2018年8月31日金曜日

いのちのたび ~平成最後の夏は宝虫探し~(8月度活動報告その2)


 今から約1年前、ヨコエビ界隈を震撼させたこのニュース、皆さん覚えているだろうか?



 豪州のビーチで冷たい海水の中に佇んでいた少年が、知らないうちにできた大量の傷から出血を起こして入院した、という奇妙な出来事である。

  医療関係者が首を傾げる中、彼の父親は自ら原因究明に乗り出し、現場で生肉に群がってきた生物を捕獲して、研究者に同定を依頼。 結果、フトヒゲソコエビ類であるとの結果が得られた。少年が負傷した真の原因が特定されたわけではない(というか、どのような方法で検証しても推測の域を脱することは困難と思われる)が、甲殻類(ヨコエビ)が関与した可能性がある珍しい事例ということと、被害に遭った少年の姓が甲殻類(カニ)を彷彿とさせる カニゼイ(Kanizay)” だったこと、そして超絶イケメンだったことで、ネットで大いに話題となった。



 ちなみに報道写真では、吸入マスクを取り付けられ足から鮮血を滴らせた痛々しい姿となっていた少年ですが、およそ1か月後には応援するサッカーチームの選手と共に笑顔で写真に収まる姿がチームのFacebookで紹介され、 今年の1月には家族と共に地元ランニングフェスティバルに参加している様子も父親のFacebookに投稿されており、傷は癒えてきたようです。




  さて、あれから調べを重ねたところ、どうやらヨコエビによって「海で人が齧られた」ケースというのが結構あることが分かりました。以下にその事例を幾つか示します。






御多分に漏れずグロ注意であります!!








CASE 1 小関・山内 (1964)

 7月上旬.N県の某海岸で7歳と11歳の少年が溺死.7歳の少年は半日後に発見されたが,もう1人が見つかるまでに2日かかった.手足は浸漬作用を受けて膨れ上がり,肌の組織は軟化し腐敗が始まっていた.皮膚には目立った傷は無いものの,表面が小虫によって齧られており,2種の等脚類と,1種の端脚類(Anisogammarus pugettensis トンガリキタヨコエビ)が含まれていた.



 
CASE 2 小関・山内 (1964) 

 1月.川で40歳代の男性が溺死し,下流へと流された.2日後,N県の某海岸にて漂着しているのが発見されたが,顔面や頸部に粟粒大あるいは米粒大~小豆大の丸い損蝕創が多数認められ,眼球や耳介は片方だけを残し,もう片方は抉り取られたようになっていた.表面には多数の海産ヨコエビ(Anonyx pacificus シリアゲソコエビ)が付着しており,遺体が川を出て,海に達してから浜に打ち上げられるまでに,この小動物によって損壊されたものと推測された.

 


CASE 3 永田ほか (1967)

 8月下旬.15時半ごろ,F県海上保安部の巡視船が,杭に結びつけられたまま漂う小型木造船を発見した.船尾左舷が破壊され,船体は8割ほど海中に没していた.船底には漁獲したものと思われる数匹の魚,船中からは麦わら帽子や弁当箱などが発見されたものの,乗員は影も形も無く消え失せていた・・・と,ここまで聞くと,バミューダトライアングルのフォークロアか,はたまた84年版ゴジラのオープニングか,ミステリアスな展開であるが,船体に残された塗料の剥げた痕跡から衝突事故によって乗員が海中に放り出されたことが推測され,直ちに曳網による探索が行われた.
  約1日後,付近の海底から1体の遺体が引き揚げられ,着衣などから行方不明となっていた60歳代の漁夫と判明したが,その状態は極めて異様であった.全身に死斑はなく,顔面や頸部など肌が露出した部分の軟組織が消え,軟骨および骨のみが残り,舌は無く,顎はほとんど外れかかっており,鋭利に切断されたかのような血管に加えて,気管の縁はジグザグな切断面が見られた.スクリューによる損傷などを検証するために剖検が行われた結果,死因は溺死であり,スクリューの接触によってできるはずの骨折跡はなく,着衣と肌の間や体内には,2種のヨコエビ(Orchomenella littoralis ナイカイツノフトソコエビ,Orchomenella japonica)を含む大量の小虫が発見された.これらの状況から,死後ヨコエビ等の蚕食によって遺体が損壊されたものとの結論が導かれた.死斑が無いのは海底に沈むまで海流に揉まれていたことを示しており,総合的に判断して,14~15時間の間にここまで白骨化が進んだとみられる.




