けっきょくどうなってるの?

はかせ:ヨズヴィアクさんが言うには、Dybowski (1926a) がつけた6つの学名を「しんぎ会」がむこうにして、同じろん文で名前がつけられた、あの長ったらしい[K1]は、むこうになってない、とのことじゃ (Jóźwiak et al. 2010)。

  • Crassocornoechinogammarus crassicornis
  • Parapallaseakytodermogammarus abyssalis
  • Zienkowiczikytodermogammarus zienkowiczi
  • Toxophthalmoechinogammarus toxophthalmus
  • Siemienkiewicziechinogammarus siemenkiewitschii
  • Rhodophthalmokytodermogammarus cinnamomeus
※以下、[J1]~[J6]

はかせ:じゃが、この中にラスバンさんの学名は[R1]しかないんじゃ。

こうたくん:どういうこと?みんなへんだよ?

はかせ:ヨバブァーさんもズヴィアクさんも、何かかんちがいをしてるとしか、かんがえられんのう。

こうたくん:つかれてたの?

はかせ:1つたしかなのは、こうたくんがさいしょに言っていた[K1]は、Dybowski (1926a) にも、ラスバンさんの[R1]~[R5]にも、本当はのってなかったということじゃ。

こうたくん:長すぎてダメになったからじゃないの?

はかせ:むこうになったという記ろくも、そもそも本当にあったしょうこも、何もないんじゃ。

こうたくん:わけがわからないよ。



「つみ」なき「つみ」

はかせ:ちなみに「Gammaracan-thuskytodermogammarus loricatobaical-ensis」というハイフネーションは「ソトコト」のあの記じオリジナルのようじゃ。

こうたくん:よこぼうがあるのは、うそってこと?

はかせ:そうでもないんじゃ。どうぶつでは今でこそゆるされないが、古い学名には Polygonia c-album みたいにハイフンが入ったものがある。

こうたくん:なんだ!よこぼう、あってもいいの?

はかせ:じゃか、このハイフンは「C」と「白」というように、べつのことばをつなぐように入っとるぞい。「ソトコト」のハイフネーションは、ことばのつながりとは、かんけいないところに入っておる。日本ごにすると、だいたいこんなかんじじゃ。


Gammaracan-thuskytodermogammarus 

ヨコエビ トゲあり 革質の ヨコエビ

loricatobaical-ensis

鎧を着た バイカル 産の


はかせ:acan-thus」は、ことばのとちゅうでハイフンが入っていて、ふしぜんじゃ。さいごの「baical-ensis」はたしかにハイフンを入れることはできるが、それよりも、その前のことばとの間に入れるほうが、くぎりとしてはしぜんじゃ。

こうたくん:「?」はどうしたの?

はかせ:「kyto」が何をいみするのか分からなかったんじゃ。くすぶるとか、やけるとか、そういういみとは思うんじゃが…

こうたくん:だっさ。

はかせ:うるさいわい!

こうたくん:じゃあ、その「-」がないのが本当なの?

はかせ:ハイフンがない[K1]がネットにあらわれるのは、21せいきからじゃ。2001年にはこういう記じがあったぞい。しらべたかぎり、これが[K1]のいちばん古いものらしい。

ひろきくん:でもこれ、こんきょが分からないっすね・・・

こうたくん:あれ、ひろきくん、いつの間に?

はかせ:うむ。さっきたしかめたとおり、ディボフスキィさんもラスバンさんも、本当は[K1]の話をしてなかったわけじゃ。

ひろきくん:この記じが、1から学名をつくったんですかね・・・

はかせ:そのことなんじゃが、[K1]のもとネタは、Dybowski (1926a) の「Gammaracanthus loricato-baicalensis」のことかもしれん。

こうたくん:これも長いじゃん!

はかせ:この学名は Dybowski (1926c) では「Gammaracanthus loricatus baicalensis」となっておるが、もともとこの「へんしゅ」に名前をつけたのはソウィンスキィさんで、ディボフスキィさんではないんじゃ (Sowinsky 1915)。[K1]はディボフスキさんがつけた名前と言われてるが、そこも話がもられているようじゃ。ちなみにもう1つ Dybowski (1926b) は「アカントガンマルス あか」の「Carinurus ぞく」をとりあげたもので、ぜんぜんかんけいないぞい。

こうたくん:キャラふえすぎて、入ってこないよ。

はかせ:ちなみに、このloricato-baicalensis」のハイフンの入れかたは「ソトコト」とはちがって、よりしぜんなばしょに入っておる。

ひろきくん:1927年というせつも、あるみたいっすね・・・

はかせ:がい当する文けんは、どうやら、そんざいしないようじゃ。10月にとうこうされた Dybowski (1926c) を、1927年のしゅっぱんだと、かんがえた人がいるようじゃ。

こうたくん:それからそれから?

はかせ:2009年12月には、クレタ大学の Poulakakisさんが[k1]を話だいにしたこうぎスライドをネットにあげておる。

こうたくん:学こうのじゅぎょうなの?

はかせ:そうみたいじゃのう。このスライドはラスバンさんのしつもんの「画ぞう」をはってるし、Dybowski (1926a) を引用してるんじゃが、今まで言ってきたように、これらに[K1]はのっていないはずじゃ。こんきょになってないんじゃ。

こうたくん:そうなの?

はかせ:2010年あたりには、この長ったらしい[K1]が「しんぎ会」でみとめられなかったことが、きせいじじつになっていくぞい。

こうたくん:こんきょがないのに?

はかせ:2014年には「だいきげんじほう」が目をつける。これで知った人も多いきがするのう。日本で[K1]が広まっていったのは、おそらく2015年からじゃ。

ひろきくん:長い[K1]は、引用文けんといっしょに、日本ばんウィキペディアにものってますよね・・・

はかせ:このウィキの内ようは、2017年3月に「ヨコエビ」のこう目へ、ついかされたぞい。そして引用文けんは、2019年1月についかされたわけじゃが、Poulakakisさんのスライドと同じで、こんきょはないんじゃ。そして今は、書きなおされておる。

こうたくん:えっ?ウィキペディアに書いてあることはぜんぶ正しいんじゃないの?

はかせ:いやいや、ウィキは、しろうとが書いている、いいかげんなサイトじゃわい。



けつろん

ひろきくん:ふたしかな話が、「生ぶつ学しゃ」もふくめて、広まってしまったんですね・・・

はかせ:ウィキや「ソトコト」のような「科学っぽい」記じが、ちゃんと作られなかったことが、もんだいじゃのう。ふつう「分るい」をせんもんにする「分るい学しゃ」は、けんきゅうのなかで「分けん」をよまず話をすすめることは、ありえないんじゃ。あの学名は「てきかく名」じゃないから、正しくあつかおうという心がけが足りず、手をぬいたのかもしれん。

こうたくん:いいかげんな人、多いんだね。

はかせ:ヨコエビの分るいは、こみ入っておるからのう。「ソトコト」のエッセイストはせんもん外の人じゃし、「原記さい」をよまないのは、むりもないと思うぞい。それはともかく、ウィキのほうは、それなりにヨコエビをべんきょうしてたはずじゃから、このまちがいは「たいまん」としか言いようがないのう。

こうたくん:どこをどうまちがえたら、ああなるの?

はかせ:[K1]は、今もつかわれている「Gammaracanthus」に「kytodermogammarus」をつけたものみたいじゃ。「ロリカトバイカレンシス」は、Dybowski (1926a) にある「loricato-baicalensis」のことみたいだのう。じゃがこれはもともと「loricatus baicalensis」として「しゅ」「へんしゅ」をならべていたものを、なぜかハイフンでつないだものだぞい。

  • [K1] Gammaracanthuskytodermogammarus loricatobaicalensis
  • [D1] Dybowski (1926)  Gammaracanthus loricato-baicalensis

ひろきくん:ほかのは、どうなんすかね・・・

はかせ:ラスバンさんが「しんぎかい」にあげた[R1]~[R5]のうち、 Dybowski (1926a) には[R1]だけ同じ。[R2]~[R5]は「ぞく」の頭だけ同じじゃ。