 さて、この中で最も侵蝕作用が激しいのは、F県の事例と思われます。

 人を食うヨコエビの生息地と時期が分かったところで・・・



 実 際 に や っ て み ま し ょ う 。






Starting S.A.M. project 

(Scout for the Amphipod's Meals)




1.まず漁協に電話してみました


わたし:ヨコエビ採りたいんですけど、どうすればいいですか?

支所の人:えっと…上の者に代わりますね。

わたし(ヨコエビマニアの怪電話の取り次ぎマジ卍)

支所の偉い人:お電話代わりました。

わたし:(かくかくしかじか)ヨコエビ採ってもいいですか?

支所の偉い人: FAXとか電話で、何匹採るか教えてくれればいいです。あと、その辺りは境界が入り組んでいるので、本所に確認してください。






2.船のチャーターを試みました


わたし:死んだ魚に群がるような虫を採りたいんですが、協力いただけますか?

船長:たくさんいますね。どれですか?

わたし:砂浜でピョンピョンしてるようなのと同じ形のやつです。

船長: ああ、ダンゴムシを押しつぶして平たくしたようなのね。

わたし:船出してくれますか?

船長:タダならええですよ。

わたし:え?

船長:遊漁船なので、目的以外で船を出してお金をもらうと法律に引っかかることがあるんです。でも私はそういうの好きなんで☆ 朝はいっぱいですが午後とか夕方なら☆

わたし(マジすか)

船長:ちなみにどうやって採ろうと?

わたし:ビンとかを沈めて、中に肉を入れてやろうかと。

船長: 網だと抜けそうですからね。でも魚の死骸に集まってるのをよく見るので、魚肉を入れたらいいんじゃないですか。漁港に魚はいっぱいあるんで、こっちで用意します☆

わたし(マジすか)

船長:釣り具屋に来ているんですが、ちょうど良さそうなカゴ網があったので、こっちに来るまでに、いろいろ試してみます☆

わたし(マジ神)(昇天)

 



3.文献調査

 今回のターゲットとなる2種のヨコエビのうち1種目、”ナイカイツノフトソコエビ”は Nagata (1960) が Orchomenella sp. として報告し、後に Nagata (1965) において Orchomenella littoralis として記載されました。しかし、Hirayama (1986) は、属位変更に伴い Orchornene litoralis (Schellenberg, 1926) という別の種のジュニアホモニムとなったとして、Orchomene naikaiensis という学名に置換しました(※補遺1)。この扱いは Barnard & Karaman (1991) でも概ねフォローされていましたが、同研究でこの群は supergenus として扱われており、揉める素地は十分でした。
 そしてWoRMSでは現在、Hirayama (1986) の処遇を無効(O. littoralisO. litoralisは1字違いであり、そもそもホモニムではなかった)とし、Nagata (1965) が記載した Orchomenella littoralis を復活させています。しかも、シニアホモニムとされていたOrchornene litoralis (Schellenberg, 1926) は更に Orchomenella franklini Walker, 1903 のジュニアシノニムとして消されるという事態に陥っていて、世に言う”ゴミ箱分類群”にありがちな混乱の様相を呈しています。今回はとりあえずWoRMSに従い、 Orchomenella sp. sensu Nagata 1960 Orchomenella littoralis Nagata, 1965 として扱うものとします。

 さて、Nagata (1960) の図はあまり「現代的」でなく、掲載されているのは解剖済の付属肢のみで、特徴的な部品だけを選び複数種まとめて1枚の原稿に押し込んでいて、19世紀から20世紀初頭にかけて欧州の文献にありがちな構成となっています。図のタッチは極めて簡素で、細かな特徴を読み取ることは難しいです。しかも、Nagata (1965) とHirayama (1986) はともに形態図を省いていて、手持ちの文献をもとに本種の正体を知るには、文字情報と現物を突き合わせるほかに活路はないでしょう。
 Nagata (1960) は「体長12mm以下」と述べているが、Nagata (1965) は調査標本に Nagata (1960) の標本群を含むはずにも関わらず体長6.5mm以下とした上で、体長4.9mmのオスをホロタイプとしています。いずれにせよ、永田ほか (1967) で述べられている「1cmにも満たない体長」という特徴には概ね合致しており、本種を網で掬ったりベイトに付着させて採取した場合、5~10mm程度の個体を期待してよいでしょう。

 Nagata (1960) はタイトルの通りアマモ場の調査です。水深は満潮時で3m以内とのことで、汀線からアプローチできる範囲と考えてよいでしょう。永田ほか (1967) では水深56mまで生息となっていて、遺体が見つかったのは水深13~15mとのことなので、深場で集めるのもアリということがわかります。


 これを元に採集方法を検討しようと思います。





4.進捗どうですか

船長:籠罠を仕掛けたいけど海が荒れてどうしようもないね。

船長:砂を掘ったら見つかった。地元の人間も砂地によくいるとみんな言ってる。

船長:ヤツは、噛みますよ。





5.後日、本所に確認

わたし:ヨコエビ採りたいんですが

本所の人:どのように採りますか?

わたし:砂浜を掘ったり籠を沈めたりしようかと…

本所の人:支所に確認して下さい。

わたし:支所から本所に連絡するように言われたんですぅ (´;ω;`)

本所の人:では確認します。

わたし(タライマワシなのか´・ω・`?)

本所の人:(しばし後)確認とれました。あとは所長と打ち合わせてもらえばいいです。

わたし:ありがとうございます(´▽`○)





6.いざ志賀島へ


 こうして私は決戦の地、志賀島へと降り立ちました(もはや伏せることをやめた)。

 金印出土の地(※未だに論争あり)として著名ですが、第二次元寇の折には戦場になったり、たびたび日本史の表舞台に登場する土地です。北九州は古くから政治や経済の中枢だったわけで、今も成長著しい街、福岡市の東の一角として、農業や観光分野で大きな存在感を放っています。


 さて、今回の「S.A.M. project」の目的は、フトヒゲソコエビ類が生きた人間の組織に群がってかじるかどうかを確認することです。事前にいろいろ話をうかがった限りでは、オーストリアの事例のように怪我を負ったりという危険なことはないということですが、噛むことは確実らしいので、適度にハムハムして頂き、そのポテンシャルを見極めたいと思います。
 もちろん、これによりオーストリアの事件の犯人が確定するわけではないですが、スナホリムシの仲間などで確認されている事象がヨコエビにもあるという知見が示されれば、私としては満足です。


 ここは昨年の事件に近づけてスポーティーなイケメンティーンの御御足を生け贄に捧げたいところですが、諸般の都合により、うだつの上がらないアラサーサラリーマンの臭い足で我慢してもらいます。ここのヨコエビは漁師のおじさんを食べた実績があるので、たぶん細かいことは気にせずガツガツ来てくれるはず(?)



 今回、採集プランの多くは現地の状況を知る地元の方に頼る形となってしまいました。

 採集ポイントの設定と仕掛け、現場の動きの何もかも引き受けて下さったのが、遊漁船ガルフの園田さんです。


漁師さんから分けてもらったフグ用の豆鯵を籠罠に入れ、海に沈めます


 そして待機!



 我が家のような安心感がすごい地元のお店「SHOPヒロ」で、港の方にお話しを伺うと…

  • 永田ほか (1967) の事例と似たようなことはわりと起こっているらしい(実際に、半世紀ほど前、1週間も網を曳いて探したことがあるという方もいた)
  • ほぼ皆さんが土左衛門につく小虫のことを知っていて、浮いた遺体によく付くとか、眼が先に食われるなど細かい話も出た
  • 底に沈んだ遺体ではアカニシなどの巻き貝が付いていることが多いらしい
  • 潮干狩りのシーズンにはよく砂浜で小虫にかじられるとのことで、スナホリムシの可能性もありつつ、どうやらそうではない、フトヒゲソコエビと考えて間違いなさそうな証言も
  • 永田ほか1967で紹介されていた「ガンギリ」という呼称を知る人は誰もおらず、丸いことから「タカラムシ」と呼ぶのだという



 そして驚くべきことに・・・永田ほか (1967) を読んでいただくと・・・


お店の人:この苗字はこのへんにはおらん。

わたし:玄界島ということは?

お店の人:玄界にもおらん。勝間のほうや。電話してみる。


 なんだかんだで、永田ほか (1967) で「ヨコエビとウミホタルに食べられた漁夫」の兄弟のお孫さんにあたる方とお会いすることができました。



(マジすか・・・)



お孫さん:おじいちゃんがぶつかったのはねぇ・・・

船長:そこは俺がいつも釣りするとこなんだけど・・・。



(マジすか・・・!!)