  • [R1] ICZN (1929) Siemienkiewiczieshinogammarus siemienkiewitshi 

 =[D2] Dybowski (1926)  Siemienkiewicziechinogammarus siemienkiewitshi


  • [R2] ICZN (1929) Cancelloidokytodermogammarus (Loveninuskytodermogammarus) loveni
  • [D3] Dybowski (1926)  Cancelloido loveni

  • [R3] ICZN (1929) Axelboeckiakytodermogammarus carpenteri
  • [D4] Dybowski (1926)   Axelboeckia carpenteri

  • [R4] ICZN (1929) Garjajewiakytodermogammarus dershawini
  • [D5] Dybowski (1926)  Garjajewia dershawini

  • [R5] ICZN (1929) Parapallaseakytodermogammarus borowskii var. dichrous
  • [D6] Dybowski (1926)  Parapallasea borowskii var. dichrous

 

はかせ:バブァーさんの[B1]~[B4]のうち、[B4]だけ Dybowski (1926a) に同じ名前がない。[B2]は「ぞく」だけラスバンさんの[R2]と同じじゃ。

  • [B1] Barbour (1943) Leucophthalmoechinogammarus leucophthalmus

 =[D7] Dybowski (1926)  Leucophthalmoechinogammarus leucophthalmus 


  • [B2] Barbour (1943) Stenophthalmoechinogammarus stenophthalmus

 =[D2] Dybowski (1926)  Stenophthalmoechinogammarus stenophthalmus  

  • [R1] ICZN (1929) Siemienkiewiczieshinogammarus  siemienkiewitshi

  • [B3] Barbour (1943) Cornutokytodermogammarus cornutus

 =[D8] Dybowski (1926) Cornutokytodermogammarus cornutus 


  • [B4] Barbour (1943) Brachyuropushkydermatogammarus grewinglii mnemonotus
  • [D9] Dybowski (1926) Brachyuropus grewinglii mnemonotus  


はかせ:ヨズヴィアクさんの[J1]~[J6]のうち、ラスバンさんと同じなのは[J5]だけ、Dybowski (1926a) と同じなのは[J1]だけで、あとはDybowski (1926a) とよくにているが、べつものじゃ

  • [J1] Jóźwiak et al. (2010) Crassicornoechinogammarus crassicornis

 =[D10] Dybowski (1926)  Crassocornoechinogammarus crassicornis


  • [J2] Jóźwiak et al. (2010)  Parapallaseakytodermogammarus abyssalis
  • [D11] Dybowski (1926)  Parapallasea abyssalis 

  • [J3] Jóźwiak et al. (2010) Zienkowiczikytodermogammarus zienkowiczi
  • [D12] Dybowski (1926)  Zienkowiczi zienkowiczi

  • [J4] Jóźwiak et al. (2010) Toxophthalmoechinogammarus toxophthalmus

 =[D13] Dybowski (1926)  Toxophthalmoechinogammarus toxophthalmus


  • [J5] Jóźwiak et al. (2010) Siemienkiewicziechinogammarus siemenkiewitschii

 =[R1] ICZN (1929) Siemienkiewiczieshinogammarus siemienkiewitshi 

 =[D2] Dybowski (1926)  Siemienkiewicziechinogammarus siemenkiewitschii

  • [J6] Jóźwiak et al. (2010) Rhodophthalmokytodermogammarus cinnamomeus
  • [D14] Dybowski (1926)  Rhodophthalmo cinnamomeus


はかせ:名前の後ろによけいにつけられがちなのは「kytodermogammarus」じゃな。これは、Dybowski (1926a) にのっている「Cornutokytodermogammarus」の後ろと、まったく同じじゃから、もとネタかもしれんのう。このぶぶんが、じっさいの学名につけられて、じっさいにはない、長い名前がつくられてきたようじゃ。