1965年の事故地点はこのへんらしい。


 底モノを狙うのに良い場所らしく、投錨して釣っていたところで大きな船(中型鋼鉄製貨物船)にぶつけられたらしい。これも文献の記述と一致。

 私にとっては思ってもみなかった大きな収穫でしたが、さすがに半世紀も前の話ということで、地元の方にとってはよくある昔話の one of them という感は否めません(;´∀`)







 さてさて、適当なタイミングで籠を引き揚げてみますが・・・


 フグな~

 福岡じゃけん・・・



 砂を掘ってもアタリはなし。

 若干の焦りが…



 場所を変えてみます。


アオサ的な藻類が溜まりやすい場所




船長:これ、似てる

わたし:アッ…狙ってるのとは違いますけど…ナミノリソコエビの新種ですね…

船長:?!

わたし:名前のついてないやつですね。北海道から九州まで同じ種だと思われていたんですが、去年の論文で…

船長:どゆこと…(;´д`) つまり、「君じゃないけど」…?

わたし:持って帰ります(*^^*)


Haustorioides sp. (undescribed) ナミノリソコエビ属の未記載種




 Takada et al. (2017) では福間,今宿そして唐津から得られたサンプルが「東シナ海個体群」として報告されていますが、エリアから見てそれに該当することは確実です。つまりは遺伝的な別種でありながら未記載の個体群です。

 H. japonicus ナミノリソコエビや´イシカワナミノリソコエビ´の生体写真によく似ていて、触角の毛の感じなど、東京湾の個体群とは全く異なります。無印ナミノリソコエビに対して、日本海岸で4つ報告されている隠蔽種(未記載個体群)それぞれの形態的な違いは未解明ですが、このグループにおいてアクティブな形態分類マンは世界に私だけのような気がするので、いずれ私が着手しなければならないと思います。



 そして、またモクズヨコエビ。

Hyalidae モクズヨコエビ科

 Bousfield & Hendrycks (2002) で言うところの指節が短いグループ


 アゴナガヨコエビ。盤州でも砂を掘ると採れますね。

Pontogeneiidae アゴナガヨコエビ科





 あ い つ が 採 れ な い … !



 その後、干潮に合わせて再度チャレンジしましたが、目的のフトヒゲソコエビについて、芳しい成果はありませんでした。

 残念ですが、仕方ありません。

 いろいろと気になるファクターはあるので、博多湾へ沈む夕陽にリベンジを誓い、この夏の宝探しを締めくくりました。







7.いのちのたび、終章


 そして朝。

 
 どうやら不慣れな「ぎょさんフィールドワーク(夜の博多駅前踏査含む)」により、足に小さなマメをこさえ、しかも潰したらしく、歩行に支障をきたす状態になってしまいました。

 
 水族館を回ろうと思っていましたが、予定を縮小し、足裏に絆創膏を重ね貼りしつつ北九州市に向かいます(帰らんのかい)。


 この夏、北九州でどうしても見ておきたい展示がありました。


 それは・・・



「へんてこモンスター展」(いのちのたび博物館)



 
 Shimomura & Tomikawa, 2016にて記載された Epimeria abyssalis にどうやら「ヤミノヨロイヨコエビ」という厨二感満載の和名がつけられ(記載当初は和名未提唱)、世界初公開されるとのこと、ぜひ拝みに行こうと、初めていのちのたび博物館にやってきました。


 
 
 
甲殻類推し感

 

ガタガール無印第7話感



来ましたよ


これが闇ノ鎧横蝦


 種小名のabyssalisは生息地である深海を示すabyssusという語から来ているとの旨が記載論文のethymologyに記されていますが、abyssal zoneといえば「無光帯」と訳され、まさに闇という和名がピッタリに思えます。


  解説文に、Epimeria属は世界から55種が知られ、うち47種が南極海周辺に生息とありますが、ちと違うのでないでしょうか。


 調べてみましょう。



Reference: Andres (1985), J.L.Barnard (1961, 1971), K.H.Barnard (1916, 1930), Beermann et al. (2018), Birstein & Vinogradov (1958), Coleman (1990, 1994), Coleman & Lowry (2014), De Broyer & Klages (1991), d’Udekem d’Acoz et al. (2017), Griffiths (1977), Gurjanova (1972), Hurley (1957), Ishimaru (1994), Ledoyer (1986), Lörz (2008, 2009, 2011, 2012), Lörz & Coleman (2001, 2009, 2014), Lörz et al. (2007), McCain (1971), Nagata (1963), Shimomura & Tomikawa (2016), Varela & García-Gómez (2015),  Verheye et al. (2018), Wakabara & Serejo (1999), Walker (1906), Watling (1981), Winfield et al. (2012); WoRMS (access date: 31-VIII-2018).