こうたくん:そうなんだ。

はかせ:バブァーさんのろん文からわかるように、ラスバンさんのしつもんから20年もたってないのに、話はかならずしも正しくつたわってないんじゃ。その後、ネットにあがってくる2000年台の間に[K1]のうわさが、出来上がったのかもしれんのう。じゃが、そのしんそうまでは、たどることができんかったぞい。

ひろきくん:でも・・・いっぱんの人が、じょうだん半分に楽しんでいる「としでんせつ」に、ここまでやるひつよう、ありますかね・・・ウィキペディアとかのネット記じはしょせんは「しろうと」ですし、「ソトコト」にしてもせんもん外の人が書いた「エスディージーズのエッセイ」ですし・・・

はかせ:科学をよそおった「としでんせつ」によくあるのが、ソースを見ないことや、ニセのソースをでっちあげることなんじゃ。日ごろからソースふめいの「科学だんぎ」になれきってしまうと、「エセ科学」にのみこまれる人を、ふやしてしまうかもしれんぞい。

こうたくん: そうなんだ!帰ったらお母さんにも教えてあげようっと。



(ついしん)

 ウィキまちがってた。ごめんね。


<さんこうぶんけん>

— Barbour, T. 1943. The Sea and the Cave. The Atlantic monthly, 99–103.

— Dybowski, B. 1926a. Spis synoptyczny i krótkie omówienie rodzajów i gatunko'w kiełży Bajkału.—Synoptisches Verzeichnis mit kurzer Besprechung der Gattungen und Arten dieser Abteilung der Baikalflohkrebse. Bulletin of the Polish Academy of Sciences, Scientific Letters B: 1–77. 

— Dybowski, B. 1926b. Prazyczynek do znajomości kiełży Bajkału. Rodzaj Paramicruropus (Stebbing). —Beitrag zur Kenntnis der Gammariden des Baikalsees. Die Gattung Paramicruropus (Stebbing). Bulletin of the Polish Academy of Sciences, Scientific Letters B: 79–94.

— Dybowski, B. 1926c. Uwagi i uzupełnienia do mojej praci o kiełżach bajkałskich —Bemerkungen und Zusätze zu meinen Arbeiten über die Gammariden des Baikalsees: 1924–1926. Bulletin international de l'Académie Polonaise des Sciences et des Lettres, Classe des Sciences Mathématiques et Naturelles, Série B, Sciences naturelles, 8B, S: 673–700.

— Dybowski, B. 1927. Bemerkungen un Zusatze zu meinen Arbeiten uber die Gammariden des Baikalsees. 1924–1926. Bulletin International de l'Academie Polonnaise des Sciences et des Lettres, Classe des Sciences Mathematiques et Naturelles, Serie B: Sciences Naturelles, 1927, 8B: 673–700.

International Commission on Zoological Nomenclature 1929. Opinion 105. Dybowski's (1926) Names of Crustacea Suppressed. Opinions Rendered by the International Commission on Zoological Nomenclature: Opinions 105 to 114, Smithsonian Miscellaneous Collections, 73: 1–3,

— Jóźwiak, P.; Rewicz, T.; Pabis, K. 2010. Inspiracje I osobliwości naukowego nazewnictwa zoologicznego. Kosmos, 59(1–2) (286–287): 39–59.

— Sowinsky, V. K. 1915. Amphipoda ozera Baikala (Sem. Gammaridae). Zoologicheskiye issledovaniya ozera Baikala, IX., Kiev, 381 pp. 37 pls.

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補遺 (15-VIII-2024)
・一部書式設定変更。

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「よこえびたんていだん」シリーズ

 ネットにただようヨコエビ(とか)のうわさを、じゅんすいすぎるこうき心をもった「はかせ」と「こうたくん」がすきかってにきりまくる!よむ人みんなをこんわくにつつみこむ、マイナー分るいぐんエンターテインメントここにばくたん!

だい1話「ダイダラボッチのなぞ」

だい2話「めいきゅうのヨロイヨコエビ」

だい3話「ようぎしゃ フトヒゲソコエビ」

だい4話「エイリアンとタルマワシ」