 昨年5月にヨロイヨコエビ属を検証した時から、 30種程度増えていますので、新たに集計し直したところ、南極産55種,太平洋産15種,大西洋産14種,インド洋産2種の、計86種ということになりました。だいぶ違う・・・?
 昨年の d’Udekem d’Acoz et al. (2017) を除外した可能性も考えましたが、それだと南極産種が半分まで減ってしまいます。というか、あまりにも南極産以外の種数が少なく見積もられていますね。これは何かありそうですが、とりあえず確認だけ依頼しておきました。

 今回はWoRMSで種数を確認しましたが、Epimeria属内でも一部記載者名の表記にアヤシイところがあるなど、WoRMSも完璧ではありませんので、まあ、それだけを信じればいいわけでもないということで・・・
 



みなさんご存知、オオオキソコエビ

 なぜヤミノヨロイヨコエビのラベルはヨロイヨコエビ科なのに、オオオキソコエビはヨコエビ亜目なんでしょうか・・・ Eurytheneidaeに科の和名が無いからというだけのような気もしますが、同じAmphilochidea亜目(和名無し)のはずです・・・ 種名のついでに科の和名も提唱してしまえば良かったか・・・? 




 続いて、常設展も観ます。

 驚いたのはシーラカンスとアンモナイトの異常な充実具合。

 シーラカンスの系統樹ががっつり置いてある常設展も初めて観たし、その中で常設展にある属だけ色変えましたって、半分以上展示してある気がするんですが・・・。あと、さりげなくホロタイプが置いてあったりして、何が何やらとにかく濃い。

 そして、この博物館の設置のきっかけになったのが、小さな魚の化石だったというのも驚き。その分類学的な重要性は展示を観て何となくわかりましたが、ここまでがっちりした館を作るのはすごい・・・。



洞窟の生き物といえばヨコエビですよね

ヨコエビは樹脂中で完全に透明なボディとなっており、ほぼ気泡のみ目視で確認できる状態





 もしかして、ここに展示されている Pseudocrangonyx shikokunis シコクメクラヨコエビ は、Tomikawa & Nakano (2018) で記載された P. akatsukai アカツカメクラヨコエビ なのでは・・・?


 やはり見ごたえある「いのちのたび博物館」。半日で回ろうというのはマメを潰さなくても無謀だったでしょう。1日コースは賢明な選択でした。


 九州、実に7年半ぶり2度目の上陸でしたが、とても濃い休日を過ごすことができました。
 「行き過ぎた趣味」をもつアヤシイ男としてお会いしたのが申し訳ないくらい、暖かい皆さんと出会うことができました。

 欲しいサンプルが得られなかったとはいえ、全くの空振りではないと考えています。まだまだ「S.A.M. project」も例の未記載種もやらなければいけないことがあるので、いずれ志賀島へリベンジをかけることになると思います。

 乞うご期待!
 






(参考文献)
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(参考web)
WoRMS(2018年8月閲覧)






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(補遺1)1-IX-2018
・コメント欄にて、Hirayama (1986) による処遇についてWoRMSにコメントがあった旨の指摘がありましたので該当部分の表現を改めました。
・Schellenberg (1926) を参考文献に追加。

(補遺2)5-IX-2018
・ホモニムのくだりのスペルを修正

2 件のコメント:

  1. いつも興味深く拝見しております。一点、ナイカイツノフトソコエビの学名について、コメントさせていただきます。

    WoRMSのOrchomene naikaiensis Hirayama, 1986のページ(http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=527424#notes)内にある、Dr. Hortonが作成したnote(http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=notes&id=280326)を読むと、Orchomenella littoralis Nagata, 1965を有効種として扱うという処置が(本種の属位の問題はさておき)極めて妥当であることが理解できます。すなわち、Schellenberg (1926, p. 248)で記載された種の正しいスペルはOrchomene litoralisであり、両種の種小名は1字違い(litoralisとlittoralis)でそもそも同名ではなかったということです(さらに厄介なことに、Hirayama (1986)では両種の種小名のスペルを"littralis"と間違って綴っております)。すなわち、Hirayama (1986)がBarnard (1969)の見解に従って、Orchomenella littoralis Nagata, 1965をOrchomeneに移動させる際に、本種がOrchomene litoralis Schellenberg, 1926の二次同名になるとして提唱した置換名Orchomene naikaiensis Hirayama, 1986は無効で、不注意に基づくものであったということでした。

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    1. ご指摘ありがとうございます。該当箇所を修正しました。

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